木枯らしが吹くようになっても佐助はまだ戻らなかった。
冬になる前に帰りたいと言う希望は叶わなかったようだ。
暮が近付くと一段と寒さが厳しくなり、雪が舞うようになった。
寒さが障りにならないか心配したが、彼が多めに薪を用意していたお陰で
体調を崩す事は無かった。
――ひゅうううう
年が改まって間もない晩、かすがはその音で目を覚ました。
――ひゅうううう
最初はただの風の音だと思ったがどうも違う。
――ひゅうううう
この呼び掛ける様な音は一体何の音だったろう。
――ひゅうううう
どうも気になって寝巻のままそっと縁側の戸を細く開けた。
――ひゅうううう
「―――!!」
外を見たかすがは文字通り凍り付いた。
満月を背にして庭先にあの男が立って居る。
自分から忍としての命を奪った男。
姿を見た者は全て葬り去って来た故に伝説と呼ばれる男――。
声にならない声で彼女は呟いた。
「……悪、魔」
――ひゅうううう
答える代りにその口から風の音がした。
体は震えて足が竦み一歩も動けないが、今ここで死ぬ訳には行かない。
悪魔はジリジリ彼女に近付いて来た。彼女は僅かに後退る。
(まだ死ねない)
悪魔の姿が一段と大きく迫り、その影が彼女を完全に呑み込んだ。
(私は、まだ死ねないんだ――)
冬になる前に帰りたいと言う希望は叶わなかったようだ。
暮が近付くと一段と寒さが厳しくなり、雪が舞うようになった。
寒さが障りにならないか心配したが、彼が多めに薪を用意していたお陰で
体調を崩す事は無かった。
――ひゅうううう
年が改まって間もない晩、かすがはその音で目を覚ました。
――ひゅうううう
最初はただの風の音だと思ったがどうも違う。
――ひゅうううう
この呼び掛ける様な音は一体何の音だったろう。
――ひゅうううう
どうも気になって寝巻のままそっと縁側の戸を細く開けた。
――ひゅうううう
「―――!!」
外を見たかすがは文字通り凍り付いた。
満月を背にして庭先にあの男が立って居る。
自分から忍としての命を奪った男。
姿を見た者は全て葬り去って来た故に伝説と呼ばれる男――。
声にならない声で彼女は呟いた。
「……悪、魔」
――ひゅうううう
答える代りにその口から風の音がした。
体は震えて足が竦み一歩も動けないが、今ここで死ぬ訳には行かない。
悪魔はジリジリ彼女に近付いて来た。彼女は僅かに後退る。
(まだ死ねない)
悪魔の姿が一段と大きく迫り、その影が彼女を完全に呑み込んだ。
(私は、まだ死ねないんだ――)




