いつき視点で、後半は一応エロ描写有りですが、最後まではやってません。
いつきちゃんがあまり天真爛漫ではないので注意。
いつきちゃんがあまり天真爛漫ではないので注意。
*
初めて出会ったのは、偶然通りがかった甘味処の前。
腹は減っているが金は持っていなかったいつきは、若い男たちが団子を食べているのを物欲しそうに眺めていた。しばらくすると、そんないつきの存在に気付いた、髪を後ろで高く結んだ大柄な青年が声をかけてきて。
腹は減っているが金は持っていなかったいつきは、若い男たちが団子を食べているのを物欲しそうに眺めていた。しばらくすると、そんないつきの存在に気付いた、髪を後ろで高く結んだ大柄な青年が声をかけてきて。
「おっ、可愛いお嬢ちゃんだねぇ。腹減ってんならこれ食うかい?」
「え…本当に、くれるだか?」
「遠慮すんなって。ほら、あんたも一つ分けてやんなよ」
「え…本当に、くれるだか?」
「遠慮すんなって。ほら、あんたも一つ分けてやんなよ」
いつきに団子をくれた青年は振り返り、連れと思われる者にそう言った。
いつきもそちらの方向を見ると、そこには真っ赤な服を着た栗色の髪の若者が居る。
いつきもそちらの方向を見ると、そこには真っ赤な服を着た栗色の髪の若者が居る。
「……………」
彼はいつきのほうを見やり、何かを言おうとしたようだが、口一杯に詰め込みまくった団子のせいで、明確な言葉は何一つ出てこない。
いずれにしろ彼のほうは、いつきに団子を分けてくれる気配は微塵も無さそうだ。
少し気まずくなった空気に、一緒に居た迷彩柄の服の青年が苦笑しながら。
彼はいつきのほうを見やり、何かを言おうとしたようだが、口一杯に詰め込みまくった団子のせいで、明確な言葉は何一つ出てこない。
いずれにしろ彼のほうは、いつきに団子を分けてくれる気配は微塵も無さそうだ。
少し気まずくなった空気に、一緒に居た迷彩柄の服の青年が苦笑しながら。
「ああ、無理無理、旦那はそれだけは絶対譲らないから。俺様のを分けてあげるよ」
「あ…団子はもういいんだけんど…にいちゃんたち、ありがとな」
「旦那は戦場ではうるさいんだけどね~団子渡しとけば静かなもんだ」
「戦場…」
「あ…団子はもういいんだけんど…にいちゃんたち、ありがとな」
「旦那は戦場ではうるさいんだけどね~団子渡しとけば静かなもんだ」
「戦場…」
突然、甘味処の和やかな風景に似つかわしくない言葉を聞いて、いつきは表情を硬くした。
そこで初めて、彼の赤揃えの派手な格好が、戦装束であることに気付く。
(赤いおさむらい…まるで、村の田んぼを焼いた炎みたいだべ)
寒さを凌ぐための火は暖かくて好きだけれど、戦場で上がる炎は忌むべきものだ。いつきは目の前にある赤を嫌悪しながら、それでもその鮮やかさを忘れることは出来なかった。
そこで初めて、彼の赤揃えの派手な格好が、戦装束であることに気付く。
(赤いおさむらい…まるで、村の田んぼを焼いた炎みたいだべ)
寒さを凌ぐための火は暖かくて好きだけれど、戦場で上がる炎は忌むべきものだ。いつきは目の前にある赤を嫌悪しながら、それでもその鮮やかさを忘れることは出来なかった。