ひらひらと風に舞う花吹雪の中に二人は居た。
「ああ、綺麗な桜だね」
そう言って微笑む相手の顔は、光に霞んで良く見えない。
癖の強い白銀の髪が揺れ、いつもは目元につけている紫紺の面が外されているのにようやく気付いた。
「本当に君が一緒でなければ、最高に良い花見なんだけど」
だが、不意に咳き込み、言葉が切れる。
「大丈夫か、半兵衛」
「……いつもの発作だ、気にしなくて良いよ」
ここ半月ばかり落ち着いていたんだけどね、と苦笑する彼女の顔は随分と痩せてしまった。
「もう、次の花見に行けるかどうか分からないからね、せめて今年だけはと思ったのだけど」
自分の体がどうなっているかぐらい、良く知っているよ、と揶揄する口調。
「半兵衛」
「珍しくしおらしい顔をして、不気味だよ、慶次君」
そうして又、こんこん、と手拭いを口元に当てて咳き込む。
「戻ろう、花見をするには今日は風が冷たい」
「ああ」
秀吉が待っているだろうね、と儚げに笑んだ半兵衛の横顔をちらりと眺める。
何でそんなに幸せそうに笑えるのかと、慶次の心にちくりと小さな棘が刺さったような痛みが走った。
「ああ、綺麗な桜だね」
そう言って微笑む相手の顔は、光に霞んで良く見えない。
癖の強い白銀の髪が揺れ、いつもは目元につけている紫紺の面が外されているのにようやく気付いた。
「本当に君が一緒でなければ、最高に良い花見なんだけど」
だが、不意に咳き込み、言葉が切れる。
「大丈夫か、半兵衛」
「……いつもの発作だ、気にしなくて良いよ」
ここ半月ばかり落ち着いていたんだけどね、と苦笑する彼女の顔は随分と痩せてしまった。
「もう、次の花見に行けるかどうか分からないからね、せめて今年だけはと思ったのだけど」
自分の体がどうなっているかぐらい、良く知っているよ、と揶揄する口調。
「半兵衛」
「珍しくしおらしい顔をして、不気味だよ、慶次君」
そうして又、こんこん、と手拭いを口元に当てて咳き込む。
「戻ろう、花見をするには今日は風が冷たい」
「ああ」
秀吉が待っているだろうね、と儚げに笑んだ半兵衛の横顔をちらりと眺める。
何でそんなに幸せそうに笑えるのかと、慶次の心にちくりと小さな棘が刺さったような痛みが走った。
(了)