「元就様! どちらにおいでですか!?」
うなだれたまつの耳に、毛利軍の兵の慌しい声が飛び込む。
「敵襲、敵襲にござりまする!」
「……な、に?」
毛利元就は絶句していた。
「敵襲? ま、まさか、計算してないぞ……!」
苛立たしげに言い放つ元就の顔には、焦りと戸惑いの色が強い。
ああ、とまつは歓喜とも喪心ともつかぬ声を、乾いた唇から漏らした。
今は乱世。食うか食われるか、明日は我が身の戦国の世なのだ。
領内に攻め込まれれば、毛利とて勝てはしまい。前田を食った男が、今度は別の家に
食われて消える。
まつは涙を流しながら、小さく笑っていた。
死んでしまえばいい。毛利元就など死んでしまえ。
自分の愛を弄んだ男。愛を知らぬかわいそうな男。知らずに無価値と言い放った男。
愛を鼻で笑うような男は、極楽にたどり着けまい。冥府で永劫の責め苦に合いながら、
苦しめばいいのだ。
――そうでござりましょう? ねえ?
「ああ……犬千代さま」
まつは胸の奥に残る仄暖かい思い出を噛み締めながら、毛利が滅ぶのを待つことにした。
うなだれたまつの耳に、毛利軍の兵の慌しい声が飛び込む。
「敵襲、敵襲にござりまする!」
「……な、に?」
毛利元就は絶句していた。
「敵襲? ま、まさか、計算してないぞ……!」
苛立たしげに言い放つ元就の顔には、焦りと戸惑いの色が強い。
ああ、とまつは歓喜とも喪心ともつかぬ声を、乾いた唇から漏らした。
今は乱世。食うか食われるか、明日は我が身の戦国の世なのだ。
領内に攻め込まれれば、毛利とて勝てはしまい。前田を食った男が、今度は別の家に
食われて消える。
まつは涙を流しながら、小さく笑っていた。
死んでしまえばいい。毛利元就など死んでしまえ。
自分の愛を弄んだ男。愛を知らぬかわいそうな男。知らずに無価値と言い放った男。
愛を鼻で笑うような男は、極楽にたどり着けまい。冥府で永劫の責め苦に合いながら、
苦しめばいいのだ。
――そうでござりましょう? ねえ?
「ああ……犬千代さま」
まつは胸の奥に残る仄暖かい思い出を噛み締めながら、毛利が滅ぶのを待つことにした。
物騒な爆裂音とともに、緊迫した伝令兵の声が響く。
「怪しげな南蛮人が、我が領内へ侵略してきました! 元就様、至急、出陣のご用意を!」
「怪しげな南蛮人が、我が領内へ侵略してきました! 元就様、至急、出陣のご用意を!」
おわり




