このまま、子供のままごとのように時間をやり過ごすのは簡単だ。
だが、そっと目を閉じ、思案にふける。
(謙信様……)
かの人を思えば、きりきりと心が痛んだ。瞼の裏に映る涼やかな眼差し。耳の奥に残る凛とした声音。愛しい人。
自分の身体がひどく空虚で、止まり木を見つけ出せない心が彷徨う。かの人に、この身体を満たして欲しかった。
しかしそれは叶わない。自分にはもう、あのお方に合わせる顔などない。凍えた身体を慈愛で包み込んでもらうことなど。
ならば、ならばもう、この男でも。
身の内側から高熱の炎で焼かれても。
それでつかの間の安らぎが得られるのなら。
演技などできないこの男なら、自分に向けてくれるものが偽りでないと確信できるから。
「――真田」
背に回していた腕を解く。いったん距離を置こうとしたが、幸村は腕の力を緩めない。
「真田」
もう一度囁けば、ゆるゆると腕から力が抜けていく。顔を合わせれば、困り果てた瞳と目が合った。
「私を、抱いてくれるか?」
目が見開かれ、そして一気に顔が朱に染まる。破廉恥などと叫ばれたら面倒だ、と頭の片隅で考えながら、静かに答えを待った。
「そ、そそそそれがし、女人とちっ、契りを交わしたことは!」
「見ればわかる」
「うっ……正直、何をどうすればいいのか……」
「私がどうとでもしてやる。おまえは私の問いに答えてくれればよい」
「う、ううううううぅううううぅううう……」
幸村は俯いて、呻きながら身体を震わせていたが、やがて蚊の鳴くような声で抱きたいと呟いた。
「このようなことになるのだったら、もっと女人について学んでおくべきだった…」
いやそれは無理だろうと、かすがは苦笑し、頭を撫でてやった。
再び目が合うと、かすがはそっと唇を寄せた。幸村がぎゅっと目を閉じるのを薄目で見ながら、触れるばかりの口づけをした。真一文字に結ばれた唇は硬く閉ざされている。
いったん唇を離し、耳元へ顔を寄せる。甘く息を吹き込んでやれば、男の身体が面白いほど強張った。
「訓練でも、任務でもなく、男と肌を重ねるのは、これが初めてだ」
その言葉の真偽など知れなかったが、男は顔をさらに赤くして口を開閉させるばかりである。
「気を使う必要はないが、……できれば優しくして欲しい」
「も、もちろんでござる!」
声がでかい、と抗議するかわりに、その口を塞いでやった。途端に大人しくなるさまに、心が和む。
だが、そっと目を閉じ、思案にふける。
(謙信様……)
かの人を思えば、きりきりと心が痛んだ。瞼の裏に映る涼やかな眼差し。耳の奥に残る凛とした声音。愛しい人。
自分の身体がひどく空虚で、止まり木を見つけ出せない心が彷徨う。かの人に、この身体を満たして欲しかった。
しかしそれは叶わない。自分にはもう、あのお方に合わせる顔などない。凍えた身体を慈愛で包み込んでもらうことなど。
ならば、ならばもう、この男でも。
身の内側から高熱の炎で焼かれても。
それでつかの間の安らぎが得られるのなら。
演技などできないこの男なら、自分に向けてくれるものが偽りでないと確信できるから。
「――真田」
背に回していた腕を解く。いったん距離を置こうとしたが、幸村は腕の力を緩めない。
「真田」
もう一度囁けば、ゆるゆると腕から力が抜けていく。顔を合わせれば、困り果てた瞳と目が合った。
「私を、抱いてくれるか?」
目が見開かれ、そして一気に顔が朱に染まる。破廉恥などと叫ばれたら面倒だ、と頭の片隅で考えながら、静かに答えを待った。
「そ、そそそそれがし、女人とちっ、契りを交わしたことは!」
「見ればわかる」
「うっ……正直、何をどうすればいいのか……」
「私がどうとでもしてやる。おまえは私の問いに答えてくれればよい」
「う、ううううううぅううううぅううう……」
幸村は俯いて、呻きながら身体を震わせていたが、やがて蚊の鳴くような声で抱きたいと呟いた。
「このようなことになるのだったら、もっと女人について学んでおくべきだった…」
いやそれは無理だろうと、かすがは苦笑し、頭を撫でてやった。
再び目が合うと、かすがはそっと唇を寄せた。幸村がぎゅっと目を閉じるのを薄目で見ながら、触れるばかりの口づけをした。真一文字に結ばれた唇は硬く閉ざされている。
いったん唇を離し、耳元へ顔を寄せる。甘く息を吹き込んでやれば、男の身体が面白いほど強張った。
「訓練でも、任務でもなく、男と肌を重ねるのは、これが初めてだ」
その言葉の真偽など知れなかったが、男は顔をさらに赤くして口を開閉させるばかりである。
「気を使う必要はないが、……できれば優しくして欲しい」
「も、もちろんでござる!」
声がでかい、と抗議するかわりに、その口を塞いでやった。途端に大人しくなるさまに、心が和む。




