床を上げ、衝立の裏で彼が用意して呉れた薄い浅葱色の小袖に着替えた。
流石に忍装束では目立つ為、まだ二人共傷が治り切らない時に
彼が骨を折って揃えて呉れた小袖だった。
これを見た時、最初に礼を言わずつい「何故」と言ってしまった。
彼はいい加減うんざりした面持で「何でお前は一々理由を訊くんだ」と返し、
そこからまた口喧嘩になった。
最後に彼は「つべこべ言わずにさっさと着替えろ」とぶっきらぼうに
小袖を彼女の前に放って背を向け、胡座をかいて頬杖ついた。
その態度に傷付いた訳では無いが涙が零れた。
敗北の衝撃と足が動かない動揺で不安定になっていた為涙が止まらず、
かすがは俯いて座ったまま長い間肩を震わせていた。
「身頃揃えたか?」
何とか涙を拭き小袖に腕を通した時、背を向けたまま彼が相変わらず
ぶっきらぼうな調子で問い掛けて来た。
「帯締めてやるよ。利き手がまだ動かないだろ」
彼の最大限の譲歩だ。
「頼む」
大人しくかすがは従った。
「……ごめんな」
後ろから白い帯を文庫結びにしながら彼はポツリと言った。
(いつも先に謝るのは向うだな)
そんな事を思い出しながら身仕度を整えていると家主が帰って来た。
流石に忍装束では目立つ為、まだ二人共傷が治り切らない時に
彼が骨を折って揃えて呉れた小袖だった。
これを見た時、最初に礼を言わずつい「何故」と言ってしまった。
彼はいい加減うんざりした面持で「何でお前は一々理由を訊くんだ」と返し、
そこからまた口喧嘩になった。
最後に彼は「つべこべ言わずにさっさと着替えろ」とぶっきらぼうに
小袖を彼女の前に放って背を向け、胡座をかいて頬杖ついた。
その態度に傷付いた訳では無いが涙が零れた。
敗北の衝撃と足が動かない動揺で不安定になっていた為涙が止まらず、
かすがは俯いて座ったまま長い間肩を震わせていた。
「身頃揃えたか?」
何とか涙を拭き小袖に腕を通した時、背を向けたまま彼が相変わらず
ぶっきらぼうな調子で問い掛けて来た。
「帯締めてやるよ。利き手がまだ動かないだろ」
彼の最大限の譲歩だ。
「頼む」
大人しくかすがは従った。
「……ごめんな」
後ろから白い帯を文庫結びにしながら彼はポツリと言った。
(いつも先に謝るのは向うだな)
そんな事を思い出しながら身仕度を整えていると家主が帰って来た。