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fight or flight ~闘争か逃走か~

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fight or flight ~闘争か逃走か~ ◆KuKioJYHKM


山岳地帯に、五つの人影があった。
にらみ合うのは闇の戦士、英雄、天使。
それを少し離れた場所から観察しているのは、冒険家とアイドル。
それぞれがそれぞれを警戒するがゆえに、全員がなかなか動けない。
数分時が止まったかのような状況が続いたあと、ようやく五人のうちの一人が口を開く。
それは、全身を血に染めた青年……ロランだった。

「いちおう確認しておこう……。君は今……」

ロランの視線の先にいるのは、水晶の鎧を身にまとった男。もはや自分の名前すら忘れてしまった、闇の戦士。

「死んでもらう、と。たしかにそう言ったね? つまり君は、この島にいる人間を皆殺しにして最後の一人になろうとしている。
 それで間違いはないか?」

とても重傷を負っている人間とは思えぬほどの力強い声で、ロランは尋ねる。
それに対し、闇の戦士は何の迷いもなく答えを返した。

「ああ、そうだ」

予想どおりの答えに、ロランは少しだけ眉をひそめる。

「ならば、君も破壊させてもらう。僕は、破壊者をさらなる力で破壊する者だからな」

ロランが片手で構えた聖剣の切っ先が、闇の戦士に向けられる。
しかし今更敵意を向けられたところで、闇の戦士に動揺はない。

「なるほど、私と君とが戦う理由はあるようだ。だが君は、私だけを相手にしていていいのか?
 君はもともと、そっちの少女と戦っていたのではないか?」

闇の戦士は、眼球のみを動かして黒髪の少女……ナインを見る。

「つまりあなた達二人が戦ってる間に、私が背後から襲いかかるんじゃないかってこと?
 いやだなあ。私、そんなことする人間に見える?」

力のない笑いを浮かべながら、ナインは闇の戦士に向かって一歩踏み出す。

「まあ、大正解なんだけどね」

直後、ナインの口から吐き出された炎が闇の戦士を襲った。
「ひふきげい」。ナインが旅芸人時代に身につけた特技の一つだ。
火炎の殺傷力は、さほど高くない。だが虚を突いた攻撃に、闇の戦士の動きが止まる。
それは、一部始終を見ていたロランも同じだった。
彼の常識では、人間が口から火を吐いて攻撃するなどあり得ないことだったのだ。
二人が硬直している間に、ナインは動く。その目的は追撃ではなく、撤退。
深い傷を負った体を無理に動かし、可能な限りの速さでその場から離脱する。

「待て!」

とっさにナインを追いかけようとするロラン。だがその刹那、彼の頬を剣がかすめていく。

「二人の敵がいる場で片方に意識を集中すれば、もう片方にその隙を突かれる。
 立場は逆転したが、今まさにそう言っていたのだろうが。
 君は目の前の獲物に襲いかかるしかできない、獣というわけでもないだろう?」
「ああ、そうだな。僕としたことが、血が足りなくて思考力が鈍っていたようだ。ご忠告感謝する」

ロランは体勢を立て直し、改めて剣を構える。

「すぐに君を倒して、それから彼女を追うことにしよう。だから君は、速やかに倒されてくれ」
「悪いが、その要望には応えられない。こちらにも、絶対に負けられない事情があるのでね。
 それに……片腕が使えぬ戦士に負けるほど、私は弱くない」
「舐めないでもらいたいな。僕だって、片腕が使えないくらいで負けるほど弱くはない」

自らの言葉を証明するかのように、ロランは手にした聖剣を振るう。
とっさに自らの剣でそれを受け止めた闇の戦士だったが、おのれを襲った予想以上の衝撃によろけてしまう。

「なんと……。これが死にかけの人間の力だというのか……?」

驚く闇の戦士に、ロランは憮然とした表情で返す。

「僕をただの人間と思わない方がいい。何せ僕は……破壊神を破壊した男だからね」


◇ ◇ ◇


「はあ……はあ……」

荒い息を整えながら、ナインはその体を地面に横たえる。
血が足りない。体中が痛い。意識が今にも飛びそうだ。

(そもそも……こんな頑張る必要ないんじゃないの? 別に人間滅ぼすのは私じゃなくてもいいんだし。
 何がなんでも生き延びたいって程、生に執着してもいないしさあ)

霧がかかったようにぼやけた意識の中で、ナインはそんなことを考える。
しかし、そんな弱い考えも一瞬のこと。

(ああ……でも……。このままやられっぱなしで死ぬなんても私らしくないか。
 やられた分はきっちり返さないとね)

復讐というどす黒い感情を支えに、ナインは持ち直す。
彼女はハンマーをいったん手放すと、意識を集中し始めた。
やがて彼女の体がうっすらと光り始め、身にまとっていた鎧がはじけ飛ぶ。
ナインが使用したのは、「ダーマの悟り」。
本来ダーマの神殿という場所でしか行えない「転職」を、いつでもどこでも行えるという非常に有用な技能である。
彼女はこれを使用することにより、おのれの職業をバトルマスターから賢者へと変化させたのだ。

「ベホイム! ベホイム!」

転職することによって使用可能になった回復呪文を、ナインはひたすら唱え続ける。
サイクロン号に轢かれたことで傷ついた彼女の体は、少しずつ正常な状態へと回復していった。

「まったく、覚えた呪文は覚えた職業でしか使えないなんて、なんでこんな不便な仕組みなのよ……。
 技は他の職業でも問題なく使えるのに……。
 それにしても、今ひとつベホイムの効きが悪いなあ。ベホマが使えれば手っ取り早いんだけど、あんな高等呪文覚えてないし……」

愚痴を言いつつ、ナインは回復呪文を唱え続けた。
やがて、彼女の傷はほとんどがふさがる。だがその代償として、ナインはかなりの量の魔力を消耗してしまっていた。

「ちょっとぐらい休んでた方がいいかも知れないけどさ……。そういうわけにもいかないよねえ。
 あいつらは……私の手で殺さなきゃいけないんだからさ」

もう一度「ダーマの悟り」を使って職業をバトルマスターに戻すと、ナインは来た道を戻り始める。
その口元に、歪んだ笑みを浮かべながら。


◇ ◇ ◇


(くそっ、どうしろって言うんだ!)

タムラは苦悩していた。彼は今、何もできぬままその場に立ちつくしていた。
彼は当初、逃げたナインを追うつもりでいた。
だがそれは、リリに止められてしまう。
「自分たちから危険人物に近寄るなんて、そんな危ない真似はしたくない」。
涙ながらにそう言われては、タムラも無理に自分の考えを貫くわけにはいかなかった。
ならばと彼は、目の前で行われている戦闘に介入することを考える。
だが、これも実行するには難があった。
聞こえてくる会話から、水晶の鎧の男が殺し合いに積極的であり、青い服の男がそれを止めようとしていることはわかっている。
ならば青い服の方を援護すればいいのだが、話はそう簡単ではない。
戦闘を始めてからというもの、彼らはずっと剣による接近戦を繰り広げている。
これでは誤射が怖くて、銃による攻撃は行えない。
かといって、格闘による接近戦などタムラにとってはまさに自殺行為。まず間違いなく死ぬ。

「ですから、さっきから言ってるじゃないですか。どうせここにいても私たちは役に立たないんですから、逃げましょうよ」
「いや、だけど……。こうして目の前で戦ってる人がいるのに、僕たちが逃げるわけには……」

リリの言うことにも、一理ある。だが、タムラの正義感はここからの逃走をよしとしない。
なんとか、自分にできることを見つけたい。そんな思いを抱きながら、タムラは眼前の戦いを観察し続ける。
そんな中、彼は気づく。戦う二人に向かって飛んでくる何かに。

「危ない!!」

とっさに、タムラは叫んでいた。それに反応し、闇の戦士とロランは反射的に飛び退く。
だが、闇の戦士の反応がわずかに遅れる。結果、彼の脚は飛来物……ハンマーの直撃を受ける。

「直撃させるつもりだったんだけど……。さすがに反応がいいね」

淡々としたつぶやきと共に、一人の少女がその場に姿を見せる。
むろん、ナインである。

「いつの間にこんな近くに……! いくら戦闘に集中していたとはいえ、気づかなかったなんて……」
「別に落ち込むことはないよ。私の『ステルス』は完全に気配を遮断する技。
 肉眼で確認しない限り、どんな達人も察することはできないよ」

余裕の、そして黒い笑みを浮かべながら、ナインはロラン達に歩み寄る。

(いつの間にか怪我が回復している……。逃げてから、回復呪文を使ったか……。
 こちらは回復していない分、再戦となると不利……。
 いや、向こうは今、武器を手放して素手! 有利なのはこっちだ!)

瞬時に判断を下し、ロランもまたナインとの距離を詰める。
そして間合いに入ると同時に、上段から聖剣を振り下ろした。
だがその一撃は、ナインの一撃に軌道を反らされる。

「別に、武器がハンマーだけとは言ってないよ。剣は肉を切り裂く感触がいやだから、あんまり使いたくないんだけどね。
 でも、今はそんなこと言ってられないから」
「な……。馬鹿な、その剣は……!」

ナインの言葉は、ロランの耳には届いていない。
彼の注意は、ナインの握る剣のみに注がれていた。
見間違えるはずがない。翼を広げた鳥を思わせる、独特の鍔の形状。
その剣はまさしく……。

「なぜ……なぜ君がロトの剣を使えるんだ! まさか君も、ロトの血筋だというのか!」
「何を言ってるのかわからないな。剣を扱うのに必要なのは血筋じゃなくて、技術でしょう?」

動揺を隠せないロランに対し、ナインの表情は冷たい。
明確な温度差の中、ナインの振るう剣がロランの頭部を狙う。
動揺の抜けきれないロランは、それを回避できない。
彼の側頭部に刃が吸い込まれるかと思われた、その時。
一陣の風が、ロランを突き飛ばした。

「おりゃああああ!!」

風の正体は、タムラ。彼はロランの様子がおかしいのに気づくと急いで彼に接近し、絶妙のタイミングで彼をナインの攻撃から救ったのだ。

「いったーっ! 肩が悪化したか!? ちくしょう、痛いったら痛い!」
「いや、なんで突き飛ばされた方より突き飛ばした方がダメージを受けてるんだ……。
 まあいい、とにかく助けてもらったことには礼を言う」

肩を押さえて悶絶するタムラに困惑しつつも、ロランは彼に軽く頭を下げる。

「ドンマイ! お礼なら、この場を切り抜けてからたっぷり受け取るから!」
「切り抜ける? できるの? 怪我人と耐久力スライム人間の二人だけで。
 後ろにもう一人女の子がいるみたいだけど……。戦力になりそうな感じじゃないしねえ」
「切り抜けるさ。そして、その剣を返してもらう。ロトの剣は、君のような人間が使っていい代物じゃない」
「ずいぶんこの剣にこだわりがあるみたいだね。もう一度言うよ。剣を使うのに必要なのは技術。
 例え聖人が作った剣だろうと、悪魔が作った剣だろうと、自分を磨きさえすれば使いこなすことができる。
 武器はあくまで道具に過ぎない。どんな謂われがあろうと、その善悪は使う者に準拠する」
「これ以上は話しても無駄なようだね」

あくまで臆することなく、ロランは体勢を立て直して今一度剣を構えた。
タムラもその後ろで、痛みに顔を歪めながら銃を構える。

「おっと、私の存在を忘れて話を進めてもらっては困るな」

そこへ響く、新たな声。回復魔法で脚の怪我をいやした闇の戦士が、そこにいた。

「ずいぶんと正直な人だねえ。さっきの私みたいに不意打ちを仕掛ければいいものを」
「なに……。安いプライドというやつさ。同じ相手に何度も奇襲をかけるのはどうかと思ってな」

ナインの挑発を軽く流し、闇の戦士もまた剣を構える。


乱戦、仕切り直し。改めて、彼らの戦いが始まる。


(ああ、もう! なんでわざわざ危ないところに飛び込んでいくんですか!)

そしてその乱戦を、わずかに離れた場所から見守る少女が一人。
彼女はこのまま傍観者の立ち位置を貫くのか。それとも何らかの形で戦闘に介入するのか。
それはまだわからない。


【D-4とC-4境 山岳地  一日目 夕方】
【ナイン(主人公・女)@ドラゴンクエストⅨ】
【状態】疲労(中)、ダメージ(小)、魔力消費(中)、職業:バトルマスター
【装備】ロトの剣@ドラゴンクエストⅨ、鉄の鎧@ドラゴンクエストⅢ、うろこの盾@ドラゴンクエストⅢ
【道具】支給品一式×2
【思考】
基本:皆殺し
1:場に居る全員を殺す。


【ロラン(ローレシア王子)@ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々】
[状態]:疲労(中)、重傷、左肩使用不能。
[装備]:エクスカリバー@ファイナルファンタジーⅤ
[道具]:基本支給品、不明支給品×0~2
[思考]
基本:ノアの破壊。創造する人間を邪魔する人も破壊する。
1:ナイン、闇の戦士を倒す。
2:ロトの剣を取り戻す。
[参戦時期]:本編終了後、ローレシア王から王位を譲られています。


【■■■(闇の四戦士の一人)@FF3】
[参戦時期]:封印中、光の戦士を待っている頃
[状態]:クリスタルメイルを除く衣服に損傷、疲労中、魔力消費小
[装備]:クリスタルメイル@FF5、バスタードソード@DQ3
[道具]:支給品一式×3、ミスリルナイフ@FF3、エリクサー×2@FFT、メガトンハンマー@ドラゴンクエストⅨ
[思考]
基本:いち早く帰還
1:この場にいる全員の駆逐
2:全参加者の殺害
3:サイクロン号で会場中を徘徊して、標的を探し出す。
[備考]
※ジョブは魔剣士。
※名前は忘れてしまっています。


【リ=リリ(セレスティア:アイドル:♀)@剣と魔法と学園モノ。2】
[状態]:良好 音痴
[装備]:メガホン@現実、濃縮メチル@METAL MAX RETURNS、リボン@FINAL FANTASY III
[参戦時期]:不明
[道具]:支給品一式×2
[思考]
基本:優勝して生還する。表立って殺し合いに参加しない。
1:タムラをとりあえず利用する。
2:事の行く末を見守る
[備考]
※自分の歌の下手さに気付いていません。
※D-5エリアに下手糞な歌が響き渡った可能性があります。


【タムラ(主人公)@スペランカー】
[状態]:肩痛い肩痛い
[装備]:モスバーグ M500@現実、髑髏の稽古着@真・女神転生if...
[道具]:支給品一式、スズメバチの巣の袋(未開封)@現実、核爆弾@魔界塔士Sa・Ga
     宝の地図(D-2砂場に印、裏面にZ-G-N-A-と書かれている。)、動きが素早くなる薬@スペランカー
[思考]
基本:全力で生き残る、でも後悔だけはしたくない。
1:現状打破。核爆弾も辞さないかも……?
2:お宝を探しつつリリの護衛。
3:出来るだけ怪我したくない
[備考]
※参戦時期はED後

※閃光手榴弾、サングラス、不明支給品0~1が山羊さんのデイパックに入ったままです。
※新サイクロン号(一号)@仮面ライダーが地面に転がっていますが、起こせば使えます


054:戦闘員が仲魔にしてほしそうにみている 投下順に読む 056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲
054:戦闘員が仲魔にしてほしそうにみている 時系列順に読む 056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲
044:Tarot No.XX ナイン 056:アダバナイッセン(上) 破壊の遁走曲
ロラン
■■■(闇の四戦士の一人)
タムラ
リ=リリ



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