テノリライオン

06-09-27

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corelli

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西尾維新「ニンギョウがニンギョウ」読了。


読了、と言っておきながら、まともな感想を書く気はさらさら無い。
書ける技量がない、と言ってもいい。
面白かったとか素晴らしかったとか、そういった「まともな」感想を求められるべき作品でもないだろう、とも言える。

不条理と言うには壊されるべき条理がない。
始めから壊れているのだ。 造り上げて壊そうとかそういった意図はなく、壊れたものを壊れたままにただ壊れ続けている。
テーマもなければ主張もない。 ストーリーはかろうじてあるもののそれすら条理から遙かに遠く、ただ無為に読むために、読まれるためだけにあるような本だ。
だからおいそれと人には勧められない。 面白いよとか凄いよとか、そういったコピーが何一つ言えない。 これを楽しむ為には絶対的に西尾維新が、しかも西尾維新の「この部分」が好きでなければならない、もしくはこれを読んで西尾維新という作家を好きになれる人しか楽しめない。 その最たる作品だと思う。
間口はすさまじく狭い。

なので私は楽しく読んだ。
ただ流れる文章を引っ張られるように目で追って、電波寸前にすっ飛んでいく内容に一人にやりと笑った。
まるでガンジャをキメたように(いや、キメたことはないけれど)、理屈はいらない愉快だからと、その一言で済ませていいような読書。
壊れていてもなお読ませるのは筆力のなせる業だ。

そうそう、この本は装丁がとても面白い。 徹底的に「古さ」を演出しているのだ。
厚紙の保護ケース(というのだろうか)に挿さっていて、本体の表紙は何と薄い油紙。
字体(活字?)もタイプライターで打ったような質感で、印字の圧力で紙の裏に凹凸ができていたり、ご丁寧にインクの量にわずかなムラまである。
製本技術なんかには全く詳しくないけれど、これは手間がかかっているんだろうなぁと思う。
出版社の懐の深さというやつだろうか。 こういう内容の本に、こういう手間とお金をかける茶目っ気は大歓迎だ。
恐らく新書のコーナーで、やたらと薄くてレトロ感漂う緑色の背表紙を見かけたら、買わなくてもいいからちょっと手にとってみて頂きたいと思う。


カテゴリ: [読書] - &trackback() - 2006年09月28日 01:06:05
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