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たべられないの

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たべられないの ◆piKeR1obXI


 サバイバルキッズとサバイバルキッズ2は食糧と水を探していた。
 他のカセットには必要ないが、彼らはゲームの仕様でまんぷく度や水分パラメータが設定されており、
 これが0になると体力が減っていずれ死ぬのだ。

「どうにかして食糧と水を確保しないと悲しくのたれ死にだぜ!」
「あっ兄ちゃんあっちに小屋があるよ」

 森の中に小屋を発見した二人は、カギ付きの扉を壊して開けた。
 中には牧場物語がいて何やら作業をしていた。
 青緑の帽子を逆に被り、青のツナギ風作業服、首に朱のスカーフを巻いたあの姿だった。
 ボロボロの服を着た二人を見た彼は苦い顔で途切れ途切れに呟く。

「わ、わわ。カギを掛けてたん、だけど。ノックくらいしてくれないかな……?」
「すいません、まさか人がいるとは思わなくて!」
「食べ物が欲しいんですが何してるんですか?」
「ああ、これはさ――ええと、農耕をしようと思ったんだけど、
 まともな道具が支給されてなくてね。貰う人もいないし、困っていたんだ」

 テーブルの上は石片や木の棒が並んでいる。
 どうやら牧場物語はこれを使って、斧やクワの代わりになるものを作ろうとしていたようだった。

「道具さえあればすぐ、裏の荒れた土地を見事な畑に出来るんだけど」

 牧場物語の能力なら、道具さえあれば数時間ほどで作物を育てることが可能なのだという。
 それを聞いたサバイバルキッズたちは顔を見合わせたあとにっこりと笑い、

「そういうことなら俺たちに任せてくれ!」
「サバイバルはクリエイトの精神! そして助け合いの精神ですよ!」
「俺たちは木の棒と石とか、いろいろ組み合わせてアイテムを作って生き伸びるゲームなんだ」
「3人で協力すればいっぱい道具を作っていっぱい畑を耕せるよ!」

 協力を申し出る。無人島で生き抜くサバイバルキッズたちにとってはオノを作ることくらい朝飯前だ。
 牧場物語と協力すれば食糧の安定供給は夢ではないだろう。

「えっ……嬉しいけどいいのかい、僕たちは殺し合いをしてるんだよ?」

 彼らの提案に牧場物語は驚く。殺し合いの真っ只中にあって当然の疑問といえた。
 しかしサバイバルキッズたちは真剣な表情で訴える。

「さっきも言いましたよ? ぼくたちはサバイバルキッズ。そしてサバイバルに大切なのは助け合いの精神です」
「助け合うことを忘れたとき、孤独なそいつは、“例え生きていても死んでいる”のさ。
 他のやつに害をなして利を得ようなんて考えは、もっとダメだ」
「ぼくたちは殺し合いには乗りません。生き残るためだけに全力を尽くします。主催への反抗も含めて」
「俺たちは無人島から生き延びた経験も、悪い奴らのたくらみを破った経験もある。その経験から言わせてもらおう」

 兄であるらしいサバイバルキッズ(1のほう)が牧場物語に手を差し出しながら力強く言葉をかけた。

「殺し合いの打破には、たぶん沢山のカセットの協力が必要だ。俺たちはその、第一歩を踏み出したい!」
「……!」
「協力してほしいんです! というかぶっちゃけぼくらは食糧を手に入れるのにあなたが必要なので、
 どうしても協力してもらわないと死ぬかもなんですけどね……無理なら無理でまた考えます」
「それに、牧場物語さんだって俺たちを殺そうとはしてないだろう? ってことは殺し合いには否定派なんじゃないのか?」
「それは……そうだけど……」
「じゃあ決まりだろ」

 サバイバルキッズ2のほうも、牧場物語に手を差し出す。
 差し出された二つの手を見つめ、牧場物語は少し躊躇した。

「どうしたんだ牧場物語さん」
「話が上手くいきすぎて戸惑ってるんですか?」
「いや……すまない、ありがとう。協力……するよ」

 何かを振り切るようにぶんぶんと首を振ったあと、牧場物語は両手で二人の手を取る。
 こうして森の小さな小屋の中、3人で作られた小さな反抗の芽が、その育つ条件を整えることとなった。


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 サバイバルキッズ兄弟は、牧場物語を的確にサポートしてくれた。
 拾ってきた素材を組み合わせ、農耕道具としてオノやクワを作成。近くに小川も発見。

「バケツはどうするんだ?」
「どうやら支給されたリュックは物が無限に入る仕様のようだし、1つを水袋にしよう」

 育てるモノに関しては牧場物語の基本支給品にカブとジャガイモの苗が入っていたため、それを使用する。
 雑草を取り、切り株を掘り起し、大きな岩をおおきい棒を上手く使って転がして、
 開けた土地を作り出すと、木を加工して生成した柵を規則正しく並べて畑の形を整える。
 クワで掘り起こしてみれば幸いにも地質は良好。
 肥料としてもみ殻やら牛糞やらを加えればさらに良いだろうが、
 このまま丁寧に手入れすればジャガイモ程度ならば育つであろう富栄養環境だった。さすがは森の土である。

「あまりリアルな植え付け手順をしなくても育つとは思うけど、一応畝(うね)はちゃんと作ろう」
「ウネ?」「細長い段になってる土のことだよ、兄ちゃん」「あーあれか」
「それと水はかけ過ぎないこと。あと土も、あんまり深く埋めすぎると芽が出てこられないから、適度にね」
「どれくらいで育つんだこれ?」
「僕が畑の時間を加速させているから、大体1時間もあれば出来ると思うよ」

 牧場物語はさらりととんでもないことを言った。

「時間を加速!?」
「ああ、それが僕の能力なんだ。僕は畑にしか使わないけど」

 範囲限定の時間加速能力。
 牧場物語はこれによって通常ならかなりの時間がかかる農作物を高速で育てることができる。

「ホントは自然に任せる成長方法が一番いいんだろうけど、期間が決まってる僕の1プレイだと、
 何か月もかけて作物を育てるなんて効率が悪いから……ここじゃ、そんなこともいってられない。全力で加速させる」
「うわ、すげぇ!」
「もう芽が出た!?」
「……だから、大丈夫。君たちの体力が尽きる前に、食べられる段階になると思うよ。安心、して」

 早くも芽を出し始めた畑表面を見て目を丸くするサバイバルキッズたち。
 裏表ないリアクションをしてくれる彼らに、牧場物語は少し安心感を覚えた。
 でも同時に、心の奥にズキリと痛みを感じもする。

(僕は……僕は何をやってるんだろう?)

 彼の胸の内には、作物の根のように複雑に絡まった、不安の果実が今も育っている。

(僕は殺し合いなんて……できない。できるわけがない。
 牧場物語は、命を育むゲームなんだ……命を自分から終わらせるなんて、絶対やっちゃいけない)
(でも……みんながみんな、そういう気持ちでいてくれるはずもない)
(誰かは、いやきっと複数のカセットが、殺し合いに乗るだろう。リメイク、新作。望んでるのは、みんな同じだ)
(僕だってそうだ)
(……そんなカセットと対峙したとき……僕は……戦えるのだろうか?)

 実は。
 最初にサバイバルキッズたちと遭遇した時、牧場物語が作っていたのはオノでもクワでもない、
 武器だったのだ。
 襲撃者を返り討ちにするための、凶器をつくろうとしていた。
 畑なんて作ろうとは思っていなかった。
 当たり前だ、殺し合いの場で畑なんか作っても何にもなるわけがない。

 牧場シミュレーションゲームである牧場物語に戦闘能力などあるはずもなし。
 牧場物語は石を木の棒にくくりつけ、ヤリめいた護身用武器を作って、
 誰かに襲われたらそれで出来るだけの自己防衛をしようとしていた。

 しかしサバイバルキッズたち2人が入ってきたとき牧場物語は何も出来なかった。
 何も出来なかった。
 恐怖、怯え、いろいろあったが、それだけじゃない。

(僕は……きっと誰かが僕を殺そうとしてきても……)

 命を何よりも大切にする彼だから。

(たぶん・……誰も、傷つけられない……何も、できないよ……)

 彼には殺し合いをすることも、殺し合いを止めることも、できないのだ。


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 B-2に入った星のカービィは、辺りの風景が変わったことにひどくびっくりした。
 それは農場だった。
 細く流れる小川のそば、きれいに整地された畑が等間隔に並んでいる。
 その畝からはみごとな緑の草が広がっており、土の下にジャガイモ、少し顔を出したカブ。
 農場、と呼ぶには小さくはあるものの、
 汗を流して作られたのが分かるしっかりとした耕作環境がその場に作り上げられていた。
 さらにはこれらを管理しているのだろう古ぼけた小屋が奥にひっそりと建つ。扉が一度壊され、直された跡。
 たぶん中に、人(カセット)が居る。

(居るのなら……ころさなきゃ)

 ぐっと拳を握りしめ、星のカービィはさらに周囲を検める。うすら暗くてあまり見えないが、
 よく見れば、実り多い畑の一角には、すでに収穫されたらしきスペースがあった。

(持ち帰って、小屋の中……りょうり、してる? 何で?)

 さらに近寄りドアのそばから中の音を聞くに、どうも中にいる数人の参加カセットは料理をしているらしい。
 普通は食べる必要のないカセットが、あろうことか殺し合いの場に、
 農場を開いて、悠々と食事をしている? いったいどういう風の吹き回しなのだろうか。
 何か食べないといけない能力でも持ってしまったのだろうか、とカービィは遠からず近からずな予想をする。

 そして、恨めしく思った。

(……わたしは、食べる暇なんてないっていうのに……!)

 彼女は戦わなければならない。なるべく早く、ゲームをクリアせねばならない。
 例えここに来た時からずっと、
 食いしん坊のカービィをトレースするかのように農作物を見て口からよだれを垂らしていようと、
 まんぷく度など存在しない彼女にとってはただのまやかしの空腹にすぎず、食べてもなんの意味もない。
 優勝し、仲間のソフトを開放してもらうまで、彼女は戦うと決めて――もう1人殺してもいる。
 引き下がれないところまで、すでに来てしまっているのだ。

(どうして、殺し合いなんて関係ないって言いたいみたいに、へんなことして……逃げてるの!)

 覚悟を決めた星のカービィからしてみれば、
 殺し合いと関係ないことに汗を流す牧場物語たちの存在は、とても許せるものではなかった。

(そんなんじゃ……わたしにころされても……文句、いえないよっ……!!)

 不幸なことに、彼らが作った畑の畝は4マスの列となってしまっていた。
 ジャガイモが16、カブが12。規則正しく並ぶ同じ色の同じ存在。植物だって、……生き物だ。
 星のカービィはそれらの作物に手をかざす。

 《4体揃った同じ色の生物を消滅させる能力》

 死の収穫が始まった。
 静かな連鎖音と共に農場は、更地へと変化していく。

「ごめんなさい……でも!」

 順繰りに消えていく農作物の消滅連鎖を最後まで見届けることなく、
 小屋の外に放置されていた斧を星のカービィは、掴んだ。

「いまのわたしにこれは、たべられないの……っ!!!」

 そして、斧は扉に振り下ろされる。


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                 セーブ中......つぎのチャプターへ▽
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【B-2 農場跡】

【星のカービィ】
【状態】健康、す~ぱ~ぷよぷよの能力をコピー
【装備】斧
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:優勝し、スーパーデラックスを解放してもらう。
2:小屋の中のカセットを殺す
※外見はほしのあきに似た女性です。
※「飲み込んだ相手の能力をコピーする」能力を持っています。

【B-2 小屋の中】

【牧場物語】
【状態】疲労(小)、不安(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
1:いのちだいじに
2:僕はきっと、何もできない……
※外見はパッケージによくいるあの人
※「指定範囲内の時間を加速させる能力」を持っています。
 が、彼はこれを農作物や家畜の成長速度の上昇にしか使うつもりはありません。

【サバイバルキッズ】
【状態】疲労(小)、空腹
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品×2、クワ
【思考】
1:殺し合いなんかもってのほか、俺たちは助け合いだぜ!
※道具を作る能力に長けています。

【サバイバルキッズ2】
【状態】疲労(小)、空腹
【装備】なし
【道具】大量の水入りのデイパック
【思考】
1:ぼくたちは協力して主催を打倒するぞ!
※道具を作る能力に長けています。


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