色仕掛けは、かつて愛した男には通じない。
女が未だ過去に縛られているままなのに対し、かつて愛した男は妻を娶り、子も成していた。
それならば、寝込みを襲うか、背後から突くしかない。
女が未だ過去に縛られているままなのに対し、かつて愛した男は妻を娶り、子も成していた。
それならば、寝込みを襲うか、背後から突くしかない。
くノ一ではなく、戦忍のような仕事に。
女は久方ぶりに戦慄が走るのを覚えた。
女は久方ぶりに戦慄が走るのを覚えた。
朔の夜は、絶好の仕事日和だ。
物音一つ立てずに忍び込むことなと、女にとっては造作もない。
物音一つ立てずに忍び込むことなと、女にとっては造作もない。
そこまでは完璧だった。
そのはずだった。
そのはずだった。
かつて愛した男は、丑三つ時をとうに過ぎているというのに、まだ目を覚ましていた。
そういえば、寝の浅い男だった。と心の中でそっと嘆息した。
軽くかぶりを振って、女は実力行使に出ることを決めた。
そういえば、寝の浅い男だった。と心の中でそっと嘆息した。
軽くかぶりを振って、女は実力行使に出ることを決めた。
天板を勢いよく外し
その反動のまま、かつて愛した男の胸へと、苦無を向ける
脳裏に、かつて愛されていたときの、名を呼ぶ声が鮮やかに聞こえて
「佐助」
目の前にいるその人の口から、その名がはっきりと呟かれた。
驚きに目を見開き、突き立てるはずだった苦無は、からん、と床に落ちた。
「……なんで」
あれからもう何年も経っている。
かつて愛した男、小十郎が、白髪混じりになってしまうほどに。
誰一人として、かつて「佐助」であったことを知らずにいたというのに。
「人外に成り果てたか」
小十郎は女の、佐助のその問いには答えず、軽く眉を上げた。
あれからもう何年も経っている。
かつて愛した男、小十郎が、白髪混じりになってしまうほどに。
誰一人として、かつて「佐助」であったことを知らずにいたというのに。
「人外に成り果てたか」
小十郎は女の、佐助のその問いには答えず、軽く眉を上げた。
「化けるってことは、お前は死人か?」
酷く穏やかな声のまま、小十郎は佐助の頭をなでた。
「……わかんない」
世界が一気にぼやけた。泣くのは、幸村が亡くなって以来だ。
確かそのときも、小十郎と一緒だった。
酷く穏やかな声のまま、小十郎は佐助の頭をなでた。
「……わかんない」
世界が一気にぼやけた。泣くのは、幸村が亡くなって以来だ。
確かそのときも、小十郎と一緒だった。
「もう死人なら、あんたが殺してよ」
泣きながらぎゅう。と強く抱きしめた。
泣きながらぎゅう。と強く抱きしめた。
少し穏やかに笑って、床に落ちたままの苦無を手にとって。
佐助であった女の背中に突き立てた。
人の姿をしていた「それ」は、たちまち霧散と消え。
「じゃあな。今度こそ、来世で会おう」
朔の夜に、小十郎の低い声が静かに消えた。
実はとっくに死んでたんだよという話。タイトルは漢字で書くと「化人」
さすこが、あのままこじゅを殺しちゃうパターンもあったけど
あんまりだったのでボツにしたのはここだけの話(´・ω・`)
さすこが、あのままこじゅを殺しちゃうパターンもあったけど
あんまりだったのでボツにしたのはここだけの話(´・ω・`)




