【プロローグ】
(藤岡サイド)
(藤岡サイド)
最近、南家に頻繁に出入りしている少年がいるらしい。
何でも隣に住んでいて、チアキちゃんと同じ学校に通う小学生だとか。
気になった俺は南家にお呼ばれした時に、何気ない日常会話を装ってそのことを聞いてみた。
なるほどね……。南たちと楽しく雪合戦、あまつさえ一つの毛布にくるまるとは……。
「つまり、勝負しようっていうことか」
「ん? 藤岡、何ヘンな独り言を言ってるんだ?」
顎の下でチアキちゃんが訝しげな声をあげた。
ああ、ちなみに言い忘れていたけど俺は藤岡。ただの中学生の男子だ。下の名前は例のごとくまだない。
「――とうとう俺も本気を出す時がきたようだね」
「??? 今日の藤岡、なんかヘンだぞ」
「ごめん、今日はもう帰るね」
「ん? ああ……」
「あれ? 藤岡君、もう帰るの? 折角なら夕飯を……」
「それには及びませんよ、ハルカさん。今日はもうウチに用意してあるみたいなんで」
「なんだよー、折角のウチのボスの手料理を食ってかないなんて罰当たるぞー」
「ははは、勘弁してよ南。それじゃまた明日学校でね……」
そうして俺は南家を後にした。
その時の俺の口の端が、僅かに邪悪に歪んでいたことには、三姉妹のうちの誰も気付かなかっただろう。
何でも隣に住んでいて、チアキちゃんと同じ学校に通う小学生だとか。
気になった俺は南家にお呼ばれした時に、何気ない日常会話を装ってそのことを聞いてみた。
なるほどね……。南たちと楽しく雪合戦、あまつさえ一つの毛布にくるまるとは……。
「つまり、勝負しようっていうことか」
「ん? 藤岡、何ヘンな独り言を言ってるんだ?」
顎の下でチアキちゃんが訝しげな声をあげた。
ああ、ちなみに言い忘れていたけど俺は藤岡。ただの中学生の男子だ。下の名前は例のごとくまだない。
「――とうとう俺も本気を出す時がきたようだね」
「??? 今日の藤岡、なんかヘンだぞ」
「ごめん、今日はもう帰るね」
「ん? ああ……」
「あれ? 藤岡君、もう帰るの? 折角なら夕飯を……」
「それには及びませんよ、ハルカさん。今日はもうウチに用意してあるみたいなんで」
「なんだよー、折角のウチのボスの手料理を食ってかないなんて罰当たるぞー」
「ははは、勘弁してよ南。それじゃまた明日学校でね……」
そうして俺は南家を後にした。
その時の俺の口の端が、僅かに邪悪に歪んでいたことには、三姉妹のうちの誰も気付かなかっただろう。
寒空の下を一人歩きながら考えた。
こうなったら、誰かに手を出される前に俺が南家を支配してやろう、と。
ドス黒い欲望に心の中が燃えていた。
そうさ。俺はもともと、こういう人間だ。
外では大人しいただの中学生に見えるかもしれないがな。
気に入ったものはどんな手を使ってでも手に入れる。それが俺の正義だ。
さて、決意は固めた。次に野望達成への戦略だ。
まずはどこから攻めるべきだろう。
肝心要の次女の南……もといカナは、ラブレターを出すという直接的なアプローチを仕掛けても随分と反応が鈍かった。
相変わらずこちらのアプローチに気付く様子もないし、一筋縄ではいきそうにない。
まあ、そんなところが俺を燃えさせるのではあるが。
少し気を見せただけでなびくようなほかの女とは大違いだ。全く最近の女は……おっと、話が脱線した。
とにかくカナを落とすのは時間が掛かる。ならばまず外堀から埋めていくのが得策。
つまりは三女のチアキちゃんと長女のハルカさん――この二人だ。
元々南にしか興味の行っていなかった俺ではあるが、南家に出入りしてこの二人に出会ってからはその認識も少し変わった。
チアキちゃんはどうも俺になついているらしく、家に行くたびに『特等席』に座られる。
『ふじおか』という名前をつけられたらしいあのぬいぐるみも、随分と大事にしているという話だ。
まだ小学生なのが玉に瑕だが、十分に可愛らしく将来性も抜群だ。今のうちに手をつけておいて損はないだろう。
ハルカさんは容姿端麗、気立てもよく、家事も得意で……と女性の鏡のような存在だ。
きっと学校では先輩の男子に好かれるタイプだろう。
それももの凄くナルシスティックな男に……随分具体的だが、まあ兎に角魅力的ということだ。
年上なのはこれまた玉に瑕だが、何度か会って話した感じから判断するに、まだ男経験はそうは多くないだろう。
ある意味母性の象徴のような存在。そんな完璧な女性がまだ誰の手にも染まってない可能性があるというのなら、やる価値は十分だ。
腹は決まった――。あとは実行あるのみ――。
有り得ないくらいに黒い自分に、多少驚きはしたものの、すぐに受け入れ、俺は家路を急いだ。
だって、もともとこの人格こそ本当の『俺』かもしれないのだから――。
こうなったら、誰かに手を出される前に俺が南家を支配してやろう、と。
ドス黒い欲望に心の中が燃えていた。
そうさ。俺はもともと、こういう人間だ。
外では大人しいただの中学生に見えるかもしれないがな。
気に入ったものはどんな手を使ってでも手に入れる。それが俺の正義だ。
さて、決意は固めた。次に野望達成への戦略だ。
まずはどこから攻めるべきだろう。
肝心要の次女の南……もといカナは、ラブレターを出すという直接的なアプローチを仕掛けても随分と反応が鈍かった。
相変わらずこちらのアプローチに気付く様子もないし、一筋縄ではいきそうにない。
まあ、そんなところが俺を燃えさせるのではあるが。
少し気を見せただけでなびくようなほかの女とは大違いだ。全く最近の女は……おっと、話が脱線した。
とにかくカナを落とすのは時間が掛かる。ならばまず外堀から埋めていくのが得策。
つまりは三女のチアキちゃんと長女のハルカさん――この二人だ。
元々南にしか興味の行っていなかった俺ではあるが、南家に出入りしてこの二人に出会ってからはその認識も少し変わった。
チアキちゃんはどうも俺になついているらしく、家に行くたびに『特等席』に座られる。
『ふじおか』という名前をつけられたらしいあのぬいぐるみも、随分と大事にしているという話だ。
まだ小学生なのが玉に瑕だが、十分に可愛らしく将来性も抜群だ。今のうちに手をつけておいて損はないだろう。
ハルカさんは容姿端麗、気立てもよく、家事も得意で……と女性の鏡のような存在だ。
きっと学校では先輩の男子に好かれるタイプだろう。
それももの凄くナルシスティックな男に……随分具体的だが、まあ兎に角魅力的ということだ。
年上なのはこれまた玉に瑕だが、何度か会って話した感じから判断するに、まだ男経験はそうは多くないだろう。
ある意味母性の象徴のような存在。そんな完璧な女性がまだ誰の手にも染まってない可能性があるというのなら、やる価値は十分だ。
腹は決まった――。あとは実行あるのみ――。
有り得ないくらいに黒い自分に、多少驚きはしたものの、すぐに受け入れ、俺は家路を急いだ。
だって、もともとこの人格こそ本当の『俺』かもしれないのだから――。
さて、最初の標的を三女のチアキと長女のハルカに絞った後は、まず先にどちらを落とすかという問題になる。
この問いに対する答えは簡単だ。
「まずは――チアキちゃんだろうね」
チアキちゃん。南家の誇る最強のお利口さん。
小学生とはいえ、頭の回転も速く、性格も一癖あり、一筋縄では行かないクールタイプの少女だ。
しかし、そんな油断も隙もないチアキちゃんに対して、俺には勝算があった。
と言うのも、理由はわからないがチアキちゃんは、特等席やぬいぐるみのことでもわかるように、俺になついているフシがある。
最初は年上の男に対しては皆そういう反応をするものなのかと思っていたが、ハルカさんの話ではどうもそうではないらしい。
つまりは多少俺のことを憎からず思ってくれているということ。
チアキちゃんには悪いが、その好意を利用させてもらうことにした。
あー、こんなこと言って「藤岡死ね」なんて弾幕でディスプレイを埋めないで欲しい。
俺はああいう類のバカとは違う。ヘタをうって、チアキちゃんに殺されたりなんかしない。
それに俺には欲望もあるが愛だってきちんとあるんだ。
さあチアキちゃんの好意に、思いっきり応えてやろうじゃないか。
この問いに対する答えは簡単だ。
「まずは――チアキちゃんだろうね」
チアキちゃん。南家の誇る最強のお利口さん。
小学生とはいえ、頭の回転も速く、性格も一癖あり、一筋縄では行かないクールタイプの少女だ。
しかし、そんな油断も隙もないチアキちゃんに対して、俺には勝算があった。
と言うのも、理由はわからないがチアキちゃんは、特等席やぬいぐるみのことでもわかるように、俺になついているフシがある。
最初は年上の男に対しては皆そういう反応をするものなのかと思っていたが、ハルカさんの話ではどうもそうではないらしい。
つまりは多少俺のことを憎からず思ってくれているということ。
チアキちゃんには悪いが、その好意を利用させてもらうことにした。
あー、こんなこと言って「藤岡死ね」なんて弾幕でディスプレイを埋めないで欲しい。
俺はああいう類のバカとは違う。ヘタをうって、チアキちゃんに殺されたりなんかしない。
それに俺には欲望もあるが愛だってきちんとあるんだ。
さあチアキちゃんの好意に、思いっきり応えてやろうじゃないか。
プロローグ 終わり
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- これが悪夢の始まりである -- 名無しさん (2009-11-08 14:18:41)
- (住民達の) -- 名無しさん (2009-11-09 00:22:16)