「く、くすぐったい…」
「くすぐったいのでござりまするか?」
「そうだ、だから、ダメだ!!」
「くすぐったいのでござりまするか?」
「そうだ、だから、ダメだ!!」
まつにあんまり触られると、変な気を起こしてしまいそうだった。
自分の中でなんとか均衡を保っている天秤が、いとも簡単に覆されてしまいそうで。
犬千代は、真剣に まつの目を見つめた。ところが、
「いぬちよさま、くすぐったいの、苦手でござりまするか?」
まつがにんまりして、飛びかかってきた。
思わず受け止めてしまう。
「いぬちよさま、こちょこちょー…でござりまする!」
犬千代=くすぐったがりという方程式を刷り込まれた彼女は、
小さな手で、これでもかというくらいにくすぐってくる。
いけない。まつを大切に想うのなら、これくらいのことに耐えられなくてどうする。
「こら、やめるんだ、まつ!!」
かろうじて平静を保ち、叱り付ける。
「いやにござりまする、きゃはははは」
まつが笑う。慌てるそれがしを見て、すっごく楽しそうに。
くすぐったいんじゃないんだ。
自分の中でなんとか均衡を保っている天秤が、いとも簡単に覆されてしまいそうで。
犬千代は、真剣に まつの目を見つめた。ところが、
「いぬちよさま、くすぐったいの、苦手でござりまするか?」
まつがにんまりして、飛びかかってきた。
思わず受け止めてしまう。
「いぬちよさま、こちょこちょー…でござりまする!」
犬千代=くすぐったがりという方程式を刷り込まれた彼女は、
小さな手で、これでもかというくらいにくすぐってくる。
いけない。まつを大切に想うのなら、これくらいのことに耐えられなくてどうする。
「こら、やめるんだ、まつ!!」
かろうじて平静を保ち、叱り付ける。
「いやにござりまする、きゃはははは」
まつが笑う。慌てるそれがしを見て、すっごく楽しそうに。
くすぐったいんじゃないんだ。
ばか。
まつの、ばか!
「…だめだと、言っただろう?」
脇腹に触れた手をぱしっと取ると、 まつが息を呑む気配がした。
「あ…ごめん、なさい、まつめは」
謝っても、無駄だ。
襲われたなら、返り討ちにするまで。
武士とは、時にそういう残酷なものなんだ。
襲われたなら、返り討ちにするまで。
武士とは、時にそういう残酷なものなんだ。
「―お返しだ」
短く言うと、 まつの体に手を回した。
びっくりするくらい華奢で、それでも、ふわりと柔らかい。
ああ、小さくても、ちゃんとおなごのからだをしている。
破裂してしまいそうな心臓と逆に、頭は冷静に分析していた。
こんなことで、こんなに動揺するなんて…。
大人びたところのあるまつには、笑われてしまうかもしれない。
それでも余裕なふりをして、脇腹、腕、手のひら、背中。
順番に容赦なく撫で回す。
びっくりするくらい華奢で、それでも、ふわりと柔らかい。
ああ、小さくても、ちゃんとおなごのからだをしている。
破裂してしまいそうな心臓と逆に、頭は冷静に分析していた。
こんなことで、こんなに動揺するなんて…。
大人びたところのあるまつには、笑われてしまうかもしれない。
それでも余裕なふりをして、脇腹、腕、手のひら、背中。
順番に容赦なく撫で回す。