テノリライオン

書庫版あとがき--ep

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匿名ユーザー

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 生まれて初めて「物語」の体を成したものを書いた。 私の物書き事始め。 
 ここから長い付き合いになる七人のキャラクターが生まれたシリーズにして、まだ全員がNoName。 

 段落がない、三点リーダを使っていない、カッコの使い方に規則性がない。 
 説明が足りない、描写が足りない、セリフが足りない。 
 ……とはまぁ、勿論今と比較して「足りていない」というだけの事で。 
 今だったらもっとあれを足してこれを足して、と毎行毎行思わずにいられないのは、たまらなく恥ずかしいけれども成長の証だ……と思う。 

 けれど同時に、意外と――ひどいな、とも思わない。 
 特にep3あたりからは、文章回しなどは今に輪を掛けてまだまだお話にならないながらも、どうにか筋を作って読ませようとしている空気が伺えたりもして。 
「初めてにしては意外とやれてんじゃん」というのが、このepシリーズ+「風と光の野へ 前後編」に対する率直な感想だったりする。 自画自賛御免。 

 ま、これを見て「スタート地点が高い」と自惚れるか「成長がない」と絶望するかは紙一重な所だけれど。 

  ~・~・~・~・~

 さて、投稿先でも書いたような気がするが、このシリーズに出てくるキャラクターには全てリアルのモデルがいる。 私の所属するLSのメンバーだ。 基本的な性格や互いの上下関係のようなものも、実際のそれに近いものにしながら書いている。 
 土台となる世界は当然ながらヴァナ=ディール、そして全員某鯖にて現在も活躍中の彼ら友人達&自分自身をキャラ作りの下地にした事で、筆運びは相当軽いものになった――けれど。 

 その代償として、ゼロから物語を立ち上げる力のないまま、私は「お話作り」の快感に取り憑かれてしまった。 

 これは違う。 これは「近道」だ。 最初の一歩だと言うのに、私は自力で歩いていない。 
 そう気付いて恐ろしい焦燥に駆られ始めるのは、もう少し後になってからの事だった。 
 しかし――そうでもしなければ。 
「創造性」というものに全くと言っていいほど恵まれなかった、そしてそれを養う訓練をこれまで全くして来なかった私に、「お話を書く」などという所行は逆立ちをしたって不可能なのは明白だったのだ。 

 今でもはっきり覚えている。 あれは確か小学校の中学年の頃だった。 
 担任の先生が「自分でお話を書いてきなさい」という宿題を出したのだ。 
 私は書けなかった。 そんな恥ずかしいこと出来るわけないと、ストーリーを考える事すら始めから放棄した。 実際に何も思いつかなかった。 例え思いついたとしても、それを人様に向けて開陳するなど顔から火が出るほど恥ずかしい事だ、出来るわけがないと思った。 それはほとんど怯えるように。 内気で臆病で、恥をかく事を極端に恐れる子供だった。 
 そう、あらゆる意味で、私は「書けなかった」のだ。 

 その宿題については結局、以前に読んだ児童書の書き出し部分を、ほぼ登場人物の名前を変えただけで――その変えるべき名前を考えるだけでもむずがゆかった――提出した。
 確か、近未来を舞台にした少年の冒険物語で。 宇宙に散った父親の後を継ぐべく、その宙域へ向かうロケットに乗せてくれと高名な博士に頼み込む、そんなようなくだりだった。
 その宿題の行く末がどうなったかは覚えていないが、「これはあの本の丸写しですね」と怒られたりはしなかったと思う。 優秀な生徒の作品が発表されたかとか、そういう後日談の記憶も全くない。 
 なるべく早く忘れたかったのだろう。 いや、もともと物覚えが極端に悪い子供ではあったが。
 勿論今も十分悪いけど。 
 とにかく当時の私にとって、「お話を書く」などというのは完全に行動の埒外で――まるで恥ずかしい禁忌のように「ありえない」事だったのだ。 

 あの時――気付いていれば。 
 何かのきっかけを掴んでいれば。 
 あの時でなくても、せめて十代のうちに。 この快楽の存在に気付いていれば。 
 一体どれだけの風景を、心象を、熱情を絶望を喜びを悲しみを――私は置き去りにして来たのだろうか。 
 ただでさえ物覚えが悪いというのに。 
 人生をもう一度やりなおしたいと、忘れっぽいうえに逃げ癖がついていたせいで楽しい事としんどい事のどっちが多かったのかも判らない少女時代に戻りたいと、思ったのはこれが初めてだった。 
 悔しい――――

  ~・~・~・~・~

 ま、そんな詮無い自分語りというか繰り言は置いておいて、本編に話を戻そう。 

 現在の私は言うなれば「短編書けない病」に悩まされているわけだが、この頃の私はどうやら一応「短編」が書けているらしい。 
 描写不足・説明不足=枚数不足じゃんと言われればグゥの音も出ないが、それにしても一つのオチを早くつける事は出来ていたようだ。 
 まさにロストテクノロジー。 これを参考に、もう一度短編を書けるようになろうと思う。 勢い余って退化したりして。 

 反省対象は「白き盾」「きざはしの日々」。 
 お気に入りは「緋色の未来」「熱砂に溶ける心」。 次点で「空を仰いで」。 

「白き盾」は、行動の叙述が稚拙に過ぎる。 
「きざはしの日々」は、やりたいと思っている事に筆力が追いついていない。 

「緋色の未来」は……あのエル赤が個人的に贔屓株なので、気に入らざるを得ない。 
「熱砂に溶ける心」は、このシリーズ内に於いてはそこそこに心のアヤみたいなものが上手く表せた一作じゃないかと。 自画自賛以下略。 

「風と光の野へ 前後編」はちょっと別格扱い。 
 自分のキャラで恋愛系は無条件に恥ずかしい――というのもあるが、長さと内容に対して色々足りないと思うのである。 キャラの行動理念とか動機とか、そういったものの下ごしらえが相当不足していると思う。 
 何故その人がそう考えてそう行動するのか、それに説得力を持たせる為には、無駄に見えてももう少し「書き込み」をしなければいけないな、と今の私は思うのである。 

 ――とまあ、語り始めれば尽きないけれど。 
 何しろこれが、私のモノカキの原点であります。 


ep9「熱砂に溶ける心」に寄せて。 
ラバオ、オアシスのほとりに咲く花。 


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