戦国BASARA/エロパロ保管庫

幻惑の炎2

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nozomi

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豊臣軍が瀬戸内の制海権を巡り、中四国の連合軍と睨みあっていたのは昨年の事である。

圧倒的な数と力でおしてくる豊臣軍に対し、元就は同盟国に協力を要請し、巧みな策を弄して数に於ける劣勢を補っていた。
軍師・竹中半兵衛の華麗な策は、数による勢いを上手く使い分け、一時は連合軍を厳島一帯まで退かせることが出来た。
しかし、短期で決着が着くかと思われた戦いだが、実に半年以上にわたり睨み合いを続けた。
次々と仕掛けられてくる巧妙な罠に、大軍である豊臣軍は翻弄されたからだ。
智将と名高い毛利元就といえど、十倍以上の戦力差には敵わないだろう、と考えていた事をすぐに改め、
全力で掛からねば喉元を食い破られると覚悟した。
また、元就も己の策で相手に決定打を与える事が出来ずにいた。
焦りが出れば負ける。
これは心理戦だと、双方は考えていたのだろう。

これ以上の消耗戦は互いの兵力を疲弊させ、強いては周辺諸国につけいる隙を与える。
長い睨み合いの末、そう判断した両軍は和議に応じ、停戦協定を結んだ。
とはいえ、実際は豊臣側に有利なように仕組まれたものである。
最初の条件ではあまりにこちらが不利だとして、元就は食い下がり幾度となく交渉を繰り返した。

その結果、条件が厳しいながらも最小限の被害で済ませることが出来た。
だが、その代償はあまりにも大きいものであった。

表面上は凪いだ海面のごとく穏やかに見える関係も、張り詰めた糸の上を綱渡りするような危うさを秘めていた。



夕食は旅の疲れを癒すように、と皆に酒と料理が振舞われた。
久方ぶりの酒に程よく気分が良くなり、場は盛り上がる。

その場で、半兵衛は思い出したように懐から一通の書状を取り出した。
「さっき渡そうと思っていたんだけどね」
無造作に渡してきた文は、見慣れた花押が記されていた。
思わず手を止めて凝視する元就の反応に気を良くしたのか、半兵衛は微笑する。
「そんなに嬉しいのかい、かつての恋人の文が」
「…さてな」
すぐにでも広げたい衝動を抑え、元就はそれを仕舞い込む。
上質な紙に僅かに残る香。
ふと蘇る感情を再び心の奥底へと沈めると、何事も無かったかのように黙り込む。
「全く…つまらない男だね、君も」
軽く酒を召している事もあるのか、半兵衛の機嫌は良かった。
青白い頬もほんのりと血色が戻り淡く染まって見える。
「大阪でも元気だったよ、元親君は」
君にもよろしく、と言っていたよ、と付け加え、半兵衛は杯を呷る。
「随分と騒々しいかろう」
あれは起きていれば四六時中何かをして大騒ぎする、物を壊す、という元就の言葉に、半兵衛は紫瞳を細める。
「君は厳しいね、これじゃあ彼女が可哀想だ」
やはり大阪に来て正解だったかもしれない、と揶揄うような口調で付け加える。
「息災であれば、それで良い」
元就の声は何の感情も含まず、儀礼的な返答に聞こえた。
そのまま半兵衛とは視線を合わせずに、手にした湯呑みへと口を付ける。
「それならついでに良い事を一つ教えよう、君にとっては不幸の知らせかも知れないけどね」
訝しげに眉を顰めた元就の秀麗な顔を見遣り、半兵衛は楽しげに口元を歪めた。
「元親君が秀吉の子を懐妊したよ」
「……そうか」
一瞬だけ声を止め、そして何事もなかったかのように応えると、元就はゆっくりと半兵衛の顔を見た。
「祝いの品でも贈るよう手配しておこう」
「側室としてのつとめは果たしてもらわないと、こちらも困るからねぇ」
形良い唇を端を上げるように彼女は嗤った。

「本当は君の水軍と四国の重機を全部豊臣の配下に置きたかったんだけどね」

国を守る為には何を犠牲にしても構わない。
…たとえ愛する人でさえも。
そういう君の態度は潔くて好きだよ、という半兵衛の声。

彼女はわざと相手の怒りを誘い、それに歪む顔を眺めるのが楽しみらしい。
しかし能面じみた元就の表情は変わらず、じっと氷の眼が睨んでいる。
「…そろそろ僕は部屋に下がらせてもらうよ」
すっかり酔いも醒めてしまったからね、と言い残すと、半兵衛はその場を去った。


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