小さな少女に突然押し倒され、幸村は畳に背をつけたが、それきり二人の動きは止まってしまう。
衝動的に押し倒してみたものの、いつきも何をして良いのか分からないのだ。
だけど、彼から離れようとは思わなかった。ここで離れたら、何も伝えられぬまま終わる。
衝動的に押し倒してみたものの、いつきも何をして良いのか分からないのだ。
だけど、彼から離れようとは思わなかった。ここで離れたら、何も伝えられぬまま終わる。
「いつき殿…どうされた?」
いつきの小さな身体を払いのけることなど、幸村にとっては簡単なことのはずだ。
それなのに幸村は、いつきの予想外の行動に目をまるくするばかりで、抵抗する様子はない。
いつきも何をすればいいか分からないが、幸村もどう反応していいか分からないのだ。
もしいつきが大人の女性だったら、身を寄せることをきっぱりと拒否されたかもしれないが。
いつきの小さな身体を払いのけることなど、幸村にとっては簡単なことのはずだ。
それなのに幸村は、いつきの予想外の行動に目をまるくするばかりで、抵抗する様子はない。
いつきも何をすればいいか分からないが、幸村もどう反応していいか分からないのだ。
もしいつきが大人の女性だったら、身を寄せることをきっぱりと拒否されたかもしれないが。
ならば、先に心を決めたほうが、この場を制することができる。でも何を決めるというのだろう?いつきの頭が次第に混乱してきた。とにかく今、幸村の顔が近い。
初めて見た時から今まで積み重なっていた幸村に対する思いが、いつきの中で弾ける音がした。
村の仲の良い夫婦が、いつかこうしていたのを見てしまった時のことを思い出しながら、いつきは近付いた幸村の顔に自分の顔をさらに近付け、震える唇同士をそっと合わせてみた。
初めて見た時から今まで積み重なっていた幸村に対する思いが、いつきの中で弾ける音がした。
村の仲の良い夫婦が、いつかこうしていたのを見てしまった時のことを思い出しながら、いつきは近付いた幸村の顔に自分の顔をさらに近付け、震える唇同士をそっと合わせてみた。
「…っ……!」
技巧以前の、ただ唇をくっつけるだけの行為。
いつきの唇よりも大きくてかさついた幸村のそれの感触に、想像していたよりも心が満たされる。
だが、それ以上はどうすれば良いのか知らないいつきは、長く口付け続けることも出来ずにやがてそっと唇を離した。幸村は黙っている。その重苦しい沈黙が、少し怖い。
技巧以前の、ただ唇をくっつけるだけの行為。
いつきの唇よりも大きくてかさついた幸村のそれの感触に、想像していたよりも心が満たされる。
だが、それ以上はどうすれば良いのか知らないいつきは、長く口付け続けることも出来ずにやがてそっと唇を離した。幸村は黙っている。その重苦しい沈黙が、少し怖い。
怒られるだろうかと、おそるおそる幸村の顔を見たが、幸村は真っ赤になって呆然としていた。
生まれて初めて口付けというものをしてしまい、いつきの心臓も早鐘のように高鳴っていたが、幸村のほうはそれ以上に動揺しているように見える。
誰だって、いきなりこんな事をされたら普通は驚くだろう。だがそれにしても。
生まれて初めて口付けというものをしてしまい、いつきの心臓も早鐘のように高鳴っていたが、幸村のほうはそれ以上に動揺しているように見える。
誰だって、いきなりこんな事をされたら普通は驚くだろう。だがそれにしても。
「……なあ、もしかして…幸村、おらが初めてか?」
「なっ…なななななぜ、そのようなことを!」
「だって幸村、おらよりもびっくりしてるべ?」
「そそそそそそそのようなこと、そなたには関係なかろう!!?」
「なっ…なななななぜ、そのようなことを!」
「だって幸村、おらよりもびっくりしてるべ?」
「そそそそそそそのようなこと、そなたには関係なかろう!!?」
可哀想なほど取り乱している幸村が、声を荒げれば荒げるほど、いつきの心は落ち着いていく。
確かに、仕えている忍や他の武将たちからも、うるさいだの子供っぽいだのと言われていたが、いつきから見れば、それでも充分大人の男なのに。
確かに、仕えている忍や他の武将たちからも、うるさいだの子供っぽいだのと言われていたが、いつきから見れば、それでも充分大人の男なのに。
幸村も知らないのだと分かると、いつきの中に不思議と勇気が湧いてきた。
そうだ、幸村だってよく知らないのだから、間違えたって呆れられることは無い。
そうだ、幸村だってよく知らないのだから、間違えたって呆れられることは無い。