緋月の夜叉姫 ログ9

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海東大樹「 ダ ッ ――――(漁業で賑わう港。人々の群れと会話を掻い潜るようにその間隙をするりと駆け抜けていく。まるで何かから逃走するように) 」

雛菊「 ス タ タ ッ (翡翠色の長髪を揺らしながら行き交う人々を潜り抜け、その先にいる海東に狙いを定めながら追いかける)―――待ってください…!!(表情には焦燥、心臓は激しく鼓動し、彼を追いかけるたびに熱く重苦しい何かが込み上げてくる) 」

キャロル「――――君は精神的に包囲されている!無駄な抵抗はやめてすぐに投降しなさい!さもないと精神的に牢獄に引きこもってドッペルゲンガーに我は汝とかうそぶかれた後面ガースポンジのように砕けた次元に木っ端微塵にばらまかれることになる!!(ダバダバと言う濁音が相応しいタコ足漫画走法で雛菊に続き海東大樹の背を追って、ギンギンに冴えわたった眼光を光らせ全力疾走する) 」

海東大樹「もう追いついてくるなんてね。(意外そうながらも、その表情はいたって余裕を保つ。) タ ン ッ (積み荷の木箱を飛び越え、ゴミ箱を蹴飛ばして追跡してくる二人の進路を遮断し、そのまま駆け抜けていく) 」

雛菊「(やっと見つけた…取り返さなきゃ…―――)返してください…っ…!私の…――――ひゃっ!?(転がってくるゴミ箱を飛び越える)はぁ…はぁ……!(早い… 全然距離が縮まらない……!)(消耗する体力や精神的な重圧からか、全身から滴る汗の流れが止まることを知らない) 」

キャロル「  カポンッ  (ポリバケツが顔をすっぽり覆い視界を塞がれ木箱に正面から激突する)うぐぐ……スリザリンはやだ、スリザリンはやだ……  ア  ズ  カ  バ  ン  (おもむろにそれをかなぐり捨て蹴っ飛ばしつつ木箱に飛び乗り、高台から港一帯を見渡す)雛菊ちゃん、ああ言うのは返してくださいじゃダメだ。ボコって畳んで押し入れにしまってから!!奪い返さないと(風切り音がするほどに激しく首を左右に振り海東大樹の姿をジト目で舐め回すように探る)しかしなんで皆となんか……くっそぅ~~遮蔽物が多い~~ 」

海東大樹「(面倒くさいな―――)僕の… ス チ ャ ――――(ディエンドライバーを懐から抜き出し)―――邪魔をするな! ダ キ ュ ン ッ ! (走行中瞬間的に振り返り、頭上斜め上へ目掛け発砲する) 」
キ ュ ン ッ ―――― グ  ォ  ン  ッ  !  !  (海東が放った銃弾がクレーンに吊るされたコンテナの鉄線の一本を貫通。コンテナの重さに耐えきれず残りの鉄線がぷつぷつと千切れ、やがてその大きな鉄の塊が雛菊たちの行く手を阻むように落下する) 」 

雛菊「――――!(銃を突きつけられたとき反射的に身構えるものの、その銃口が自分たちではなく頭上であることに釣られて仰ぎ見る)―――― キャロルさん…!!!(頭上より落下するコンテナに思わず踵を返し、キャロルを引き留めるように彼女を抱きしめてそのまま地面に横たわり、難を逃れる) 」

海東大樹「 ク ル ル ッ (してやったりの表情でドライバーを振り回し、そのまま彼女たちの前から颯爽と姿を消す) 」

キャロル「数秒間だけ抱き枕に転職して良かったと思う日が来るとは思わなかったよ。お買い上げ並びに愛玩いただきありがとうございます(命の危機にあったと言うのに平然とした顔で抱きとめられたままの体制で横たわっている) やーまいったね。こないだ怪盗オタクくんと知り合ったけど性格歪む職業だからやめとけってあらぬ風評被害を広めてファン減らしてやりたくなったよ(離してと言いたげに手足を静かにジタバタさせる) 」

雛菊「…あっ、ご、ごめんなさい…!(慌てて彼女から離れて立ち上がる)ようやく見つけたと思ったのに……(完全に逃げられてしまい、表情に更なる焦りが浮き出る)……(でも、港に姿を現したということは……)―――――!(はっと何か閃く)…まさか……!!(突然ある方向へと駆け出していく) 」

キャロル「ええんじゃよ。以外とあるなと思ったぐらいで、何がとは言わないけど(マイペースなペンギン歩きで雛菊の後に着いて回り)―――港……港かぁ。海鮮料理ウハウハパラダイスかな? 」


― 港・船着き場 ― 


海東大樹「さて…(高く積み上げられた木箱の上に優雅に腰かけ、スマホの画面に視線を落とす)情報によれば、『将軍』様の「お宝」がこの港に運ばれてくるらしいが………!(高所から辺りを見渡し、ある一隻の船を発見する) 」


ザ ッ … ! ! (何者かが海東が佇むその場所へと踏み入れ、木箱上の彼を仰ぎ見る) 」


海東大樹「……!(内心驚いた、と口辺を上げて現れた人物たちを見下ろす)…どうして「ここ」にいるとわかったのかな? 」

雛菊「はぁ……はぁ……(左手を右腕に添え、荒い呼吸を徐々に落ち着かせながら海東を見上げる)……貴方が本物の怪盗なら、逃避行の手段もその先に構えている。あなたがこの港に姿を現したのなら、その手段は一つ…――――「船」。しかし今日は、荒波の予報を受け港から出る船はあそこにあるたった一隻だけだと港の人たちからお話を伺いました…。だから今、ここであなたを食い止めます。……奪ったものを、返してください。(一歩強かに詰め寄る) 」

キャロル「ひなぎっちゃんは優しいからね、返してくださいなんて返せば許してくれる的なこと言ってるんだけどね、返さなくていいからね(乾いた音を立てて掌に拳を当ててポキポキと鳴らす)アイテムは、倒した奴がドロップしたのを披露主義だ(にっこり) 」

海東大樹「…フッ…(雛菊の話を聞いて滑稽そうに鼻で笑う)いい読みだね。だけど惜しい。逃げるには"まだ"早い。何故なら、本当に欲しい「お宝」をまだ手に入れていないからね。…まあでも、もしかしたら君の考察通りになるかもしれないね。(ふふっと口辺を上げる) 」

雛菊「キャロルさん…(あははと苦笑いしながら)……?どういうことです…?(海東に首を傾げる) 」

海東大樹「君たちが知る理由なんてないよ。(しかし今の発言…「港から出る」…?「お宝」は既にこの国へ運ばれたのか?それともデマだったのか…?)(ふとスマホの画面に視線を落とし、その画面内に映る「匿名の誰か」が書き残したメッセージに不信の眼差しを向ける)…… …… ……はぁ……"やられた"。(額に手を当てる)…しかたない。君たちとは「ここ」でお別れだ。もう二度と付きまとわないでくれたまえよ。(真底うんざりしたような顔を一瞬見せ、懐から取り出した煙球を雛菊たちの足元目掛け投げつけた後、再び姿を消した) 」

雛菊「……??(海東の独り言に怪訝の眼を向ける)お別れ……?何を言って―――!(突如投げつけられた煙球に包まれる)けほっ、けほっ……!っ……キャロルさん…!?(煙で視界を遮られている中、彼女の名を呼ぼうとしたが…) 」

キャロル「  プッツーン   (表情筋はピクリとも動かない、眉ひとつ化石されたかのように動かなかったが、熱の見えない鉄仮面の内側では今にも噴火しそうな溶岩の如き忿怒が煮え繰り返っていた)  ┣¨   ン ッッ  (地面がわずかに蜘蛛の巣状の亀裂を刻むほどの重い一歩、抑止の外れた彼女は痙攣でもしているかというほどにわなわなと全身を小刻みに震わせていた)ひなぎっちゃんごめん……わたしゃぁ久々にキレちまったぜ。だからこれは、私が一人で『やっちまった』っていうことだからね。ひなぎっちゃんにはなんの責任もないから……(無表情の鉄仮面を貼り付けたまま、『タマ取って来る』という意味合いの言葉を肩越しに送り) 」



. … .  .   ┣¨  .    ..    ォ     ウ   ッッ  .!!!!!   ..。.  (衝撃波の輪を描いて爆炎が港に吹き上がった。足裏から火炎をジェットよろしく噴射させ、彼が乗り込んだと『思われる』運搬船へ、彼女が砲弾が如くショルダータックルをぶちかまし突っ込んだのであった) 」



大和造船社員「おフォほぉぉぉー……いいね、これはKAWAII(運搬船……なのだが船内の一室では大和造船の作業着を支給された鬼が、一人の小柄なエルフの顎を掴み品定めするような視線をねっとりと這わせていた。玩具を得た子供用に悦に浸っているのも束の間)―――― maikerujakusonntttttu!!!!!!!!!!!(何者かが甲板に正面衝突し、その衝撃波で個室の中を何度かバウンドし、選外へ放り出され港に打ち付ける波の泡へ飲まれて消えた) 」

雛菊「えっ…!?キャロルさ――――― ひ ぁ !!?(巻き上がる熱風の衝撃に目を瞑り、ゆっくりと瞳を開いていく)……!(船へと飛んでいく彼女の姿をようやく捉え、自分も遅れまいと踏みだした。その時だった―――) 」


ブ オ ォ ォ ォ ー ー ー ー ン … ッ … ! (船の汽笛が鳴り、港についていたその大きな船が出港し始める) 」



大和造船社員A「な、なんやサツかいな!」大和造船社員B「伊蒼のアホウか!? あかんて、今しょっ引かれたら社長に殺されてまう!」大和造船社員C「何ぼさっとしとんねん出せや!出航や!!取り舵いっぱいせや!!!」大和造船社員A「あほう面舵や!!」 」



   ゴンッッ      ゴンッッ   (社員達がもめているのは制御室。船の舵をとる機能を担う一室。頑強に施錠されたチタン合金製のドアが何者かから衝撃を何度も加えられ、徐々にひしゃげ重々しい沈黙が続く。やがて) 」



雛菊「……!!?(踏み出したその直後、汽笛の音に表情が青ざめる)だめ…間に合わな―――――!(船へと手を伸ばしながら走り出すそのさなか、人ごみの中に見覚えのある人影をその双眸に捉えた) 」

キャロル「  だ  ぁ  い  き く  ぅ  ん  ……  あ ぁ そ び ぃ ま し ょ ぉ  ぉ  お  (3tと印字された鉄塊に鉄パイプを突き刺しただけの粗雑なハンマーを引っさげ、その少女はドアを蹴破って現れた。その姿はさながらに、般若が童女の皮を被っているかのようであった) 」

海東大樹「―――――(雛菊の視線の先にいたのは、帽子を目深に被り人混みに紛れるように遠く遠くへと船から遠ざかっていく青年だった) 」



ギエー!!> アバー!!> ドルームキャスト!!!>    ドボンッ ドボンッ ドボンッ (既に出航し遠ざかる船の甲板をぶち破って三人の人影が船から海面へ法輪投げられる様が港から見える。以降沈黙が続くか)  ド ボ ンッツ  ボチャッボチャッ(作物を荷台へ投げ入れるかのような要領で、次々と乗組員と思わしき人物が海へ投げ捨てられる様が、船が遠く小さくなっても見ることができた) 」


雛菊「……!?……ッ…???(今のは……み、見間違えなんかじゃない―――!)(一瞬の出来事により、脳内で様々な資格情報や、先程までの海東とのやり取りを描いた記憶などが交錯し始める) 船で逃げたわけじゃない……確か…――――― 」


―――逃げるには"まだ"早い。何故なら、本当に欲しい「お宝」をまだ手に入れていないからね。―――(雛菊の脳裏によみがえる海東の言葉が、彼女に決定的な事実を告げる) 」



雛菊「……!(あの人…海東大樹はまだこの国に滞在する…!じゃあ、あの船は「罠」――――)…しまった……!!(突然キャロルのことを思い出し港を離れていく船の方角へと振り返る)……っ……(遠ざかる船影、追うべき人影…自身が選ぶは――――)……キャロルさん、ごめんなさい…っ……!(苦渋の選択の末、船を背に人混みの中へと飛び込み、あの人影を追いかける)キャロルさんの大切なものも、私が取り返します……だから、どうかご無事で……!!(刀を失った剣士は振り返ることなく、港を後にした) 」

アヤセ「――――(事が終わり、静粛を取り戻した港の一角。作業員が連絡に使う内線用の電話ボックスの陰から、陰と同化し気配を消していた人物が暗がりから歩を進め彩色を取り戻し小首を傾げる)―――――惜しい……ところまで言っていたんですがね。彼……いざとなれば騒動に合わせて乗り込むのも手かとは思いましたが……――――いや、果報は寝て待つ時代でもないでしょうから(1回に見える踏み込みを『10回』同時に行い、一度の跳躍で軽々と皆と一帯を飛び越え電線の上につま先をつけ町を見下ろす)―――ダイキ・カイトー。彼の執念、はてさて私の目が腐っていなければよもや……『オタカラ』にたどり着くかもしれませんねぇ。うふふ! 」




コツ……  コツ……  (そしてもう一人、求める物へ奔走する回答とすれ違う影法師が一つ。鴉を肩に乗せたそれは、海東大樹と肩をかすめすれ違うと一瞬足を止め踵を返し)……、………  (スマートホンをポケットから取り出し、再び歩を進め人混みに紛れつつ一文を綴った。宛先には――――― 海東大樹と記されていた) 」




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――― 水の国レサーティア 港湾 ―――


レサーティア本島を立つ貨物船の多くが停泊するコンテナ港。 昼夜問わずクレーン車が行き交い荷を詰め込んでいる。 自らが乗船する船がわからず右往左往する乗組員も少なくはない、目が回る程の量だ。 


―――――最もこの男の、『怪盗』には縁のない話だ。『お宝』は、取り分け特別大事に丁重に、何より『慎重に』扱われ運ばれるのだという事をこの男は知っていた 」


海東大樹「コッ……コ、コッ…――――― 「あれ」か。(スマートフォンをこつこつと音を立てながらスクローリングさせながら、狙いを定めた一隻に口角を上げた) 」


―――――ちょいと待ってくれねーか、そこ行くお兄さんよ


蘭歩「(目当ての一隻へ向う海東の襟袖を引っ張るようにして呼び止める声が一つ。声の主は三度傘を目深に被り、片袖を通した羽織を黒インナーの上に纏う黒髪の風来坊であった。コンテナに背を預け、左片方を閉じた赤目を細ませ、口端を釣り上げじぃっと海東を凝視している)――――大事なもの落としちまってよぉ。ここらには筋肉ダルマしかいねえってんだから困ってるんだ。ちょいと一緒に探すの手伝ってくれねーかい 」

海東大樹「―――――(目的の場所へ向かおうと足を進め出したその途端、己を引き留める声にぴくりと制止する)………(邪魔な追っ手もいない、ようやく至福とも呼べる宝探しに望もうとする個の高揚感を阻害された青年は、背後の風来坊をまるで睨みつけるかのように一瞥を与えた)…お断りだね。落とし物なら、お巡りさんにでもお願いしてくれないか?生憎僕は、「宝探し」で忙しいんだ。同じ"探し物"でも訳が違うんだ。 」

蘭歩「おいおいおいおいおい、どこの”誰が”、”何を”無くして、それが”値打ち物”かも知らねーのに随分なもの言いじゃねえの。そもそも知ってるかい?ひとつなぎの大秘宝はラフテルにあるんだってよ、こっからじゃ急いでもゴム人間に先越されると思うぜ(へらへらと締まりのない笑いを浮かべ、片手で開いていた少年マガジンを後方へ放る。背をコンテナから離し、風来坊は海東へ大股で歩み寄ろうとした)―――――パクられちまったみてーでよぉ……『お宝』が。お巡りさんに聞いても首横にふるだろうよォォォ~~~ 」

海東大樹「……なに?(眉根を寄せる) 」

蘭歩「まァァァ~~……なんだ、お宝っつっても人の尺度によりけりだ。ガキの頃、ダンボールを切り抜いて作った勇者ロトの剣が『お宝』だった事もありましたねハイハイ(顎に手を添えうんうんと昔を懐かしみ感傷に浸りながら首を縦に振る)ああ、ちなみにだ。今俺が探してるのも『剣』でよォ。音に聞こえし名工!『四季崎記紀』が打った幻の変体刀『月虹』!!厨二そそるワードだよねェェェ中学二年生の夏に戻っちまいそうだ。そう思わねえ?未成年がの出来心でパクっちまっても仕方ねえよ 」

海東大樹「……!(風来坊の男の飄々とした言葉の中に紛れた「四季崎記紀」、そして「変体刀」のワードに食いついたように目を細めた)…その名前…今からいただこうとする「お宝」じゃないか。……そう、君"も"か。(ようやくその体の全体が蘭歩へと向き直る) 」

蘭歩「(指先を三度傘の橋に添え、陽光に顔を晒す。合いも変わらず締まりのない、ちゃらんぽらんなにやけ面だったが……)そ、ちなみに俺が落としたのは土産物の木刀。この歳になっても心根は少年でさこうしてノリと勢いで買っちまうのよ(腰帯に提げた『木刀』を手に取り見せつけるようにして腕を前へ突き出す。持ち手には『魔剣月虹』と油性マジックで書き添えられており)あれれ~~あったね~~無くしてなかったわァ。 ところでこれ、売店にフツーに売ってるんだけど……ああなに、あれ?『本物』をもう『パクっちゃった』わけ? 」

海東大樹「 チッ…おちょくらないでくれたまえ。二束三文な物に興味はない。かの伝説の刀鍛冶「四季崎記紀」が後世に残したとされる宝刀「変体刀」…それは見る者を惹きこむ魔性の刀とされている。僕は刀剣使いじゃあないが、宝を見定める目利きには優れている。 」

蘭歩「そりゃ言葉として正しくねえなぁ『海東 大樹』くんよぉ。今君が言った『見る者を惹きこむ魔性の刀』ってのは『進行形』だ。君の場合正しくは『惹き込まれた』だ。(初対面、少なくとも海東からすれば赤の他人である者の口から彼の名が出る。顎に手を添え、朗らかに談笑をしていたその男は――――――) 」


    ヴ   オ        ン  ッ    ッ    (―――――大気を抉り木刀を振り抜く。触れるものを砕き、潰し、総じて『両断する』という結果に至る真一文字の『斬撃』を予備動作なく海東の胴体へ放った)


海東大樹「   づッ゛!?  (ガシャアアアァンッ ! ! )(凄まじく強烈な斬撃が胴体に炸裂し、コンテナに大激突し、辺りに硝煙が舞い上がった)…っ゛……ゲホッ、ゴハ…ァッ…!!(腹部を強く抑えつけながら白煙よりゆっくりと立ち上がっていく。そして「なんのつもりだ」と睨みつけ、その口元を片手で拭った) 」

蘭歩「誰もが引き裂くは鋼の領分だと思うだろう、そりゃ勘違いだ。ちゃんと効くだろ(顎に手を添えた不敵な笑みは健在。そもそも持ち合わせてすらいないのか殺気こそ感じさせないが、肩の上で弾ませている木刀はいつでも切っ先を海東へ向う用意があるとでも言いたげに陽光を鋭く反射している)―――――まあなに、『パクったもんを返せ』ってこったよ。俺が請け負った依頼は『海東大樹に強奪された国妖刀、魔剣月虹を取り戻せ』……要するに今素直に引き渡してくれりゃこれ以上痛い目を見ない、ちなみにこの痛い目は俺の筋肉痛な(手をくいくいと捻り、動作で『渡せ』と催促する) 」

海東大樹「…っ……そうかい…ついにこの国でもお尋ね者になってしまった…ということか。(「なるほど」と頷きながら首の骨を鳴らす)……――――― 僕の旅路を邪魔する奴は容赦しない、覚えておけ。(懐からディエンドライバーを引き抜いた) ス…――― カ シ ャ ン ッ ! (ディエンドのライダーカードを一枚を取り出し、ディエンドライバーへ装填) カ シ ャ ッ ! ! (銃身をポンプアクションのように前にスライドさせる) \KAMEN RIDE/  (ドライバーを天へと突き上げ) ――― 変身! ド ギ ュ ゥ ン ッ ! ! (トリガーを引いて投影図を発射) 」

海東大樹→仮面ライダーディエンド「 \DIEND !/  シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ ――― ド ギ ュ ー ン ッ ! ! (投影図と全身が重なり合うことで、仮面ライダー「ディエンド」へと変身) 「お宝」は誰の手にも渡さないよ。 ふんッ!! (ダダダダダッ ! ! ! )(銃口を突きつけると同時に連続射撃を行う) 」




蘭歩「別段変身ヒーロー様に恨みはねえが―――――(歯を覗かせて笑み、”気”を練りこみ黄金色のオーラを纏った木刀を片手持ちにし大振りの薙ぎ払いを三度放つ)  オ   ゥ ン  (三日月の軌跡を三重に描くスイングは”余波”のみで銃弾を豆のように吹き飛ばし、コンクリの表面を砕き、抉り、硝子を砕かんばかりの突風が海東の真横を駆け抜ける)――――――この仕事小遣いが弾むんでなァッ!!(両手持ちに切り替え縦一文字に木刀を振り下ろす。雷を落としたかのようにな轟音が響き、床がクレパス状に砕け足元が不安定になった) 」

仮面ライダーディエンド「ッ……!?(常人では到底発揮でない破壊力に驚く間もなく、砕けゆく地面から咄嗟に飛び退き山積みのコンテナへと足場を移す) っは!! ( ダキュンッ ! ! )(蘭歩に向けて発砲…と思いきや、彼の頭上でクレーンに宙吊りにされていたコンテナのロープに向けてそれを行い、ロープを銃弾で切断。そのコンテナは重力に促されるまま、真下の蘭歩を踏む潰さん勢いで落下する) 」

蘭歩「(伊達に追われる立場やってねぇな、よく周囲を見ている) ――――。(海東を追撃しようと駆ける最中、頭上より飛来するコンテナに一瞥をやる。だが進行方向、標的へすぐに目線を戻し補足を緩めず、しかし回避もせず)   ゴ  ッ ッッ    (アッパーカットの要領で木刀を握る拳を振り上げてコンテナの底面に当てがって『受け止め』、そのまま木刀を振り上げてコンテナを難なく両断し砕く) 」

蘭歩「――――ぜ ェ りァッッ!!!!!(床を砕いて踏み込んで上体を捻り、半回転の遠心力と持ち前の豪腕で威力を底上げさせた馬鹿正直な木刀による薙ぎ払いを海東が乗るコンテナにぶち当て……)      ズ ァ オッッ  !!!!   (分厚く強靭な斬撃と化した”衝撃波”がコンテナを貫通し海東の足裏へ迫る) 」

仮面ライダーディエンド「―――!(大気を貫かん勢いで迫る衝撃波を間一髪側転回避し、事なきを得る)…ふっ…そこらの怪人よりよっぽど化け物染みているよ、君は。それなら…―――― \KAMEN RIDE/ \BIRTH(バース) !/ \ACCEL(アクセル) !/   ド ギ ュ ン ッ ! !  シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ シ ャ カ ――― キ ュ ピ ー ン ッ ! (カードを二枚連続装填し光を発砲。分散する光の残像が重なり合うと、虚像は実体を持つ「仮面ライダー」となった) 」 」


仮面ライダーバース「さぁーて…稼ぎますか!(銃型武器「バースバスター」を手にその銃口を突きつけ、蘭歩に向けて発砲する) 」

仮面ライダーアクセル「さあ、振り切るぜ…!(アスファルトに突き刺さるほどの重量を持つ剣「エンジブレード」を片手で引っさげ、バースの援護射撃をバックに蘭歩へと重い斬撃を繰り出した) 」


蘭歩「(虚像が海東と似て非なる、新たな仮面ライダーの形を成すその光景に笑みが消え片眉を顰める)!! (札から新手――――!!)   ゴ ンッッ  (黄金色のオーラを纏った木刀の持ち手、切っ先を握り刃の腹でアクセルブレードの斬撃を受け止める。火花は散り、深い切れ込みが走るが木刀であるにもかかわらず持ち応え鍔迫り合いになる) 」

蘭歩「―――― く ら ぁ ・・・ (怪力と馬鹿力、力押しのぶつかり合いにおいて蘭歩は『脱力」を選択した。酔っ払いのような『千鳥足』で後方へ仰け反る、その絶妙且つ変則的な体軸の『ズラし』で仮面ライダーアクセルと肩透かしにすれ違う形で斬撃を受け流し) ガッッ(木刀を手放し両手をフリーへ。仮面ライダーアクセルの脇下に腕を絡ませて組み付き拘束 → 彼の背を仮面ライダーバースによる援護射撃に対する盾にしようとする) 」

仮面ライダーアクセル「ギチッ…ギギギチィッ…―――――!?(拮抗し合う中、まるで引きずり込まれるかの如く前方へ傾倒し、その最中に身柄を拘束される) うぐあああああぁぁッ!! (蘭歩の目論見通り彼の「盾」となってしまい、全身にバースの連続射撃を浴び続け全身から火花が飛び散っていく)くッ…!(身を捩り、蘭歩から逃れだす) 」

仮面ライダーバース「おっとぉ…!そういうことするぅ?チャリンッ…クルン、クルン、ポンッ☆(バースドライバーにセルメダルを投入し、ガチャポンのようにハンドルを回しはじめる)ガチャンッ、ガチャンガチャンガチャンッ ! ! \ ドリルアーム !/ (右腕に金属部品を纏い、文字通りのドリルアームを形成) ギュイイイイイイィンッ ! ! ! (回転を始めたドリルで殴り抜けるように右腕を蘭歩へと豪快に振るった) 」

蘭歩「(下手打てば即死貰う赤い奴、後方支援も前衛もなんでもござれの緑の、漫才コンビみてぇに絶妙且つ面倒な組み合わせだ……もたつけばコソ泥に逃げられちまうが……)―――――『金剛・武甲』(木刀が纏っていたオーラを今度は”手刀”に纏わせ空手でいうところの前羽の構えを取り)ゴンッッッ ギュルルルギャリギャリリリリ”リ”ジジジジジッッッッ(手の甲をドリルに当てる。人体のそれとは思えない擬似金属音が鳴り、火花が散る。ドリルの音速回転が皮膚を巻き込んでいるというのにヤスリにかけられた程度の細かい傷が刻まれるだけに留まり)るァ”ッッッッ!!(槍のように前へ突き出された”前蹴り”で反撃に出る) 」

仮面ライダーバース「おっほッ!?やるねえ、あんちゃん!さては人間やめてるnドボォッ!?  バシャーーーンッ ! ! ! (そんな悠長なことを吐きながらも鋭い前蹴りによって海へと蹴り落とされてしまい、その後彼が戻ってくることはなかった) 」

仮面ライダーアクセル「 \エンジン・マキシマムドライブ !/ はあああぁぁぁぁ…… うおおおあああぁぁッ!!!(エンジンブレードのスロットへエンジンメモリを装填。蒸気を吹き出し赤熱するブレードの柄を両手で握りしめ、エネルギーの膨張で稲妻までもが発生した刃で必殺の一刀両断を繰り出そうとする) 」

蘭歩「石仮面被った覚えはねえなァッ!!(仮面ライダーバースを蹴り落とした勢いにか任せ床へ前転し床に転がった木刀を回収しつつ体制を立て直し仮面ライダーアクセルを見やる)(温存……は許してくれる相手じゃねえ、クソババァの顔がチラつくから使用は避けたかったが……)―――――――『 金 剛 居 合 』―――――(気を練り込み発光させた刃を懐に納め『居合』の構えを取り、アクセルの斬撃を迎撃しようと構え血管の浮き出た拳が岩のように強張った) 」

蘭歩「――――― 『 顎 < ア ギ ト > 』ォァッ!!!! (居合を放つ前の予備動作の体勢のまま、刃ではなく木刀の『柄頭』で渾身の斬撃を受け止める。蓮気によって強度を増しても鋼さえも容易く両断するアクセルの一斬、当然木刀に亀裂が走り崩壊するが――――)   ヴォ   ン  ッッッッ!!!!!!(木刀が砕けるまでの刹那、柄頭の軸をズラし斬撃の軌道を変えさせ、真一文字の居合をゼロ距離で仮面ライダーアクセルの胴体へ放とうとする) 」

仮面ライダーアクセル「なんだとッ――― ぐあああぁぁああッ!!!(装甲すらバキバキに粉砕するであろうその破壊力によって見事に「く」の字に曲がり、幾つものコンテナを突き抜けながら、彼もまた海へと叩き落とされてしまった) 」

仮面ライダーディエンド「――――― なるほど。これはまともに殴り合うのは難しそうだ。(二体の虚像ライダーとの戦闘を傍目に観察していた青年は軽い足取りで姿を現わす) だが、当たらなければどうということはない。(ディエンドライバーをポンポンと弾ませながら尚も蘭歩へと歩み迫る) 」

蘭歩「さっきのデュエルモンスターズもどきは陽動だと思ったんだがな、存外肝っ玉座ってるんだな(へっと口端を釣り上げ、折れた木刀を放り投げる)おまけに痛いところをつく。要するに当たってやらねえっていう確信があるんだな(踵を返しディエンドの姿を確認すると、ゆっくりと歩を進め徐々に間合いを詰めていく) 」

仮面ライダーディエンド「  フッ  (仮面の内側、鼻で嘲笑したのが伝わる) \ATTACK RIDE/ \BLAST !/ ズドドドドッ ! ! ! (カード装填後、変則的な軌道を描く銃弾を何発も発砲し、蘭歩を翻弄しながら銃撃する) 」

蘭歩「(一流の剣士が持つ並外れた動体視力で視認できる銃口の向きから弾道予測、紙一重で回避――――)  ドズッッ  (―――できない、球が脇腹を抉り目が大きく見開かれる。本来銃弾は直線上に飛ぶものだが”変則的”である銃弾は、密林で羽虫に触れられてはならないという難題に等しかった)なるほど確かにハッタリじゃねえ……間合いの外から四方八方チクチクやられたんじゃ打つ手がねえぞ、京女みてえにねちっこい攻め方だ(気を纏わせた両拳を頭部に宛行い可能な限りステップを踏んで回避する。致命傷こそ回避できるが、ダメージは徐々に蓄積されていく一方) 」


――――――― ブウォーーーーーーッ ! ! ! (港一帯に、今まさに出港する赤錆の船の汽笛が鳴り響いた) 」
仮面ライダーディエンド「フッ…(さて、次の一手は…―――――!)(羽虫のように素早く不規則に飛び交う銃弾の折に閉じ込められた彼に差し迫ろうとしたその時、汽笛の音に歩みを止めた)―――― しまった…ッ…!!


蘭歩「(反撃の一手……まあ博打だがいつものことだ、行くぜええエエエェェェェ)――――― ピ タ (一転攻勢の賭けに出ようと気合を入れた丁度そのタイミング、汽笛とそれを合図に動きを止めた海東の様子に目を丸くし足を止めてしまう) 」

仮面ライダーディエンド「 …どうやらお互いに勘違いをしていたようだね。僕は"まだ"、例の刀をこの手にしていない。これから手に入れるのさ!  バッ ! !  (蘭歩に向かって何かを投げ渡した) 」
ディエンドが蘭歩へ投げ渡したもの…それは「 刀 」。だが、生粋の剣士である彼には、「それ」が"大業物"クラスであることが手に取った瞬間に判断できた。そして、刀の頭の輪にはチェーンのようなものが繋がっており、それを辿ると刀とはアンバランスなこれまたずいぶん可愛らしいテディベアが括り付けられていた。 」

仮面ライダーディエンド「生憎だけど、変体刀の価値に勝らない刀への執着はそこまででね… 代わりにそれを譲ろう。だから、もう二度と僕の前に現れないでくれたまえ。じゃっ。(そう告げると、踵を返すことなく向き合ったまま海へと飛び込もうとする) 」

仮面ライダーアクセル(バイクフォーム)「  バ シ ャ ア ア ァ ッ ! ! !  (ディエンドが海へ飛び込もうとしたそのタイミングで、先程蹴落とされたはずのライダーがバイクのような形状に変形した状態で海面へと打ちあがり、ディエンドの足場…否、乗り物として出現した)さあ…―――― 振り切るぜ!(ディエンドを乗せたライダーは、アクセル全開で後輪を掻きまわし、海水を勢いよくまき散らして船に向かって走り出した) 」

蘭歩「待て待て待てェェェーい!!勘違いで済むかッ!お前が持ってようが持ってまいがふんぱじれば金が入ん……(ディエンドになんとか追いつこうとギャグ調の三白眼をひん剥いて駆け出すが) パシッッ (彼から投擲された飛来物を手に取り、その拍子に港から遠ざかる彼の背を見送る形となってしまう)ディエエエエーーーンド!!逮捕だァァァーーーーッ!!!!(とっつぁん定期)―――――で、なんだこれ……値打ちもんにゃ違いないんだろうが……え、なにこれクマ?なんでクマ?土産物の詰め合わせセットかこれ…… 」




















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最終更新:2021年11月26日 01:40