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その町は、凛とした静寂に沈んでいた。
町というのは、どの世界でも賑やかなもだ。その姦しさが治める者によって演出・強制された結果であれ、
経済の中心として自然に"町"という器に人が寄り添った結果であれ、その賑やかさは等しく心を躍らせる。
しかして、この町の静けさは一体どうした事であろうか? 戒厳令でも、出されているのか。
それにしたって、人の口に戸は立てられないのだから、人の営みは流動してささやかな喧騒となるだろう。

そう、この町には住人がいないのだ。

戦争に巻き込まれて廃墟と化している、という訳ではない。
むしろ、町の隅々から平和な生活を彩っていた痕跡が見受けられる。
痕跡を残していた筈の人々はどこにいったのだろうか?
少なくとも、暴力的に排除されたという証左は町の何処にも落ちていない。
故にここは、まるで町全体が神隠しにあったかのような不気味な場所だった。
まともな人間ならば、こんなところに長居をしたいとは思わないだろう。
だが、『まともな人間』が二人、この町に腰を下ろしていた。
一人は宿屋の主人で、もう一人は冒険者。
冒険者が町にいくつある宿屋の一つを訪れ、主人が迎える。
二人の出会いは、実に平凡に発生した。



「ようこそ、旅の宿屋へ! 今日はお泊りですか?」

「いいえ」

ぽつんと、地図上の左翼に取り残されたような町の宿屋にて、一人ごちる男盗賊。
そんな彼に、宿屋の主人が7回目となる台詞を告げる。
殺し合いが始まっているこの戦場で、だ。二人が相当に場慣れしていることは明白。
宿屋の主人は争う冒険者を諌めるのに慣れているし、男盗賊はルビスの祝福を受けた正統冒険者だ。

「ようこそ、旅の宿屋へ! 今日はお泊りですか?」

「アンタ、それしか言えないのか?」

「そんな事はないんですがね。あなたが『はい』と言わないものですから……」

「状況がわかってるのか……?」

この主人、度胸があるのは確かだが、一体何を考えているのか男盗賊に警戒する事もなく、
自分の店ではない宿屋の施設を(有料で)提供しようとしてきた。
男盗賊にとっては必要ない勧めだったが、断っても断っても同じ台詞を繰り返すばかり。
やれやれ、と頭を振る男盗賊に、宿屋の主人が急に神妙な顔で言葉を返す。

「ええ、もちろん分かっていますよ。私も宿屋の主人歴は相当長いですからね。勇者様御一行の方々は、
 見るだけでそれと分かるんです。我々が最初に集められた場所でも、それらしい方々を
 たくさんお見受けしました。貴方もその一人だから、こうして殺し合いの場でも力を貸そうと……」

「宿屋ってのは疲れたときに入るもんだろ。こんな昼間ッから泊まるのは盛りのついたガキくらいだ。
 それに俺はもう『勇者様御一行』とやらじゃない。ドロップアウトしたんだよ、俺はな……」

男盗賊が苦い記憶を思い浮かべ、まんじりとした表情になる。
数ヶ月前に大教皇に下された『魔王を倒せ』という大精霊ルビスのお告げは、瞬く間に全世界に広められた。
それと同時に、勇者アルスに侍ってその力となるべき冒険者の選出も大々的に行われ、
この男盗賊も総計たったの200人という希少な"勇者の仲間候補"に加えられ、あろう事か勇者の目に止まって
正式な勇者の仲間となり、正義に燃えて魔物との戦いに明け暮れた経験すら持っていた。が、しかし。
同時期に勇者の仲間となったとある女魔法使いが、そんな男盗賊の初心と夢を粉々に砕いた。
その女は、知識欲に狂っていた。それでいて女は狡猾で、目端の利く男盗賊以外には本性を隠し通していた。
敵に勝つ(自己が求める知識を得る)為には手段を選ばず、時として倒すべき敵よりも冷酷な行動を取る女。
そんな魔女の所業に気付かず、密告すべきか苦悩する自分に屈託なく笑顔を向ける幼い勇者。
とてもではないが、そんなパーティにいる事は出来なかった。
男盗賊は勇者に礼を尽くして"ルビスの使徒"の座を放棄し、在野に下って放浪する事にした。
その結果が、このふざけたバトル・ロイヤルへの強制参加だ。

「……なあ、おっさん。あんたはこの殺し合いをどう思う」

「許せませんね」

主人はキッパリと、毅然とした表情で答える。
自分の命が脅かされるから、ではない。
主人は世界を脅かすものを倒すべく旅に出た、勇者の存在に傾倒しきっていた。
もはや商売感情抜きで、自分の命を賭しても彼の者に奉仕する心構えでいた。
その原因は彼の娘が巻き込まれたとある事件を勇者が解決した事にあるが、その仔細はここでは無関係。
ちなみに彼の知る勇者・ジャガンはたった一人で戦いに赴く男であったが、彼にとっての"勇者様御一行"とは
その周囲で彼を支える者達(ラダトーム城の兵士や、亡国の女戦士などが記憶に残っている)の事である。
他にもジャガンは行く先々で娘を徴収し、ゆうべはおたのしみしていたのだが、
それすらこの宿屋の主人の目には民衆が差し出すべき当然の援護と映っていた。
だからこそ、主人はこのバトルロイヤルにおいて、世界を救う者達を守るために行動する。

「勇者とその仲間達は世界にとって最も大事な要素なんです。私は命を捨ててでも、貴方をお守りしますよ」

「俺は勇者の仲間である資格を自ら捨てたんだ。守ったって、何の価値もないぜ」

「貴方の目は、ドロップアウトなんてしてませんよ。今すぐにでも、貴方の勇者様を助けに行きたいって、
 そう輝いているじゃないですか。そんな貴方を、私は守ると言っているんですよ。
 宿屋の主人として……そして、この世界に生きる平凡な人間として、ね」

「……」

図星だった。
男盗賊は、最初に集められた時にアルスの顔を目撃している。
初めはすぐにでも彼の前に馳せ参じ、このふざけた殺し合いから遠ざけたいという激情に駆られた。
だが、彼の仲間であることをやめた自分がそんな事をして何になるという諦観から、
こんな宿屋にふらっと入ってしまったのだ。
そんな情けない男が、勇者を守るためにもう一度立ち上がってもいいのか。
良し、と宿屋の主人は言った。仲間でなくなっても、慕う心があれば彼の元に走ってもよいと。

「なあおっさん、出張宿屋ってのも、面白いんじゃないか」

「勇者様とそのお仲間がいるなら、わたしゃ何処へだって行きますよ」

二人が、決断する。
勇者達の下に馳せ参じ、その力となることを。
だが―――その決意に、氷のような声が、罅を入れた。

「それは困るわね。貴方達の夜には、今後永劫この私が宿泊するのだから」

冒険者の宿。
その入り口に、当たり前に冒険者の女が、足を踏み入れている。
当たり前でないことは、男盗賊がその来襲に気付かなかった事。
冒険者の女の放つオーラが、敵の力量を察知するのに特化した男盗賊に確実な死を予感させている事。
そして、

    ..........................................
女が、向かいの民家を後ろ手に持って宿屋の入り口に立っているという事実。


「ーーーーーーッ!」

「お邪魔、するわね」

女の細腕で冗談のように振りかぶられた民家は、当然のように振り回され、宿屋を激震させ、倒壊させた。




崩れる宿屋の中で、男盗賊は迅速に行動した。気絶した宿屋の主人の首根っこを掴む。
強襲してきた、胸にサラシを巻いたポニーテールの女の視界から逃れるように走る。
宿屋の主人を抱えているのでかなり難儀したが、スキル"タカのめ"の応用でなんとか瓦礫の雨を避け、
裏口から全速力で飛び出した。"しのびあし"で逃げたいところだったが、それが通じないのは確実。
五感の全てをフル活用しながら、男盗賊は嫌々ながらも確信していた。
男盗賊が勇者との旅で唯一目にした魔物の親玉、ヤマタノオロチに匹敵する力をあの女は内包している、と。

「信じられない……なんなんだ、ありゃあ」

「女性に対して"あれ"呼ばわりは酷いわね、ネズミさん」

完全に崩壊した宿屋と民家のミックスジュースを挟むように、男盗賊と女が相対する。
女の支給武器は腰に下げている鋼の剣のようだったが、抜く気配を見せない。
当然か、と男盗賊が納得する。武器とは多かれ少なかれ、存在するだけで威圧感を発する。
だが量産品の鋼の剣などは、目の前の女自体が発する威圧感からすれば爪楊枝のような物だった。
この魔人のような女がどんな戦い方を主流にするのかなど、男盗賊には想像もつかない。
とりあえず間を持たせて対抗策を考えるため、男盗賊は良く回る舌を女に向けた。

「ネズミ、なんて呼び方の方が酷いだろう。俺にもちゃんと名前があるぜ。名乗らないがな」

「そう。私の名前はブシド・ザ・ブシエよ」

さらりと変な名前を名乗り、ブシエが一歩踏み出した。
やはりというか見れば分かるというか、この女はバトル・ロイヤルに勝ち残る気満々らしい。
男盗賊は舌打ちしながら、自分に支給されたアイテムを取り出す。
携帯電話のようなその機械のボタンを押し、腰に装着したベルトに填め込む。

『5・5・5……スタンディングバイ(Standing by)』

「変身!」

『コンプリート(Complete)』

ベルト……ファイズドライバーから眩く赤い光子が走り、男盗賊の全身を覆う。
気絶していた宿屋の主人がはっと目を覚まし、男盗賊の後姿を見た次の瞬間。
既に、そこには仮面ライダー555が降臨していた。

「な……なんですかそれー!!」

『仮面ライダー……555!』

「なんですかそれー!」

「そのマスクはどうかと思うわ」

驚愕する宿屋の主人とは対照的に、ブシエは平然と造形にツッコミを入れている。
脅威を感じないような表情だが、身体の方は盗賊555の能力の向上を見て取ったか、僅かに強張っている。
男盗賊に支給されたのは555ギア。ファイズドライバーを初めとする幾つかのツールから成る強化服だ。
もちろん、この555ギアは人間の進化系であるオルフェノクにしか装着できない。
しかし、ルビスの祝福を受けて『戦闘による死』から何度でも蘇る能力を得た勇者やその仲間の肉体は、
オルフェノクにしか耐えられないはずのフォトンブラッドの奔流に見事適格した。
どこからともなく赤く光る細いこんぼうのような物を取り出し、盗賊555がブシエに斬りかかった。

『ファイズエッジ! うおおおおっ!!』

「あらあら」

桁違いに増強された男盗賊の身体能力だったが、ブシエは紙一重でその斬撃を回避する。
廃墟と化した無数の建材が弾け飛び、その一撃の威力を物語る。

『今の動き……お前はやはり戦士タイプの人間だな! その剣を抜いたらどうなんだ!?』

「確かに私は刀を極めた武士だけど……貴方にそこまでする必要はないと思うわ」

ブシエは素早く後退しながら、抜け目なく拾った建材を盗賊555に投げつける。
ファイズエッジを振り回して建材をなぎ払う盗賊555の目に、立ち止まって二の句を継ぐブシエの姿が映る。
ひらひらと左手を振りながら、右手でこちらを挑発するブシエの姿が。

「私の刀を受けるに足るモノはそんなに多くないの。残念だけど、貴方も"これ"で十分でしょう」

『ほざけ!』

ファイズエッジを掲げ、無手のブシエに突貫する盗賊555。
しかし、その動きが止まる。
..................................
ファイズエッジを掲げた右腕が千切れ飛んだ事によって。

「な……」

『ん、だと……』


戦慄する宿屋主人と盗賊555を前に、不思議そうな顔で首を傾げるブシエ。
当たり前の事を理解できない子供を諭すように、左手を二人に示す。

「言ったでしょう?"これ"で十分だって」

『……!』

「え? え? なんですか、何も見えませんけど!」

宿屋の主人には見えていなかったが、盗賊555の視覚をもってすれば、辛うじて"それ"が見えた。
それは糸だった。複雑に、ボロボロになった廃屋のあちこちに繋がれ、結界を張るように伸びている。
糸だけなら、555のスーツを引き千切ることなど出来ないのだろう。糸には、闘気のような物が乗せられていた。
素人目に見ても、これが熟練の技術を要することは明らかだった。
肩口から消失した右腕を抱くように身体をすくめながら、盗賊555が息絶え絶えに問い掛ける。

『馬鹿な……お前は、戦士じゃなかったのか……こんな異質な武器を使いこなせるはずが……』

「加えて、言ったでしょう。私は刀を極めていると」
      ....................................
「ならば、他の些細で下賤な武器など、使いこなせて当たり前でしょう?」

しゃなり、と糸を回収して懐に仕舞い、ずばりと言うブシエに唖然とする宿屋の主人。
この、自分と自分の獲物に対する揺るぎない優越の確信は何だ。一体この女は何者なのか。
本当に人間なのか?

「まあ、これでおしまいよね? 片腕になっちゃえば、身体全体のバランスが崩れて戦闘どころじゃないでしょ?」

「……」

一方、男盗賊には疑問を覚えている余裕などない。
激痛の中、しかし男盗賊には『諦める』『逃げる』といった選択肢はなかった。
それらは既に遣い切っている。勇者の下から去ったあの日に。故に、男盗賊は選択する。
『勝負に勝つ為の選択肢』を。

『フォトンブラッドを左腕部に集結』『左腕部肩口でフォトンブラッドを暴走』『フォトンブラッドの炸裂』

『左腕の廃棄』

「な……」

『これで……バランスが取れたぜ』

流石に、ブシエも戦慄する。
男盗賊555は、次の攻撃の為に左腕を捨てた。
腰を振り、ベルトから落としたファイズポインター(キックモードに変形済み)を、
右足のエナジーホルスターに装填。フォトンブラッドが循環する最中、
宿屋の主人にファイズフォンのスイッチを押すように請う。

「だ……ダメですよ! こんな血が出てるじゃないですか! 死んでしまいます!」

『死んでも生き返るさ。俺は、"勇者の仲間"なんだろう? ……教会の予約を頼むぜ、おっさん』

「……」

震える指で、宿屋の主人がファイズフォンのエンターキーを押す。
ブシエは、それを邪魔することもなく、マジマジと男盗賊555の顔を見つめていた。
フォトンブラッドがファイズドライバーから右足のファイズポインターに送り込まれ、輝きを増していく。

『エクシードチャージ(Exceed Charge)』

『クリムゾン……スマッシュ……!』

力なく必殺の蹴撃の名を叫び、飛び上がる男盗賊。
腕を捨てた甲斐あって、そのボディ・コントロールのバランスは絶妙。
空中で前転して静止し、赤い円錐状のポイント弾が放たれ、ブシエの眼前に飛ぶ。
両腕からは、未だ血が流れ落ちている。痛みがない筈がない。
強化服の合間を縫って糸を通され、切断されたのだ。切断面は生身なのだ。
それでも、男盗賊は『攻』を選んだ。『守』でも『逃』でもなく、『攻』を選んだのだ。

「認めましょう―――」

ブシエの口元が歪み、笑みとも言える表情を作る。
捕捉されているはずの腕が鋼の剣の柄を掴み、驚異的な力で握り締める。

「貴方には、私の刀で死ぬ価値があるわ」

突撃する男盗賊555の目に、それは映った。


ブシド・ザ・ブシエは、由緒正しい武家に生まれた。
彼女は乳幼児の時点で既に父親の刀術を目で追い、刀を握れるようになる頃には父を越えていた。
それから紆余曲折あって、冒険者として"知られざる英雄達"と呼ばれる最強の一群に属し、旅を終えた。
冒険者達が血眼で求めていたものは、彼女にとってはそう魅力的ではなかったが、強敵と戦えるのは、
とても楽しかった。全長数百mはあらんかという巨獣、ジャガーノートを細切れにした時などは快感さえ覚えた。
パーティが解散してからも、人間相手ではもの足りんとばかりに散策を続け、ブシエは敵を探し続ける。
"三竜"と称される天災のような怪物達を単騎でそれぞれ討ち倒し、当面の目的がなくなった矢先に、
このバトル・ロイヤルが舞い込んできた。望むところだ、と彼女は思う。あの機械も相当な力を持ってそうだし、
他の参加者にも期待できるかもしれない。ブシエは、恒久的に敵が供給され、うっとおしい首輪さえなければ、
ここで永住してもいいとさえ感じていた。現世のしがらみは、強すぎる自分を縛る事しかしない。
例えば、妹。ここにも来ているようだが、ブシエは自分と同じく武士として育った妹が大嫌いだった。
彼女はせいぜいブシドーとして冒険者の十指に入る程度の力しか持たない。出来損ないだ、とブシエは思う。
全霊長の頂点を自負するブシエにとっては、自分と同じ武士を気取る妹が実に不快だった。
まともに会話などしてやったことがないので、あちらが自分をどう思っているのかなど知ったことではない。
だが、あんな非才が武士を名乗る事自体が自分への侮辱に感じられた。身内だからこそ、評価は辛くなる。
父親や母親は、自分に抜かれた時点で武士を名乗ることをやめている。それが弱者のあるべき姿だ。
あの妹も、見つけたならば容赦はしない。即死しない程度に斬り刻む。自死しない程度に踏み躙る。
ブシエは暗い愉悦を胸に浮かべながら、この戦場を駆け抜けるだろう。
当面の敵、男盗賊555が迫る。最初の遭遇にして、自分の刀で斬る程の相手に出会えた。
もはや宿屋の主人の存在など忘れ、男盗賊555に全身全霊の一撃を贈って天に送ることだけを考える。

「ならば、刀技はいかがしましょう。卸し炎か月影か、建御雷神か抜刀氷雪か」

「いえいえそれでは失礼ですわ。我らブシドーが強敵を屠るのは、やはり、やはり」

「――― 一閃、しかないでしょうね」


一閃。ブシドーというクラスに置いて、全ての者が使える奥義だ。
というよりは、これが使える者だけが、ブシドーを名乗れると言うべきか。
極めて単純で、だからこそ技量と才能と研鑽が如実に顕われる最大刀技。
ブシドー一派どころか、人間の枠すら超越した魔人・ブシエが放つその一閃は―――。

  ............
  斬撃ですらなかった。


文に起こせぬ速度・膂力・法理で鞘から引き抜かれた鋼の剣の刀身は、完全に抜剣するより先に蒸発する。
"何か"に耐え切れなかったように金属粒子と化した鋼の刃の成れの果ては、それでも鍔に追従して殺到。
殺到する先は、無論クリムゾンスマッシュを決めんと突進する男盗賊555。粒子の波に押されて
ポイント弾が消失し、数万℃の金属熱放出現象が555のスーツを吹き飛ばし、必殺の蹴りを無効化する。
倒れ伏し、555のスーツを消滅させながら瀕死の姿を現す男盗賊に、ブシエは憧憬の念を覚える。
彼女に言わせれば、闘士はその散り様で価値を決める。赤い光子を周囲に飛ばしながら堕ちる男盗賊は、
自分と刀の道以外を徹底的に見下すブシエの目から見てもとてもとても美しかった。
錯乱しているのか、死にかけの体でファイズフォンを口元に当てる仕草もとてもキュートだ。

「ナマクラ一本フイにした甲斐はあったわね」

刀身と鍔が消え、辛うじて柄だけが残った鋼の剣を放り捨て、ブシエは踵を返す。
倒すべき強敵は倒した、もうここには用はないと言わんばかりに。

そして、宿屋の主人だけが残される。


「くそう……くそう……なんでだ! 変身!」

『エラー(Error)』

「ぐうう……」

悠然と去っていくブシエを追いかけようと、男盗賊が遺した555ギアで変身を試みる宿屋の主人。
だが、彼が仮面ライダー555に変身することはできない。選ばれていない者に、力を得る権利はない。
それでも、主人は繰り返す。五度、十度、二十度、百度。何度繰り返しても、成功などしないのに。

「私は……守れなかった……世界を救う者達を……みすみす死なせてしまったぁ!」

殺し合いだ。都合よく、教会で生き返る事など出来る筈がないと、分かっていたのに。
男盗賊を、死なせてしまった。彼は、もう二度と目を開くことはない。

「うぁっ……うお……おおおおっ!」

血も流れよとばかりに涙を流す主人の目に、ファイズフォンの画面が映る。
なにやらアイコンが点滅していて、何かを示していた。

「録音……アリ……?」

手探りで携帯のボタンを押し、点滅の正体を探る。
しばらくして、声が聞こえてきた。男盗賊の、枯れ枯れの声だ。

『おっ……さん……俺は、使い……こなせなかったが……こいつを、勇者……アルスにくれてやってくれ……。
 あの子なら……きっと……きっと……みんなを、世界を……たの……む……』

これは、男盗賊の今際の声だ。
彼は最後まで、取り戻した勇者の仲間の誇りの中で逝けたのか。
そう考えても、宿屋の主人の気は晴れない。

「私に……本当に、勇者様達を救うなんて事が出来るのか……?」


主人の足は、未だ震えている。


【男盗賊@ドラゴンクエストⅢ 死亡確認】


【一日目・日中/A-2 町・街道】

【ブシド・ザ・ブシエ(ブシドー♀)@世界樹の迷宮Ⅱ-諸王の聖杯-】
[状態]:良好
[装備]:曲絃糸@戯言シリーズ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考]
基本:勝ち残る
1:強敵と戦う
2:妹(ブシド・ザ・ブシコ)を見つけたらたくさんいじめる


【一日目・日中/A-2 町・宿屋Bと民家のミックス跡地】

【宿屋の主人@ドラゴンクエストⅠ】
[状態]:良好、落胆
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×1~4、555ギア@仮面ライダー555
[思考]
基本:勇者やその仲間を救う
1:勇者達を探す(ジャガン、アルス優先)
2:アルスに555ギアを託す


【参加可能者 残り4人+α】


025:君が願うことなら 投下順 027:変質者達の狂演
025:君が願うことなら 時系列順 027:変質者達の狂演
初登場! ブシド・ザ・ブシエ 040:テメえの都合じゃ生きちゃいねえよ
初登場! 宿屋の主人 041:消せる痛み、消せない痛み



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