桶から水を汲み、手拭いを絞る。
水鏡に写った自分を見て、小十郎は溜め息をついた。
「ったく、なんだってんだ。」
水鏡に写った自分を見て、小十郎は溜め息をついた。
「ったく、なんだってんだ。」
いつきに対して特別な感情を抱いた事はない。
そもそも実年齢がどうであれ、以前の見た目で食指が動くような趣味は無かった。
抱き締めた時に触れた弾力も肌触りも以前とそれ程変わりは無い。
それなのに。
「ほらよ。」
手拭いを渡してやる。
いつきはそれを顔に当て、ほっと息をついて気持ちいいと言った。
そもそも実年齢がどうであれ、以前の見た目で食指が動くような趣味は無かった。
抱き締めた時に触れた弾力も肌触りも以前とそれ程変わりは無い。
それなのに。
「ほらよ。」
手拭いを渡してやる。
いつきはそれを顔に当て、ほっと息をついて気持ちいいと言った。
「すまねえだ。」
部屋に上げ、茶を出してやるといつきは唐突に言った。
「急に来て迷惑だったんだべ?」
「いや……どうした?」
「だって小十郎さん、さっきからずっと難しい顔したまんまだべ。」
「これは生まれつきだ。おまえも分かってんだろうが。」
部屋に上げ、茶を出してやるといつきは唐突に言った。
「急に来て迷惑だったんだべ?」
「いや……どうした?」
「だって小十郎さん、さっきからずっと難しい顔したまんまだべ。」
「これは生まれつきだ。おまえも分かってんだろうが。」
――言い訳だ。
小十郎は言いながらそう思う。
先ほどからの違和感がずっと続いているのだ。
小十郎は言いながらそう思う。
先ほどからの違和感がずっと続いているのだ。
「ふふ、おらだってそこまで馬鹿じゃあねぇだよ。」
「―――ああ。悪いな。少し考え事をしててな。」
小十郎は取り繕う用に手を伸ばし、いつきの頭をぽんぽんと撫でてやる。
「お前が悪い訳じゃねえよ。」
そう言われてほっとしたように微笑むいつきを見て漸く小十郎は理由に思い当たった。
「―――ああ。悪いな。少し考え事をしててな。」
小十郎は取り繕う用に手を伸ばし、いつきの頭をぽんぽんと撫でてやる。
「お前が悪い訳じゃねえよ。」
そう言われてほっとしたように微笑むいつきを見て漸く小十郎は理由に思い当たった。
――女になったって事か。
以前と変わらぬ表情や仕草、その端々に女特有の艶さが混じり始めている。
少なくとも実年齢がどうであろうとも以前は見た目に見合った子供っぽさを持ち合わせていた。
今はそれを殆ど感じない。
体の成長と共に心も女と言う自覚が沸いてきたのかもしれないと小十郎は一人納得した。
以前と変わらぬ表情や仕草、その端々に女特有の艶さが混じり始めている。
少なくとも実年齢がどうであろうとも以前は見た目に見合った子供っぽさを持ち合わせていた。
今はそれを殆ど感じない。
体の成長と共に心も女と言う自覚が沸いてきたのかもしれないと小十郎は一人納得した。
小十郎の気配が和らいだのを感じたのだろう。
安心したのか、いつきはぽつりぽつりと村での事を語り始めた。
戦が終り状況が落ち着き始めたある日、置いたままになっていた天からの授かりものは光の粒になって消えたのだそうだ。
もう必要ないという事なのだろう。
それから次第に体が緩やかに成長を始めたのだと言う。
戦が無くなり、始めは気付かなかった村人達も徐々にいつきの変化に気付き始めた。
安心したのか、いつきはぽつりぽつりと村での事を語り始めた。
戦が終り状況が落ち着き始めたある日、置いたままになっていた天からの授かりものは光の粒になって消えたのだそうだ。
もう必要ないという事なのだろう。
それから次第に体が緩やかに成長を始めたのだと言う。
戦が無くなり、始めは気付かなかった村人達も徐々にいつきの変化に気付き始めた。
守り神のように扱われていたいつきは予想通り、――と言うべきでは無いかもしれないが、それに従い居場所を無くしていった。
特に何をされた訳でも、日々の生活が変わった訳でもない。
ただ村人にとって守り神で無くなったいつきは、正常に成長を始めたと言っても、最早村人にとって得体の知れない何かでしか無かった。
特に何をされた訳でも、日々の生活が変わった訳でもない。
ただ村人にとって守り神で無くなったいつきは、正常に成長を始めたと言っても、最早村人にとって得体の知れない何かでしか無かった。
「近頃じゃあ前みたいに野良仕事するって言っても『今まで頑張ったんだからのんびりしろ』とか訳わかんねえ事言って手伝わせても貰えないだ。」
いつきの透き通った瞳にじわりと涙が溜まった。
「……馬鹿な奴らだ。」
「だからどうしたら良いかわからなくなって、戦の時世話になった人に挨拶にいくだって逃げ出して来ただよ。」
そこまで言って、いつきはちらりと此方を見た。
いつきの透き通った瞳にじわりと涙が溜まった。
「……馬鹿な奴らだ。」
「だからどうしたら良いかわからなくなって、戦の時世話になった人に挨拶にいくだって逃げ出して来ただよ。」
そこまで言って、いつきはちらりと此方を見た。
「……また、泣いたら怒るだか?」
「……怒らねえよ。」
細い手首を掴んで引き寄せる。
「へへ……やっぱり、顔はおっかなくても優しいべ。」
そう震える声で呟いて、いつきはまた小十郎の胸に顔を埋めた。
「……怒らねえよ。」
細い手首を掴んで引き寄せる。
「へへ……やっぱり、顔はおっかなくても優しいべ。」
そう震える声で呟いて、いつきはまた小十郎の胸に顔を埋めた。




