エピソード「ルーマニアは燃えているか?」:作戦記録・ストライクス戦隊編その1

「…僕が言っても君達は止まるはずもないから止めないけど。少しだけ注意して欲しいことがある。君達が介入しようとしなかろうと今ルーマニアで暴れている柑橘軍の関係者はすでに「死せるクックロビン」だ。人類が団結するためにその命を奪われるクックロビン…だ。」‐フィリラス・F・ヴェイズレッド、ストライクス戦隊出陣の時に語った言葉より。


アマヅキ「…正直、この記録を公開するのはストライクス戦隊の総司令官としては賛成だが、あたし個人としては正直微妙だ。アイツらの声明文が出た後に戦闘記録の公開は後出しじゃんけん…それもこっちが必ず勝つ手しかないじゃんけんだ。大義名分もなにもない。だからあたし自身としてはこの記録の公開にはあまり乗り気ではない…が参加した人間の一人として、戦闘記録を公開する。」

アマヅキはそういうと、戦闘記録やブリーフィング記録などを収めた記録媒体をプロジェクターに接続したPCに接続し、記録データを再生する。
慣れた手つきは、まさに戦隊総司令官というべきだろう。

アマヅキ「それは、さかのぼること約4ヶ月前…………柑橘軍の一チーム「ニュールーマニア帝国」がルーマニアに侵攻したことに発端する「侵食戦争」が勃発した。こいつはあちらさんが公表した声明文とおりなことだが…現地の反政府組織を密かに取り込んで軍備拡大を図ったことがウチの別チームの構成組織から…矢文で届いた。いったいどこのバカが思いついたんだが…クロスボウで矢文とかあぶないってのに…」
そうぼやきながらPCを操作すると、ルーマニアの地図が表示され、ニュールーマニア帝国を現す色がルーマニアの地図を塗りつぶしていく様が映し出される。侵略と言うよりかは侵食に近い…「侵食戦争」というのはある種正しい言い方かもしれない。
しかし、そのニュールーマニア帝国を表す色も途中で止まり、残りの塗られていないところにはルーマニアを表す色が塗られた。

アマヅキ「これが開戦から数時間後の戦況図、ルーマニア軍はがけっぷち、傭兵の投入や民間軍事会社の社員に戦闘行動を容認させてやっと…ところよ。あたしらが介入したのはこの状態が少し続いたころね。つってもこのときには傭兵はともかく民間軍事会社の被害はバカにならなかったわ。ただでさえ柑橘軍は得体の知れない異世界の人類を殺戮しつくした有機的機械生命体と異星人集団、正規軍も民間軍事会社や傭兵も対異星人経験なんて地球外にも足伸ばしてる民間軍事会社や傭兵ぐらいよ。」
ため息をつきながらアマヅキはPCを操作し、先行突入に関するブリーフィングマップを映し出す。

アマヅキ「これがあたしらの介入の始まり、オービタルフレームとLEVのチームを先行突入させた時のマップ。今思えばあいつらが派手に暴れたおかげであたしらは動きやすかったわね………」





約4ヶ月前、ルーマニア国内






深迩「こちら深迩隊、突入ポイントを通過。ニュールーマニア帝国軍の抵抗はあれどこちらの損害は軽微。」
アマヅキ「了解、これより敵陣を引っ掻き回せ。以上」
深迩「了解。」

地上を疾走する2機のオービタルフレームと3機のLEV。ストライクス戦隊に所属する深迩研司をリーダーとする小隊だ。
すでにニュールーマニア帝国軍の警備部隊を殲滅してニュールーマニア帝国軍の戦線へ突入したのだ。
損傷は軽微…と彼らは言ったが、実際は鎧袖一触、ニュールーマニア帝国の保有兵器は鹵獲した兵器がほとんどで、彼らが元いた世界の兵器は少量、あとはほとんど歩兵しかいない。
ニュールーマニア帝国の構成員含め、Great New Ones構成員はそのほとんどが、人間とAI(人工知能)のハーフを祖先としたある種の有機的機械生命体でしかなく、用いている攻撃もポケモンシリーズの技という「世界的に有名なゲームの強力な技」という情報を物理現象として発現させてる程度でしかない。しかしそれでも素の戦闘能力の高さ等から、彼らは歩兵程度でも十分な戦力になりえたからだ。
たしかにこの戦争において民間軍事会社や傭兵は無論、正規軍も少なくない被害を受けてはいる。しかし、それでもぎりぎりまで彼らが耐え切れたのは、この世界の人類が用いる、搭乗型兵器とそのパイロットたちは時としてパイロットの強い意志と、それに応えて機体が本来持つスペックを超越した性能を発揮することが多いからだ。
無論だが、遠隔操作型の兵器もあれば、人工知能だったり、金属生命体だったりと出自はさまざまだが人間と変わらない意思を持った無人兵器も存在する。それらも時として強い意志と、それに応えて機体が本来持つスペックを超越した性能を発揮する。
その上でストライクス戦隊のメンバーはそれぞれが個性豊かかつ、中にはトップエース級の人員もいる。そして彼らには相棒として共に戦ってきた自分の機体がある。物言わぬ機体や何かしろの対話型インターフェースを持つ機体などパイロットによってまちまちだ。
だからこそ、普通のパイロット以上に彼らは自分たちの相棒に意思が…心がないとは思っていない。時としてその思いが思わぬ結果をもたらすこともあるのだ。

そう、たった5機で、かつてもといた世界の人類を殺戮しつくした新生命体を祖先とするニュールーマニア帝国の兵を圧倒する。そんな芸当も可能なのだ。


夢蒔露「引っ掻き回せって…アマヅキ艦長もアバウトだよねぇ…まぁ、補給がきちんと受けれるならいいけど」
土岐辻「だな。いくら俺たちと相棒が強くても、補給がなきゃ戦えないからな」
ユーミ「そうそう、弾とエネルギーがなきゃ…ねぇ」
雪導「確かにな。俺のような近接スタイルは特に装甲とかが心配だが」

5人と5機は軽口をたたきあいながらも、立ちふさがる敵を投げ飛ばしたり、ミサイルやビームで消し飛ばし、近接武器で両断したりとやはり鎧袖一触の強さで進軍していった。

深迩「ターゲットロック…当たれぇ!!」
OF「テスタメント」の右腕から高出力のビームが発射され、ニュールーマニア帝国の兵を消し飛ばし
夢蒔露「はいだらぁー!!」
OF「ヴィジャヤ」から放たれたビームウェップでニュールーマニア帝国の兵をなぎ払い
土岐辻「こいつで…狙い撃つ!」
LEV「ドライツェン」に装備されたスナイパーライフルの一撃でニュールーマニア帝国の兵を撃ち抜き
ユーミ「大量のミサイルの雨よ!避けれたらおめでとうってね!」
LEV「カリブルヌス」から放たれたミサイルの雨はニュールーマニア帝国の兵をまとめて吹き飛ばし
雪導「行くぞ相棒…悪鬼魍魎退治だ!」
LEV「ジャスティーン」の、レーザーブレードを仕込んだ脚部から繰り出される蹴りはニュールーマニア帝国の兵を両断していった

たった5人と5機。それを圧倒できるはずだったニュールーマニア帝国は、逆に大量の兵を失ったのだ。
かつて自分らはもといた世界の人類を殺戮しつくした新生命体の血を引く存在であった。この世界の人類も祖先の事例のようにたやすくひねりつぶせるはずだった。
彼らの目論見は外れた。

この世界に存在する機動兵器とその搭乗者もしくは、意思を持った機動兵器は先にも語ったように、搭乗者もしくは機体そのものの意思が強い意志を発揮すれば、それに応えて機体が本来持つスペックを超えた行動を起こし、時には強い意志を持った攻撃がバリアをも貫通し、何時もよりも強い一撃を与える。
単なる閃きがどんな攻撃をも避ける機動を編み出し、ほんの少し集中することで敵の動きを読み、攻撃を当てやすくなったり逆に避けやすくなったりする。

時に「真化融合」と言う言葉がある。極めて近く、限りなく遠い世界の一つにおいてマシンの意志を乗り手の意志もしくは搭載された「ココロ」の意志に呼応させ、両者の境界をなくしてダイレクトに意思疎通が出来るようにする理論である。
もっとも、この理論ですら実はある種の、人類がいつかたどり着く一つの真理の段階の一つなのだが、ソレを語るのは、ここではないどこかで語ることにしよう。

深迩「…とりあえずここは片付いたな。皆、行くぞ!」
夢蒔露「了解」
土岐辻「おう!」
ユーミ「OKよ!」
雪導「うむ!」




アマヅキ「結論から言えば、あいつらに先陣を切らせたのは正解だったね。あいつらは派手にやってくれた…そのおかげであたしらは敵の中枢へ一直線に突っ切れたわけよ。事実、あたしらの中であいつらの戦果が一番多かったわけ、ある種の…無双よ。」
アマヅキはすっかりぬるくなったコーヒーを飲みながら、PCを操作した。
次の記録データが映し出される。

アマヅキ「…さてと、次はこれかね…」


続く


あとがき
はい、Mr・Hです。鈍筆とは言ったが、ここまで鈍筆とはなぁ!?
ちなみに柑橘軍のキャラの設定に多少触れてますが、公開されてる設定や使用する技を基に推測してる部分もあります。
そして何より、「オメー!それスパロボネタじゃねーか!?」なネタもねじ込んでます(ぇ
次回も、鈍筆気味ですががんばります。ご期待ください。
最終更新:2019年01月09日 15:08