戦乱の世も収まり、残った各地の大名家らは友好的な関係を保っている。
特に婦人らは仲が良く、何かにつけては集まってお料理教室だ能楽鑑賞会だのと華やいでいる。
前々回の集まりの時は、ばれんたいんでーの贈り物を作ってデコして彼のハートをキャッチしちゃお(ハートマーク)とかいう趣旨だった。
キャッチも何も大部分が人妻でしょうが(織田・前田・浅井の奥様方)とツッコみつつ、
沸騰させたちょこれいととやらをぶっかけるプレイは面白そうだなあ誰にしようかなあなどと思い至った光秀も和やかに参加した。
そんな中、一人ぽつんと寂しげな姿。毛利元就がその小さな肩を雨に濡れる蝶のように縮こまらせ、
物憂げな佇まいとは裏腹包丁片手にひたすら悪鬼羅刹の形相でちょこれいとの塊を削り倒していた。
少し、いや盛大にからかってやろうと光秀が彼女に近寄る。
「おや毛利殿……どなたに差し上げるおつもりで?」
「自分に」
簡潔に、かつ素っ気なく視線すら合わせずそのちびっこは答えた。
乳の乏しい毛利元就は、背も大人にしては比較的低い。その為、よく長身のお市はじめ、濃姫とまつにも頭を撫でられてる。
第一印象の冷血鉄仮面とのギャップがまたQuawaiiのだそうである。
以前、光秀も長身を活かして、からかって毛利の頭に乳を乗せてやったら、一瞬噴火寸前の活火山のような顔をして、すぐ津波の後の浜辺のように戻った。
そこに残るのはただ寂しさばかりである。それ以降、毛利は光秀の側を意図的に回避する。
いやですよ、そんな態度とられたら余計いじめたくなるじゃありませんか。
そんな訳で、より効果的ないじめタイミングを探っていた光秀がここぞとばかりに発言したのが、今回のばれんたいんの件なのだった。
自分の主は南蛮贔屓である。だからして諸外国の風習にもそれなりの知識があるつもりだ、と前置きしておいて、
「ちょこれいとの正式な渡し方は、胸を使うのですよ、毛利殿」
毛利、湯煎にかける前のちょこのように固まる。
濃姫が「光秀お前またそんな嘘、」と横やりを入れようとしたのを、まつとお市が押さえつけたのを横目で確認して更に、
「心の臓、つまり一番心に近い場所をつかって想いを告げるのです。このように相手を想って膨らむ胸の谷間に甘い気持ちを溜めて。
……ああでもすみません!あなたには無理でしたね!うふふ!」
チョコレートソースのレシピをひらひらさせつつ、光秀は和やかな笑みで語った。
毛利の顔は、津波の後の余震を待つ黒雲の空のようであった。
特に婦人らは仲が良く、何かにつけては集まってお料理教室だ能楽鑑賞会だのと華やいでいる。
前々回の集まりの時は、ばれんたいんでーの贈り物を作ってデコして彼のハートをキャッチしちゃお(ハートマーク)とかいう趣旨だった。
キャッチも何も大部分が人妻でしょうが(織田・前田・浅井の奥様方)とツッコみつつ、
沸騰させたちょこれいととやらをぶっかけるプレイは面白そうだなあ誰にしようかなあなどと思い至った光秀も和やかに参加した。
そんな中、一人ぽつんと寂しげな姿。毛利元就がその小さな肩を雨に濡れる蝶のように縮こまらせ、
物憂げな佇まいとは裏腹包丁片手にひたすら悪鬼羅刹の形相でちょこれいとの塊を削り倒していた。
少し、いや盛大にからかってやろうと光秀が彼女に近寄る。
「おや毛利殿……どなたに差し上げるおつもりで?」
「自分に」
簡潔に、かつ素っ気なく視線すら合わせずそのちびっこは答えた。
乳の乏しい毛利元就は、背も大人にしては比較的低い。その為、よく長身のお市はじめ、濃姫とまつにも頭を撫でられてる。
第一印象の冷血鉄仮面とのギャップがまたQuawaiiのだそうである。
以前、光秀も長身を活かして、からかって毛利の頭に乳を乗せてやったら、一瞬噴火寸前の活火山のような顔をして、すぐ津波の後の浜辺のように戻った。
そこに残るのはただ寂しさばかりである。それ以降、毛利は光秀の側を意図的に回避する。
いやですよ、そんな態度とられたら余計いじめたくなるじゃありませんか。
そんな訳で、より効果的ないじめタイミングを探っていた光秀がここぞとばかりに発言したのが、今回のばれんたいんの件なのだった。
自分の主は南蛮贔屓である。だからして諸外国の風習にもそれなりの知識があるつもりだ、と前置きしておいて、
「ちょこれいとの正式な渡し方は、胸を使うのですよ、毛利殿」
毛利、湯煎にかける前のちょこのように固まる。
濃姫が「光秀お前またそんな嘘、」と横やりを入れようとしたのを、まつとお市が押さえつけたのを横目で確認して更に、
「心の臓、つまり一番心に近い場所をつかって想いを告げるのです。このように相手を想って膨らむ胸の谷間に甘い気持ちを溜めて。
……ああでもすみません!あなたには無理でしたね!うふふ!」
チョコレートソースのレシピをひらひらさせつつ、光秀は和やかな笑みで語った。
毛利の顔は、津波の後の余震を待つ黒雲の空のようであった。




