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「新参陣営から見たBチーム各ターンの見せ場SS」

【大団円な第5ターン】

「ああああああああああああ!!!!」

御厨括琉(みくりやくくる)、B.J.アキカン、そして重川紗鳥(しげかわさとり)。
相次ぐ仲間の死に直面し、古参魔人名戯(なざれ)まりあの未熟な精神は崩壊した。

『落ちつけ!』

最愛の彼の言葉も最早彼女には届かない。
名戯まりあの子宮内恋人・名戯肯(こう)は呼びかけと同時に子宮口を内側からやさしく撫で、まりあを落ち着かせようとしたが、その懸命の努力は実を結ばなかった。
頭をかきむしり、奇声を上げ、一通りの狂気的行動をとった後、彼女は感情のままに目の前の敵を殺さんと駆けだしたのである。

『ちぃぃぃぃっ!』

母体の暴走を受けて肯は能力を発動した。

彼女に襲われた新参魔人・行方橋ダビデは魔人拳法の達人だった。
拳の鍛錬の過程で彼が得た洞察眼は、一目敵を見ただけで弱点となる部位はもちろん対象が現在かかっている病気や総合的な戦闘能力まで見えてしまう冴えのある逸品だった。
その優れた目をもって彼は名戯を「戦闘力を持たないただの人間」と判断し、迅速に処理行動へと移った。
戦闘時の彼には油断も容赦もなく、それは間違いなく最適な動作で行われた最善の行動だった。
向かってきた名戯まりあの喉を貫かんと一歩踏み込んで、必殺の手刀を繰り出したのだ。
その手刀は先程重川を貫いた時と同等の威力を有しており、砂の詰まったドラム缶程度なら易々と貫通する。
だが、その手刀は彼女の命を奪えなかった。
名戯の喉は薄皮一枚傷つかず、それとは対照的にダビデの右手は指先から手首までが粉々に砕け折れた。

『母さんは俺の嫁』

ダビデは砕けた右手の痛みを感じる前に絶命した。
手刀とほぼ同じタイミングでまりあが放った平凡な平手打ちが、軽い破裂音と共にダビデの顔面の大部分を消し飛ばしたためである。
行方橋ダビデ・即死。

名戯まりあの能力「母さんは俺の嫁」は正確には彼女の能力ではない。
それは彼女の子宮の中で彼女と共存する魔人・名戯 肯(なざれこう)の能力である。
まりあのお腹に突然宿された胎児である肯は知能が異常に発達しており、胎内で精神が中二に達し魔人覚醒した。
そしてその肯の溢れ出る中二力によってまりあの肉体を保護し、本来貧弱な肉体を屈強なものに変えるというのが「母さんは俺の嫁」という能力の正体である。
ダビデの手刀がまさに突き刺さらんとした瞬間、まりあは肯によって強化され、これを撃退したのであった。

ドス黒い中二力を放出させながら、ダビデを一挙の元に葬った名戯が新参陣営を睨みつける。
その両目からはとめどなく涙が溢れ続けている。

「……ひぐっ…ぁ…ぁん…くっ…くくるさんっ…
アキカンさんっ……さ…ぐすっ…さとりちゃんっ……!
…ねぇ…返して…? 返してよォーーーッ!!!」

次の獲物を狙い再び走りだした名戯を新参陣営二枚盾の武論斗さんが組み伏せにかかる。
ブ厚い鉄の扉に流れ弾丸のあたったような音を響かせ、両者は激突した。




名戯の暴走は古参陣営にとって都合の悪い出来事だった。
というのも、古参陣営の参謀である負一 統色(ぜろまえ とうしき)は現在の絶望的な戦況を総合的に判断した上で降伏を検討していたのだ。
しかし、名戯が新参魔人を殺した上に暴れまわっている現状、白旗がすんなりと受け入れられるとは思えない。
最低限暴れている名戯を止めないことには交渉の余地はないだろうと考えた負一は使者を送ることにした。
彼が使者に選んだのは六埜九兵衛(ろくのきゅうべえ)という魔人だった。
六埜は女性に裏切られ続けた(と思い込んでいる)嫉妬深い性格の雰囲気イケメン魔人である。
交渉をするにあたって彼の不安定な性格を考えれば決して適切な配役であるとは言えなかったが、名戯の暴走を止められる戦闘能力を持った魔人はもう他におらず、彼に頼らざるを得なかった。
そうして六埜は降伏を申し出る為に最前線へと向かったのである。

前線へ到着した六埜はすぐさま組み合っていた武論斗さんと名戯の間に割って入った。
そして「六埜さんどいて! そいつ殺せない!」と激昂する名戯の下腹部に向かって叫んだ。

「肯ッ! 勝負はついた!
今すぐまりあの強化をやめてくれ!
俺たちは負けたんだ!」

まりあをダビデから守る為に仕方なく能力を発動していた肯は素直にその呼びかけに応じ、まりあの周囲に漂っていたドス黒いオーラは消失した。
自身の力の減退を感じ取ったまりあはより一層の混乱を見せる。

「どうしてこれじゃあ殺せない!! 肯くんっ!! 六埜さんっ!!
みんなみんな殺されちゃったんだよ!? どうして殺しちゃいけないのっ!!?」

錯乱する名戯の首に六埜はそっと自らの腕を密着させ、抱きしめるようにして絞め落とした。
そうして意識の無くなった名戯を床にそっと寝かせた六埜は流れるような動作で足を畳み、右手と左手を膝の前に揃えて地につけ、その人差し指と親指の間にできた空間に鼻を納めるようにして頭を下げた。
そう、土下座である。

「申し訳ありませんでした~!
俺たち、ダンゲロスから足を洗ってハイパーエリートになります!」

と、六埜は古参陣営の総意を新参陣営に伝えた。
緑風佐座・行方橋ダビデというかげがえのない仲間を殺された新参魔人達の中には降伏に納得できず古参殲滅を望む者もいたが、そういった者達は六埜の後を追うようにゾロゾロと集まってきた古参魔人達による一糸乱れぬ土下座芸に毒気を抜かれ、不満そうな表情を浮かべながらも降伏宣言を受諾したのであった。

余力のあった新参魔人達は陣営の勝利を祝い喜んだ。
ある者は歓喜のシャウトを轟かせ、ある者はかくし芸である南京玉すだれを披露した。
戦いで消耗していた者達は安堵の表情を見せへたり込み、亡くしてしまった両名を良く知る者達は改めて彼らの為に声をあげて泣いた。

こうして、新参vs古参ダンゲロスは新参陣営の勝利で幕を閉じたかに思えたのだが…。

気の緩んだ新参たちを見て、一旦は敗北を認めた古参魔人達の心に暗い影がちらりとよぎる。
油断しているこいつらになら勝てるんじゃね?

「やっぱやーめた! エリート人生なんか糞食らえだ! 死ねぇ!」

プライドを捨て襲い掛かろうと頭を上げた古参たちの目に飛び込んで来たのは、ゲスな気配を一瞬で察知して即座に戦闘体制に戻った新参達の姿だった。

諸語須川てけりの怒りと共にざわめき逆立った髪の禍々しさは古参の戦意を根こそぎ削いだ。

審刃津志武那が持つ天秤の放つ威圧間は意気込んで上げた古参の頭を再び下げさせるほどであった。

阿野次のもじが死線に向けて中段に構えた伝説の白いギターと、夢追中のスラリと伸びた脚の先で練られた殺気は数秒先にある死の香りを強く匂わせ、古参を後ずさらせた。

埴井葦菜の操る空を覆い尽くさんばかりのアシナガ蜂達が奏でる羽音は「決して逃げられない」という絶望感を古参に与えた。

二枚盾の阿吽像のような立ち姿は大いなる存在を想起させ、古参に芽生えた反逆心をかき消した。

稲荷山和理の武術家のような握りの構えを直視した古参は己の魂の消失をイメージさせられ、ただただ震えるしかなかった。

彼らの様はまるで歴戦の勇者。

――あ、やっぱ無理だ
「すいませんでしたぁっ!」

一旦勢いで立ちあがった古参達はそのままはジャンピング土下座に移行した。
そんな彼らの姿は最高に格好悪かった。

≪新参陣営≫
  • 死亡(2名)
行方橋ダビデ
緑風 佐座
  • 負傷(4名)
武論斗さん
梨咲 みれん
夢追中
埴井葦菜

≪古参陣営≫
  • 行方不明(1名)
月宮クズレ
  • 死亡(4名)
御厨括琉
B.J.アキカン
重川紗鳥
真野望月
  • 負傷(4名)
名戯まりあ
負一 統色
六埜九兵衛
香川 雨曇

≪勝利陣営≫
新参陣営

~魁!ダンゲロス・完~


→新参陣営完全勝利!
次回!エクストラターン!


【エクストラターン】

新参と古参の戦いからちょうど一ヵ月後の今日、あの戦いから生還した新参魔人達は一所に集っていた。
彼らの集うそこは学園の敷地の隅に位置している雑木林の中で、横一列に並ぶ彼らの前には高さ3mほどの丸みを帯びた石があった。
大きく刻まれている「新参之墓」という文字が、その物体の意味するところを表している。
そう、本日新参魔人達は先の戦いで散った仲間を偲ぶために集まったのだ。

喪服を纏った彼らの顔には大なり小なり悲しみの色が浮かんでいる。
普段明るく元気な彼らもこの時ばかりはじっと佇み故人に想いを馳せていたのだ。

「あの時私が止めていたら」

「俺がもっと早く駆けつけていれば」

長い黙祷を経て、ぽつりぽつりと後悔と懺悔の言葉が漏れだした頃、その陰気な空気を打ち払うかのように彼らの背後から陽気な台詞が響いてきた。

「そんなことより野球しようぜ!」

やれやれどこの馬鹿野郎だと振り向いた新参達は自らの目を疑った。
声の主は先の戦いで死んだはずの緑風佐座であったのだ。
さらに驚くことに緑風の傍らには彼と同様に死んだはずの行方橋ダビデの姿もあった。

「緑風さん!! 行方橋くん!!」

いち早く一人の新参魔人が歓声を上げ彼らに駆け寄った。
それに続くように次々と歓声があがり、わらわらと二人を取り囲む。

「どうして! あの時確かに二人とも…!」

「あぁ、それは――――」

まるでテンプレート通りの質問に、緑風はニヤつきながら答えた。
あの時月宮の即死攻撃を受けた緑風の心臓は確かに停止したのだが、その代わりに魔人の核とでも呼ぶべき臓器が覚醒し彼の命を繋ぎとめたのだと。
ほら触ってみろよ、心臓はまだ止まったままなんだぜなどと無邪気に笑いながらに緑風は言った。

「じゃ、じゃあ行方橋くんは…!」

「死んだのは残像だ」

行方橋ダビデは平然と答えた。
残像使いとしてのスキルを極めた彼は、ついに自身と同じ容姿・思考・能力を持った残像を生み出すことに成功していたのだ。
彼は数年前に自身と完全に等しい7体の残像を生みだし、それを別々の場所に分けて安置していた。
そしてその完全なる残像は現在活動している「行方橋ダビデ」の消失をトリガーとし、新たなる「行方橋ダビデ」としてそれまでの記憶を引き継ぎ行動を開始するのだという。

二人の説明を聞き、新参達は更にヒートアップして矢継ぎ早に質問を投げつける。
「心臓て…緑風君月宮先輩の能力で爆散したんじゃなかったっけ…?」「ダビデお前は何人目だ?」「能力…その能力について詳しくお願いしますっ!!」「今までどこにいたのー?」「なんで二人は腕組んでるの? 死ぬの?」「スリーサイズは!?」「罵ってください!」

そんな弛緩しきった新参魔人達に突如異変は訪れた。
あれだけ騒がしかった新参魔人達の声がピタリと止んだのである。
声だけではない、動作もピタリと止まりそれはまるで見えない糸に括られたようであった。
常に冷静沈着な審刃津志武那(しんばつ しぶな)は現在の状況を整理した。

「(体が動かせない…! 皆も俺と同じような状態か…
…恐らくこれは、行動封印系能力者の仕業!
古参の意趣返しか…? いや、こんなことのできる能力者は古参陣営にはいなかったはず…
これはまさか…あの―――――)」

「御明察!」

フハハハハハハといかにもな笑い声を上げながらその男は墓石の上に現れた。
フードのついたマントをスタイリッシュに着こなすその謎の男は、行動不能に陥っている新参魔人達をまじまじと見下ろした後、愉悦に浸りながら演説を始めた。

「新参陣営諸君、先の戦い御苦労であった!
我々はGK10という陣営である!」

男の言葉をきっかけに墓石の後ろから10人の人影が現れた。
皆演説をしている男と同じデザインのフード付きマントを纏っている。

「まずは安心して欲しい!
動けない君達をこの場でどうこうしようというつもりはない!
本日我々は宣戦布告を目的にやってきたのだ!
君達は古参陣営を倒したことで少々増長しているようだが、彼らは所詮我々の残りカスに過ぎない!
我ら至高の10名こそこの学園の真の支配者なのだ!
圧倒的な能力と知略をその身に刻んでやろう!」

ワーワーと高慢な演説を持て囃すフードの男たち。
それに気を良くしたのか、墓石の上の男はフードを脱ぎ捨てた。
中から現れたのは声から連想できる通りの逞しい肉体を持つ漢臭い男だった。
その男は何を思ったのかフードを脱ぎ捨てたように帽子、学生服、Tシャツ、ズボンと順々に脱いでは捨てていった。
突然始まった誰ひとりとして得する者のいない脱衣所ショーに仲間達は唖然とした。
「あいつ、露出狂だったのか!?」「きっと汚い裸を見せつけることで新参の戦意を下げにいってるんだよ!高次元盤外戦術だよ!」「それにしても見苦しいなぁ…」
などと言っている間にその男の召し物はついに靴とブリーフのみになってしまった。
最後の砦たるブリーフに手をかけたとき、流石に仲間達も声を荒げて制止したのだがその声が彼に届くことはなかった。
こうして頭にブリーフ、足に靴のみを召した完成形変態が誕生したのである。

「あの…見苦しいのでせめてその粗末なものを隠して頂けませんか?」

見かねた一人のフードの男がそう言って白い布を墓上の男に向かって投げた。
その布をいそいそと身に纏う彼であったが、その行動がフード軍団にさらなる衝撃を与えた。
その投げ渡された布というのが丈の短いフリフリのエプロンであったのだ。
ヘッドブリーフ、フリフリエプロン、陰部丸出し、アクセントの靴という格好になってしまった彼は、もはや完成形変態の域を超えており、完了形変態と言っても過言ではない有様であった。

「…ぷっ! あははー 私だったら死んでるなー」

その言葉にようやくフード衆は集団の中に敵がいることに気付いた。
そう、墓上の男は操られていたのだ。
フードを脱ぎ捨てたその女は「身操屋(みくりや)」の異名を持つ操身術士――――

「―――――貴様はッ! 御 厨 括 琉 ッ!」

「Yes, I am !」

フードの男たちはここにきてようやく臨戦態勢に入ったのだが、もうその時には手遅れであった。
ガションガションとミリタリーファンが泣いて喜ぶようなリロード音が新参魔人達の遥か後方からこだました次の瞬間

「ムーンライト・ミラージュ・バスター!!!」

というどこかで聞いたような必殺技名と同時に射出されたエネルギー奔流によって、墓上の男は昇華して気体になったのである。
能力を放ったのは月の力で戦う美少女古参魔人・月宮クズレであった。

予想だにしていなかった古参の強襲に対しフードの集団内には混乱が生じ、新参陣営を縛っていた能力が緩んだ。
それを機に一気に戦闘態勢を整える新参魔人達。

いよいよ危機的状況に陥ってしまったフード衆を「あらあらなんだか大変そうですねー がんばって下さーい」とニヤつきながら煽る御厨。
そんな忌々しい存在を叩き切ろうと一人の男が腰に刺していた魔剣を引き抜いた瞬間、その男の上半身は消し飛んだ。

「―――――重闘法:威蛮(じゅうとうほう:いはん)」

男を消し飛ばしたそれは、武道家古参魔人・重川紗鳥が用いる重川流格闘法の奥義であった。
武器を持った相手を遠当てにより遠距離から攻撃するのがその奥義の概略である。

「な、なんで! なんでおまえらが新参陣営に味方する!?」

もう余裕もへったくれもないフードの男は思ったことをそのままに叫んだ。
それに対して御厨が少し悩んでから答えた。

「『どうして新参に味方するのか』…ですか。
動機の言語化はあまり得意ではないのですが…。
…そうですね、至極単純に言ってしまえば、私たちが新参のことを気に入っているからです。
普段は使いっ走りに行かせたりたかったりしてイジメていても、いざという時は守ってあげたいって思うんです。
古参(せんぱい)ってそういうものではありませんか?」




GK10を血祭りにあげた後、新参陣営と古参陣営が共闘して真・GK10と戦うことになるのだが、それはまた次のキャンペーンで。


【エピローグSS・埴井葦菜の戸惑】


 古参との死闘を生き延びた葦菜は、己の人生の転機となった噴水広場にて、またも運命の出会いを果たす。

「そこのアナタ! 埴井葦菜さんよね?」

「? そうだけど……」

 葦菜の前に現れたのは、タイトなスーツをキチッと着こなし、不敵な笑みを浮かべて腕を組んだ一人の女性。
 テレビやネットにあまり明るくない葦菜は、この女性が誰なのかが分からなかった。
 そんな葦菜の事情を察したのか、女性は名刺を差し出しつつ、名乗った。

「申し遅れたわ、私は悪鬼悖屋Sucie……一応、そこそこ名は通っていると思うのだけれど」

「Sucie? ……ああ! そういえば、前にホーネットが騒いでた、触手のアイドルの――!」

 その女性――悪鬼悖屋Sucieは、今をときめく触手アイドルグループ・SKS48の生みの親である女子高生プロデューサー。
 彼女は満足気に頷くと、鞄からホチキス止めされた紙束を取り出し、葦菜に手渡した。
 不審に思いながらも受け取った葦菜は、その紙束の表紙に踊る字を見て衝撃を受けた。

 極太フォントで印字されたその言葉は――『ツッコミ所が多すぎる天然ドM受けアイドル・アッシーナ プロデュース用企画書』!

「ハアアアアアアアア!? アイドル!? あたしが!?」

「アナタが、よ」

 シルバーフレームのメガネをくいっと直しながら断言するSucie。
 突然の非日常への招待状に目を白黒させる葦菜に対し、Sucieはさらに言葉を続ける。

「私はアナタ達の戦いを、それこそ作戦会議中からずっと見ていたわ。
 魅力的なコはたくさんいたけど、その中で私の目を最も釘づけにしたのが、そう、アナタよ!
 アナタの常軌を逸したアイドル力は、最早アイドルの神様が与え給うた贈り物に違いないわ!
 あとは私に全てを委ねれば、アナタは史上最高のアイドルになれるわ! 
 さあ、身も心も私に任せなさい! さあ! さあ! さあアアアアアアアアアアアアアア!!」

「いっ……いやあああああああああああああ!!」

 奇声を発しながら恐ろしい形相で迫りくるSucieと、彼女から必死に逃げ惑う葦菜。
 この場所で、このシチュエーション――どこかで見たことがあるかも、などと思う葦菜の前に、見知った人影が現れる。
 葦菜は「助かった!」と笑顔になり、救いを求めその少女――埴井ホーネットの元へと走り寄る。

「いいところに来たわね! 助けてホーネット――」

「えいっ!」

 どんっ、と、いつか見た光景を再現するかのように、無情なる両手が葦菜を突き飛ばした。
 今度は自分がすってんころりんと転がる役になった葦菜は、露わになった純白を隠すこともせず眉を吊り上げ怒りの炎を燃やす。
 そしてホーネットに怒声をぶつけてやろうと開いた口は、しかして呪詛の言葉を吐くことはなかった。

「あんた、何すんの――」

「つうううかまあああえたあああああああああ!」

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 Sucieに肩をがっちりと掴まれ、葦菜は悲鳴をあげながら地面に組み伏せられた。
 そのままマウントをとられ、その場で制服を剥ぎ取られ次々と衣装合わせをさせられる葦菜を見下ろすホーネット。
 やがて彼女は「べーっ」と舌を出しながら、一言つぶやいた。

「この前のお返しですっ!」

 葦菜の拒絶により二人の変態にもみくちゃにされた例の一件は、なんだかんだで頭にきていたようであった。
 ともあれ、因果応報というべきであろう、見事に捕まってしまった葦菜は、敏腕プロデューサー魔人・悪鬼悖屋Sucieと共にアイドル街道まっしぐらである。
 埴井葦菜の戸惑も、いつかは目立つことへの快感へと変わり、それは同時に「埴井葦菜」から「アッシーナ」への変身をも意味するのだろう。  <終>