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【城下町天宮・小料理屋 芋 kATAAGE前】
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呂富「(一つ結びにし腰まで伸びる翡翠色の頭髪、金色の瞳、陶器のような白い肌、靴は愚か砂利の上にもかかわらず素足で佇む一際目立つ童女が、湯気の上がる店の外にぼうっと立ちすくみ舞う蝶を目だけで追う)………。ぐぎゅるるるるるうるうるるるうゥゥゥ……(ひどく間の抜けた腹の虫が児玉した。無機質な無表情でふと腹をさするが腹の虫は収まらない。仕方ないので顔を上げ蝶を再び目で追うことにした)」
小料理屋の娘「おじーちゃん、あの子まだ外にいるよ……。いい加減何か差し上げて他所に行っていただくか、こちらでお世話してお奉行さんに預けるかしないとっ。お客さん寄り付かないじゃない(がらんと空いいた人気のない店内から店の前で佇む呂富を後ろ指さしおじーちゃんなる人物へ耳打ちする)」
小料理屋の店長「(厨房の入り口へ背を預け、今日はもう何もする気はないと言わんばかりに脱力している)娘よ……あれを見るのは初めてかえ。あれな、いや彼女がな……ワシがギョーさんお前に『餌をあげないでください』といって聞かせてきた大和の『人間軍艦』『国士無双』の『呂富鳳仙』じゃ。お上にはあれに下手な鑑賞はするでないとそれはもうこっっっぴどく!戒めを受け取るんじゃ。一度米一粒でも与えりゃ田畑ごと持ってかれるんだそうじゃ」
料理屋の娘「そんなぁ!いや困るよ、おまんま食いっぱぐれちまうさね!」
小料理屋の店長「だから、あの化け物自身の意思で動いてもらう他に仕方ないんじゃよって……。ほれ、わかったら昼飯作るべ」
【城下町天宮・某所】
海東大樹「まさか「お宝」が一度に二つも手に入るなんてね。一石二鳥だよ。(彼女たちから奪い取ったテディベアと名刀「蕨」を両手に薄ら笑みを浮かべる)
海東大樹「だけど、この大和にはまだまだ「お宝」がたくさん眠っている。」
海東大樹「中でも、『将軍』が隠し持っている「お宝」…世界をひっくり返すかもしれないといわれるもの…ぜひとも手にしたい。」
ヒ ュ ォ ォ ォ ォ … (怪しく吹き付ける夜風に枯葉が夜空へ吸い込まれるように舞い上がる)
海東大樹「…『士』―――君もこの国に来ているんだろう?」
海東大樹「悪いけど、「お宝」は誰にも渡さないよ。また僕の前に通りすがるというのなら…君だって容赦しない。覚悟したまえ―――」
そして怪盗は歩み出す。すでに閉ざされた『将軍歴史館』という建物へと…
【城下町天宮・往来】
キャロル「(池田屋が僅かに遠くに見える往来を、背に大量の焼きもろこしを背負いながら大手を振って歩く)ダイキ・カイトーの首をミキサーに突っ込んでこーるたーるに混ぜるのはいいとして(本気で実行するというような目)問題はどこに出るかだよね。私はゲームセンターに出るで一票。理由・男の子は好きだよねゲームセンター」
紅夜「(杖をつきながらも昨夜よりかは血色もよく僅かに軽い足取りでキャロル達と補足を合わせて進む)将軍の『お宝』を追っていると言っていたな。秘蔵品、美術品は池田屋にある『将軍歴史館』に寄贈されているというのが一般の認識だ……。単に金銭目当てなら間違いなくそこだろうが、さてどう思う」
キャロル「池田屋にあるとこでしょ?んー、おねーあそこにいるんだよなぁ……あまり近づかない方がいいって
ジゼルも言ってたし……(腕を組んで糸目のままうーんと項垂れる。姉の言いつけに対してはそれなりに素直な様子)んーでもカイジュウ・ダイコン(海東大樹)は鏡も見れないほど顔殴んないと気が済まないし……どーしよっかひなぎっちゃん。本当にそこに出るかはわかんないしとっくに取るもの取って国外かもだけど(ふいに横に並ぶ人物に問いかけ小首を傾げる)
紅夜「目的を果たしたということは失せ物があるということだ。火のないところに煙は立たないが、火がつけば煙は上がる。事があれば血相を変えて見廻組(大和で言うところの警察)が動くだろう。ゲホッ……まぁ”どうあれ俺はこの通りだ……海東大樹には『個人的に』用向きはあるが、単身では追えそうにない。キャロルに決定する意思がないなら、残すところは君次第にはなる」
【城下町天宮・往来 酒屋前】
店番「さぁー寄った寄った!伸るか反るか、一世一代の大一番!こちらに座すは地元ではお馴染みのお騒がせ酒豪!お初にお目にかける皆々様方にや麗しくも一陣の荒波が如く!顔も腕も折り紙つきの美武人!八代琉妃!現在樽上腕相撲において負け知らず、大関からも黒星を分捕り49戦中49勝無敗!此奴の腕と鼻っ柱を見事折った者にゃこちらに見えます酒樽49本を献上いたす所存!我こそはと名乗り出る命知らずは何処や!(法被を着た小太りの男が店前でありったけの酒樽を並べ、往来をゆく人々へむけ声を張り上げている。彼が指し示す腕の先に座すのはーーーー)」
琉妃 「(ーーーーその言葉に偽りなく、ぬれ羽色の黒髪を潮風になびかせ、酒樽の上にあぐらをかく見目麗しくも、そのあり方からして芯の強さが見て取れる、江戸っ子口調の女性。着物は片袖を通さず、サラシの上から存在を主張する豊満な胸部と、固く筋張った、鍛え上げられた腕が露になっている)ーーーーアタシが買った暁にゃ酒樽一杯奢ってもらうさね!なぁにたかが酒樽一本よ!負け戦の悦を窘めたい輩は挑んできなぁ!(腕を振り上げ、手首を食いとひねり往来をゆく人々を挑発するようにして名乗り上げた)」
【池田屋城下町往来 言御前】
『言御前』 政府より報せがあれば使いの者が触れ書きを残していく。将軍か老中より直に)民へ向けられたものが殆どで、新たに何かが書きしされていれば我先にと、瞬く間に人集りが発生する
商人「ひぇぇ……。『帰り鳩屋』の一家が……」
漁師「俺の息子が見つけたんよ。首が年の若えのから順に船着き場に吉兆面に並べられててよぅ。あらもう玄武様のお怒りかと思っちまったんだが、質屋の連中とは俺ら縁もゆかりもねぇし……」
団子屋「おまさん何言うてはるの。質屋の『帰り鳩屋』ゆうたらここらじゃ有名な『高利貸し』やない。はぁ、しかも麻統の坊ちゃんの息がかかっとるゆーから何もいえへんて皆さん揃ってだんまり、枕を濡らして泣き寝入りやわ。おっかないけど、これで良かったんかもしれんねぇ……」
医師「アホ抜かすでないわ。麻統様にそない悪どいことする器量は……あー、もとい悪意はありゃせん!あれは、あのお方に金魚の糞しちょる『小保方組』の連中が悪い、全部あいつらが悪いんじゃ」
薬売り「やけどせんせ、小保方組といやここらで幅きかせちょったヤクザもんやろうガィ。ここ開けられたら、お隣の島の長谷部連合が黙っちゃおらんて」
漁師「おまん知らんがか?長谷部組も昨日おんなじように首ば晒されてみんなお陀仏になっちまったよ」
薬売り「はぁ!?」
団子屋「無理もないわぁ薬売りはん今日やっと里からお薬の材料集めて戻ったんやもん。昨日だけやあらへんよ、これで早い事「一週間や。毎夜毎夜ヤクザもん噂されちょる商店から、政治家センセェのご実家まで、至る所で『首跳ね』騒ぎやわ!おかげで悪どいこともできんていくらか平和にはなっとるけど、辻斬りかもわからへんしほんま怖いわぁ……」
商人「『日が落ちたら歩かんほうがええかもしれへんな』。夜遊びしとらんと嫁さん大事にしろってこったな……」
麻統「(町民達のひそひそ話を地獄耳で聞きつけ、屋外の席に座しまだ冷え込んでいないにも関わらず毛布に包まって頭を抱えている)おおおおおお……おいおいおいおい……死ぬわ僕死ぬわ僕……。話が違いすぎないアヤセ?この辺のヤクザは『瑠璃』の統制下にあって、下っ端の中で派閥争いだとか内ゲバは絶えないけど小競り合い程度だってお前言ってたじゃん? どう言うことだよオイ、隠れ家のチンピラみんな首無し死体じゃんか。なんだよあれ、鈴なりで人間の畑だったよ?しかも何?あれ僕のとこのヤクザもんだったわけ?知らないよ?僕ほんとそう言うのと繋がってないからね?
ルドゥラどこだヨォ、怖いヨォ」
アヤセ「あーはいはいでーじょうぶでーじょうぶ、くさいから漏らさないでね(その隣。麻統とは異なって衣類に限らず容姿や顔まで、全くの別人、中背的な容姿の青年に化けて呑気に団子をついばもうとするが)ボトッ(指先から串が滑り落ち、砂利の上に三色揃ったそれが転がり土色混じって四色団子になってしまう)ーーーールドゥラさんに合流したいのはこちらもですよ。魔剣討伐をそそのかして一方的に別行動としましたが、今全力でワン切り繰り返して呼び戻してるところですねぇ……(爪先は小刻みに震えている指には汗が滲み笑みは心なしか引きつって見えた)」
【池田屋城下町・往来 茶屋前】
見廻組隊士「退いた退いた!見世物じゃぁないんだ!散れ、散れっ!(噂をすれば影。藁でその有様をか隠された遺体が担架に仰向けになり、二人係で車に担ぎ込まれていく)」
三度笠の女性「(その様子を、紅色の三度笠を目部下に被り、薬屋の印が彫られた木箱を背負う白装束の女性が遠巻きに眺める)えらい騒ぎですねぇ昨晩からまた。辻斬りなんですって?」
茶屋の女性「そーよ。まあ声を大にしては言えんけど、悪い噂にたえへんヤクザな商売しとる連中やからなぁ……。死ねば皆仏やし、これはなんともなぁ……いや助かったには助かったんやけどね?」
三度笠の女性「いくらかは私達も楽になりますかね(陶器のように透き通った肌、桜色の口元を綻ばせ鈴のように伏見がちに微笑する)」
茶屋の女性「あきまへんわ、ここらの川辺の方はまだまだギョーさんヤクザもんがおるんやわ。税は安いけど、ここらは上納金の取り立ての方がよっぽどやさかい。悪いことは言わん、根が生える前に他のとこ探しや。 土地勘ないもんがうろつくと、夜中に『蘆名様』に食われてまうで」
三度笠の女性「……。……?蘆名、様……?」
茶屋の女性「? ああ、ほんまよそ様から来はった薬屋さんなんやねぇ。まあ眉唾な噂なんやけど、ここ大和には『姫景』ゆう滅法強いお方がおって、それは人なのか神なのか化粧なのかわからへんけど、目を受けられたら魂ごと切られちまうんやとか。はやまた、言斎けを守らない悪い子を攫っちまうだとか。まあうちも、詳しくあらへんのやけどな? ここの常連に『盧九垓』言うおじいさまおるから、その人肉とええよ。物知りで楽しいお人やで?」
三度笠の女性「ふふっ、是非そうさせていただきたいのですが、生憎とまだ仕事が残っておりますので(薬箱を背負って席を立ち、耳を揃えて茶代を女性の手に握らせると一礼し)では、失礼をば(三度笠をつまんでもう一度一礼し、その場を後にする)」
三度笠の女性「ーーーーーー『蘆名姫影』『盧九垓』………か。」
【1日前 池田屋城下町】
????「(間違いなく池田屋に重鎮達が集まる。彼奴等を仕留める絶好のチャンスだ)(裏道を歩きながら夜の闇に紛れ、常に身を隠している。物思いにふけるようにふと立ち止まると、壁にもたれかかった。薄っすらと電灯の点いた街並みが見えると同時に大通りの様子も見ることが出来る。この大通りは全くの無人と言うわけではない。どこぞの組織の刺客やただの辻斬りなどが闇に潜んで獲物を待っている。????はそこを安全に通り抜けられるルートを知っている)」
????「(俺の情報網から逃れられると思うな。池田屋は瞬時に血の海になる……俺の剣を防ぐことは出来ない。だから……――――――ん? なんだ、誰かこんな夜中に歩いているのか? しかも歌を歌いながら、まるでピクニックにでもいくかのように。酔っ払い、ではないな。もうこんな夜中に店など開いていない)
女性「あーかいはーなーつーんでー……あーのひとーにあーげーよー……♪(美麗な声で雑に歌いながら、電灯の下にそのシルエットを露わにする。白く長い髪にどこか扇情的な和装甲冑。絶やさぬ笑顔に浮かぶ"笑っていない目"が大きく見開かれ、より一層彼女を不気味に映していた)」
????「なんだアイツは? こんな夜中に大通りを歩くとは、正気か?」
女性「ふ~ん、ふ~ん♪……おや、囲まれてしまいました。(周りには忍者のように黒い服をまとって刀や槍を向ける男衆数人)……さて、何をされるのですか? 私は夜の散歩を楽しんでいるだけのただの女にございます。どうか刃をお納めください(怯える様子なく、むしろそのまま笑顔でニヤァと口を歪めながら)」
刺客「黙れ。こんな情勢の夜中に声を出して歌いながら歩く女がいるか。情婦、というにはその出で立ちはおかしい。貴様、どこの組織の者だ?」
女性「組織? さて、私に組織などと言うものはありません。私はただ気ままに歩くだけの女。猫の類とでもお思い下さいませ。にゃー♪」
刺客「えぇい、ふざけた奴め。殺せ、どの陣営であったとしても、なかったとしても怪しい者は全て殺せと言われておる」
女性「……ふふ、なんと浅慮な。誰の指示でしょうかねぇ? このご時世に怪しいものは皆殺せなどおかしな妄言……麻統の悪ガキではなさそう。ん~……あぁなるほど、ア イ ツ か(ニィィィィッと笑うや刺客達が各々の得物を以て斬りかかって来た。無手に見える彼女はそれに瞬時に反応し、一気に全員をバラバラに引き裂いてしまった)」
????「―――――ッ!!?(両腕が取れて…いや、あれは『義手』か!? 義手の中に刃が仕込んであって、それで斬ったというのか。……聞いたことがあるぞ。この
大和国には伝説とも言える人斬りの鬼が住むと! まさか実在していたとは、――――『蘆名姫景』ッ!)
姫景「ん~。今宵も『二刀・似蛭』はよう斬れる。(絶やさぬ笑みで血だまりに足をつけたまま仕込み刀の刀身を見るや、両腕の義手を取り付け始める)」
????「(何故伝説上の人物とも言える存在がうろついている? 俺の情報網には引っ掛からなかった。ずっと地下に潜伏していたとでもいうのか? だとしたら何故今になって出てくる? ――――そういえばさっき麻統の名を言っていたな。今の情勢を知っているとすれば……まさか奴も参加するというのか? この大和の大乱にッ)……まずいぞ、池田屋だが、そう簡単にはいかんかもしれんな。もう少し様子を見てみるか。必ずつけ入る隙がある。必ずだ」
【時系列現在:池田屋城下町 】
ーーーー時系列は戻りキャロル一行等が行動する日にち・時刻
『触れ書き』からそう遠くない場所
ブルーシートがそこ等一帯に満遍なく敷き詰められ、
一夜明けても尚鉄臭い香りが重責する現場
群青の隊服で身を引き締めた『見廻組隊士』達が、
シートを指でめくるなどして現場検証の作業にかかっていた
周囲には人集りが例の如く鬱積している
見廻組隊士A「ーーーーで、こっちはバラバラ死体ってか」
見廻組隊士B「明智殿の見立てでは剣筋、残痕等の痕跡から巷を騒がしている『極道殺し』とはまた別の者によるものと見て間違い無いとのことです。前者の極道殺しには、市民にそれなりに存在の知られ猛威をふるっった比較的影響力があり、尚且つ麻統様を始めとした政府との癒着が囁かれ者を狙い明確にその殺害を示すような意図があると考えられています。後者では、原型を留めていない遺体も確認されており、前者と同一犯とすると行動に一貫性がないとのこと」
見廻組隊士A「念のため被害者の身元を徹底的に洗い出し逐一私に報告しろ。また麻統様絡みともなると四老中の一角が堕ちたと海外のメディアに有る事無い事記されかねない。そうなる前に、此方で可能な限りの情報統制を敷かなければならん」
麻統「OH……(三度笠を目深に被り人混みに紛れ、その有様と自身の地位が既にないものとして扱われ始めている実情に感情のキャパを超えたのか無表情で立ち尽くしている)」
アヤセ「…………(麻統とは裏腹に顎に手を添え置いて次々と担ぎ込まれる遺体を静観、黙考)(ーーーーー意図……意図ですか。なるほど、老中は公的機関に限らず多くの武力・財力をあえてひけらかすことでその影響力を知らしめている恐怖政治的な側面が強い。とりわけ、正規のの勢力が弱い麻統の坊ちゃんは典型的なそれだ。ともすれば本人の失踪にかこつけて傘下を惨殺し、政府の弱体化を想起させようとしているのか……)坊ちゃん、あなたを『あの筋肉ダルマから助け出した人物がいた』と仰いましたね。その時のこと、もう一度詳しく聞かせてくださいませんか」
麻統「ウェップっっっ(思い出すだけで当時の体感が蘇り口元を抑え目元が濡れる)あ”……あ”ー……いやだから、薬売りの女だって言ったでしょーがよ……。まあ今よくよくかんがえたら薬売りの女が刀持ってるのがおかしいんだけどさ……んで?それがどうしたのよ」
アヤセ「………(あいつの首筋には残痕と金属粉が残っていた……。刀の質が相当悪かったのでしょうね。然もなくばとっくにお陀仏な筈だ。薬売りに扮し、仕込み刀で斬首に務める……。このやり口は『対大和戦前の工作員が使った帝国工作員の手法』と類似している…………)急いでここを離れますよ坊ちゃん。こうなってくると牢屋にぶち込まれた方が安全かもしれません」
麻統「えっ、なにそれ……こわ……」
最終更新:2021年03月22日 01:02