【報告書:10660438】
興味深い奇妙な世界に辿り着いた
そこは夥しい数の「扉」で構成された空間だった
多世界相転移実験の最中に辿り着いたここで驚くべき事実を目の当たりにする
この「扉」は我々の居座る時間軸とは異なる世界への干渉を可能にしている
幾百年をかけて人類が夢見た架け橋が既に実在していたのだ
空間歪曲装置が施されているのか?製造者は不明だが、間違いなく世紀の大発見である
探究者として徹底的にその全貌を明かさねば
私は多くの「扉」を何度も開け放ち、幾度も潜り抜けた
しかしどれほど潜ってもその先にあるのは「扉」、「扉」、「扉」…
それは迷宮のように広がり私を困惑させるが、そんなことはどうでもいい
何故ならこれこそが心の底から望んでいた世界
いつかそのすべてを解き明かすまで、何度でも「扉」を潜り続けよう
何度も、何度も、何度も、何度も――――――
扉の前に落ちていた古い日誌の切れ端より
概要
無数の扉が点在する不可思議空間。
扉と扉を介するのは簡素な造りの床と階段だけであり、「
破れた世界」のように重力が存在しない。
空間内にある扉はどこかの場所や世界、引いては過去や未来などの時間を越えた先、
さらには並行世界(パラレルワールド)など様々な異空間と繋がっている。
どこでもドアよろしく扉を開くと遷移先の場所にある特定の扉に出るが、
中にはエレベーターやマンホール、窓に列車などへ出る場合もある。
この扉の間は「
カオスルーム」や「
終点」などのように、どの時間軸にも属さない唯一無二の世界となっている。
いつから存在し、何によって創造されたかもそのすべてが謎に包まれており、
どのような技術で数多の世界に繋がるのか、その全貌を把握している者はいない。
この空間への干渉を意図して行うことは難しく、ある人物が扉を開けた先で稀にこの世界に繋がることがある。
またこの空間に点在する扉の行き先、その目的地の座標指定も曖昧であり、特定箇所への指定はできないようになっているが、
大抵は本人の深層心理や願望を反映した場所に繋げてくれるケースが多い。
これは扉の間に意思があるのか定かではないが、
少なくともこの世界に踏み込んだ者は何らかの因果によって導かれたものであると断定していいだろう。
数ある扉の中には施錠されて開けないものがあったり、ドアノブを掴もうとすると扉自体が消えたりすることもあるが、
これは恐らく開放する本人にとって危険な場所であることや、踏み込むにはまだ早すぎる世界であることを示唆している。
例外として、「
紳士淑女のお茶会」のメンバーだけが持っている
『 鍵 』を使用することで
彼・彼女たちは自由にこの空間を行き来している。
最終更新:2025年10月07日 23:09