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変質者達の狂演

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変質者達の狂演 ◆/gu4mZBKwU




山中を二つの大きな輪郭が駆けている。


前を行くは巨大な甲虫。
濃緑色の身体は二メートルを優に超えている。
二対の腕部と二対の脚部を持つが、その形状は人間とは程遠く、醜い。
宇宙から来たエイリアンだと言われれば信じざるを得ない姿であり――それは真実である。

地球外生命体・ワーム。
隕石と共に地球へ飛来したこの種族は、恐るべき二つの能力を以って人間社会に浸透していた。
一つは、人間に擬態する変身能力。
この能力は成体・サナギ体の区別なく使用可能で、外見のみならず記憶までも引き継いでしまう。
誰かがワームに殺害され、入れ替わられたとしても、気付くものはいないのだ。
もう一つは、タキオン粒子による超高速移動・クロックアップ。
成体のみが使用可能な能力であり、時間停止とも評されるほどの速度を誇る。
たとえ超音速の銃弾であろうと、これを発動したワームを捉えることはできない。
尤も、このワームは未だサナギ体なので、クロックアップの使用は不可能なのだが。


後を行くは覆面の巨漢。
マントにパンツというエキセントリックな服装が、却って鋼の肉体を強調している。
その肉体に秘められた実力たるや、この場に集められた者たちの中でも上位に位置することだろう。
これはワームが本能的に逃走を続けていることからも明らかだ。
安直なパニック映画にありがちな『異形に追われる人間』の構図は、ここには存在しない。

状況によっては通報モノの勇士。
その正体はアリアハンのオルテガ。
魔王バラモスを討つべく単身旅立ち、ネグロゴンドの火山で果てたと伝えられる
記憶を失ってアルフガルドに落ちてからも、揺るぎなき正義の心で大魔王ゾーマに挑んだ勇者である。
今の彼は、記憶を取り戻してはいない。
ここが故郷のアリアハンであることすら認知できてはいないだろう。
それでも、彼の正義の心は折れなかった。
ノアと名乗る存在を倒すべく立ち上がったのだ。



その矢先に現れたのが、前を走るワームであった。


ワームの外見は明らかにモンスター。


故にオルテガは、これをノア配下の魔物と考え、戦闘を開始したのだ。



オルテガの判断は決して間違ってはいない。
ワームは人間に擬態した上で殺し、その人間に成り代わることで人間社会に潜伏する。
当然ながら、一部の例外を除けば殺人に呵責など覚えない。
この怪物を退治することは、まさしく勇者の本領である。



不意にワームの足が止まる。
森林を抜けたその先には、目も眩む断崖絶壁。
しかも真下は数多くの岩が突き出した荒波の只中。
落下すればワームとて命はあるまい。
成体と比べれば、サナギ体の肉体は著しく貧弱なのだ。
人間側の戦闘員・ゼクトルーパーが使う武装でも命を奪われてしまうほどに。

ここぞとばかりにオルテガが駆ける。
数々の魔法を使いこなすオルテガだが、この敵は無手で倒すと決めていた。
ノアは明らかに強大な敵だ。
追うだけで逃げるような雑魚敵に魔力を浪費してはいられない。

オルテガの拳がワームへ繰り出される。
外殻を砕き、内部組織を叩き潰す威力を秘めた豪拳。
必中と思われた一撃が――何故か空を切った。
豪拳が打ち込まれるその瞬間、ワームの姿が掻き消えたのである。


拳を振りぬいた勢いそのままに、オルテガは崖から落下していった。



○  ○  ○



「何よ、あの人間……」

オルテガが落下し、ワームが消えた崖の上に、一人の少女がうずくまっていた。
人種はアジア系、恐らくは日本人、年齢は十代前後といったところ。
見かけは普通の少女に過ぎない。
しかし単なる少女が、この状況下で正気を保てるであろうか。

「擬態を解いてもびっくりしないし……こっちが泣きそうだったじゃない」

ワームが共通して持つ擬態能力。
人間体とワーム形態の切り替えは完全に自在。
窮地に追い込まれたワームは咄嗟に擬態を『行い』人間の姿に変化したのだ。
いわば『変質する者』だけに許された緊急回避法。
結果、ワーム本来の巨体を狙った拳は空を切り、オルテガは崖の下へと散っていった。

「第一、人間の殲滅って何? 私は人間じゃないのに?
 誤認だ、誤解だ! やり直しを要求するー!」

オルテガに追われていたワーム――人間としての名を藤林沙理子という――は夜の闇に叫んだ。
あくま人間に擬態した地球外生命体であり、ノアとやらのいう人類殲滅とは何ら関係ないはずなのに。
彼女が言うように誤認なのか、擬態したワームも人間扱いなのか、それとも別の理由があるのか。
ノアの考えなど、彼女に分かるはずもなかった。
彼女がただの少女であれば、悲嘆に暮れて絶望していたかもしれない。
しかし、繰り返すが彼女はワームなのだ。
かつて存在した人間・藤林沙理子を殺害し、その姿と記憶、そして人生を奪い去ったワームなのだ。

「……こうなったら、みんな殺して堂々と帰ってやる……!」

殺人に対し、忌憚など有り得ない。








「……成体になりたいなぁ」

高らかに宣言した直後、沙里子は気弱に呟いた。
クロックアップを使いこなす成体ならば、こんな殺し合いなど容易いに違いない。
しかし真に残念なことに、彼女はワームの中でも『ネイティブ』と呼ばれる種族であった。
外見上の違いは、サナギ体の頭にカブトムシのサナギのようなツノがあること。
実はこれまでのワームに関する解説は、基本的に『ネイティブ』ではないワームのことである。
『ネイティブ』は他のワームより先に地球へ飛来して、一部の地球人と秘密裏に手を結んでいた。
種族自体の強さが天敵である他のワームに劣るため、人間に力を貸す代わりに守ってもらおうとしたのである。
それでもワームとしての能力は有しており、『ネイティブ』が人間を殺して擬態することもあるのだが。

「はぁ……」

ところで、成体の『ネイティブ』は殆ど確認されていない。
つまりいくら頑張っても彼女はサナギ止まりなのだ。
しかも彼女の人間体は貧弱な少女。
こっちでの戦闘能力も全く期待できなかった。
勇者オルテガの脅威から逃れることができたのは幸運の賜物に過ぎない。
少しは頭を使わなければ、生き残ることすらできないだろう。
沙里子は念のため、オルテガが落ちてった崖下の様子を窺った。

「……ひっ!」

なんとオルテガは生きていた。
岩と激突し、荒波に揉まれながらも、岩肌にしっかりと取り付いているのだ。
恐るべきは勇者の底力。
沙里子は必死になってデイパックを漁った。

「これならっ!」

デイパックを傾け、中に入っていた大岩を転がり落とす。
大岩で押し潰せば倒れてくれるだろうという考えだったが、考えが甘かった。
沙里子のデイパックに入っていた大岩は、正式な名を『ばくだんいわ』という。
モノではなく、れっきとしたモンスターである。
そして『ばくだんいわ』最大にして究極の特徴―――



   メ   ガ   ン   テ



極大の爆発が絶壁を揺るがす。
太陽がもう一つできたかのような閃光が走り、高熱の風が沙里子を後方へと吹き飛ばした。

「な、な……!」

ぱらぱらと降り注ぐ破片が、爆発の凄まじさを物語る。
沙里子抜け掛けた腰を叱咤して立ち上がると、崖に背を向けて走り去っていった。







【オルテガ@ドラゴンクエストⅢ   死亡】
※支給品は丸ごと吹き飛びました
※メガンテに耐えられるものなら残っているかもしれません



【一日目・日中/B-1 山岳 沿岸部】

【藤林沙理子(サナギ体ネイティブ)@仮面ライダーカブト】
[状態]:健康、人間体
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、不明支給品×0~2
[思考]
基本:殺し合いに勝ち残る
0:とりあえずここから逃げる
1:自分でも生き残れる作戦を考える
[備考]
※周囲にメガンテの閃光と轟音が響き渡りました


【参加可能者 残り3人+α】


026:GO!GO!GO! 投下順 028:妖魔の考える事は妖魔からん(ようわからん)
026:GO!GO!GO! 時系列順 028:妖魔の考える事は妖魔からん(ようわからん)
初登場! 藤林沙理子 037:同じ星を見ている



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