戦国BASARA/エロパロ保管庫

BBB6

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馬車は順調に森の中を進んだ。
この分なら予想していた時刻には城に戻れるだろうと考えながら、小十郎が戻ってからするべき職務の幾つかを頭の中で確認していた──その時。
不意に、連続した打撃音が天井から聞こえた。
それは御者が馬車の天井部を叩いて鳴らしたもので、異常を知らせるサインだった。
瞬時に小十郎の目に険が籠もる。
「何事だ」
小十郎の問いに御者が、壊れた荷車らしきものが道の先を塞いでいる、と答えた。
それを聞いて小十郎は顔に不審の色を浮かべた。

旅や移動の途中で壊れた馬車や荷車の一部をそのまま放置していく、というのはさして珍しくはない。
しかし、道を塞ぐようにというのは些か不自然だった。
森の中にあるとはいえ、道自体は移動径路のひとつとして今もきちんと機能し、少ないながらも人の往来がある。それは道の端に立つ道標や下草の生え方から容易にわかるはずだ。
そんな道の中央にあえて障害となる形で放置していくものか。
女子供や非力な者が動かすに動かせず、止むを得ず放置していった、という可能性も考えられなくはない。だが考えるほど不自然さが募る。
どう考えてもこれは罠である公算の方が大きかった。
何せこちらには、罠や攻撃を仕掛けられるに十分な理由があるのだ。
かつての戦乱の世に比べれば今の世は欠伸が出るほど平穏だが、領地を巡る小競り合いが完全に絶えたわけではない。
そして領地の中、血を分けた一族のあいだにも、利害や権力を巡っての争いは存在している。昔も今も。

「通り抜けるのは無理か」
「横を抜けようとすると道を外れちまって、まともに走れやせん。どうしますか、片倉様」
「……仕方ない。一旦止めて、一人が様子見に出ろ。注意は怠るな」
小十郎の指示に、馬車が止まる。
御者の一人が御者台から降りる音を聞きながら、小十郎は政宗に向き直った。
「申し訳ありません、政宗様。今しばらく──」
言いかけた言葉は途中でぶつ切れた。
脳髄を、神経の末端をちりちりと焼かれるような感覚に意識の大半が奪われ、小十郎の目が我知らず鋭さを増す。呼吸をするような自然さで、指が刀へと伸びる。
先に体が反応したものの正体を瞬時に頭でも理解した。
よく知っている。これまでに幾度となく主へ、そして己へと向けられてきたもの。人間の有する感情の中である意味もっとも力強いそれら。意図と意志が作り上げる無形の凶器。敵意。害意。悪意。殺意。
政宗もそれに気付いたらしく、煩わしげに目を眇める。
小十郎たちの感じ取ったものが間違いではないことを告げるように、再び鋭い打撃音が馬車に響いた。
「奇襲ですッ!」
御者の声に小十郎が素早く窓から外を覗くと、木々の間に荒れた身なりをした男たちの影が見えた。
全員が手に刀や斧といった武器を持ち、こちらの様子を窺っている。
男たちは洋装の者もいれば和装もいて見た目に統一性はない。奪ったか盗んだかしたものを頓着無く適当に着ている、といった風だ。泥や血飛沫らしきものに薄汚れ、破れもほつれも直していないところだけが揃っていた。
やはり道を塞いでいた荷車とやらは罠だったのだろう。
前方に障害物を置いて目標の動きを止め、隙を狙い横から襲う。賊や追い剥ぎの類がよく使う手だ。
しかし、それを使ったからといって敵が単なる賊とは限らない。
賊の振りをした暗殺者ではないという保証はない。賊徒を傀儡と悟らせぬまま裏で操っている者がいないとも限らない。
今回は果たしてどうなのか。ただの金品目当てか、それとも──。


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