『……わかった。俺の負けだ。……降参する』
刈谷融介は、あの時確かにそう言った。
しかし。実際のところ、彼は何ひとつ分かっちゃいなかったのである。
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土産(みやげ)
1 外出先や旅先で求め、家などに持ち帰る品物。
2 他人の家を訪問するときに持っていく贈り 物。手みやげ。「——に酒を持参する」
3 迷惑なもらい物を冗談めかしていう語。「お前の勝利SSはとんだ——だぜ」
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「わぁ、綺麗!」
砂羽は目を輝かせていた。ここは中南米の刃物を持った操り人形型マスコットのパペット・マチェットが跋扈する大人気遊園地、パチェっと!パーク。その中でも人気のアトラクションのひとつ、観覧車である。
無論、刈谷も同行している。そもそも、このDSSバトル前日に遊園地へ遊びに行くことを提案したのは彼であった。
「ねえ……良かったの?今、大変なんでしょ?」
彼女はDSSバトルを視聴していない。それは刈谷の仕事であり、必要ならば見るように言ってくるだろうというのが砂羽の考えだった。
「ああ」
どこか遠くを見るような目で刈谷は言う。
「いいんだ。問題ない」
実際には、『問題ない』というより『意味がない』といったほうが正しいだろう。あらゆる分野で世界2位ならば、その総合力は間違いなく世界1位である。その上、バリツや瞬間移動などの奇怪な技術を扱えるのだ。
番外戦術を考えるならばホテルの一室にこもっているのは下策。こうして人混みの中にいる方が、よほど安全だ。
「そ。貴方がそう言うんならいいわ」
言うが早いか、彼女はまた窓の方を向いてへばりつくようにして夜景を眺め始める。その微笑ましい様子を、隣に座る刈谷はぼんやりと見つめていた。
その後、観覧車を降りた二人は園内のショップへと向かった。次はどうするのだと聞いたところ、おみやげを買いたいと言うのである。
「そんなもん買って、誰に渡すんだ」
と更に問えば、
「内緒!」
と言うばかり。
止めることでもあるまい。そう考え、刈谷はぶらぶらと砂羽の後ろをついて行っていた。
「ふーんふふーんふふーん」
笹原砂羽はこの日、今までになく浮かれていた。特にそれが店内では顕著であった。パタパタとあちこち走り回り、あれはどうだ、こっちはこうだと物色し続けている。
遊園地に連れてきてくれたことが、嬉しかったのではない。いや、それもそれで嬉しいのだが、もっと別の理由がある。
『次はどうする』と、聞いてくれたことが嬉しいのだ。
二人の関係は、かつての社長とその秘書である状態に近い。砂羽も意見を言うことはあるが、なにかを決断するのは常に刈谷の仕事だった。
ところが今回は、どこに行きたいか、なにをしたいか、そういった事柄を全て砂羽に任せていた。それがいかなる心境の変化かは分からなかったが……この変化が、なにかが一歩前に進んだような気がした。それが嬉しいのだ。
「ふーんふっふふーん」
アレも違う、コレも違うと店内を探し回り、ついにお目当てのものを見つける。砂羽はそれをぎゅっと胸に抱いた。
「見つかったか?」
「うん。あ、でもコレは自分で買うから」
「あぁ?……そうか、分かった」
「ユースケはなにか買うの?」
「『グレンデル山のヤマンバ干し肉』だ。美味いらしい」
刈谷の手にあったのは、おどろおどろしい装飾が施された袋。なんの肉なんだろうかと疑問に思わずにはいられない。
「じゃあ、それ買ったらお店の外で待ってて!」
「いや、それは……」
「いいからいいから!」
ぐいぐいと刈谷を押しやる。彼は何事かを不安視しているようだったが、頑なな砂羽に押されるようにして『グレンデル山のヤマンバ干し肉』を買い、店を出ていった。
砂羽もまた、お目当ての品を購入する。無論、それは刈谷へのプレゼントだった。
しかし、それを彼に渡すことは許されなかった。
なぜか?それは無論——世界2位の前では、あらゆる対策は『意味がない』からである。
一瞬の間隙を突いた瞬間移動は、当然のように彼女を誘拐せしめた。『世界二位の隠密行動』によりあらゆる人間の死角を縫って行われた犯行は、一人の女性が消えたことを誰にも気付かせなかった。
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外道(げどう)
1 仏語。仏教の信者からみて、仏教以外の教え。また、それを信じる者。
2 道理に背く考え。また、その考えをもつ者。邪道。
3 災いをなすもの。悪魔。また、邪悪な相をした仮面。「——の面」
4 心のひねくれた人、邪悪な人をののしっていう語。「この——太郎!」
5 釣りで、目的と違った魚が釣れたとき、その魚のこと。
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さてさて、夜空には夜の帳ならぬ、星々の銀の帳が降りている。なにせここはとある地方の山岳地帯に設けられた俺たちのアジトそのひとつ。都会とは空の明るさが文字通り違うってわけさ。
俺の目の前には、柔らかなタオルで縛られて椅子に座っている女性がいる。名前は笹原砂羽。借金のカタに風俗へ沈められ、違法ドラッグに手を出さざるを得なくなった哀れな人物。しかし昔馴染みの若社長から寵愛を得たシンデレラでもある。
我らが名探偵と比べられちゃあ世のあらゆる女性が可哀想ってもんだが、それにしてもこのシンデレラは『薄幸』と形容するほかない貧相な容姿だ。王子様を射止めた理由は美しさではなかったのかい?この女性にかかった魔法はいったい如何なるものか。あの刈谷って男の趣味は、俺にはわからんね。
「……誰なんですか、あなたは」
おっと、自己紹介が必要ときたか!これは失敬。
王道を嗤い、覇道を蔑み、行くは邪道の獣道。名探偵の共犯者、外道太郎たぁ俺のことよ。どうだ、恐れ入ったか。
「外道太郎さん、ですか」
おう。いけすかねぇ野郎と思うかい?そりゃあ俺の道はすべての外側、そんなところじゃ汚れちまうのは仕方のねぇことさ。だからこそ俺は……おおっと、喋りすぎちまうのは悪い癖だ。
「帰してはいただけないんですよね」
そりゃそうさ。我らが名探偵サマは、その銀色の脳細胞でこう考えた。『勝てない』ってな。あの、あらゆる点で世界二位の彼女がだ!
これがどういうことかわかるかい?光のバリツはもちろんのこと、闇のライヘンバッハ柔術秘奥義、滝壺落としさえもマスターしたあの銀天街飛鳥だぞ!それがまさか『自分では勝負にもならない』と推理するとは、驚天動地とはこのことだぜ。
俺はそいつを杞憂と言ったが、『彼なら地を崩し空も落とせるだろう』、なーんて言われちゃお終いよ。ならばと俺は先週同様、汚れ仕事に勤しむわけさ。
「そう、ですか」
しかし、ずいぶん冷静じゃねえの。正直ちょいと驚いている。自慢じゃねえが、俺はこういう時に泣き喚かれるのは慣れてるんだぜ?
「心配なんです」
心配?なにが?おいおい。まさか誘拐されちまった自分の身じゃなくて残された刈谷某、そっちの方が心配だって?
「はい。その、彼は……真面目なんです。そして、できるだけいい人でいようとしてるんです。そのぶん、急にプツッとなにかが切れちゃうことがあって。だからその」
カレがどうにかなっちまわないか心配、ってわけか。
「はい……付き合ってるわけじゃないんですけどね」
なるほど、と俺は思う。どうやらこの二人は俺が思っているよりも複雑な関係性らしい。もちろんそれさえもアイツは織り込み済だろうが、どうにも心配になってきやがった。
もっとも、相方のトンチンカンな不安ってヤツを華麗にかわすのが名探偵。俺の心配はそれこそ杞憂になるはずさ。
『彼なら地を崩し空も落とせるだろう』って言われたことを思い出せ?おいおい、そんなこというなよ。俺としたことがブルってきちまったじゃないか。
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探偵(たんてい)
1 他人の行動・秘密などをひそかにさぐること。また、それを職業とする人。「蠍座の名——」
2 敵の機密や内情をさぐること。また、その役目。スパイ。隠密 (おんみつ) 。密偵。
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ひとつ、俺たちの話でもしておこうか。あと何分かしたら、俺もVR空間に行くことになってるんでね。
「いいかい、共犯者〈スイートハニー〉。私はこの戦いで、なんでもするつもりだ」
DSSバトル開始前に、あいつはわざわざそんなことを言いやがった。全くもって今更な話だ。俺はいつだってお前だけのためになんでもしているっていうのに。
「うっ……とにかくだね、私はやるよ。文字通りなんでもやる。探偵の勘が言っているのさ。この大会には、『なにか』があるってね」
世界二位の勘だ、まず間違いなく合っている。しかしそこは大企業、なかなか尻尾を出さないときたもんだ。おまけに一回戦では二人揃ってオネンネしちまったわけだから、優勝者として堂々と潜入することもできない。
それがどうしてキミの誘拐につながるのかって?それについても語ってくれたさ。
「鷹岡も刈谷も、社長としての一面がある。商取引によって生まれた貸し借りは、そう単純に精算できないはずだ。つまり刈谷は、私たちに情報を売ってくれない。
だから私達の指示を聴くしかない状態に追い込む。幸い、彼の弱点は一回戦でハッキリしているからね」
アイツはそこまで言い切ると、一筋の涙を流した。俺は銀の雫がパタリとこぼれ落ち、カーペットにシミを作るところをはっきりと見た。
なあ、名探偵サマよ。あんたはもうこの道を選んじまったんだ。王道を嗤い覇道を蔑む邪の道、つまりは外道ってヤツさ。選んだが最後、もう戻れねぇ。だからその銀の輝きだけは見せちゃいけねえんだ。
「……捕らえた女性に傷をつけることは許さない。相手にこちらの危険性を伝えたいときは、私が『説得』と『演技指導』、『特殊メイク』で演出した映像を撮る。いいね?」
この外道太郎に対してそんなことを言うだなんて!甘い、甘すぎるぜ銀天街飛鳥。
「そうさ……私はいつまでも甘い女だ。こんなことに手を染めておきながら、いつまで経っても慣れることができない。もう私は、本当は……探偵でも、なんでも」
いいんだ。俺が許す。なぜなら俺は共犯者〈スイートハニー〉。キミにだけなら甘い顔をしてもいいのさ。特別だぜ?
と言うわけで、俺はあんたをどうこうするつもりはない。自白剤くらいは飲ませるかも知れないが。
それより、あんたのカレ……いや、同居人とやらが確かに心配になってきた。あの野郎、俺からの電話に全く出やがらねえ。フツー誘拐犯と連絡を取ろうとしない被害者がいるか?
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共犯(きょうはん)
二人以上の人が共同で犯罪行為をなすこと。また、それを行った者。「かのシャーロック・ホームズがなぜ名探偵たりえたか、わかるかい?ワトソンという偉大な助手がいたからだよ。私にとっての君のようにね、——者〈スイートハニー〉」(銀天街飛鳥 プロローグより)
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銀天街飛鳥は、己が無力であることをよく知っている。
『天賦の銀才』があるのになにを馬鹿なことを、と思うかもしれない。しかし飛鳥が無力感を覚えたのは、むしろ魔人能力を得てからだった。
なぜこの世から、事件はなくならないんだ?
彼女はあらゆる事件を解決することができる。探偵とはすなわち『探る者』。どんなアリバイも証拠も、ひいては犯人さえも彼女から隠れきることなどできはしない。
それでもなお、銀天街飛鳥には事件を未然に防ぐことができなかった。探偵のジレンマとでもいうべきか。彼女は自分が事件を解決することしかできないと気づいてしまったのである。
自分は探偵になりたいのではない。ひとつでも多くの事件を解決し、人々を助けたいのだ!
では、どうしたらいいのか?
答えは簡単である。事件をコントロールすれば良い。自分は『探偵』という装置になり、さらに『犯人』や『被害者』さえ、すべての被害が小さくなるよう干渉すればいいのだ。
彼女は何度かの波乱の末、無二の共犯者を得た。名を外道太郎。『生殺掌握』という強力な能力を持つ男だ。
彼に求められた役割はふたつ。『犯人』と『被害者』の両方である。この先大きな事件を起こすものをあらかじめ殺すこと。事件の際、誰かの代わりに殺されること。血流操作能力を持つ彼は失血にめっぽう強く、何度も生還している。
そうして自分は『探偵』として、改めて事件を解決する。世界二位の隠蔽によって外道太郎が犯人として他の探偵に捕らえられたこともない。
こうして被害者は減る。彼女らの行い、その善悪に関わらず。
その結びつきはまさしく共犯者。探偵は一人。されど犯人は二人。
故に、彼女は世界二位の名探偵である。その実力だけでなく、自分が世界一の名探偵になってはならないという意味において。
その代わりに。何に代えても事件は解決せねばならない。それが銀天街飛鳥の悲壮な決意である。
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権利(けんり)
1 ある物事を自分の意志によって自由に行ったり、他人に要求したりすることのできる資格・能力。「敵は能力を使われたが最後、返却されるまで貸しあたえたものに対する一切の——を失ってしまう」(刈谷融介 キャラ説明より)
2 一定の利益を自分のために主張し、また、これを享受することができる法律上の能力。私権と公権とに分かれる。「会社の——を譲る」
3 権勢と利益。
◆◆◆◆◆
だが。感傷も決意も、刈谷融介にはなんの関係もないことだ。
2.17秒。それが戦闘終了までのタイム。
廃墟に紛れ込ませるつもりだった、相手から攻撃を喰らいにいく武器であるワイヤートラップ。
運動エネルギーを奪われても、接触するだけで効果を発揮するテイザーガン。
世界二位の肺活量で息を止めつつ使うはずの、揮発性の毒薬。
NPCのならず者を制圧、服従させ戦力として使うつもりだった外道太郎。
なにもかもが全くの無駄に終わった。
そして。これから事件において、銀の輝きが閃くことはない。
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怒り(いか-り)
怒ること。憤り。立腹。
◆◆◆◆◆
刈谷融介は、なにひとつ分かっちゃいなかった。
彼は昔、ひとつの疑問を抱いた。彼はそれを生来の真面目さ、というより頑なさでもってハッキリと覚えている。
——駅前で、若い男女が大声を上げている。その手にはなにやらプラカードを掲げており、中には募金箱を首からかけている者もいた。
——曰く、かわいそうなワンちゃんネコちゃんに救いを。
——その脇で、じっと息を潜めるようにして、静かにうずくまっている浮浪者がいる。
かわいそうなのは、果たしてどちらだ?世の中に何人、浮浪者のために募金を乞う若者がいる?この空間にいる誰が、あの浮浪者を馬鹿にすることができる。自分ではどうしようもない理由による破滅など、いくらでもこの世にあるではないか。
そして、決定的な出来事が起こる。
——母親が、なんてことない世間話のように語った。
——曰く、お隣の砂羽ちゃんねえ、ご両親の借金のせいで、暴力団に連れていかれちゃったらしいわよ。
なにを呑気に言っているのだ。父の会社が倒産でもしたらどうなる?自分の両親ならば彼らと同様にヤミ金へ安易に手を出し、そして破滅するだろう。水商売もできない自分では、いくつか臓器を売り飛ばされて終わりだ。
それからだ。この能力に目覚めたのは。
立場が違ったならば。お前のその、ただ生まれただけで得ているものが失われたならば。
どうしてそんなもんだけで、てめぇらがデカいツラしてんだ。
彼は、世の中のただ環境を享受していればのうのうと生きていられるものすべてを呪った。
その本質は、他人からなにもかもを奪い、代わりに金を叩きつける力。本来ならば失われないはずのものを奪い尽くすもの。
俺は、そうやって奪い続けてきたはずだ。これからもそうだ。そのはずだ!
刈谷が今更こんなことを思い出したのは、ニャルラトポテトによって砂羽の記憶を垣間見たことによる。
彼にとっては姦通や薬物より、穏やかな日々の方が恐ろしかった。そうして客観視することで、ありありと分かってしまったのだ。
もはや自分たちは、奪う側でなく奪われる側であると。
笹原砂羽。貴方はもう、誰かに救われるべき弱者ではない。
そしてそれ以上に、揺らいでしまったのだ。砂羽が救われたことで、怒りさえもが薄れてしまった。呪いの根元が失われている。既に自分自身が、能力という幸運によって得た環境にあぐらをかいている!
そう思うと、なにかがハッキリと切れてしまったようだった。今までの人生が終わる。その先など考えたこともない。なにもかもがどうでも良いことだった。
言いようのない怒りだけが、彼のエネルギーだったのだ。一生やつあたりをして生きていくのだと、疑っていなかった。
あの憎たらしい怪盗にも何も感じなくなった。いや、窃盗を行なっている犯罪者がヘラヘラ生きていること自体がおぞましい事実ではある。
それでも、薄ら笑いを浮かべて対応することができた。
そして、砂羽に対しても——否、彼女に対してだけは、刈谷は特別な態度を取らざるを得なかった。
だから彼は、逃げだすことにした。相手の狙いは読めているんだと、そう言い訳をして。
なにもかも、訳が分からなくなってしまったのだ。
◆◆◆◆◆
失踪(しっそう)
行方をくらますこと。また、行方が知れないこと。失跡。「あの小説投稿サイト、作者が——ばかりしているんだ」
◆◆◆◆◆
「あーあ、やりやがった。つまんねーの」
鷹岡集一郎はひとりごちた。
「土地を借りることによって、『立ち入る権利』を自分だけのものにしやがった。おかげで名探偵サマは吹き飛ばされて場外。こりゃあ殿堂入りモノの塩試合だ。
もしあと二回もこうなら、なにかコッチでも対策を考えなきゃいけないなぁ。うーん、刈谷くんを入れたのは失敗だったかな」
「まさか」
銀天街飛鳥は青い顔をしていた。
「推理どころじゃない、そもそもの前提が間違っていたんだ。笹原砂羽は、刈谷融介にとって価値のある人質ではなかった……!」
笹原砂羽は涙した。もはや意味なし、と世界二位の記憶処理を受けたのちに解放された彼女は、いつものホテルへと戻ってきていた。
ホテルの一室は、出かける前とみっつだけ変わっていた。
刈谷の私物が最小限なくなっていること。きっかり一億入った、砂羽名義の通帳があること。その隣に『グレンデル山のヤマンバ干し肉』が所在無くたたずんでいたこと。
それ以外は、本当になにも変わっていなかった。部屋の隅に置かれていたままの古い海苔の缶詰が、陽光を浴びて鈍く光っていた。
そして砂羽は、刈谷に渡すつもりだったパペットマチェットくんのあしらわれたネクタイを手が白くなるほど握りしめていた。