第一回戦修羅界 ロダン
名前 |
性別 |
魔人能力 |
月読茎五 |
男性 |
倍にして返してやるぜ…! |
曼珠沙華深奈 |
女性 |
パラサイトフォース |
ロダン |
男性 |
アペリティフ |
採用する幕間SS
なし
本文
「「「はい!次の試合は修羅界ですね!」」」
「「「永遠に戦い続ける戦士の狂宴!一撃死以外は即座に回復し、戦い続ける地獄!」」」
「「「呼ばれた参加者の方たちは準備をお願いしますねー!」」」
「ふっ、久々だな。ベストコンディションでの戦いは……!」
ようやく自分達が呼ばれ、ロダンの顔に笑みが見られた。
他の試合を見るというのも重要ではあるものの、生粋の格闘魔人であるロダンは早く戦いたくてウズウズしていたのだ。
しかも相手の内1人が格闘魔人、しかも自分と同じく格闘大会への参加経験がある者。
もう1人の対戦相手も能力こそ不明ではあるものの、配られた参加者紹介を見る限りは楽しめそうな相手だ。
もちろん敗退するわけにはいかない試合ではあるが、ロダンはこれから始まる戦いを楽しみにしていた。
作戦はただ1つ。攻めて攻めて攻めまくることだ。それこそが自分のファイトスタイルであると自負しているからこそ、引く訳にはいかない。
「「「揃いましたね!それでは行ってらっしゃーい!」」」
「んー?3人一緒の場所に出るんじゃないんだー?」
見渡す限りの地平線、修羅界に転送されてきたシンナは一人ごちていた。
[シンナよ、どうやらまずは対戦相手を探すところから始めなければならないようだな。]
シンナの体内にいるパラサイトフォース―罪―が念話で話しかけてくる。
「どこにいるのかなー?」
[油断するなよシンナ、魔人同士の戦いでは何が起こっても不思議ではない。もう試合は始まって――]
ド ゴ ン !
[――え?]
突然のことだった。先ほどまでいなかったはずの対戦相手が……ロダンが、パラサイトフォースが気付いた時にはシンナの左脇腹に拳をめり込ませていた。
シンナの左のアバラがぼきりと嫌な音を立てて折れ、シンナの体は右方に大きく吹き飛ばされた。
[シンナ!大丈夫か!?]
慌ててパラサイトフォースはシンナに呼びかける。だが…
「うわっ…びっくりしたーー!アンタいまのどうやったの?」
[シンナ!?]
対して、シンナの方は何事もなかったかのようにロダンに話しかけていた。
それに対し、ロダンは極めて紳士的に回答する。
「びっくりさせてすまない。私の名はロダン。能力を使わせてもらった。」
ロダンの能力『アペリティフ』は、「戦闘開始前に相手のアバラを叩き折る能力」である。
これは一見、尋常ならざる腕力を持つ格闘魔人のロダンには無用の能力にも思えてしまうだろう。
その攻撃力をもってすれば、例え相手が魔人であろうともアバラを折ることは難しくないからだ。
だがアペリティフにはただのパンチには持ちえない特殊な効果がいくつかあった。
その1つが今見せた瞬間移動。
「戦闘開始前に相手のアバラを叩き折る」という結果に辿り着く魔人能力の前では、距離の概念などは何の役にも立たないのだ。
そしてもう1つ、アペリティフには「相手を格闘魔人として開花させる」という特殊な効果があった。
「魔人なら誰しも、無意識に抑えている秘めた力がある。悪いが今の骨折でそのリミッターを外させてもらったぞ!
さあ!早速戦おうじゃないか!」
どうやら特殊能力の発動には成功したらしい。
何もない場所に放り出された時にはどうしようかとも思ったが、能力によって対戦相手を見つけ出すことができたのは幸運だった。
こちらがボクシングの構えをとると同時に、目の前の魔人は叫び声をあげ黄色い鎧を身に纏っていた。
得体の知れない能力ではあるものの、とにかく前に出なければ勝機は掴めない。
ロダンは即座にシンナに向かって距離を詰め始めた。
「チッ……誰もいねぇじゃねぇか。」
ヤンキー風の少年、月読茎五は自分が連れてこられた試合会場の広さにあきれていた。
「こんな広いトコロでやる意味あんのかよ、メンドクセー。」
まずは相手を探さなければいけないのかと思うとうんざりする。
石松町での格闘大会も同じようなものだったが、いくら何でも殺風景すぎるし、何よりも3人でこの広さは広すぎる。
さて、どうやって探すか…そう思った矢先、
ド ン !
遠くの方で大きな音がした。その方向に目を向けてみれば、はるか彼方に赤青黄の3色の爆発も確認できる。人影は流石にこの距離では分からないが……助かった。
まずはあそこを目指していけば対戦相手がいるのだろう。とにかく勝って、このトーナメントを勝ち進んでやる。
[バカモン!もっとよく動かんか!ああもう時間じゃ!わしゃ変わるぞ……アハハハ!次は私よ!シンナもっとしっかりしなさい!]
シンナは苦戦していた。アバラを折られてから妙に体の調子が良いが、それを差し引いても相手のスピードとパワーは驚異的であった。
プライドフォースも、グラトニーフォースもロダンの必殺ブロー『地獄の門』によって一撃で砕かれてしまい、ラースフォースも粘ったが、ここが修羅界という要因もあり相手に決定的なダメージを与えることなくタイムリミットを迎えてしまっていた。
「アンタ強いねー!でもこれならどうかな?」
修羅界の何もない地形であれば、タイヤ型のグリードフォースは100%の力を発揮できる。
戦いながらロダンの動きを観察していたシンナは、グリードフォースの体当たりなら対抗できると確信していた。
「ふっ…面白い。」
不敵に笑うロダン目掛け地面を抉りながらシンナが突撃する!ロダンは避けきれず、高速の体当たり攻撃がロダンに突き刺さった。
だがロダンもクロスアームブロックにより致命傷は避けていた。咄嗟の判断で突っ込みシンナが最大速度に達する前に当たったことも功を奏した様である。
だが、いまの一撃は中々の手応えがあった。クリーンヒットすれば流石に相手も無事では済まないだろう。
「へえ!今のでも大丈夫なんだー!?でも次もうまくいくかなー?」
そう言ってシンナは次の体当たりの準備に入った時だった。
[シンナ!危ない!]「っ…!」
パラサイトフォースが気付いて声をかけなければ危なかった。
シンナが先ほどまでいた地点の地面はへこみ、そこには、
「はッ、よく避けたじゃねーか……!」
月読茎五が立ってこちらを睨んでいた。
着いた時にはもうバトルが始まっていた。
さっき吹っ飛ばされた奴の方は確かロダンとかいう奴だ。ということはあの紫色のタイヤみたいなやつがもう1人の対戦相手の曼珠沙華だろう。
不意打ち上等で殴り掛かってみたが、避けられてしまった。
「アンタ卑怯だねー!」
そう言うと同時に、タイヤ魔人が突然逆回転で体当たりしてきた。速い!ケイゴは避けきれずに体当たりを喰らってしまった。加速はあまり載っていなかったが、中々効いた…。
「痛ぇじゃねぇか……この痛み、倍にして返してやるぜ…!」
「これで……3人全員が揃ったか…!」
次の攻撃に備えてロダンが体制を整えていたところで、もう一人の対戦相手――月読茎五が乱入してきた。
シンナの体当たりを喰らいはしたものの直後の凄まじい反撃を見る限りは自分と同等の攻撃力を持っていると見ていいだろう。
一方のシンナはというと、壊れた紫色のタイヤに代わって今度は赤く巨大な羽を広げて高く飛び立った。飛行形態か。攻撃を仕掛けてくる様子はなく、そのまま離脱しようとしている。
「一旦ここを離れるようだが、あっちが逃げるならまずはケイゴ君の方を……」
そう思ってケイゴに向かって突進していくロダン。だがシンナの方を見上げて隙だらけのケイゴに容赦なく殴り掛かろうとしたその瞬間!ケイゴの姿は消えていた。
「!?」
反撃に備えるロダン。だがケイゴの叫び声は予想外にもはるか上空から聞こえてきた。
「逃がすか、クソ虫がァ!!!」
そして上空に響く爆音、次の瞬間には地面に叩きつけられる赤い物体――シンナ。
落下の衝撃がロダンの足元に伝わる。
落下と共に生じた砂煙が晴れた時、そこには既に事切れたシンナと、その傍に着地するケイゴの姿が見えた。
「ほう…素晴らしい!」
どういう原理かは分からないが、恐らくは自分と同様、何らかの特殊能力による瞬間移動を行ったのだろう。
それに加えて、あの攻撃力…インパクトの瞬間こそ確認し損なったが、上空から聞こえた爆音から考えて、どうやら自分をの「地獄の門」を上回る威力の必殺技を有しているらしい。
ロダンは予想以上の強敵の出現に、心踊らせた。この男は、ケイゴは…強い!
「相手にとって不足はない!さあケイゴくん!格闘魔人同士、心ゆくまでこの戦いを楽しもう!」
そして激しい殴り合いの末、紙一重でロダンの勝利!
●曼珠沙華深奈(死亡)vs ●月読茎五(死亡)vs ○ロダン
最終更新:2012年06月13日 21:59