「ほら見て、長政様。綺麗でしょ…?」
妻が差し出した奇妙な食べ物と思しきモノを見て長政は眉を顰めた。
五寸ばかりの白くて丸いモノがこの季節に珍しい色とりどりの果物で飾られている。
「何だそれは?」
「けえきって言う南蛮菓子なんだって。お義姉様から頂いたの。
前田様の奥方が、異国の人から習って焼いたんだよ。とっても甘いの。
ねぇ、長政様も、一口食べてみて?」
余程嬉しいのか市はにこやかに笑いながら楊枝を持って勧める。
何でも今日は異教の前夜祭だと言う事で、菓子は翌日の昼に食すのが本当らしい。
いつもよりはしゃいでそんな説明をする妻の姿が長政の癇に触った。
「そのような物、要らん」
長政はキッパリ拒絶した。
「え?でも…」
まさかそこまで強く否定されるなど思っておらず、市は狼狽えどうして良いか分らずまごつく。
モタモタした様子に苛立ち長政はつい大きな声を出した。
「同じ事を何度も言わせるな、市!」
一喝され、市の身体がひくんと震える。
「……ご、ごめんなさい」
市は深い陰りを見せ、一礼してごずごず部屋から下がろうとして襖に手を掛けた。
「市、白湯を持て」
「白湯?」
怪訝そうに呟き振り返った市の目に、一口だけ食べられた菓子と胡座をかいている
夫の後ろ姿が映った。
「あ…」
「口の中が甘ったるくて適わん!さっさとしないか!」
市はゆっくり顔を綻ばせて頷く。
「はい、長政様。すぐ持って来るから待っててね」
市の言った通り菓子は甘かった。長政には甘すぎるくらいで、まるで市のようだ。
白い南蛮菓子が美しく飾られた様は嫁入りの時の市を思い出した。
長政は菓子から目を逸らす。
「フン、南蛮菓子なんぞ…」
勧められれば共に食べてやらないでもないな、と長政は心の中で嘯いた。
妻が差し出した奇妙な食べ物と思しきモノを見て長政は眉を顰めた。
五寸ばかりの白くて丸いモノがこの季節に珍しい色とりどりの果物で飾られている。
「何だそれは?」
「けえきって言う南蛮菓子なんだって。お義姉様から頂いたの。
前田様の奥方が、異国の人から習って焼いたんだよ。とっても甘いの。
ねぇ、長政様も、一口食べてみて?」
余程嬉しいのか市はにこやかに笑いながら楊枝を持って勧める。
何でも今日は異教の前夜祭だと言う事で、菓子は翌日の昼に食すのが本当らしい。
いつもよりはしゃいでそんな説明をする妻の姿が長政の癇に触った。
「そのような物、要らん」
長政はキッパリ拒絶した。
「え?でも…」
まさかそこまで強く否定されるなど思っておらず、市は狼狽えどうして良いか分らずまごつく。
モタモタした様子に苛立ち長政はつい大きな声を出した。
「同じ事を何度も言わせるな、市!」
一喝され、市の身体がひくんと震える。
「……ご、ごめんなさい」
市は深い陰りを見せ、一礼してごずごず部屋から下がろうとして襖に手を掛けた。
「市、白湯を持て」
「白湯?」
怪訝そうに呟き振り返った市の目に、一口だけ食べられた菓子と胡座をかいている
夫の後ろ姿が映った。
「あ…」
「口の中が甘ったるくて適わん!さっさとしないか!」
市はゆっくり顔を綻ばせて頷く。
「はい、長政様。すぐ持って来るから待っててね」
市の言った通り菓子は甘かった。長政には甘すぎるくらいで、まるで市のようだ。
白い南蛮菓子が美しく飾られた様は嫁入りの時の市を思い出した。
長政は菓子から目を逸らす。
「フン、南蛮菓子なんぞ…」
勧められれば共に食べてやらないでもないな、と長政は心の中で嘯いた。
お粗末様でございました。