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古参陣営最終応援ボーナス:182点


砂原清仁の出会い~拳骨武男編~


希望崎学園入学式会場。ここには様々な表情の者がいる。
これからの生活に絶望するものいれば魔人の恐怖におびえるいる。錯乱のあまり自殺を図ろうとするものさえいる始末である。
だがこの時、砂原清仁が胸に抱いていたのは希望であった。
それも、この学園で暴れてやろうとか支配してやるといったものではなく、新たな出会いへの希望である。
この日本有数の魔人学園になら自分とコンボの組める魔人に出会えるのだと。

──このクラスにはどうやらいねえみたいだな。
入学式が終わり、クラスメイトとの顔合わせが終わった時、砂原は軽く落胆していた。
このクラスにも魔人らしいヤツはいるのだが砂原の求める魔人はいなかったのである。
──まぁ、そんな簡単に出会えるわけがねえか。
だが、砂原はそんなことぐらいで諦めたりはしない。この広い学園のどこかには必ずそいつはいるはずなのだ。
クラス会が終わってすぐ、砂原は行動を開始した。
この学園で魔人が徒党組むところといえば生徒会か番長グループである。多くの魔人と出会うにはそいつらの集まる場所に行くのが手っ取り早い。
生徒会室は学園の地図に書いてあったし、番長小屋はクラス会で教師が絶対に近づくなといっていたところだろう。
どっちにいくべきか。数秒迷ったところで番長小屋に行くことに決めた。番長グループの方が響き的に攻撃的っぽい感じがしたからだ。
なら、とりあえずは外にでておくべきだと、砂原は玄関に向かって歩き出した。新入生たちが思い思い歩きまわっている中ひと際目をひかれる男がいた。
他のヤツらより頭ひとつ、いやみっつぐらいはでかい。砂原とは対照的に筋肉も発達している。だが、それだけではない。まるで体全体がこいつを欲しているかのような感覚に襲われた。
──まさか、あいつ
──再行動能力者か──!
いや、間違いない。このたまらず惹かれるような感覚。砂原の魔人としての全てが、この男を必要としている。
「おい、そこのでかいあんた。」
たまらず声をかけた。
「なんじゃ、チビ。」
男は威圧するかのように声を返した。まぁ、見ず知らずの赤髪のチビがいきなりあんな風に話しかけられれば仕方ないだろう。
「や、すまん。喧嘩売ってるわけじゃないんだ。あんた俺とおんなじで魔人だろ。俺ァ今から番長グループに挨拶にいこうと思ってんだがよかったらあんたも一緒にこねえかい。」
「なんじゃ、お前も魔人なんか。そうはみえんがのう。まぁ、ええ。ワシも番長グループを見に行こうと思っとったんじゃが、ちょっと迷っちまってたんじゃ。ちょうどええから案内せい。」
「あいよ。俺は砂原清仁ってんだ。まぁこれからよろしく頼むぜ。」
「ワシァ拳骨武男じゃ。」
「番長小屋はたぶんこっちだからついてきてくれ。」
──ついてる。今年の俺は間違いなくついてる。まさかこんなに早く再行動に出会えるとは思わなかったぜ。
確かに再行動能力者というはそうそういない。いや、いるときにはいるがいないときにはとことんいないものである。
その再行動能力者と出会えたことは間違いなく幸運ではある。ただ、砂原は見落としている。拳骨武男は再行動能力者にしてはいやに筋肉が発達しているということを。
いや、筋肉が凄まじいということはわかっているがそれがどういうことを意味するのかを全く考えていない。つまり完全に浮かれているのである。
そして自分たちの中学の頃の話などをし、その話がちょうどつきたころに番長小屋についた。

「随分遠かったのお。」
「まぁ、この学園自体が馬鹿みたいに広いからな。それにお前にはこんぐらい広い方が暴れやすくていいだろ。」
「がっはっは。まぁ、それもそうじゃのう。どれ、それじゃあ先輩らに挨拶でもしてくるか。」
拳骨が歩みを進めたので砂原もついていった。拳骨が番長を小屋を壊さんばかりの勢いでドアをノックする。
「おーい、ワシらあ新入生のもんじゃが、番長グループに入りたくてのう。ちょっと挨拶をさせてくれんかあ。」
「うるせえ。そんな大声出して大きな声出さなくても聞こえるよ」
中から出てきたのは特に特徴もない中肉中背の一般的な高校生を実体化させたようなおことだった。
「あ、なんだてめえら。大男と貧弱なチビなコンビたあ随分覚えやすいヤツらだなあ。番長グループに入りたいんだって?まぁここは基本来るもの拒まずだからよ。入りてえってんなら俺たちはもう仲間だ。俺は扇田ってんだ。よろしくな。」
「がっはっは。よろしく頼みますわい。」
「あぁー、ちなみにおめえらどんな能力なの?や、別にいいたくねえならいいんだけどさ。」
「俺は敵を行動不能にするみたいな感じっす。ちょっと条件があるんすけどね。」
「へえー結構強いじゃん。そっちのでっかいのは?」
こいつのは聞かなくてもわかる。再行動だ。俺の魔人としての本能がそう告げている。
「ワシは再行動じゃのう。」
やっぱりそうか。
「へー、意外だなあ。そんなガタイしてるからもっと攻撃的な能力かと思ってたぜ。」
あぁ、一見こいつはそういうタイプにみえるが実はそうじゃないんですよ。扇田さん。
「ま、再行動ちゅっても自分のみじゃがのがっはっはっはっは!」
え?
「なーんだ。つまり自分を複数回行動させるだけってわけかい。なるほどそりゃあ確かにみためにあってるわ。ははは」
扇田と拳骨が笑いあってる中。砂原は思わず放心していた。
え?待って?自分のみってことは?再行動できるのは?拳骨だけってこと?
拳骨だけってことは?俺は再行動できないってこと?
俺が再行動できないってことは?俺はまた能力使えないってこと?
「どうしたよ。チビ。どっか具合でも悪いのか?」
「あぐらっしゃべらべらーーーーーー!!!!」
砂原の中で何かが壊れた。よくわからないが自分でも抑えきれない怒りに駆られた。
ペチッ。情けない音だが。砂原が拳骨を殴った音である。
「い、いきなりなんじゃあ、砂原!気でもちごおたんか!」
「うるせえ!俺はなあ!俺はなあ!」
「おい、チビやめろ!お前じゃどう考えてもこいつにかてねえって!」
扇田が砂原を抑えにかかる。
「うっせえはなせ!俺はこいつをぶっ殺すんだ!」
「わけわかんねえって!落ち着け!いいから落ちつけよ!」
「うわああああああああああ!!!」

こうして砂原清仁の高校生活一日目は終わっていくのでした。チャンチャン

砂原清仁~闘う理由~


空気が、震えていた。
遠くに、戦いの気配を感じる。
おそらく、まだ本格的にぶつかりあってはいないだろう。実際に闘っている場所もここからはかなり離れている。
だが、それでもなお、砂原は震えていた。まるで肌に刺さるかのような緊張感。両陣営の混じり合った殺気。狂気。
そして戦場に向かった仲間がみせた、微かな脅え。
それらは実戦経験のない砂原を恐怖の海に溺れさせるには十分すぎるほどのものだった。
──チクショウ、足が震えてやがるッまだ実際に戦場に立ったわけじゃねえってのによッ
──馬鹿野郎。俺は、逃げるわけにはいかねえんだ。ここで逃げたらあの時の屈辱は一生はらせねえッ




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「砂原せんぱーい。」
「あ?なんだよ?」
「砂原先輩ってガムテープで敵を行動不能にする能力を使うって聞いたんですけどマジっすか?」
「ん、ああそうだよ。俺の能力は周囲2マスの敵を行動不能にする最強の能力さ。」
「やっぱそうなんすか!いやー、先輩は結構ノーマル方かと思ってたんスけどガムテで緊縛プレイとかマジマニアックっすねwwwww」


「あ?」


「やwwwwだって魔人の能力なんて大体変態性癖が基になってるんでしょwwwガムテで緊縛プレイとか先輩マジぱねえっすwww」
「ちげえよ!何言ってんだ!俺のガムテはそんなんじゃねえよ!緊縛プレイなんか興味もねえってんだよ!」
「え?じゃあなんでそんな能力になったんすか?あ!わかった!先輩ガムテをオナホ変わりにしてるんでしょ!ぱねえwww先輩のでけええwwww」
「ちげええええ!ガムテに劣情を催したことなんざねええええええ!!」
「えー、じゃあ先輩なんでガムテなんかを能力に使ってるんですかー、わけわかんないっすよー。」
「んなもんしらねえよ!あれじゃねえの?なんか昔からガムテから好きだったからじゃねえの?」
「そんな理由つまんないっすよー。先輩もつまんない魔人っすねー。だから童貞なんじゃないっすかー?」


(ぶっ殺してえ…!)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




──よし!思いだしたらなんかいけそうになってきたぜ!

無題(誰かいいアイデアあったら勝手に題名つけてくれないかな…)


「夢だ…これは…夢だ。この俺がこんなに探しても見つからないなんて…きっと…これは夢なんだ…」
入学式終了後、一週間以上かけて探し続けてきた。最初は、自分が探したりないのだと思っていた。
…だが、違った。
見落としがあると思い、部長部にあるという総合名簿を探し出し、何十回もすべての教室を探して回った。
今ではまだ入学から一週間しかたっていないのに、同学年女子の名前と顔が思い浮かべられるほどになった。
だが…見つからない、いくら探しても、何度名簿を見て、漏れがないかを確認しても……いない。見つからない。
いくら探しても見つからないのだ、貧乳が。

「落ち着け…落ち着くんだ!平安貴族はうろたえない!」
そうだ…落ち着いて考えるんだ…同学年にいなくても先輩たちの中にはいるはずだ。
先輩たちと仲が良くなれるような所…そう、例えば部活動とかに参加すればいいだけじゃないか。

自販機でココアでも買って頭を冷やそう…そう思い、自販機のある1階に向けて歩き出す望月。
しかし、彼はここで重大なあることを思い出す。

俺のメンタルで…先輩達とまともにはなせるのか…!?

そう、何百年も前から、彼は極度の恥ずかしがり屋なのだ。まともに女子の顔を見て話すこともできない。
そんな自分が部活に入ったところで…まともに話ができるはずがない。先輩たちと仲良くなれるはずがない。

もう駄目だな…ココア買って、飲み終わったら家に帰ろう…
そう思ったとき、彼は自販機の横にうずくまっている魔人を見つけた。貧弱そうな、手にガムテープを持った男の魔人である。
何やら「ちくしょう…何で誰もいねえんだよ…」「拳骨の野郎騙しやがって…」などと呟いている。
そうか、こいつも…目当ての魔人を見つけられなかったのだ。

「お前も…見つけられなかったのか…?」
「うう…そうだ…その通りだ…見つからないんだ、いないんだ、再行動能力者が…」
「うっ…わかる、わかるぞその気持ち…!俺もだ、俺も貧乳を見つけられなかったんだ……!」

それから小一時間、二人はお互いを慰め合った…名前も知らない仲だったが、そんなことは関係なかった。
同じような仲間がいる、自分だけではない…そう思うと不思議と心が軽くなった。
「ありがとう…お前と話してたら元気でてきたよ…じゃあな…」
「ああ、俺もだ…俺の名前は砂原清仁、お前は?」
「俺の名前は真野望月。…今度一緒に麻雀でもしようぜ。」

そしてこれ以来、二人は賭けを外した者同士よくつるむようになった。

数か月後、ある一人の転入生によって二人の仲が一気に悪くなるのは、また別のお話…

『ぼくのかんがえたカマボコ』


名前:鎌倉簿子(かまくらぼこ)
性別:妹
二つ名:戦闘結界<ポータブルバーサーカー>

「R.I.S(理想の妹製作委員会)」なる組織により発注され、生み出されたカマボコ。
理想の妹たるべく自我を与えられており、お兄ちゃんのことを愛してやまない。
いつもお兄ちゃんにぴったりと寄り添って歩いており、
どんなささいな内容でも、お兄ちゃんに危害を加えるような輩が現れれば
狂ったように全力で排除に向かうことから、簿子の周囲の空間を
『戦闘結界<ポータブルバーサーカー>』と呼ぶ人もいるのだとか。

「深く、深く……愛して、愛して、愛してあげるからね、お兄ちゃん♪」

しかし妹として振舞う反面、自身があくまで魚肉であることに大きなコンプレックスを抱えている。
まして賞味期限は1ターン。余命いくばくもない病弱妹である。
「お兄ちゃん、最後のお願い。私を、私を食べて……! お兄ちゃんになら、私……。」
ものすごい語弊がある。
果たしてその後どうなったのか? それはお兄ちゃんのみぞ知る。

見た目は小柄、痩せぎみで胸はないに等しい。ショートカットで活発な印象の、
小尻とシッポがキュートな猿。着ている巫女服は兄の趣味。



名前:まるは&にちろ
性別:双子
二つ名:円環少年<アンファンテリブル>

伝説の魔人「あへんとたいま」を作成しようとした何者かによって発注された魚肉双生児。
能力はもちろん容姿、性別までもオリジナルとは全く異なるのだがそういう発注だから仕方がない。
二人と遊んでいた人間はいつの間にか消滅してしまい、「円環の理」に導かれてしまうことから
いつしか二人は「円環少年<アンファンテリブル>」と呼ばれるようになった。


戸成野=シヴァ=葵の憂鬱


(え、え?? なんで……!?)
 シヴァは心底困惑していた。
「シヴァさん、期待してるっス!」
「がんばろーぜ、シヴァ。期待してっからなー!」
「え!? な、な、な……!?」
 シヴァはなんと返答すべきか分からず、自分の戸惑いをうまく言葉にすることができなかった。
 先ほど、今回の戦いの参戦メンバーが決まった。
「選抜については、明日もう少し考えようか。糞一年坊どもに目に物見せてやろうぜ!」
「おう! あいつらにいっぺん、恐怖ってもんをみっちり叩き込んでやんよ!」
 三年生それぞれが、戦いを前に意気込んでいる。
 そんな中、シヴァは一人、状況が飲み込めず、あたふたとしていた。

(ど、どうして私が参戦メンバーに選ばれてるんですかぁ……!?????)

 シヴァの頭の中に大量の疑問符が浮かんだ。
 シヴァは今回の学園の支配権を巡る争いに、自分が必要とされることは決してないだろうと考えていた。実際、集まったメンバーはどいつもこいつも、シヴァの目には恐ろしげに映った。
 シヴァは終始心臓をドキドキさせ「いつ帰ろうか」と、帰るタイミングを見計らっていた。
 そもそも、シヴァは今回、三年生たちの作戦会議に顔を出すつもりもなかった。
 たまたま、先生から用事を頼まれ、それを終えて教務室に報告へ行こうとしていたところ、同級生の一人につかまってしまい、強引にこの会議に参加させられてしまったのだ。

 会議が始まるやいなや、場違いなところに連れ込まれてしまったと、シヴァはすぐさま思った。
 そして、帰るタイミングだけを必死に探していた。そこに、「よろしく頼むぞ、シヴァ!」という言葉である。
 シヴァは、驚きのあまり跳ね上がった。そして、状況がつまめず、あたふたしているうちに、会議は終わってしまった。

「まさか、Aチームの選抜に選ばれるなんてぇ……。戦うとか無理ですよぉ……」
 放課後、一人、教室でため息をつくシヴァ。
 スタメンに選ばれることはないにしても、もし運悪く援軍として呼ばれてしまったら……シヴァはぞっとした。そんなの自分では無理だ。
「勘弁してくださいよぉ」
 シヴァは頭を抱えた。
 そのとき、一陣の風が吹き、シヴァは思わず顔をあげた。
「あ……」
 そのときになってようやく、シヴァは教室の中に自分以外のひとがいたことに気づいた。
 目の前には数珠浅葱がいた。彼は窓枠に沿うように腰をつけ、顔だけを校庭に向け、静かに外の景色を眺めている(ように、シヴァには見えた。彼は眼が見えないと聞いていたので、実際のところはシヴァには分からなかった)。
 完全に風景と一体化してしまっているかのように、彼と夕焼け色に染まった教室は絵になっていた。


(あ、気配を消してるんですか……)

 浅葱は自分の気配を完全に消していた。なぜ、自分が彼の気配に今まで気づけなかったのか、それである程度シヴァは納得がいった。

「い、いつから……」

 いたんですか?

 シヴァは尋ねる。
 しかし、浅葱の返事はない。沈黙は続く。シヴァは不安になってしまった。あの独り言を全て聞かれてしまったとしたら、それは恥ずかしい。

(うぅ、どうしよう……)

 だが、その沈黙を破り、浅葱が口を開いた。

「気にするな」

 そして、浅葱は窓からおりる。そのまま、教室を出て行こうとする。

(あれ?)

 眼が見えないにしては、その足取りは流暢である。一瞬、それに気を取られるシヴァ。 

(そんなことより)

「あ、浅葱くん。き、聞いてたんですよねぇ」

 シヴァはどもりながら、浅葱の背にそう叫んだ。

「わ、私。あの、た、戦い参加なんかで、できないです……!」

 浅葱は立ち止まる。しかし、背を向けたまま無言。
 シヴァの内に留めていた不安が、あふれるように言葉となって出ていく。

「浅葱くんみたいに、私、自分をアピールとかできないですし……。能力だって、私より優れてる人、もっともっといます……。こ、こんな私が、こんな大事な戦いに、参戦できるなんて、何かの間違いなんですよぉ……。誰か、べ、別の人と……」

 別の人と――そこから先を言うことができなかった。
 浅葱は振り返り、シヴァの目を見ている。その先を言ってしまえば、浅葱のその見えていないはずの眼に、自分の心の内の弱さを全て見透かされてしまうのではないかと、シヴァは感じた。

 しかし、浅葱は目を閉じ、そして、再びシヴァに背を向けた。

「全てにおいて優れたやつなどいない」

「え……」
 シヴァは面食らう。浅葱は誰と話すにしても、いつも一言二言で、あまり自分の考えを積極的に言おうとするタイプではなかった。
 そのため、浅葱がこのように自ら考えを述べるのは意外であった。

 浅葱は続けた。
「自分にとって有利な状況を選べず、命を落としていくやつもいる。だからこそ、お前はあまり自分を卑下するな」
「それって、どういうこと?」
 シヴァは聞き返す。

 しばらくの沈黙の後、浅葱はふっと静かに笑った。

「独り言だ」

 それだけ告げ、浅葱は立ち去っていく。
 廊下の向こうに消えていく影を前に、シヴァは浅葱の言葉を反芻していた。


月読葛八、邂逅。


(兄貴はどこに行ったのだろう)
 葛八はぼんやりと屋上から空を眺めていた。
(また、やってるのか……)
 ふと、校門に目をやると、一年生と三年生が今日もいがみ合っている。
 ハルマゲドンの開催が宣言されて、ここはもうじき戦場に変わる。
「……俺、何してんだろ」
 兄貴を探すという名目で旅を始めた。それなのに、俺はいまにも戦いが始まろうとしているこの希望崎にいつまでも留まっている。
(俺、殺し合いが好きなのかな)
 そんなことを考える。
 曲がりなりにも自分は拳法を使う。それは、純粋に拳と拳を付き合わせた、「戦い」が好きだからだと、純粋に思っていた。
 味方はもちろん、戦意のない相手を殺してしまわないように、能力はいつだってコントロールしてきた。

 どうして、ここに来たんだっけかな。
 思い返してみても理由は思い出せない。

 葛八は自分の掌を見た。
「戦争、なんだよなぁ」
 殺らなきゃ殺られる。そのような状況下において、理屈の上では、殺しは正当化される。
(兄貴なら、きっと)
 迷うことなく、この戦いに身を投じただろう。だが、葛八は違った。今まで、自分から戦闘をしかけたことは無く、拳を奮うのは身を守るとき、もしくはお互いの合意があった上である。
「……俺は」
 狂人ではない。そこは、兄貴とは違う。葛八は拳を握り締める。
 戦争に身を投じるからには、命を落とす覚悟はあるはず。
 そう自身に言い聞かせるが、葛八は自分を納得させることはできなかった。


「すみません」


 葛八は振り返った。


 ・
 ・

 とある田舎町を旅していたとき、葛八は、おかしな路地に迷い込んだことがあった。
 日が暮れようとしていたのもあり、近道をしようとしたところ、自分の居場所が分からなくなった。
 辺りを見渡しても、寂れた店並があるだけで、人の気配はない。
 いつしか、完全に日が沈み、途方に暮れていた。
「すみません」
「ん?」
 声の方を見ると、見ず知らずの少女が、心細げに立っていた。
「あの、迷ってしまって……。大通りへはどうやって行きますか?」
 葛八は合点がいった。助けてあげたいのはやまやまだが、自分も迷子である。
「あー、ごめん。俺も迷子で」
「あ、そうなんですか」
 少女は一層、不安そうな表情を浮かべた。
「よかったら、一緒に探さない?」
 そう提案してみる。少女は、「いいんですか?」と恐る恐る聞き返したので、「もちろん」と返した。

 それから、何時間も人通りのありそうな道を探したが、見つけることはできなかった。
 少女を気遣い、葛八はシャッター通りにあった店の側で休むことにした。

 気まずい空気が流れていた。
 葛八は何か話そうとはしたが、行き連れの身で、あれこれ詮索するのは憚れた。
 長い沈黙を破って葛八は口を開いた。

「俺は、月読葛八。君は?」
 少女は、一瞬何かを躊躇った後、微かに口を開いた。
「山乃端、一人です」
「あ、そうだ! 一人ちゃんは、兄貴――」
 葛八の話を遮って、少女が口を開いた。
「わたし、来年の六月に何者かに殺されます」
「へ?」
 葛八はそのあまりに突拍子のない発言に、間の抜けた声をあげた。
「それって、どういう……?」
 しかし、少女は俯いたまま、それ以上、口を開こうとしない。
 葛八には、それ以上詮索することはできなかった。
 お互い、何も話さないまま、時間だけが過ぎていった。

「ねえ」

 少女が再び口を開いた。
 葛八は顔を上げた。

「何もしないの?」

 葛八は身体が急激に熱を帯びるのを感じた。だが、

「別に、いいんだよ。いまさら」

 少女のその言葉に、それが急激に冷めていく。

「……」

「意気地なし」
 少女がその夜口を開くことはなかった。

「おはよう」
 明るい声に葛八は目を開けた。
 目の前の少女がにこにことこちらを見ている。
 昨晩との違いに戸惑っていると、少女が葛八の手を引いた。
「道、見つけたよ!」
「え!?」
 葛八は立ち上がり、少女に牽かれるがままに道を進んだ。
「ほら!」
 そこは、葛八が近道をしようとする前に、通った道であった。
「ここだよ。ここ! 俺の通った道だ」
 そう喜んでいると、
「ねえ」
 見ると、少女が不満げに葛八を見ていた。
「あ、ありがとう! 一人ちゃん」
 少女は満足げに微笑んだ。
「ねえ、葛八」
「なんだ?」
「私ね、希望崎の生徒なんだよ」
 希望崎の生徒、ということは、葛八とはそう年齢は変わらない。
 少女は、とことこと、葛八から離れていく。
 そして、振り返った。
「今は、用事で来てるからね、時間取れないんだけど。もっとお話したいから、学校に遊びに来てね」
 そういって、少女は駆けていった。

 ・
 ・
 ・


「ぁあ……!」
 葛八は、振り返った先に、かつて道に迷った際に出会った少女の幻を見た。
 そういえば、彼女は、ここの生徒だと言っていた。それに、今回、ここで暗殺されたっていう少女の名前は……。
「うわぁああ――!!」
 葛八は叫んだ。なんで、自分は忘れていたんだ。
 なぜ、自分がここにいるのか。それは。あの少女、山乃端一人に導かれたからじゃないのか? 

 葛八は、屋上のフェンスを力の限り殴った。
「なんで、あの子が殺されなければならないんだ……!」
 それを突き止めるまでは、ここを離れるわけにはいかない。
 葛八は、血に濡れた拳を一層、強く握り締めた。


『開戦の狼煙』


にわかに、教室の外がざわめいていた。

「一年の奴ら、完全になめてやがるぜ」
「上等じゃ、鉄拳制裁したるわい!」
「ひとりひとり希望崎ヒルズから突き落としてやるよ・・・!」

先日校内掲示板にでかでかと書かれた一年から三年への宣戦布告は、三年生たちの戦意を燃え上がらせるには十分であった。
その宣戦布告もヴァーミリオン・碧我のグラフィティによって塗りつぶされたわけだが―
今も希望崎学園には、不穏な空気が流れつつあった。

そんな中、三年生の教室で将棋を指す男女ふたりの姿があった。

『六3金だ』
「んーそうきますかー。じゃあ、同銀!これでどうだ!」
『ふむ・・・なかなかやるな。』

月読葛八と名戯まりあ―正確には、まりあのお腹の中にいる子供、名戯肯である。
胎内にいる肯は当然将棋が(物理的に)指せないため、まりあが代打ちしている形なのだが、
アホの子であるまりあには当然将棋が理解出来ないので、半分寝ながら座っているようだった。

「・・・外、騒がしいッスね」
『ああ、どうやら1年生が3年生に宣戦布告をしたとか。お前も知らないわけではあるまい』
「そっスねー。よくあることでしょう。下克上なんて珍しくもないっスよ」
『それが人間というものだろう。まりあ、二4歩だ』
「・・・ふにゃ~?えっとー、ふ、ふ・・・・えいっ」
「・・・まりあちゃん、それだと二歩で負けッスよ」
「ええ~?そうなのー?もう、肯くんしっかりしてよ~」
『い、今のはお前が打つ場所を間違えたんだろう・・・!』

二人(三人)は、三年生陣営に誘われていたものの積極的に闘いをするようなタイプではない。
しかしここまで来ると一年生との衝突は避けられないだろう。

『月読。お前はどうするつもりなんだ?』
「俺は・・・ちょっと訳あって強くならなきゃいけないんスよ」
『自らを鍛えるために闘いの中に身を置くか。やはり格闘家だな。将棋も修行のためか?』
「師匠が「八極拳士なら将棋くらい指すだろJK」って言ってたんスよ」
(どういうことだろう)
「肯くんはどうするんすか?」
『私はまりあと一心同体だからな。彼女を守るだけさ』
「まりあさん、危なっかしいですからね」
『わかるか?昔からこの女は・・・』
「ちょっと~、肯くんったら、何言ってるのよ~」
「ハハハ・・・まあ、イザとなったら俺が二人とも守りますよ」
『・・・そうか。せいぜい頼らせてもらおう』
「お願いしますね~。」

これまでは、自分の身を守る戦いしかしなかった。
だが今は、守るべき仲間がいる。
それだけで、少年は強くなれる気がした。


「武論斗状」


武論斗状は20××年に希望崎学園にて起きたハルマゲドンの激化のきっかけになったと言われている宣戦布告である。
当初、3号生には一号生を軽く揉んでやろうという雰囲気すらあったがその布告によりそのような温い空気は吹き飛んでしまったとされている。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


AM3:00

「へえ、これが一号生の挑発か。」
「まったく無礼なヤツらだ。だが、この程度の挑発では単に火に油をそそぐだけ。自らの首を絞めるに等しい行為よ。」
「うん、確かにそうだね。でも、これじゃあまだ足りないかな。」
「どういうことだ?」
「確かに才を感じる文ではあるけど、僕たちを芯から憤激せしめるには、まだまだ業が足りないのさ。」
「ほう。」
「どうせなら3号生だけではなく、これを読んだ人全てが怒り狂うような文のほうが、僕らも一号生を殲滅させる気力がわいてくるってものさ。」
「それに、大義名分にもなるというわけか。」
「そういうことだね。」
「で、これを書き換えるのは誰がやるんだ?」
「そういうのは君にお任せするよ。並行世界の中にはそういうのが得意の君もいるだろう?」
「やれやれ、人遣いのあらいやつだ。」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


AM8:00


「一年のクソどもが!」
「ヤツら俺たちをなめてやがんのか!」
「二年の俺もこれはひくわ。」
「軽く捻って赦してやろうと思ってたが、やつら皆殺しにしてやるよ!」
あまりにも無礼な宣戦布告にざわめく生徒たち。
うさぎフードを被った少女がその様子をみながら微かに笑みをこぼしていた。


「今回の覇竜魔牙曇は二戦制とするッ!各陣営は2チームに分かれて儂にまで登録することッッ!」

「それで↑これが僕らと戦う子たちってわけだね↓」
両陣営には敵陣営の名簿が配られていた。
「そうなるな。ふふ、左高 速右ってちょっとお前の名前と似てないか?」
「反復横跳び能力者ねぇ→名は体を示すだね←」
「それを言うならお前こそだろう。お前のは『上下』は正しい位置なのに『左右』は逆になっているんだからな
 自分から『僕は鏡の向こう側の住人だ』と言っているようなものじゃないか」
「あはは↑面白い解釈だね↓まぁ確かに僕がつなぐのは鏡の向こうの世界だよ→パラレルワールドならぬシンメトリーワールドだね←
 一応隠してたつもりなんだけど↑まぁ君にはばれても仕方がないか↓どっかの世界の君にでも聞いたのかい→?←」
「あぁ。ここの世界に限らず俺たちは似た能力同士つるむことが多いみたいだな。名前の解釈は俺オリジナルだが。
 ‥‥鏡の世界ってのも無限にあるのか?それとも一つ?」
「もちろん↑鏡の数だけさ↓もしも鏡の世界が一つだったら鏡同士で矛盾が生じるだろう→?←」
「そりゃそうか。しかしそんなファンタジーやメルヘンみたいなものが有るとはなぁ。
 いや、鏡の世界を作るところまで含めてお前の能力なのか?」
「それは違う↑僕の能力はあくまで繋ぐだけ↓でも繋がるってことは存在するってことさ→別に鏡の世界に限った話じゃあない←
 幽霊を扱う能力者がいれば幽霊の存在が↑UFOと友好を結ぶ能力者がいればUFOの存在が↓並行世界を行き来する能力者がいれば並行世界の存在が確定するだろう→?←
 僕は↑鏡の世界の存在を確定したくて↓この能力を目指したのさ→←」
「へぇ、でも何で鏡の世界を存在させたかったんだ?」
「そりゃぁ↑面白いからに決まってるだろう↓
 幽霊もUFOも→並行世界も鏡の世界も←夢も希望も絶望も↑穏やかな日々も争いごとも↓なんだって無いより有ったほうが→面白い←」
そう微笑みながら、鏡のような短剣(ダガー)を覗きこむと、そちらの世界の彼女はウサギのフードも被っていなかったし、笑みも浮かべていなかった。