閃劇のリベリオン過去ログ Ⅰ

――― 2月某日 West・D・Land 十刀剣武祭 会場 ―――


ユキ「―――――はぁ…はぁ……っ……!! 」

×××「決ィィィまったぁぁぁ―――!!前大会にて序列七位だった選手が、不動と慄れられた序列一位の壁をついに斬り崩したァァァァ!!こんなシナリオを誰が予想できただろうか!?まさに、まさに大番狂わせ!!【十刀剣武祭】――序列十位以上の猛者のみが参加することを許される、熾烈を極めた闘いを制したのはユキだぁぁぁ――――!! 」


ワアアアアアアアアアァァァァァァァ――――――――…………!!!



――― 数日後 薄暗い路地 ―――


ユキ「……~♪(やった、やった、やった…! 実感できた、あたしはどんどん強くなってる! 今ならアイツを斬れるはず…今度こそ、絶対に…!)(土産物を手に提げ、上機嫌な様子で港へ続く道を歩いていた) ―――――ん? 」

政府軍の男「――――ちょっと待って。(政府軍の制服を身にまとう男がユキの進路を阻むように、刀を突き出しながら脇道から出てくる) 」

ユキ「おっ?(上機嫌な表情のまま、可愛らしく小首を傾げる) …なになに、あたしと遊びたいの?(土産物を手放して地面に落とし、腰のベルトに差していた垂氷丸の柄に手を乗せる) 」

政府軍の男「水縹色の長髪、娼婦じみた恰好……ハハ、最近噂になっている『人斬りの氷女(ひめ)』で間違いないよね。(ユキの真正面に立ち、突き出していた刀を体に引き寄せて構える) 」

ユキ「しょ、しょーふって……てゆーか、へぇー!あたしそんな風に呼ばれてるんだー? なんか不思議な気分ね、二つ名?つけてもらうのって(ふんふんと頷きながら) で、天下の政府様が人斬りに何の用なの?…大体予想つくけど 」

政府軍の男「ああ、君の予想通りだと思うよ(見下すように口の端を吊り上げ、嘲笑する) ……君みたいなのがいるとさ、善良な市民たちが安心して眠れないんだよ…だから斬り伏せる。俺の―――― ” ヒ イ ラ ギ 流 ” の剣で。(軽く膝を曲げ、臨戦態勢に) 」

ユキ「――――ピク。(あるワードを耳にした直後、微かに眉を上げ、顔つき――彼女がまとう雰囲気が一気に変化する) …… …… ……へえ?(瞳から光が消え失せ、僅かに瞼を降ろして政府軍の男を強く睨み垂氷丸を抜く) シャラ――― 」

政府軍の男「  ザ  ッ  (瞬間移動にも匹敵する疾さでユキの眼前に踏み込み、)―――――  ヴ  ォ オンッッ!!!(間髪を入れずに一帯の物体を揺るがす程の風音を鳴らして刀を振り下ろす) 」

ユキ「トッ (同時に一歩退きつつ、両手で握った刀を頭上スレスレまで上げて刃先を下げる) ガ ァンッ!ギャリリリリ―――ギンッ! ドゴッ!!(一撃を受け流すように相手の刃を滑らせ、胴辺りまで滑ったタイミングを見計らって素早く手首を返し、相手の刀を側方へ弾いて隙を作る。そして軸足で地面を強く蹴り、男の胸へ肩による当身を喰らわせる) 」

政府軍の男「ぐッ―――!(当身を受けて数歩後ずさり、飛び退いて距離を取る)(今の体捌き…ッ…!? 何なんだ、この氷女…噂以上の実力だぞ―――!) 」

ユキ「ほら、早く見せてよ。アンタのヒイラギ流。(依然として光が失せた冷たい瞳を向け、ヒイラギ流の型を執る) 」

政府軍の男「……ッ…!ああ、お望みなら―――今すぐにッッ!!(ユキの言葉に歯を食いしばり、ほんの少しかじった程度の、”未熟なヒイラギ流の型”を執る) 」


ほんの数瞬、沈黙が訪れる。 双方の視線が交錯した刹那、2人は同時に駆け出し―――振り被る刃を解き放った。


ユキ・政府軍の男「キン―――キン―ギィン!―――ギャリッ――キッ―ギンッ!!――――ガァン!!―ガギンッ!―ガンッ―――キィインッ!!――ガッギィィン!!! 」


激しい剣戟を繰り広げ、劈くような金属音が辺り一帯に響き渡る。その打ち合いはユキが明らかな優勢となり、政府軍の男を徐々に追い詰めていった。


政府軍の男「―――くっ……!!(グラッ…) 」

ユキ「――――――― 」


ズ   バ ァ ン ッ ッ ッ !!!(剣戟のさなか、男の決定的な隙を見逃すことなく強烈な一撃を浴びせる)


政府軍の男「――――が、は…ッ!!!(肩から腰までにかけて大きく切り裂かれ、血を噴き出させてよろめく) ゼェ……ゼェ…ッ!(しかし、いまだ闘志は消えておらず、再び刀を構える) 」

ユキ「……ブンッ ビチャ…!(刀を振り、刀身に付着した血液を払い落とす)……誰からヒイラギ流を習ったの? 」

政府軍の男「……世界政府軍中将、零士殿だ…ッ!! 」

ユキ「…ぷっ――――あはははは!!(その返答に可笑しくなり、堪えきれないといったように吹き出して笑う)ははは…っ…はー、おっかし…”アイツに習った”だなんて…(なんとか落ち着き、やれやれと呆れと嘲りを含んだ表情で政府軍の男を見る)アイツが弟子なんかとるわけないじゃない。そりゃ”習った”とは言えないわ 」

政府軍の男「ん、なっ――――― 」

ユキ「う~ん…そうね~……当ててあげよっか。アイツはアンタに、暇つぶしでテキトーな技をいくつか教えただけ。んーで、良い気になって挑戦を申し込んだところ…”同じ技で”完膚なきまでに叩き潰された―――――――違う?(明らかな侮辱を含んだ、冷ややかな笑みを浮かべる) 」

政府軍の男「……っ…!!………ぐッ…う……おおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――――ッッ!!!! 」



ユキ「―――――……あ、そうだ。お土産!さっき落としちゃったから…中身ぐちゃぐちゃかぁ…まぁ、新しいの買って帰ればいいわよね。お土産お土産~…♪(頭部と胴体、四肢までも切断された死体を跨いで通り過ぎ、East・C・Land行きの船が出ている港へ歩いていった) 」




そして、月日は流れ…


―― 寄宿舎 ―――


氷冬「ふぅ…(寄宿舎の庭でトレーニングしていたのか、首筋に汗が煌めいている)…(何にしようかな…)(自販機を前に立ち並ぶ飲料を指でなぞる様に指しながら選んでいる) 」

フーナ「それでね…――――あ、氷冬!(スカーフィと並んで歩きながら会話していた際に、自販機前に佇む氷冬に気づいて声をかける) 」

スカーフィ「ほえ?…あっ、氷冬だー!っほーい♪(元気よく手を振りながら歩み寄っていく)わっ、すごい汗だねー!またとれーにんぐ、してたの?? 」

氷冬「ガチャコン… ス… カシュ…(選んだ麦茶を取り出して一気飲む)あら、二人ともお揃いじゃない。ええ、そうよ。(スカーフィの明るい表情に釣られて微笑む) 」

フーナ「ふふっ、氷冬頑張ってるね。でもちょうど良かった。今から氷冬を誘って食堂へ行こうとしてたから。それと、氷冬にちょっとした話もあるから…(ふふっとウインクする) 」

氷冬「いいタイミングね、ちょうどお腹空いてたところよ。(話…?)…あ、じゃあ、軽くシャワー浴びてくるから、先に行ってて。後で落ち合いましょ。 」

スカーフィ「ほーい!ゆっくりでいーからねー♪ 」


30分後、食堂にて…


氷冬「ほっほっ(食堂へ入り、いつもの定食を運んでフーナたちのもとへ) 」

モララー「レアチーズ風マヨネーズケーキ…最ッッッッ高に、美味だ…!(食堂の窓側にある一人用の席で恍惚に浸っている) 」

フーナ「あ、きたきたっ。…最近修行にすごい勢いで励んでいるよね。(向かい側に座った氷冬に) 」

氷冬「まあね。って言っても、最近はまともに刀を振っていないから、何とも言えないのが正直なところね。組み手をしてくれる相手も、いないことはないのだけど…気安く会いに行けるような人じゃないから…(あははと目を反らしながら) 」

フーナ「そうなんだ…(ふぅんと頷いて)…実は、その…先日ね?レグィにある大会の観戦に誘われたんだ。 」

氷冬「あら、よかったじゃない。聞けば最近はかなり距離を縮めたんだとか…ねぇ?(にやにや) 」

フーナ「ちょ…っ…!なっ、そんなんじゃ…!(若干頬を赤く染め上げ)と、とにかくね…!その大会なんだけど…もしかすると、氷冬は知らないかもしれない。でも、絶対に興味があると思うの。 」

スカーフィ「あむあむっ…♪(たいやきパフェに夢中) 」

氷冬「……どういうもの、なの?(進めていた箸がぴたりと止まり) 」

フーナ「――――― 《 百 刀 剣 武 祭 》 ―――――― ……知ってる…?(小首を傾げて) 」

氷冬「刀…剣…?(初めて耳にしたそれに、全身に電撃がバチッと走ったような衝撃が迸る)…聞いたことないわ。…そ、それってもしかして…!(俄かに込み上がる興味に全身が震え始める) 」

フーナ「やっぱり…ううん、たぶん、知らないのが普通だと思うの。(そう言ってスマホを取り出し、あるサイトページを開いてその画面を氷冬に見せつける)…アンダーグラウンド下で開催される、"非公式にして公式"の、刀剣使いたちによる大会だよ。私もレグィに教えてもらうまでは全く知らなかった。世界政府も、ましてや神界政府も知らない…あるいは、知らないふりをして黙認している裏の大会だよ。 」

スカーフィ「かぅー…?(二人の会話をよそ目に、パフェを黙々と平らげている) 」

氷冬「こんな大会があったなんて…(フーナの話やホームページの見出しを確認しながら、まるで食い付いたかのように詳細を吟味している) 」

フーナ「概略としては、100人の剣士がトーナメント形式で勝ち上がっていく、その『百刀剣武祭』が新世界で一定周期で行われるみたいだよ。出場者全員にポイントが与えられていて、勝敗によって増減するみたい。最終的にその所有ポイントの差で順位が決定するんだって。 」

氷冬「ポイント…?順位…?一体何の話……??これはトーナメント形式なんでしょ?ただ勝ち進めればいいだけじゃないの…? 」

フーナ「うん、だけどね…所有ポイントで決定された「上位10名」の選手は、年に一度だけ行われるという伝説の大会―――― 《 十 刀 剣 武 祭 》に参加する権利が得られるの。 」

氷冬「―――――!!(…うそでしょ…上には上のステージがまだあったなんて…―――――)………っ~~~~!!!(グググッ) 最 ッ 高 ッ ♪ ♪ (この上なく輝いた表情を見せる)フーナ!そんなすごい大会があったなんて知らなかったわ。教えてくれてありがとう…!! 」

スカーフィ「かぅ?氷冬、その大会に出るの…?(口周りにクリームがついたまま) 」

フーナ「あははは…非公式の大会だから、あまり薦めたくはなかったんだけど…氷冬にとってはこの上ないことなんじゃないかと思うと、ついね…(苦笑)…ただ、カオスホールで開かれた様な公式大会じゃないから、生死については保証はないよ。新世界のつわものたちが一同に会する大会…政府側の者として言わせてもらうなら、とっても危険… 」

スカーフィ「かうぅ…あの時みたいにお遊び感覚で戦えないんだ… 氷冬、ほんとに出ちゃうの…?(氷冬の安否に不安がり、涙目に) 」

氷冬「―――――― 覚悟なら…刀を握った時からとっくに出来てるわ。(ふぅと不敵な表情を見せる) 剣士たるもの、行く先は常に死と隣り合わせの修羅の道。だからこそ、生を強く実感できる…!(ぐっと握り拳をつくる)参加するよ、私は。でないと一生、後悔すると思う。私には叶えたい『夢』がある。その夢が今、現実のものになろうとしているのに…手放すわけにはいかないわ。(にっと明るい笑みを見せ、二人の不安を取り除いてみせる) 」

フーナ「氷冬…(…『夢』…そうだね、氷冬には私にはない大きな『夢』がある。この大会を教えたことに罪悪感も感じていたけれど…大切な友達の『夢』を応援すると思えば…!)…うんっ、氷冬は強い。それは私たちもよく知っているよ。そうだよね、スカーフィ? 」

スカーフィ「かぅ…でも…… …… …… ……ううん。そうだね…そうだよ…!氷冬はとっても強い…!きっと氷冬なら、優勝できるよ!ボク、やっぱり氷冬のこと、応援したい…! 」

氷冬「フーナ…スカーフィ…(最愛の共に支えられていることを改めて強く実感したのか、一度瞳を閉じて再び開いた際には、その瞳に迷いも躊躇いもなく、ただただ純粋に、夢を追いかける幼い子供の様な輝きが秘められていた)…ありがとう。私、全力で振うよ。 」

モララー「モグモグ…(ほー…剣の大会かー…)(ふと自らが円卓の騎士だった頃を思い出し、剣を振っていた当時を懐かしむ)…今の俺には無縁だが、面白そうだ。たまには観戦に回るのも悪かねえ。それに新世界と聞けば、俺の知らねえ強い奴らもたくさんいるだろうしな……っし。ここは密かにあいつを応援しながら、俺も楽しませてもらうとするか。(氷冬たちを見ながらにししっと笑う) 」

フーナ「十刀剣武祭は今から10ヵ月後に開催される…それまでにある百刀剣武祭で出来るだ多くのポイントを稼いで、氷冬本命の十刀剣武祭を目指そう! 」

スカーフィ「かぅ~!なんだか急に楽しみになってきたよ♪ 」

氷冬「二人とも、参加するわけじゃないのに張りきっちゃって…(まあ、そんなこと言ってる自分が、どうにかなりそうなくらい興奮しているんだけどね…)(性格故にいつもの平然さを保っている)……(二人がいてくれるから、大丈夫…―――――) 」


一人の少女が決意を胸に抱いたように、新世界で名を轟かす『閃』を極めし猛者たちが、また各々に呻りを上げる――――――


―― 新世界・某所 ――


×××「ウルァ…世界のリア充どもが…今度こそ、この俺がフラグをへし折ってやる…ッ…! 」

××××××「この高鳴りは…久々に生を実感するでござるよ。いざ行かん、頂(たかみ)へ―――――― 」

××「……師範、見ていてください。我が大志は、今も貴方の言葉と共に、この胸に…―――― 」

×××「ヘェヘェヘェ…ッ!"残酷なる勝利"だったね、リーダー!りょーかいりょーかい。いっちょ"開拓"、してきますかねえ…! 」

××「ワニムを断ち切るは乱世の剣、北斗神剣–––––– 」

×××××「ジジッ―――――バジッ―――ジッ――――――ジジ――――――― "暁"が、見えるなァ。 」



――――――――― 新 章 《 閃 劇 の リ ベ リ オ ン 》 開 幕 ―――――――――――




氷冬「 フ ワ … ――――(某所、廃校の乾いた土の上を、凍てつかせるような寒々とした冷気を放つ白い足を進ませて、優雅に現れる)……(隔離された空間を包み込むかのような祭りの音色に合わせるように身体を揺らしながら進む先には、立派な神輿があった)……ザ… ―――――久しぶりだね。 」

縊鬼「……(氷冬に背を向ける形で神輿を見上げ、提灯の弱い灯火を背景に薄暗い最中振り向く)そうだったかな?僕にとってはつい昨日の出来事だよ(時間感覚の流れの違いをサラっと伝えると、氷冬へと己を対面させる)また来てくれたね。氷冬 」

氷冬「貴方から受けた刃は、昨日のように響くことはあるけどね。(くすっと噴いて歩み寄る)今日、此処に来たのは他でもないわ。今度こそ、貴方との決着を――――(四刀の内の一刀の柄に手をかけるが)――――って、言いたいところなんだけど。(断念したように溜息をつき、柔らかい表情を見せる) 」

縊鬼「……『語』りにきた訳じゃないみたいだね(常時変わらぬ優しい小さな笑みを崩さず、『話してごらん』と氷冬に手のひらを見せるように差し出すジェスチャー) 」

氷冬「…貴方に出会ってから、世界に対する眼差しが大きく変わった。何よりも、誰よりも頂点を目指していた私にとって、こんなに驚かされたことはないわ。世界は本当に広い。私の知らないものが、星の数よりもたくさんあるんだ。…だから私、『 世 界 』を見てみたいと思うようになったの。」

氷冬「もうすぐ、世界で大きな武闘会が開かれる。刀剣者たちだけの大会がね。…私、そこで『世界』がどんなものかを見てこようと思う。ううん、それだけじゃない…―――――その『世界』に挑んでくるよ。(不敵な表情を構える) 」

縊鬼「語り合っている中で『観た』君その通りだね。目の前にぶら下っている『実力』にぶつかろうという気概…………正しく戦士だね(太鼓の音色に耳を少しだけ傾け、氷冬の表情に嬉しさに近い何かを感じるとより深い笑みが溢れる) 」

氷冬「にっ(二人の友には見せなかった無邪気な笑みを見せる)……それでね、縊鬼にお願いがあるの。 」

縊鬼「何かな?(ほぼ、吐息のような声で) 」

氷冬「……その大会で優勝したら、今度は貴方との決着を付けたい。(眦を決したかのように、以前出会った時よりも凛とした瞳で向き合う。そしてゆっくりと抜刀した刀の切っ先を、好敵手に突き付ける)…私に『世界』を教えてくれた貴方も、私にとっての『世界』だから… だから、絶対に優勝する。約束だよ。(それから刀を天高く突きあげる。切っ先で輝く刃が、星のように煌めいている) 」

縊鬼「――(戦いの最中も見せる事のなかった『驚愕』を、その氷冬の決意に揺れ動かされる)……僕はいつの間にそんな名誉ある賞賛を受けるようになるなんてね(目を伏せて笑みは崩さず、ゆったりとした、普通の足取りで氷冬の手前まで歩き)ツーッ(腰に眠っている刃を見せるように抜刀すると)カチッ(氷冬が築き上げた刀の峰に、自分の刀の峰を添えるように当てる)待っているよ。君を 」

氷冬「――――――― うんっ。(交わる刃に決意を乗せ、少女は男を背に、『世界』へと歩き出す―――――) 」

縊鬼「……神様、彼女が帰ってきた時だけ、僕の贅沢を聞いてほしい。今まで、数百年何一つの贅沢をしなかった僕の、一つのお願いを――(神輿の下、胡座をかき、武士は再び『世界』を待つ) 」





~某国某所~


オリヴィエ「はぁー……むっ(三食団子を口いっぱいに頬張り和装の袖を日暮れ時の底冷えする風に靡かせ、すっかり和に染まった風の出で立ちで往来を行く)んん~~…!ほっぺたが落ちるっていうのはよく言ったものです、弛みきってこのままこぼれてしまいそ……–––– (頬を撫でながら満面の笑みを浮かべ感慨の声を漏らしそうになっているところ、ピタリと足を止め口を手で押さえ首を横に振り甘味を思考から払う)っとイカンイカン。これでは完全に物見湯山、気を引き締めねば––––(–––– っと言っても、さて出るもんは出るのでしょうか。眉唾な噂だしこれはただのパワースポットなんじゃ…) 」


チリンチリン……ドンドンドンカカカッカドドンドドンッ!ドンドンドンカカカッカッ――(付近の隔離された第二グラウンドから、お祭りを想像させる陽気な音色が聴こえてくる)


オリヴィエ「ヒタ……(耳を小突いてくる祭り拍子に足を止め、一本結びにした頭髪で曲線を描き踵を返す)……(手が実態を失ったかのように団子が自然と手元から滑り落ち、その方向へ招かれ、吸い寄せられるかのように前のめりに、駆け足気味に向かう) 」


踏み入れた先には、灯された提灯が数多にも並ぶというのに、薄暗い、何もない屋台が参列。囲われた中央に神輿があるものの、太鼓を叩くものの姿は無い。無人のお祭りの世界が広がっていた。


オリヴィエ「(瞳の中が無数の光源で水面に映る夜空のように明るくなり、髪を若干浮かせて首を左右に振り周囲を見渡す)–––––(楽しげな風景、胸躍る旋律。だが次に取った彼女の行動は場にそぐうそれとは相反する。鞘に収めた剣の塚に手を添えおき、口角がひくついた)あは…ははは…… 百鬼夜行とでもいうんでしょうか。聞いたことがあるだけなのに、それに近い何かって認識できるのは"性"故…なのでしょうか。–––––そこに、いらっしゃるのですね 」


――驚いたな、僕から声をかける必要がないだなんて――


縊鬼「どうも、西洋のお侍さん。祭り事はお初にお目にかかるだろうか?(「そこにいた」と形容すべきか、オリヴィエから十六尺離れた位置に胡座をかき、視線は勝手に響き渡る太鼓のある神輿を見上げている) 」

オリヴィエ「今晩は。真に侍に近しいお方。(スコリト慎ましく微笑み鞘にては添え置いたまま深く頭を垂らし、一呼吸を覆いて顔を上げ弾みで息を大きく吸い込み、満面の笑みと共に吐き出す)–––– っはぁ!ええ、カーニバルは私の故郷にも親しみ深いものでしたけど、『祭』は初めて!骨身を震わす太鼓の力強い音色、鼻腔を優しく撫でる綿菓子の香り!どれもこれもが新鮮で –––––けれど(嬉々として両腕を広げその場の全てを見渡すように1回転するが、ピタリと足を止め縊鬼に寂しさを含んだ瞳を向け)–––あなたしかいない。私には"コレ<剣>"しかない。今宵の祭りは、ひと味違いそうですね 」

縊鬼「僕が屋台を持つことができればそれでいいのだろうけれど、ここにある”妖(あやかし)”では君の飢えは癒せそうにないね(屈託なく笑みを浮かべるも、その刃に視線を落とし、より憂い帯びた笑みを落とす)……僕が出来ることも、結局は剣技だ……武者修行かな、嫌いじゃないよ(ゆっくりと立ち上がり、腰に据えた柄に手首を置く)……君で二人目だ。やっと、やっとだ……僕は『縊鬼』だ。君と此の夜を……『語』りあおうか(空間は無であるが、強烈な重圧をかける程の威圧を見せ、オリヴィエと対峙) 」

オリヴィエ「ッ……!(ビリビリと、空間そのものが電気を帯びたかのような、身を裂くような痛みが、悪寒が同時に彼女を包み思わず息を飲み、身じろぎする。正真正銘ただの人間、対抗できるような圧もオーラもない)クス……。ええ、『奏で』ましょう。鉄が鉄を打つ祭り拍子を!剣閃が散らす火花で夜を照らしましょう!我が名はオリヴィエ・リンドヴルムッ!!戦場において事の善なし、いざ!尋常にッ!!(西洋の両刃剣であるにもかかわらず居合の構えを取り、持ち前の人並みの空元気だけで圧に立ち向かい咆哮して対抗して見せた) 」

縊鬼「――(その勢いを、親が子を見つめるような優しい笑みを浮かべて受け取ると)チャキッ(居合の構えは取らず、抜刀すると小さく歩を進め)スタスタ……ッッッザン!(空中浮遊したのかと疑える程、地をスレスレで滞空しオリヴィエの居合の間合いに突入。同時、挨拶がわりの横一閃を彼女の腹部に『深く』繰り出す) 」

オリヴィエ「–––––!! ギャ  イ ン ッ!!(彼女の未熟さが幸いし、居合を放つ予備動作の踏み込みに至るまでに相手側の剣閃が先に放たれ咄嗟に剣を収めたままの鞘で受け止め、刃が鞘を深く抉る)っつァ……!あぁ!!(たった一振りの横薙ぎの衝撃で足が浮きそうになるがこれを凌ぎ、鞘を切らせたまま捨ておき、振り上げるようにして抜刀)ヒュオ––––––ぃやァ!!(そのまま上段から斜め左に振り下ろす袈裟斬りを両手で縊鬼の胴体へ向かい 穿った) 」

縊鬼「フォン(刀を振り抜いた体勢、袈裟斬りは体全体を横に動かしてしっかり避け、姿勢よく直立する形をとる)ヴァンッ!(流れるように、落ちるように、オリヴィエへと裏拳の要領の横斬り)フォンフォンッ!(反撃の隙を与えない小刻みな左右斬り)ヴォンヴォヴォン(固めた所に容赦のない十字斬りから斬りあげ、そして)ウ” ォ” ン” ッ !(先ほどまでの華麗さを消しとばした、力任せの豪快な縦一閃) 」

オリヴィエ「–––––!!(落ち着け……落ち着け!)ッギィンッ!!(袈裟斬りは空を切るも左手持ちにした咄嗟の薙ぎをぶつけ軌道を逸らし)ッツゥ……ックぁ…ッ!(刃を自身の胴体に水平になるように立て、刃に手を添えて盾のように構え左右切りを真っ向から受け持ちこたえるもの土を抉りながら押され始めるが)ヴォン…… ヴ ォ ン… (全てがスローモーションに見える神経が研ぎ澄まされた錯覚と現実の境の中、十字斬りの初撃を上体を右に逸らし回避、そのままスライディングの両両で二撃目の横一閃を身を伏せてやり過ごし––––––) 」

オリヴィエ「 そ こ ォ ッ ! ! (左の拳で剣を握りしめ、切っ先に右手を添え、屈んで伏せた姿勢から起き上がる力をバネにし、右手のアッパーカットで切っ先に付加を加えた切り上げで豪快な縦一閃に真っ向からぶつかり合って火花が咲き、地に着いた片膝が深くめり込む) 」

縊鬼「フッ(オリヴィエの対抗撃に、体は若干浮かび上がり、瞳も僅かだが縮む)ブワッ!!(浮かび上がった体を後方にずらし、一旦距離を取り自分の手元を確認)……(左手に流れる血を認識すると、再度オリヴィエに視線を置き剣先を向ける)……『来なよ』 」

オリヴィエ「ザリ…(渾身の迎撃だったためかまだ剣は手放していない、まだ戦意は残っているとしても呼吸は荒く肩で息をしながらも体勢を持ち直し、再び剣の柄に両手を添えて身構え、キッと威嚇するように睨みつける)ヒュー…ヒュー………(強い、この御仁。あれだけの猛攻をまるで埃を払うように容易く……ッ!)……! パンッ(足が小刻みに震えていることに気づき、慌てて剣の腹で軽く叩き、自らに喝を入れ再度構え直し)フー……   」

オリヴィエ「–––––(深く息を吐き出し、閉ざした瞼を開く。縊鬼が最初に見た彼女の面影は残しつつも、別人のように座った瞳を覗かせ)タッ ザザザザ(砂利を散らし、風を掻い潜り、縊鬼の間合いに至るまでの道を駆け抜け彼の必殺の間合いに入るい一歩手前で一歩踏み込み)–––––ハッ!!! やアアァァァァァァ––––– ッ!!!(斜め右下に剣を振り下ろしながらの踏み込みで攻撃しつつも間合いを詰める→そのまま彼がそうしたように裏拳の要領で左への小刻みな薙ぎ→更に一歩前進しながらの突き→そのまま剣を片手で切り上げながら飛翔→両手で得を握りしめ、桜色の縦一文字の軌跡を残し兜割りを繰り出す) 」

縊鬼「いいね(己を奮起させたオリヴィエを小さく賞賛する)大人気なく僕は攻めた。次は君の番だ。頭で描く事を僕にぶつけてごらん(変わらぬ優しい笑みでオリヴィエを凝視するも、柔らかさと同時、敵対している現れなのか燃え滾る精神も伝える程に情熱の篭った冷えた視線を送る)……(構えも、握りも力も変えず俟ち、オリヴィエが間合い外から剣戟を繰り出すと―― 」

縊鬼「ザッ!(初撃は半身ズラし回避、彼女と間合いがゼロになる)ギャイン!(隙を狩ろうと、片手で下段斬りを繰り出すも薙払いとかち割り仰け反る)ギチッ!(刀身の腹で器用に牙突を防ぎ切り)ギャインッ!!(再度、その猛攻。飛翔斬りで刀ごと弾かれ)――ズシャアッ!!(右肩から胸にかけて斬撃が入り、服から勢い良く鮮血が散らばり彼女の顔に返り血を咲かす)――ドッ!(致命傷に近い傷に狼狽えず、目の前で硬直する彼女の腹部に突き放すような下駄の蹴りを一つ下す)……「いいね」 」

オリヴィエ「––––––……(顔にかかる生暖かい鮮血の感覚。渾身の切り込みだったためか膝をつき、振り下ろした体勢のまま地に膝をつき侘びいるかのように伏せていた顔の中で瞳が小さく震え)バッ!(自分はただの三流剣士だ。このお方は立派な侍だ。こんなことはありえないと目で訴えるように目の前の武人に顔を向ける) 」

縊鬼「……(微々たる笑顔は崩さず、困惑気味のオリヴィエを悠々と掴み上げ、肩を軽く押す)ボーっとしちゃいけない。その『一撃』に、僕は君の”裸”を感じ取れた……(剣先が揺れ動き、先ほどまでの『静』は『動』の構えに変化していく)……さぁ、お返しだ。桜の騎士(『構えろ』と伝えるような『殺意』の篭る視線をオリヴィエにやる) 」

オリヴィエ「–––––!!(蹴りで吹っ飛び空いた間合い、必殺の外にあっても切っ先を喉元に突きつけられているかのような殺意にハッとなり、怯えと、闘志と、畏敬の混じった愛名指しを真っ直ぐに向け)ゲホッ!!っく……ハァ…あ"ぁ"……!(咳き込みながらも腰を上げ、促されるがまま、両手にしっかりと握った刃を目の前に立て身構える) 」

縊鬼「一刀流『天神』(嘗て刃交えた『氷冬』の技名を吐き捨て)チャキリッ――(隙間のような時間、帯刀すると) 」


ウ ゛ ァ゛  ン  ッ   ッ  ッ  !


縊鬼「(繰り出した居合は、十分に離れたオリヴィエへと襲い掛かり空間を裂くような轟音と共に見えない横一閃の剣戟を繰り出す)スッ……(音が鳴り止む前に、緩く刀を納め、オリヴィエに視線を残す)君は語ってくれた。今度は、僕が奏でた。おあいこだよ 」

オリヴィエ「!!? ぇ……あ……–––––––  フ ォ ッ   (一瞬、彼女の思考が追いつかなくなるほどの刹那に起こった、今まで彼女が経験したことのなかった、剣術の域を出た"現象"は思考を白紙にし、気づけば重力を失ったかのように体は浮いていた) ド ッ ––––– (地に付す直前、彼女が見聞きしたのは月下に舞う弾かれた己の剣、そして頭をなでるような、こそばゆい暖かさの籠った"彼"の声)––––(敗北はこそしたが、彼女の心は祭りから金魚を持ち帰る少女のように晴れやかで、このひと時を惜しむかのように、切なげであった–––––) 」

縊鬼「大丈夫、目を開けた時、そこには今見ている景色と同じものがある。安心して意識を閉ざすんだ(緩い足取りでオリヴィエの横に立ち尽くし、最初の屈託ない笑みを見せる)おやすみ、オリヴィエ 」


ドンドンドンカカカッカッドドンドドンッ………ドンドンドン………




AS「―――何、案ずるな・・・見ていてくれるだけでいい。(ロケットに収められた写真を見ながら、空へ語りかける)俺の生きた証を、刻んで魅せよう。(鬱蒼と茂る森林の中、誓いを果たすために、一人発つ) 」




ドンドン、ドンドン、ド ドン ドドン ドンドン、ドンドン、ド ドン ドドン(太鼓の音色は序曲を終え、盛り上がりを見せる一方)


縊鬼「――(傷口に手を添え、まだ眠る剣士の横。煌びやかな燈の世界で変わらず憂帯びた笑みを浮かべ神輿を見上げている) 」

縊鬼「こうして傷に手を添えるのは二度目か……幽霊みたいな存在なのに、こうして痛みと細胞だけは存命しているのもやはり罰なのかい、神様(腰から外し、地べたに下ろした鞘に目を落とし、柄に指を添え模様通りになぞる) 」

オリヴィエ「––––……(瞼の裏で何度も繰り返される鮮明な記憶、忘れがたき一閃が徐々に、祭り拍子でノイズが掛かり薄らいでいく)ん…––––(最後に、あの一閃が瞼の裏で一度繰り返されると、それが視界を覆う黒を裂くようにして目が覚め、横たわったまま薄ぼんやりとした意識を支えに首を捻り周囲を見渡す)……。生き…てる…… 」

縊鬼「――やぁ、起きたね(オリヴィエには視線こそ送らないが、肩を軽く揺らして存在を促す)痛かった……といっても、その様子だと一瞬のことだったかな?(鞘から手を外し、地べたに胡座をかいたまま再度神輿の中央に視線を送る) 」


オリヴィエの斬撃部位には、布による処置が施されており、ドレス衣装は処置の為に若干ズラされていた痕跡がある。


オリヴィエ「一瞬……いえ、なんというかこう……刃が触れたという実感も–––– (ぼうっと縊鬼へ虚ろな瞳を向け、斬撃が当てられたと言う実感があった部位への処置、祭り拍子の最中であることを認識すると瞬きする間もなく上体を上げ額に掌を当てがう)––––ああ、そっか。敗して尚、命を拾ったのですね 」

縊鬼「みたいだね。ただ僕は君を殺すつもりで放った。それでいて生きていた。『立派』な事なんじゃないかな(起きたばかりの彼女への配慮なのか、小さめの声量で囁くよう、オリヴィエに視線を向ける)ただ、すぐ起き上がれるぐらいには浅い打ち方だったか、ん~、少し訛ったかな(クスクスと笑いつつ、その斬撃部位を横目で流して確認) 」

オリヴィエ「(暫く伏見がちに自身の膝下に視線を落としていたが、"懸命に"口元を綻ばせ笑みを見せる)"鍛えてますから"。その言葉に虚がなければきっと、私は運気さえも気づかぬうちに磨いていたのでしょうね(クスクス) 」

縊鬼「――君の一撃は効いたよ。お陰で右腕は暫く上げられそうにない程にね(荒々しく切断された着物越しに、自らの傷に指を沿わせ、オリヴィエを遠回しに”鍛えている”事に対して賞賛)失礼な事言っちゃうと、一撃も受けるつもりはなかった。どこの流派だい? 」

オリヴィエ「戦場において恨みっこはなしですからね、侘びはしませ……~~~~!!(強がって笑みを強調するが、意識がはっきりとして響いてきたのか、斬撃を食らった部位に手を当てがい俯きつつ声にならない悲鳴をあげる)はい?りゅ、流派です? それはちょぉぉー…っと他言厳禁とされてまして、いや申し訳ない。お互い詮索はなしということでイーブンにして頂けませんか。敗者である手前勝手であることは承知ですが(じんわりと熱を放つ激痛に目尻に涙を浮かべながら情けない苦笑いを浮かべ、泣きの混じった震えた声で) 」

縊鬼「ハハハッ!いいよいいよ、そこまで耐え忍ぶ武士相手に畜生の真似なんてしないさ(表情に痛みを訴える彼女の言動に笑みをこぼし、対面するように体を向ける)……でも、何故君のような可憐な人が刀……いや、剣なんか持つんだい? 」

オリヴィエ「うぅ……お心遣い痛み入ります……。よっと(重い腰を上げて足を組み直して正座。問いかけに対し顎に手をあてがって彼女なりに難しい顔をして視線を小石に零し暫く唸る)んん~~~……。困る、日頃こういったことをお話しする機会はありませんしなんというか、話せば長いというか……。––––まぁ、端的に言えば『可憐であったからこそ』ですかね。言われて悪い気はしません、むしろ喜ばしい限りなんです。けれど……お家柄っていうあれですかね、他にそうするしかなかったんですよ。一人の人間として認められるには(淡々と悲も喜もなく普段通りの調子で言葉を紡ぐ) 」

縊鬼「だいぶ背景の掘り下げが必要そうな経緯のようだ……僕はこの世界の現状がわからないけれど、前にも語り合った人は可憐にて力強い人だった。僕がしっかりと生きていた昔とは違う思想もあるみたいだ……。あぁ、でも武道以外に着目すれば君は礼儀正しいし愛嬌もあって確かに好かれやすそうだな。そりゃ力を求めても文句は言われる筋合いはない。より強くなって家紋を背負うのも一興だろう(久々に腰を落として話せるのが余程楽しいのか、声のトーンが高くなる) 」

オリヴィエ「家紋あるなしに関わらず、成り行きはどうあれ私は今の私の有り様に満足はしていますけどね。お茶を組み、花を添える以外に言葉を飾る術がない箱入り娘という有り様もまたひとつの可能性であったのかもしれませんけど……(透き通った金の瞳を真っ直ぐ縊鬼に向け、可憐なただの少女のように笑みを見せる)こういった縁もまた、剣に生きればこそ。まだなも声も知らない"その力強い人"の様な人たちに会ってみたいんです 」

縊鬼「世界は広い、とはよく言うだろう。その荒波に呑まれれば自然と多くの出会いに巡り合う事は……すでに知っていそうだね。まぁ強い人もそれと同様だ。僕みたいなただ劔と祭りでしか成立しない男に会えたのも、確かにその剣あればこそだね……君がその”道”に歩んでくれた事を僕は感謝しているよ。君に巡り会えたのは幸福だった(狭すぎる世界でただ待つだけの人間として、本意を乗せた重みある口調でオリヴィエに視線を戻す) 」

オリヴィエ「(彼の内情を知るがゆえに、その言葉が重く背に降りかかる。その重圧に押されるがまま頭が垂れていく)–––––この出会いは私にとっては特別です。全ての縁と運命に感謝を、旅立つ前に立てた誓いでしたがそれが……喜びが確かな実感になってくるとは思いませんでした。私は未熟な剣士の端くれでしかありませんが、それでも……それでも私が"そうであれた"のなら、この上ない譽れです("ここへ訪れた本意"を告白するに等しい言葉を告げ、膝の上で非力で小さな拳を握る) 」

縊鬼「ハハハ、止してくれよ。僕は古より今にかけて特別な身分も何もない。君と同じ剣士だよ。それをそこまで光栄に形容するなんて寧ろこちらが有難い限りだよ(軽く頭を下げ、気楽に笑みを浮かべて、更に楽にと手に膝をのっけて堅苦しさが無くなる)……これから、また旅立つんだろう? 」

オリヴィエ「––––––(慌てて会釈を返し、彼の笑みに釣られ少なからずくすぶっていた疑念と緊張が解れ自然と口元がほころぶ)––––始めは、ただの旅に終わるかもしれないっていう不安もあったんです。けれど、ここに来てその甘えは斬り伏せました。私は……(膝の上で小刻みに震えていた拳が、気づけば解け平静を取り戻している。瞼を下ろし深呼吸を終えると、それが普段の彼女であるかのように弱々しくも芯のある瞳を上げ)"百刀剣武祭 "へ挑みます。元よりそのつもりではありました。でも、ここに来てそこへ行く"意味"が私のだけのものではなくなりましたから、怖くないと言えば嘘になりますけど……全部そこにぶつけてこようって 」

縊鬼「……そっか(フッと、何故か彼が安心したように呼吸)戦ではない、君の……普の『裸』を見れたよ(嬉しそうに目を伏せ、数度頷きながら柄にもなく揺れるグットサイン)頑張って猛者供をを薙ぎ倒してくれ。ここにファンが一人いるんだ。どうか精一杯精進してくれ、オリヴィエ! 」

オリヴィエ「(直接の返答はなくふらつきながらも腰を上げ)ぐっ!(異国文化なのか、ぎこちない仕草のサムズアップと、それに反して力強いめいいっぱいの笑みで返す。感謝と尊敬を込めて––––)次に剣を交えるその時には、根拠こそないけれどもっともっと永く語らえるようになっているはずです。だから–––––『いってきます!』(さよならとは言わない、"いつか帰る場所"を後にして、少女は踵を返し刃のように真っ直ぐな道へ、ただひたすらに掛けて行く) 」

縊鬼「……神様、二度目はないとは思わないで欲しい。たまにはいいだろう、こういう贅沢も――あぁ、前のお願いの上乗せを――(勇姿なる背中が消えるまで、その場で見つめ送り、神輿に声だけ傾けながら己の世界を再認識する) 」



――― "ここ"ではない、どこかの世界 ―――


××××「――――――― …"また"か。 (だらしなく椅子に腰かけたまま、口に銜えた煙草に火を付ける) 」

黒制服の青年「ええ、そうのようです。(薄明るい黒い部屋の壁に添って立ち、自分より年上のその人物に応える) 」

××××「困ったものだねえ…『彼』には。試作機のテスト運用だがなんだが知らないが、“断境”を勝手に使われちゃあ任務に支障をきたすじゃないか。可愛い我が弟子たちが近頃精を出して任務に全うしているという中でなあ。 」

黒制服の青年「…それと、その内の一体がある世界に到達した模様ですが…忽然とレーダーから姿を消したそうです。普通は異世界干渉にも耐えうると言われていますが、何故かその『一機』だけが我々の監視下から外れた様です。 」

××××→イージス「……(顎元を摩りながら天井の一角をむむむっと睨みつける)ただでさえ不気味な獣で、その上檻から出ていったというのに尻尾を取り逃がしてしまうなんてねぇ…とりあえず、この件は俺が預かろう。くれぐれもユータンにだけは報告するんじゃないぞ?何しでかすか分かったもんじゃないからな~彼女。(はははと苦笑しながら) 」

黒制服の青年→ゼグエット「はっ… 」

イージス「…フゥー…(煙を吐く)……さて、どうしたもんかねえ… 」


Elchidrah』―――― あれは後々面倒事になるぞ、『ヴァラフ』…――――




――― ケイオス・某所 ―――


×××××「――――― ザ グ ン ッ (鋭い脚部を地面に突き刺し、高台から景色を一望する)……クカカ… ここは、"暁"が、よく見えそうダ…(三日月の様なものを背負った、全身黒尽くめの謎の影。顔面と思われる部位から、赤い光が不気味に光り出す) 」


――― さァ、『擬時録』(ヴァンデルング)の回収ダ ―――



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最終更新:2019年05月12日 23:41