テノリライオン

書庫版あとがき--野ばら

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匿名ユーザー

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ここらあたりから何と言うか、いわゆる心のキビみたいなものを、意識的に書き始めたような気がする。
勿論、書けているかどうかは別として。

ここで持っていた目標というか目的は、個人的お気に入りである所のヴォルフ君の徹底した無愛想っぷりとか、それでいて決して鈍い訳でも冷たい訳でもない所とか、まあ要はTheWayHomeで出し切れなかった、私が彼について抱いているキャラ設定を思う存分発揮させたかったというもので。

とは言え、「何を考えているか判らない」というキャラクターを、その本人をメインにして書き出す力量はまだ自分にはないな、と当時の私は思っていて。
そうしてしまったが最後、その「判らない」所まで描写していかないと状況を成立させられず、そしてそれを封じたらきっとただあやふやなだけのヌケたお話になってしまうに違いない、と。
まあそんな読み(?)もあり、一応恋愛物にしようと予定していた事もあって、ならば思いっきりその女の子の視点から書いてしまえ、という気になったわけである。

ま、それでもやっぱり、彼を思うように書くのは非常に難しかった(笑)。
致命的に長ゼリフを喋ってくれない、加えて表情にも乏しいから、短いセリフや動作中に彼の思考が垣間見える風にしないと(と言うか、そうしたいと)思っていたのだが、これがもう泣くほど難しい。
積極的に物語を動かしてくれるキャラとくれないキャラがあるな、というのをつくづく感じた(笑)。
結果、そういう彼と付き合う事でローザちゃんの方に変化を持たせて、という形に主になったわけだが――まあ、これはこれで、彼女の方の描写に熱を入れる原動力になったとも言える。

すっかり世を拗ね、親切で優しい他人が接触を持とうとしてくれても一切受け付けずに自分の殻にこもってしまった女の子が、全く自分に(ある意味)興味を示さない、色眼鏡で見ない男性により救われる――という筋書きは、自分で言うのも何だが非常に書き甲斐があった。
このお話の起点は「The Way Home第17話ヴォルフ」にある彼の墓参りであり、つまちローザちゃんにはもうお話が始まる前から死が確定されていたわけなのだが、それが途中から申し訳なくなってみたり。
彼女に愛着がわいてしまって、なるべく幸せなラストを演出してあげたいと、かなり時間をかけて頑張った記憶がある。

実はこのローザちゃんが、私にとって初めての「モデルのいないキャラクター」なので、性格や行動様式などが今ひとつ固め切れていない感があるのだが(なら他は固まっているのかと聞かれればすみませんとしか答えようがないが)。
それでもこれは、新しい試みに色々挑戦した思い出深い作品である。



第2話より、二人が剣を交えたラテーヌの草原。

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