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荒野を渡る風ひょうひょうと

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荒野を渡る風ひょうひょうと ◆MUMEIngoJ6



 ◇ ◇ ◇


 崩壊したナジミの塔の瓦礫の中で、うごめく影がある。
 一つは、ユーリがギガデイン対策とした出しておいたサイドン。
 岩の類による衝撃には滅法強く、いち早く瓦礫を弾き飛ばして地面を踏み締めている。
 そして――――

 巨大な岩盤が勢いよく吹き飛び、その陰に隠れていた二人の姿が露になった。
 勇者ミレニアと、彼女を抱えるカイザである。

「凄い、ユーリ君……」

 浮遊感に襲われながらも、ユーリはカイザフォンにコードを入力して変身を完了させたのだ。
 そのまま空中でミレニアを抱えて、瓦礫の雨から守り切った。
 あまりに驚異的な動作に、ミレニアは感嘆の声をあげる。
 もともと戦闘は好きではなかったが、彼と一緒に打倒ノアを目指すのも悪くないかもしれない。
 そう、思い始めていた。

「ゴメン」

 そんな考えを見透かしたかのように、ユーリは切り出す。
 軽い口調だというのに、なぜかミレニアは心がざわつくようなものを感じた。

「もう、ダメみたいだ」

 カイザの変身が強制的に解除されてしまう。
 ユーリの水色の髪と違って、冷たいものを感じさせる青白い炎がユーリを覆っていく。
 熱さはないが、足元から身体が消え行くのは理解できた。
 何が起こったのか理解できていないミレニアの前で、ユーリは無理矢理に笑顔を作る。
 全てを背負ってきた彼女なら、自分の無茶までも背負ってしまうかもしれない。
 そうなって欲しくないなと思いつつも、もはやユーリには何もできない。
 ルビスの祝福により体内に埋め込まれた、オルフェノク因子に似た何かはもう存在しないのだから。
 ひたすら最高位回復呪文を唱えてくれる少女の口元を押さえて、ユーリは笑みを崩さない。
 せめて笑って死んでいけたなら、残された者の苦しみは軽減されると信じて。

 ――――数秒の後、その場には灰の山だけが残った。

 手の上に乗る灰を前に、ミレニアは呆気に取られるしかなかった。
 残されたカイザギアとデイパック内の説明書から、灰となった理由は理解できた。
 だからこそ、呆けるしかないのだ。
 背負わせてしまったからこそ、あの結果。
 ならば、自分など背負わせてはならないのではないか。
 そんなことを考えていると、サイドンの咆哮が耳朶を打った。
 何らダメージを受けていない様子が、ミレニアを苛立たせる。

(ユーリ君が死んだのに、なんでこんなモンスターが……っ!)

 小さな苛立ちが膨らみ、理不尽な憎悪と成り果てる。
 ユーリが落命したのに、あのような知恵なきモンスターがのうのうと生き延びている。
 その事実が、ミレニアはどうにも気に入らなかった。
 ゆえに、誰のいないはずの空間に左手を伸ばす。
 飛び跳ねるようにして半緑半茶のバッタ型機械『ホッパーゼクター』が、瓦礫の山から飛び出してきた。
 背負わせてしまった人が死ぬのなら、もう背負ってもらわなくていい。
 もう光を掴もうなんて思わない。ただ、気に入らない相手を蹴り飛ばせればいい。

「……変身」

 本来のホッパーゼクターの持ち主と同じ考えを胸に、ミレニアはホッパーゼクターを腰に巻いた『ゼクトバックル』に装着した。

―― HENSHIN ――

 表面となった緑の半身が、妖しく光を放つ。
 展開された六角形の金属片が、マスクドライダーシステムを構成していく。

―― Change Kick-Hopper ――

 闇色のボディスーツに全身を包み、上半身を刺々しい緑のアーマーが覆う。
 同じく緑色のマスクの口部分だけが金色で、瞳は血液じみた真紅。
 左脚には、バッタのそれを連想させる金色の特殊兵装『アンカージャッキ』が備え付けられている。
 ゼクターの電子音声を察知したサイドンが、キックホッパーと化したミレニアに襲い掛かる。
 この場における主人であるユーリがいないので、もはやサイドンを止められるものはいない。

「ライダージャンプ」

 迫り来る岩石の巨体を気だるそうに眺めて、キックホッパーはゼクターの後脚を上げた。

―― RIDER JUMP ――

 唱和するような電子音声に続いて、ゼクターから緑色のエネルギーが左脚へと集束していく。
 金色のアンカージャッキが弾かれ、地面に強烈な衝撃が走った。
 そのパワーの源であるキックホッパーは、遥か上空へ。

「ライダーキック」

 俊敏性に優れていないサイドンは対応しきれず、上空を見据えるしかできない。
 キックホッパーは、上げたゼクターの後脚を勢いよく落とす。

―― RIDER KICK ――

 両足をサイドンの頭部に向けたキックホッパーが、空中で加速する。
 一度の蹴りで鉱石のような上半身にひびを刻み、再び跳躍。
 空中で身体を反転させて二蹴目を放つと、サイドンの全身に亀裂が走った。
 そして三撃目――サイドンは完膚なきまでに砕かれ、塵となって大気へと溶けていった。
 ゼクターを引き剥がして変身を解除したミレニアの瞳には、宿ったはずの光は跡形もなかった。



【ユーリ(男賢者)@ドラゴンクエスト3 灰化確認】
【グリーンのサイドン(支給品)@ポケットモンスター金銀 死亡確認】


 ◇ ◇ ◇


 ユーリに支給されていた陸海両用バイク『クルーザー』を操縦し、ミレニアは水上を走っていた。
 慣れるまで多少かかったが、殆ど覚えたといって差し支えないだろう。
 瓦礫から顔を出していた腹切りソードは、引き抜いて腰に携えてある。
 一方、ユーリであった灰の上に残されでいたカイザギアは、ナジミの塔跡に放置することにした。
 カイザブレイガンを瓦礫の山に突き刺し、カイザドライバーとカイザフォンは立てかけたまま。
 十字架型のカイザブレイガンが、初めてにして最後の自らを背負ってくれた人への墓標に相応しい気がしたのだ。
 灰となって飛ばされた以上、地面の下にユーリはいないのだが、ミレニアはそうしておきたかった。
 感謝と、そして二度と戻らないために。
 光を手にする気なんて、もうないのだから。
 完全なる勇者にも、仲間との調和にも、もはや未練はない。
 前者は元より望んでいなかったし、後者は望めば仲間が倒れてしまう。
 だったら、彼女は欲することすらやめることにした。
 何もない彼女は、ただひたすらに光が気に入らない。



【一日目・夕方/D-3 水上】

【ミレニア(女勇者)@DRAGON QUEST3】
[状態]:健康、クルーザーを運転中
[装備]:腹切りソード@METAL MAX RETURNS、夢見るルビー@DRAGON QUEST3、ホッパーゼクター&ゼクトバックル@仮面ライダーカブト
    クルーザー@仮面ライダーX、ゼクトマイザー&マイザーボマー(110/200)
[道具]:支給品一式×2、ビームライフル(12/30)@魔界塔士SaGa、不明支給品0~1(確認済み)
[思考]
基本:背負われたくない。
1:移動。
[備考]
※参戦時期はロトになった後です。
※ホッパーゼクター@仮面ライダーカブトに、使用者として認められました。



[影響とかの備考]
※ナジミの塔が崩壊しました。
※ギガデインやナジミの塔崩壊が周囲から確認できたかは、以降の書き手に任せます。
※カイザギア(カイザフォン、カイザドライバー、カイザブレイガン)が、D-3ナジミの塔跡に放置されています。
※長老の杖@FF3が、ナジミの塔跡に埋まっています。
※フラン(クラッズ・錬金術士・女)@剣と魔法と学園モノの死体が、ナジミの塔跡に埋まっています。


050:ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどくから 投下順に読む 051:剣客、吐血に斃れる。
050:ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどくから 時系列順に読む 053:キックOFF
050:ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどくから ミレニア 059:ライダークロス 隣り合わせの灰と青春(前編)



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