随分前にイく時だけ声を出す小太郎、という話題が出て大変萌えたので、
その辺を交えた佐助×にょ小太
あの時の人ありがとう。そしてネタ無断拝借ごめんなさい。
その辺を交えた佐助×にょ小太
あの時の人ありがとう。そしてネタ無断拝借ごめんなさい。
- 北条が滅んでる設定です。じーちゃんはとっくに死んでます
- 小太郎死にネタですのでその辺も注意
- かっこいい小太郎とは縁がないのでその辺も注意
===============
小さな窓から月を見上げ、風魔小太郎は肩を落とした。
小太郎の顔は仮面に隠されているため、表情を伺うことはできない。
憂いに満ちた仕草から、気分上々、という訳ではないことは分かるが、
それ以上の事は分からない。
「何、小田原思い出してんの?」
どこか黴臭さの漂う牢に似合わぬ、飄々とした男の声。小太郎はそちらに一度顔を向け、
そしてまた月を見た。
北条は、先日滅んだ。
北条の風魔衆といえば、音に聞こえた忍び衆であり、「小太郎」は風魔の頭領が受け継ぐ
名前である。男であろうと女であろうと、風魔衆を統べる者は「小太郎」の名を名乗る。
今の「小太郎」は、まさに「小太郎」となるために育てられた。
生まれ落ちたその瞬間から、忍びとしての術、技を磨き、精神を叩き込まれ、肉体を鍛え上げられた。
顔を仮面で隠して表情を失くし、幼い頃より忍びとしての手ほどきしか受けていないため
言葉も知らず、「小太郎」を名乗るが故に名もない。幼い頃には確かに別の名で呼ばれていたが、
思い出すことができない。
「小太郎、で、いいんだっけ」
かちゃん、と、錠がなる。小太郎の入っている牢には、頑丈な錠前がいくつもつけられている。
破る気などないが、相手がそれほど小太郎を警戒しているのだろう。
「武田の領を荒らしてくれたのが小田原の忍びだなんて、俺様ちょっと心外ー」
代々仕えた主を失い、小太郎は彷徨った。彷徨えば腹は空くし喉は渇く。
言葉を知らぬため、請うこともできない。請うという考えすら沸かない。
そこで小太郎は、家を、村を、人を襲い、飢えと渇きを癒した。
その先に何があるのかは分からなかった。その行為を、人がなんと呼ぶのかも知らなかった。
ただ、小太郎は彷徨った。
北条に、氏政に仕える事が、小太郎のすべてだった。後を追うような真似もできず、
かといって新たな主を見つけることもできず、小太郎はただただ生きていた。
「こっち見ろよ」
ぐい、と顔を無理やり男に向けさせられる。橙の髪の若い男。同じ忍びだということは分かる。
「取れ」
男の手が仮面にかかる。小太郎は全力で男の手を払い、逃げた。しかし狭い牢のこと、すぐに男に捕まる。
「取りたくないんだ。……まぁいいや」
男はにちゃっと笑った。
「俺のこと、知ってるよね? 猿飛佐助」
小太郎は首を振る。
小太郎は、北条を、小田原を守ればそれでよかった。
網の目のように張った風魔衆の報せを伝える糸は、別の忍びがうまく使って小太郎や
氏政に報告していた。小田原を攻めぬ限り、他の忍びの情報は持たなかった。
「あんたと同じ、戦忍びだ。結構、有名なんだけどね」
つま先で立ったまま、男――佐助は腰を落とした。
「ちょっと、あんたやりすぎなんだよ。なぁに? 主の後でも追うの?」
首を振る。
「じゃあ復讐?」
北条は、武田に滅ぼされた。だがそれは、北条が同盟を裏切ったからだ。武田は滅ぼされ
ないために北条を滅ぼしただけにすぎない。
乱世の定めと言えばそれまで。
小太郎は首を振る。
「じゃあ――何なのさ」
何、と言われても小太郎は答えを持たない。
ただ生きるため。
小さな窓から月を見上げ、風魔小太郎は肩を落とした。
小太郎の顔は仮面に隠されているため、表情を伺うことはできない。
憂いに満ちた仕草から、気分上々、という訳ではないことは分かるが、
それ以上の事は分からない。
「何、小田原思い出してんの?」
どこか黴臭さの漂う牢に似合わぬ、飄々とした男の声。小太郎はそちらに一度顔を向け、
そしてまた月を見た。
北条は、先日滅んだ。
北条の風魔衆といえば、音に聞こえた忍び衆であり、「小太郎」は風魔の頭領が受け継ぐ
名前である。男であろうと女であろうと、風魔衆を統べる者は「小太郎」の名を名乗る。
今の「小太郎」は、まさに「小太郎」となるために育てられた。
生まれ落ちたその瞬間から、忍びとしての術、技を磨き、精神を叩き込まれ、肉体を鍛え上げられた。
顔を仮面で隠して表情を失くし、幼い頃より忍びとしての手ほどきしか受けていないため
言葉も知らず、「小太郎」を名乗るが故に名もない。幼い頃には確かに別の名で呼ばれていたが、
思い出すことができない。
「小太郎、で、いいんだっけ」
かちゃん、と、錠がなる。小太郎の入っている牢には、頑丈な錠前がいくつもつけられている。
破る気などないが、相手がそれほど小太郎を警戒しているのだろう。
「武田の領を荒らしてくれたのが小田原の忍びだなんて、俺様ちょっと心外ー」
代々仕えた主を失い、小太郎は彷徨った。彷徨えば腹は空くし喉は渇く。
言葉を知らぬため、請うこともできない。請うという考えすら沸かない。
そこで小太郎は、家を、村を、人を襲い、飢えと渇きを癒した。
その先に何があるのかは分からなかった。その行為を、人がなんと呼ぶのかも知らなかった。
ただ、小太郎は彷徨った。
北条に、氏政に仕える事が、小太郎のすべてだった。後を追うような真似もできず、
かといって新たな主を見つけることもできず、小太郎はただただ生きていた。
「こっち見ろよ」
ぐい、と顔を無理やり男に向けさせられる。橙の髪の若い男。同じ忍びだということは分かる。
「取れ」
男の手が仮面にかかる。小太郎は全力で男の手を払い、逃げた。しかし狭い牢のこと、すぐに男に捕まる。
「取りたくないんだ。……まぁいいや」
男はにちゃっと笑った。
「俺のこと、知ってるよね? 猿飛佐助」
小太郎は首を振る。
小太郎は、北条を、小田原を守ればそれでよかった。
網の目のように張った風魔衆の報せを伝える糸は、別の忍びがうまく使って小太郎や
氏政に報告していた。小田原を攻めぬ限り、他の忍びの情報は持たなかった。
「あんたと同じ、戦忍びだ。結構、有名なんだけどね」
つま先で立ったまま、男――佐助は腰を落とした。
「ちょっと、あんたやりすぎなんだよ。なぁに? 主の後でも追うの?」
首を振る。
「じゃあ復讐?」
北条は、武田に滅ぼされた。だがそれは、北条が同盟を裏切ったからだ。武田は滅ぼされ
ないために北条を滅ぼしただけにすぎない。
乱世の定めと言えばそれまで。
小太郎は首を振る。
「じゃあ――何なのさ」
何、と言われても小太郎は答えを持たない。
ただ生きるため。
「生きる」という言葉すら、小太郎は知らなかった。