閃劇のリベリオン過去ログ Ⅲ

モララー「くぁ~…どの試合も白熱すんなぁ…オラ土器土器すっぞ!(客席でポップコーン(マヨネーズ風味)を豪快に貪っている) 」

ソードプリム「気がつけば試合はあっという間に進んで…ほぼほぼ強い剣士たちしか残っていないね…(試合に敗れ、控室で治療を行っている) 」


世界より集いし刀剣者たちの激闘は続いた。そして、剣戟はやがて佳境を迎える――――――


ロックマンゼロ「次の試合が始まるな。そろそろ戻るか… 」

キリギリス「今回の百刀剣武祭はかつてない激闘が繰り広げられ、会場一帯もこの大盛況だ!!!さあさあさあァッ!!!!次は一体どんな戦いが見られるのだろうかァ!!?第十七試合!!次の試合は、ここまで類稀なる剣術で快進撃を見せる「氷冬」とッ!!!前・十刀剣武祭序列二位を誇る強豪―――「雛菊」の激突だァッ!!!!これは目が離せないぞおおおおぉぉぉおおおおッ!!!!!」


うおわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああーーーーーーーー!!!!!!!!(会場のボルテージは最高潮に上がっている)


フーナ「すごいね氷冬…ついにここまで来たんだね。見てるこっちまで緊張してくるよ。(高鳴る興奮が笑顔に表れている)」

スカーフィ「かぅ、かぅっ♪♪このちょーしなら、氷冬優勝しちゃうね!がんばれぇー!氷冬ー!!えいえいおーっ♪」

氷冬「すぅ…はぁ……(数多の激戦を繰り広げた雪の剣士。いつもの調子を取り戻すように深呼吸し、眦を決してステージへとゆっくり駆け上がる)」

××→雛菊「 フ ワ ―――――(麗しい碧の長髪を靡かせると、蝶模様の淡い光が零れる。威風堂々たる足取りでステージへと駆け上がる)」

剣士「…………ん?なあ…今、『序列二位』って言葉が聞こえた気がするんだが、俺の聞き間違えか?」

騎兵「…俺もそうだ。おそらく聞き間違えか、或いは司会者の言い間違えじゃないのか?あんなか弱い娘が、序列二位っておま…!(苦笑しながら)」

大剣使いの男「―――いや、奴は紛れもなく本物の『剣聖』だ。(剣士たちの間に割って入るように、低い声で呟く)」

剣士「うおっ!?…あ、あんたさっきの試合で惜敗した奴じゃねえか…(大剣使いに)」

大剣使いの男「…俺は去年の百刀剣武祭で奴と刃を交えたことがある… 奴の「刀」は強かで、時に柔らかく、俺を含めたあらゆる強豪の刃を退かせてきた。奴の名は"華蝶風月"の雛菊。一刀で三本分の刀を操る…『参刀流』の剣豪だ。」

ぼうれい剣士「…俺も彼女を知っている。…前・十刀剣武祭での、序列一位の『柊木雪』との接戦…驚天動地の剣戟だった。奴は間違いなく、本物の"華蝶風月"だ。」

騎兵「うそ…だろ…ッ…!?な、な…っ…そんなにやべえ奴なのか…あの娘…!(わなわなと身を震わせながら、雛菊の背を見つめる)」

大剣使いの男「四刀流の氷冬、といったか…?あの娘もかなりの手練だ。この戦い、刮目しない他には無いだろう。(厳めしい表情に腕を束ね、二人の行く末を静かに見つめる)」

氷冬「―――――!(雛菊を前にした時、何かを感じ取ったかのように表情が一変する。…否、"何も感じられない"ことに驚愕を覚えたのだ。未知の器を秘めた碧髪の剣士を前に、かつてない動揺が浮き彫りになる)…っ…!……すぅ…はぁ……(首を左右に振り、再び深く深呼吸する)……(覇気すら感じられない… あるいは…それが強すぎるために何も感じられないのか…… …っ…間違いなくいえることは、この人…『縊鬼』のとは似て非なる何かを持っている…!)(雛菊を前に、全身が若干硬直する)」

雛菊「……?あの…よろしくお願いしますね。(表情が強張る氷冬を不思議そうに見つめた後、優しく微笑みかける)」

氷冬「…ぁ… えぇ……こちらこそ、よろしく。(きょとんとした表情で会釈する)スゥ…ハァ… ……スチャ…(深く息を吸って落ち着きを取り戻し、いつでも抜刀できる態勢に入る)」

キリギリス「それではぁ~ッ!第十七試合―――――――開始ィィイイッ!!!!」


BGM♪



スカーフィ「かぅ、はじまった…! 」

氷冬「―――!(まずは先手を取る―――) シ ュ バ ァ ッ ! (瞬く間に四刀一気に抜刀し、地面を一気に蹴り上げて雛菊のとの距離を詰め、斬りつける) 」

雛菊「……!(突発的に詰められる最中、身体を仰向けに沿って刃を受け流す)タン タン (そのまま背後へ後退し、納刀したままの刀を身構える)」

氷冬「(刀を抜かないなら―――抜かせないまでッ!!)ダンッ ! ! (追撃を仕掛けるように再び斬りかかる)」

雛菊「ヒ ュ ン ――――― ガ キ ィ ィ イ イ ン … ッ … ! ! (瞬間的に抜刀した短刀で受け止める)」

氷冬「(間に合わなかった…でも次は――――)――――――!?(受け止められた…この距離で…!?)はあっ!!(鍔迫り合いの最中で一文字に薙ぎ払う)」

貴族の青年「……(厳かな表情で腕を束ね、控室で観戦している) 」

雛菊「スワンッ… ! (薙ぎ払われる直前に跳躍後退する)ススス…スチャン… ! (再び刀を納刀して身構える) 」

氷冬「……(どうして刀を…まさか居合を…)(鞘の中へ消えていく雛菊の刃を静かに見送り、目を細める)それなら―――――“啾愁禾”( ド ヒ ュ ァ ン ッ ! ! )(爆発的な脚力をもって直角移動を繰り返し、その高速移動で翻弄する) 」

雛菊「……!(先よりも早い…!)(柄にゆっくりと手を添え、残像と共に迫る氷冬をしっかりと目で捉えている)」

モララー「早ぇな…アイツにあんなスピードがあったなんて驚いたぜ。 」

氷冬「――――――( こ こ だ ! )(雛菊の視界内で移動していた中で、その不意を突くかのように瞬く間に彼女の頭上に現れ、構えた四刀を振って上空より斬りかかる) 」

雛菊「……! ガ キ ャ ア ァ ン ッ ! ! (上空より迫る四閃を、即座に抜刀した長刃でいなす) 」

氷冬「……!?(読まれている…!?)っ…!(斬撃をいなされた直後に着地し、緊急後退する)……(いえ、それだけじゃない…彼女の短刀と私の四刀のリーチを考えれば、今の急襲は確実に私が取れていたはず…なのに何故――――)……?…… ……!(ふとその時、雛菊が手にしている刀に違和感を感じ、そしてあることに気づく)…試してみる価値はありそうね。 … タ ン ッ !(四刀から二刀へ切り替え、軽い跳躍から身体を捻って斬りかかる) 」

雛菊「(刀を二本に変えた…) カ ギ ャ ァ ン ッ ! ! ブ ン ッ ! (平衡に構えた刀で二閃を受け止め、反撃斬りを行う) 」

氷冬「っ…!(その反撃を回避しようと身体を仰向けに反るが切っ先が胸元を掠り、着物の胸部の一部が僅かに切り裂かれる)はああぁっ!(二刀による鋭い連続突きを繰り出す) 」

雛菊「 フォン ヒュン スァ…ッ… ! (真横から降りしきる雨の様な刺突を、その刃が肌身を触れる寸前で全ての攻撃をぎりぎりで回避する) 」

剣士「すげえ…格が違いすぎる…ッ…(二人の接戦に身震いする) 」

氷冬「――――!!(桁外れの動体視力…明らかに今まで戦ってきた相手とは違う…!それに……――――) “鶯”!!(片方の刀を逆さ持ちにした状態で回転斬りを炸裂させる)」

雛菊「クルンクルン…ザギャァンッ ! ! (刀を片手で鮮やかに振り回し、地面に突き刺すことで更なる追撃をしっかりと防ぐ)……!(刀を地面から抜きだすと同時に回転後退し、再び納刀する)スン―――― はぁ!(真正面から居合抜きを繰り出そうとする。鞘から抜かれた刃は、従来のものとほぼ同じ長さだった)」

氷冬「ッ…!(二刀を重ねて居合抜きを受け止めるが、その反動で僅かに押される)……(……やはりそういうことね… この人の刀…"変幻"してる…!)(雛菊の刀、特にその刃を凝視する) 」

卓馬「………くっ……!(二人の戦いを見ている)…これが、本物の戦いか…! 」

雛菊「…気付かれてしまいましたね。(氷冬の視線の先を察知したように呟く)私の愛刀、名は『蕨』(わらび)です。抜刀と共に、刃の長さが変化する刀…この刀が持つ本来の力です。ススス…スチャン… ! (静かに納刀する) 」

氷冬「なるほどね…刀身の長さを変えて、あらゆる事態にも臨機応変に対応できる刀…(ただの刀じゃないというのは、さっきの斬撃の応酬で察せた…でも、一番の驚異は紛れもなく、そんな刀を自在に操る剣士本人。瞬時に状況を把握して、適当に刀身の長さを変えて攻防を繰り出す…弱点も隙もあったものじゃない。)(かつてない強敵を前に苦戦を強いられ、徐々に呼吸に乱れが生じる)」

謎の一頭身「……(客席から氷冬の様子を静かに俯瞰している) 」

雛菊「…貴女の"剛"の剣技、お見事です。あまりにも鋭すぎるその「刀」をまともに受けてしまえば、ただでは済みそうにありません。ですので…なんとしても見切らせていただきます…お覚悟を。(納刀したままの刀を構えることで眼が更に鋭くなる) 」

氷冬「そう…それじゃ、たっぷり味わっていくといいわ。………(相手の刀は解った。変幻自在の刀…だけどそれは一度刀を納める必要があるみたいね。それなら一瞬の隙も与えず…瞬時に方を付けるしかない!)(チャキ… !)(二刀の柄を強く握りしめる) 」


ヒ ュ ォ ォ ォ ォ ォ … (ステージに冷たい風が走る―――)


氷冬「……!(目にも止まらぬ速さで瞬く間に距離を詰める)―――“隼”ッ!!(その速さから繰り出される高速一閃を炸裂させる)」

雛菊「フ ワ … (微風に吹かれる草葉の様な掴み処の無い動きで氷冬のその強烈な斬撃を華麗に受け流す) 」

氷冬「(動揺するな…)――――“時鳥”ッ!!(刀を振う速度を一切落とさず、そのまま滅多斬りを繰り出す) 」

雛菊「フォン フン スァン ―――― ガ キ ャ ァ ン ッ ! ! (幾重に降りかかる斬撃の軌道を読み取るかのような動きで潜り抜け、瞬く間に抜刀した短刀で氷冬の刀を弾き返す) 」

氷冬「―――ッ!?(狼狽するな…)“雀”ッ!!(シュダダダダダッ―――― ズ ァ ッ ! )(一刀のみで連続突きをした後にもう一刀で死角から斬り薙ぐ) 」

雛菊「スンスンスン…――― “弓”(くう)。( ゴ ッ ! ! ! ) (先程同様にすべての突きを完璧に見切った後、素早く納刀した刀の柄で氷冬の腹部に強烈な一撃を叩き込む) 」

氷冬「か――――はぁ…っ…!(くぁ…ッ…!)(攻撃を全て見切られた揚句反撃を許し、その一撃に転げ倒れる)く…っ…!(無様な姿は見せまいとすぐに立ち上がり、二刀を鞘に納めて居合の態勢に入る)」

フーナ「氷冬…っ!(かつて目にしたことの無かった友の苦悶の表情に驚愕する)」

スカーフィ「氷冬…なんだかやばそうだよ…っ…?(慌てふためきながら)」

氷冬「二刀居合―――――」

雛菊「一刀居合―――――」

氷冬/雛菊『―――――― “燕”/“三千世界” ――――――』


ザ キ ィ ィ イ ―――――――――― ン … … ッ …  !  ! (二つの閃撃が瞬く間に交わり、残響が空間を貫いた)


氷冬「はぁ…はぁ……――――――(―――― 吹き抜けた……!?)(二刀の柄を握ったまま硬直する) 」

大剣使いの男「居合抜きの衝突か…滅多に見られるものではないな… 」

雛菊「―――――――( ク ル ン )(残響が消え、沈黙と化した空間の中で踵を返す)…本当に鋭い「刀」です。ですが、強すぎるあまり…刀を振った際に生じる風も強いですよ。 」

氷冬「…どういうこと。(振り返り彼女を睥睨する) 」

雛菊「私の足運び“佩”(はく)は、風に吹かれる草の様に、風に身を委ねて回避する技です。相手の攻撃が強ければ強いほど、生じる風も強く…故に、はっきりと申し上げますが、貴女の「刀」が私に届くことはありません。 」

氷冬「――――ッ!?(雛菊の断言に戦慄が身体中を駆け巡る)…言うわね。そういうことなら、嵐を巻き起こすほどの強い風を起こせばどうなるのかしらね。(四刀を振り抜く)…出し惜しみは無しよ。全力で決める。 」

雛菊「……私もそうします。(眦を決した氷冬に応えるようにぬるりと抜刀する) 」


BGM♪



氷冬「―――“除琉々参千”ッ!!!(極端な前傾姿勢で重心を前に置き、嵐の如く回転しながら斬り刻む)」

雛菊「 タ ン ッ ――――― ド ッ キ ン ッ ! (跳躍回避した後、空中で鞘にアンビションを纏わせる。そして―――)―――― ゴ ォ ア ッ ! ! ! (回転斬りの弱点ともいえるがら空きの軸、即ち氷冬の頭上に硬化した鞘による強烈な一撃を炸裂させる)」

氷冬「……!(避けられた―――)あぐ…あぁ…ッ…!!(幸いにも脳天には当たらず致命傷には至らなかったが、その代わり右肩に凄まじい打撃を受け、骨が折れたかのような激痛が走る)く… まだ…よ…ッ…!(背後の雛菊の方へ振り返り、反撃に回ろうとするが…)」

スカーフィ「氷冬ッ…!!(痛みに顔を歪めた彼女に狼狽する) 」

雛菊「――――“ 風 恋 ”――――(一刀を軽く振う。それだけで地面を穿つほどの強烈な竜巻が生じ、それは徐々に氷冬へと襲っていく) 」

モララー「あの技は…おいおいマジか…(雛菊が巻き起こした竜巻に驚嘆する) 」

氷冬「―――――!!!(見覚えのあるその技に大きく目を見開く。それは紛れもなく自分の剣技の一つであり、それだけではなく、明らかに自分が繰り出すそれよりも大きな竜巻に酷く仰天する) 」

雛菊「あの試合(ミレアドネ戦)を観て…貴女の剣技も、相手の弱点を見極めるその鋭い洞察力も、同時に観察させていただきました。 」

氷冬「くぅ…ッ…!(驚くあまりに成す術もなく竜巻に囚われる)―――“阿武神武”ッ!!!( ド ヒ ュ ア ア ァ ッ ! ! ! )(四刀を激しく振って回転斬りを行い、竜巻を相殺する) 」

雛菊「ス…(刺突の態勢に入り、氷冬に接近する) 」

大剣使いの男「来るぞ…華蝶風月の『参刀流』が…!(雛菊の突きの態勢を見て) 」

雛菊「“三蜂”(みつばち)。(氷冬に一刀による刺突を繰り出す) 」

氷冬「……!( カ キ ャ ァ ン ッ ! ! )(片方の二刀を振り上げてその突きをいなすが…) 」


―――― シ ュ ド ド ド ッ ! ! ! (氷冬の全身に、無数の小さな風穴が開く)


氷冬「ッ―――――!!?かは…ぁッ…!!(何が起こったのかも理解する間もなく吐血する)」

剣士「や、やべえ…あれが、元序列二位の実力かよ……!太刀筋が全く見えねえ…!(戦慄するあまり表情が強張っている)」

雛菊「“一重三砕”(いちじゅうさんさい)。(一太刀に力を込め、大地を砕き割る程の強撃を炸裂させる)」

氷冬「(不味い―――!!)“暗凍”ッ!!(凍滝より瞬間的に展開した氷壁を三刀で支える最大防御でその一撃を防ごうと試みるが…)はぐぅ…ッ…!!(そんな…今の今まで崩されなかった鉄壁が…っ…)(防御を崩されて吹き飛ぶ最中、砕け散る氷の破片の中から雛菊の姿を虚ろ目に捉える) 」

キリギリス「今度は雛菊は一方的に攻めに入るぅぅぅううううーーーーッ!!!!! 」

雛菊「チャキッ… ! “叉咲波”(さざなみ)。( ド ォ ゥ ッ ! ! ! )(回転斬りと共に輪状斬撃波を放つ。水面に映る波紋の様に、その斬撃波は三重に放たれた) 」

氷冬「ザグンッ――――ズザザザザァァア…ッ… ! ! ! (吹き飛ぶ最中に二刀を地面に突き刺して反動を緩和する)ッ…ああああぁぁぁッ!!!(交差した四刀で斬撃波を抑え込むが…)きゃああぁ…ッ!!(第二波、そして第三波によって圧倒され、更に吹き飛ばされ地面に横たわる) 」


ザ ザ ザ ン ッ … ! ! ! (倒れた氷冬の傍に、彼女の刀三本が突き刺さる)


フーナ「っ… 氷冬…ッ…!(圧倒されゆく彼女に表情が強張る) 」

大剣使いの男「……「あれ」はもう駄目だ。実力の差が目に見えている… よく奮闘したものだがな…(腕を束ねて、苦い表情で氷冬を見ている) 」

氷冬「…ググッ…(残された一刀を片手に、必死に立ち上がろうとする)ハァ…ハァ…ッ……!私は…こんなところで、倒れるわけにはいかないのよ…っ……!(意識朦朧疲労困憊の状態で一刀を構え、その切っ先を雛菊に向ける) 」

卓馬「………これが……強者……!(雛菊を見て) 」

雛菊「…いい眼です。諦めを知らないその眼が…(彼女の覚悟に応え、納刀して居合の態勢に入る) 」

氷冬「…はぁ…はぁ……!(恐らく次が…最後になるかもしれない…なら、全力の…一撃を決める……!全身全霊を込めた、最後の「刀」を…)(残された一刀、刹春を構える)―――― ダ ン ッ ! ! ! (何の迷いも躊躇いもなく、真っ直ぐに駆け出した)一刀居合――――――」

雛菊「一刀居合―――――(こちらへ接近する氷冬を静かに捉えた後、ゆっくりと身構え瞳を閉じる)」

氷冬「――――― “天神『巡合』(あまがみ『めぐりあわせ』)” ――――――(非常に強力な一閃を雛菊に炸裂させる)」

雛菊「 ス タ ン ッ ――――(氷冬の刃が届く寸前、蝶のように華麗に跳び上がる)―――――“華蝶風月”(かちょうふうげつ)―――――」


――――――  ズ  バ  ア  ァ  ァ  ン  ッ  !  !  !  ―――――


―――――― "それでね、縊鬼にお願いがあるの" ――――――


氷冬「――――――(静止した時の中で、烏色の長い髪が舞い上がる)」


―――――― "…その大会で優勝したら、今度は貴方との決着を付けたいの" ――――――


カラン…カララン…ッ… ! (氷冬の刹春が地面に落ち、静止した時の中で残響を奏でる)


―――――― "私に『世界』を教えてくれた貴方も、私にとっての『世界』だから…" ――――――


氷冬「――――――― ト サ ァ … ! (儚く落ちて溶け逝く雪の様に、その身が崩れ倒れる)」


―――――― "だから、絶対に優勝する 約束だよ" ――――――


氷冬「―――――――――――――――――――――」

キリギリス「…… …… ……はっ!(突然の展開にしばらく呆然としていたが、氷冬が戦闘不能に陥ったことを認識し、我に返る)し、勝者はぁ…!激戦の末に勝利を勝ち取った勝者はぁ…雛菊だああああああああァァァァァァーーーーーッ!!!!!前・十刀剣武祭序列二位の剣技は全く衰えてなどいなかった!!凄まじい剣戟だったァーーーッ!!!! 」


うおああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああーーーーーーーッッッ!!!!!!!!


フーナ「…うそ…でしょ……っ…?(予想だにしなかった現実を目に絶句し、口元を両手で覆う)」

スカーフィ「……そんな…つら、氷冬が…(常に笑顔を絶やさなかった少女の表情に、一切の輝きが消える)」

氷冬「…………(もはや呼吸さえままならず、視界が霞んでゆこうとしていく) 」


――― … 敗 け た … ―――


氷冬「……(……私よりも強い人はたくさんいる…いつかは限界にぶつかるってことくらい分かってた… ……分かっていたはずなのに…それでも、心の中では、自分が負けるなんて思ってもいなかったのかもしれない……そうか…これが、『 世 界 』…―――――――) 」

雛菊「……あのっ…!だ、大丈夫…ですか?(試合を終えた直後、氷冬のもとに駆け寄り心配そうに声をかける) 」

氷冬「――――!(雛菊の声に目の焦点が合い、元の景色が戻っていく)――――ッは…!………はぁ…はぁ……はぁ… …私、は……(ゆっくりと上半身のみを起こし、自分の両手を虚ろ気に見つめる)」

フーナ「……!よかった…無事だったみたい…(友の敗北よりも身の安否を確認できたことにひとまず安堵を覚える)」

スカーフィ「わ、わ…っ…し、しんでないんだよね…?よ、よかったあああぁぁぁ~~~~~(身を起こした氷冬にぶわっと号泣する)」

氷冬「………(ああ…そうか…負けたんだわ………それも、一矢報いることなく、完敗を喫した……)(初めて味わった完全な敗北感に、脱力にも似た感覚が渦巻く)…………(それから、ゆっくりと雛菊の姿を見上げる)」

雛菊「…よかった…私は殺生なことはいたしませんが、もしものことがあったらと心配しました…(ほっと胸を撫で下ろす)」

ルドゥラ「…… ……。(その試合の行く末をしっかりとこの目に焼き付ける。 大会という大舞台のレベルの大きさを目の当たりにしても尚、表情は崩さない) 」

氷冬「…負けたわ。(ふぅとため息を吐く)凄い刀と剣術だったわ。一刀流なのに、三本の刀を操るかのようなすごい剣術だった…あんなものは今まで見たことがなかった。…私は『世界』を知る為にこの大会に出場した…でも、まだまだね…私も…(はははと弱弱しく苦笑しながら) 」

雛菊「――――『"柔"なき剣に強さなどない』。(自らを卑下する氷冬に呟くように) 」

氷冬「……!(雛菊の言葉に硬直する) 」

雛菊「昔、刃を交わした大剣豪の言葉です。先の試合の剣戟で…筋肉の使い方、刀捌き、動体視力、足運び…貴女のすべての能力を見切りました。それらさえ分かればかわすことも、攻撃をいなすことも、そして攻撃に合わせて反撃することもできる…それこそが"柔"の力。柔と剛、二つの力を合わせることで、どんな壁も斬り伏せられる。…貴女の「刀」には"剛"の力が有り余っていますが…あっ、すみません…なんだか偉そうなことを言って…(申し訳なさそうに頭を下げて)」

氷冬「……柔能く剛を制す、か…私には持ち得なかった考えだわ…(納得したように静かに地面を見下ろし、傍らに転がった刹春を見つめる)…いいえ、貴女の言う通りかもしれない。私にはまだ、何もかもが足りなさすぎた…今は、自分に何が足りないのかすらもおぼろげなまま…貴女との試合を通じて、何かを掴めそうな気がしたわ… あとは、それが何であるのか自分で見つけるだけ……礼を言うわ。えっと… 」

雛菊「雛菊です。私も、貴女と刃を交えることができて良かったです。この一期一会を大事にし、更に精進しますね…!(元気いっぱいの笑みを浮かべる) 」

氷冬「……!(雛菊のその微笑みに何かが重なる)……(この人…『昔の私』だ… ただひた向きに前を見続けていたあの頃の私に似ている…純粋に強さを求めた、あの頃に…――――――) 」

雛菊「……?(氷冬に小首を傾げる) 」

氷冬「…… ……いえ、なんでもないわ。(目を反らすように) 」

雛菊「試合、ありがとうございました。またいつかお会いしましょう、氷冬さん。(にこっと微笑み、その場を後にする) 」

氷冬「ええ… ………(去りゆく雛菊の背を呆然と見送った後、ステージ上に突き刺さった三本の刀、そして傍らの刹春を見つめる) 」


―――― "…私はまだ弱い…" ――――






氷冬「……(会場を後にし、踵を返してその闘技場を見上げる) 」

フーナ「――――氷冬~!(同じくして会場から出てきて彼女のもとへと向かう)はぁ…はぁ…!大丈夫…?怪我の方は… 」

スカーフィ「わああぁぁぁん!ちゅららぁ~~!!(ぶわっと号泣しながら氷冬に抱きつく)し、心配したんだからぁぁ~~!えっぐ…っ…! 」

氷冬「…!フーナ、スカーフィ―――ひゃっ!?(抱きつかれた衝撃で倒れ込む)え、えぇ…応急処置してもらったから、今は平気よ。…心配かけたわね…(ふぅと弱弱しい笑みを浮かべて、スカーフィの頭を撫でる) 」

フーナ「こ、こらっ、スカーフィったら…!氷冬怪我しているのに…(汗)そう… …でも、一番傷ついてるのは、氷冬かなと思ったから…さ…(本大会に向けて張り切っていた氷冬を思い出し、今の彼女の表情と比べて居たたまれない気持ちを抱く) 」

スカーフィ「かぅぅ…(デフォ目で泣きじゃくってる) 」

氷冬「(スカーフィと共に起き上がる)…平気よ。…それに、自分の実力が『世界』に通じるなんて、現実はそんなに甘くないってこと、分かってたから…(それでも、心の中では頂点に立つことへの自信と勝機に満ち溢れていた自分がいたことに気づいてから、悔しさや無念といった複雑な感情が入り混じっている。いつもの凛とした表情が陰っているのは、そのためかもしれない) 」

フーナ「……っ…(彼女の表情に、どういう言葉をかけたらいいのかと考えあぐねる)…っ、氷冬は本当に強いんだね。自分自身のことを知っているから、たとえ結果が上手くいかなかったとしても…次に活かすために前を向いていけるんだもの。…そ、それに!百刀剣武祭は年に三回行われるから、たとえ今回上手くいかなくても、まだチャンスがあるよ…! 」

氷冬「ううん…寧ろ逆だよ、フーナ。(空を仰ぐ)…私は『世界』を知る為にこの大会に挑んだ。『世界』を知れば知る程、自分の実力がどんなものなのかというのも分かってきた。だけど気付いたことがある…私は…――――― 」


―――― "柔なき剣に強さなどない" ――――(試合後に雛菊から告げられた言葉が、氷冬の中で反響する)


氷冬「…『世界』を知ろうとするあまり、『自分』のことなんか知ろうとしなかった。自分のことも分からないで、相手のことなんか分かるはずがない。分かり切っていたはずなのに、頂点を目指す最中で、私はそのことを忘れていた…(その時、試合が終わった後に微笑みかけてきた雛菊のあの表情を思い出す)…ようやくわかったわ…自分に何が足りないのか、これから何をすべきなのか、どうやって伸ばしていくのかを。今の私じゃ、きっと何もできない。次の大会でも同じ結果になる。 」

フーナ「氷冬……(しゅんとした表情で)」

氷冬「だから私、次の大会は棄権するわ。(二人の方へ振り返る)」

スカーフィ「かぅ!?で、でも…それじゃあ氷冬が出たがってた、あの大きな大会(十刀剣武祭)に出られなくなるんじゃ…」

フーナ「いや…すべての百刀剣武祭に参加しなくても、実力次第では逆転勝利を得られて、序列入りを狙える可能性はあるよ。…本当にギリギリのラインだけどね… …氷冬、それでも…」

氷冬「ええ。百刀剣武祭は四カ月ごとに開催される。つまり今から最後の第三百刀剣武祭まで八ヶ月間の余裕がある…その間、私は修行に励むわ。今の私に足りないものは、自分自身にしか補えないからね。」

フーナ「……わかった。氷冬がそう言うなら、私たちも全力で応援するから…!(氷冬はやっぱり、前を向き続けている…私たちが背中を押さなきゃ… 言葉でじゃなく、行動で…)(氷冬が決心を抱いたように、自らも心の中で小さな決意を抱く)」

スカーフィ「かぅ…!ボクも一緒に応援するからね!氷冬が強いことを一番知ってるのは、ボクたちだけなんだから!(ぱあっと明るい笑顔を浮かべて励まそうとする)」

氷冬「二人とも…(二人の表情に心を討たれ、ふいにまなかぶらから込み上げてくる感情を抑えようと目元に指を添える)……私には、私を支えてくれる人がいる。こんな素敵なことはないわ。…ありがとう、フーナ、スカーフィ。」

スカーフィ「かぅ~、なんだか照れちゃうな~(えへえへ) 」

フーナ「友達だもん、当然だよ。(ウインクして) 」

氷冬「ははは… …… ……―――――――――――― 」


――――― "…それでも…本当は…" ―――――




BGM♪


氷冬「(会場を後にして数時間後、黄昏が広がる某所の川のほとりで一人座り込んでいる)…… …… ……。(二人の前であんなことを言ったものの、本当は…正直な気持ち、自信が湧かない。あれだけの実力の差を見せつけられた試合の後で、果たして修行をしたからといって逆転勝利が狙えるのかなんて……)(友の前では見せなかった、全く覇気の無い顔が川の水面に映し出される)」

氷冬「……(こんなことじゃ…縊鬼との約束も果たせそうにない…あんなでかいことを言った手前、引けないことは分かっている。…それでも…)……!(自分の手が震えている事に気づく。今まで寒さで震えたことの無い身体に違和感を感じるが、やがてその震えが、寒さではなく"恐怖"から来たものであると気付き、一瞬だが、自分の目の前が真っ暗になりかける)」

氷冬「ッ…!やめろ…ッ…!やめろやめろ…!考えるな…こんな事…ッ…こんな……こんな………(何度も何度も自分の頭を拳で討ちつけ邪念を無理矢理振り払おうとする。やがて身を丸くし、両肘に顔を埋めた)」

氷冬「……(自分、こんなに弱かったのかしら…こんなに脆かったのかしら… 縊鬼の前ではこんな気持ち、全く感じなかったのに…自分よりもずっと強い縊鬼と戦っていたときでさえ、劣等感なんか感じなかったのに…どうして…っ……)…… …… ……(顔を少し上げて、傍らに置いた四刀を見つめる。夕日に照れされ赤く染まる愛刀たちを呆然と眺めていた)」

氷冬「……強くなりたいから、剣士になった…強くなるために、自分よりも強い人と刃を交えてきた…(至極単純な事を、そうしてずっと続けてきた……)」


―――――― "でも、本当にそうなのかしら…?" ――――――


氷冬「(そもそも…何のために強くなろうとして、刃を振い続けてきたのかしら…私が刀を握った理由は…今日まで生きてきた理由は……―――――――)」


ビ ュ ォ ァ … ッ … ! (一陣の夕風が吹きつける)


氷冬「…っ…(夕風に長い髪とマフラーが靡く)…… ……(その時、首元に巻いた藍色のマフラーに手を添える。大切な人物から貰ったお気に入りのマフラーを、ぎゅうと握りしめる)」


―――――― "今はまだ、自分が何者なのかわからないだろう。たとえわかったとしても、ふとした時に自分が何者なのか忘れてしまうこともある。" ――――――


氷冬「…… …… …… ……」


―――――― "でも大丈夫だ。キミはこれから、たくさんの人と出会い、たくさんのことを知るだろう。そうして、自分が何者なのか気付く日が必ずやってくる。忘れたのなら、それを思い出せる日もやってくる。" ――――――


氷冬「……『    』…っ…(ぽつりと、ある人物の名を呟くと、ずっと堪えていた感情が瞳よりぼろぼろと溢れ出す)…っ…私、は……―――――――」

××××「―――いいじゃないか。キミは「忘れていたキミ」を思い出せた。キミには大切な友達が、戦友が、そして夢があるだろう。やりたいこととやるべきことが一致した時、そこから何度でも立ち上がれる。―――」

氷冬「……!!(その言葉に、自らの脳裏にあらゆる人物の像が流れ出す。フーナ、スカーフィといった友を…縊鬼、AS、銀閣といった戦友を…そして、自らに「夢」をくれた人物を…)」


荒れ狂う様な猛吹雪が吹き付ける何処かの氷山――――白銀の大地の中心部で、やせ細った少女が蹲っている。覇気も希望もない真っ暗な瞳に映るのは数多の雪。そして、際限なく続く闇夜の空から降り注ぐその雪を見上げていた孤独な少女の前に、ひとつの人影が現れる――――――― 少女の目に、輝きが灯った。


氷冬「…やりたいこと…やるべきこと…それは…(ゆっくりと腰を上げる)――――――― 「弱かった自分」が強くなること。その為に誓った夢が、世界一強い剣豪になることだった。」

氷冬「戦えば戦うほど強くなる…そして生きている実感を強く感じられる…(ASや銀閣、そして縊鬼との戦いを思い出す中で、そこに戦いを愉しんでいた自分がいた事を知る)…でも、高みを目指せば目指すほど、生き急いで苦しさを感じる…(それに対し、先の試合で愉しむ余裕もないほどに切羽詰まった自分を思い出す)私の夢は世界の頂に立つことだった…でもそれは、"自分がしっかりと生きていることを実感したかった"だけだったんだ。死ぬことを望んでいた『あの頃』から抜け出す為に掲げた「夢」…その意味を、忘れていた。(胸元に手を添える)」

氷冬「…………ありがとう。やっと、"取り戻せた"。」




――― 新世界・恐寒山 ―――


氷冬「(荒れる吹雪の中を、悠然とした足取りで歩き進める)……旅立って以来の帰郷…ね。(山頂を仰いで、懐かしさの余りふふっと微笑んだ)」

氷冬「思えばここからすべてが始まったのよね。刀と出会い、夢を拾い、生きることを誓った、あの時から――――――」


――― "振り返らず、前だけを見つめるのはいいことだ。" ―――


氷冬「スゥ…ハァ……(深く冷たい空気を吸い上げ、白い息を吐く)」


――― "だけど高みを目指せば、いつかは困難にぶつかる時が来る。その時は、振り返ってもいいんだ。" ―――


氷冬「――――― " 原 点 で 頂 点 を 極 め る " ―――――」


――― "キミはキミであれ、『氷冬』。" ―――



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最終更新:2019年05月12日 23:49