幕間SS「『Tai-kansoku last edition S.B.M.』」

●人物(ダンゲロスSS4)
リークス・ウィッキー。スリランカ出身のジャーナリスト。
表向きジャーナリストを名乗っているが、『請負人』といったほうがその実態により近いかもしれない。

探偵の真似事から知人の息子の更正まで頼まれればおよそ何でも請け負う。
その筋では最も有能でかつ最も依頼を受けさせるのが困難な人物の一人と言われており、アメリカ大統領でも転校生組織でも彼を雇い入れることは難しい。それは依頼を受ける基準が厳しいためではなく、逆に”あまりに甘い”ことによる。

他人であれ身内であれ『ファミリー』案件優先。
条件はたったそれだけである。
実際、2日前にリヨン美術館で起こった盗難事件解決の際の依頼人は”冤罪をかけられた職員”の5歳になる娘さんであり、報酬はおこづかいで買った飴玉1個だった。彼はゴードン大統領の度重なる要請も無視し、道で泣いていた女の子を優先した。
要は無茶苦茶”身内に甘い”のである。当人であれ、赤の他人のファミリーであれ。

ゆえに宛先不明記名なしの『匿名』メールを受け取ってから5分。
元助手によるSOSを受けた5分後には、すべての予定をキャンセルし、パリのホテルから彼は地球の裏側目指し、出発していた。



●平行世界:災厄のニューヨーク(元世界時刻:2014/12/15)

瞑り閉じた眼を開ける。
誰もが望まない朝が来る。
私はこの光に晒された傷跡を心に刻もう、流れる涙を受け入れよう。次の一歩を踏み出すために。


その年、その世界線ではアメリカはインディペンスコロニー「北海道」により壊滅的な打撃を受けた。
ウィッキーは犠牲になった市民に黙とうを行うと携帯を取り出し記録しておいた短縮ダイヤルを押した。
10…20…プッシュ音が続く、50を超えたとき、それはつながった。

「『転校生』はご利用ですかー こちら転校生派遣サービスです。ウィッキーさんグッドモーニング!」

まだ彼には”すべきこと”があった。
「ミッション失敗です。MrSIKI。彼につないでもらいますか?」
「お待ちください、今、繋ぎます。」

SIKIと呼ばれた受付担当はすぐに『繋』いだらしく、別の声が電話口に割って入ってきた。
回線を回すかと思っていたが、同じ電話を変わっただけのようだった。ウィッキーは一瞬疑問に思ったが続いて聞こえてきた男の声に思考を中断させた。

「先生、お仕事お疲れさまでした。ご無沙汰しております、お加減いかがでしょうか?助けてもらいたいことがありましてご連絡させていただきました。」

それは目上に対した時の緊張した感じと懐かしい人と会えたうれしい気持ちとがよく出ている、いかにもな好青年の声だった…そして相変わらずTPOが読めてない落第応答でもあった。
数千数万の死傷者を出す大惨事を今、引き起こしてしまった人間にお加減いかがもないだろう
しかもその災禍をおっかぶせた原因は間違いなく電話口の『彼』にある。
”加減”でいえば状態は完全にオーバードライブである。機微に疎いとはまた全く違ったズレ方にウィッキーは軽い苦笑とため息を漏らした。

「相変わらずですね。こちらも一つ。小言を。いや、その前に呼び名を確定させないといけませんね。とりあえず『JOKER』とでも呼びしましょうか。少年怪盗くん。」
電話口に電流がはしった。
「先生・・・・何を言い出すんですか。それ、先生に『弟子入り』(フルボッコされる)前の黒歴史的コードネームじゃないですか。それは勘弁してください。過去とった反抗期的態度に関しては十分に反省してますから。ええ呼び名ですね、えーとー呼び名ですね」

連日先生に無理をさせた反動からか弟子は不幸にも黒塗りの黒歴史に衝突してしまう。

「驚いたのはこちらですよ。何せメールを受け、思い出そうとしても『元助手』の名前が記憶の上からも記録上からも出てこないのデスから。全く名を投げ捨てるような真似をして恥ずかしくないのですか。親御さんから頂いた大切な名前をなんだと思っているんですか。
『JOKER』(何にでもなれる男)?『JOKER』(切り札)?メール貰った時とか昔の『予告状』とか思い出しテシマイマシタヨ。いや懐かしかったですネ。」

向こう側で連続で血を吐く音が聞こえた。そういえばこのヒト、割と傷口に塩を塗るタイプのヒトだった。

「いや今回のはですね――ゴフ、いや、ほんとあの頃の話は勘弁してください。
そして、ちょっと、ぎりかさんも笑いすぎ。椅子から転げ落ちない、紅茶吹かない、テーブル汚さないでー」

その後、どったんばったんのやり取りの後、電話口の相手が切り変わった。ぎりかと呼ばれた受付担当の男だ。

「いい腹筋の運動になりました―――『彼』の名前は阿摩羅識で一時預かりになってますのでご安心ください。『真名封印』は本来、懲罰の一種で、存在ごと記録から一切合切、抹消する厳しい罪なんですが、一種の司法取引として彼がそれを望み、われわれもそれを受け入れました。
アイデンティティーが命の転校生にとって「名無し」状態なんて、普通はまず間違いなく自殺行為なんですが、なぜか彼の場合はピンピンとしているので良しとしましょう。」

「まあ、うちの助手は、変わっていますから。」
「実際、コロコロ変わっていますからね。」
「なんか扱いがひどい。今回の相手、一種のデスノート使いみたいなものなので”その非常処置”です。好きで毒薬を飲んでるわけではないんです。もっとも先生に頼んだ『時空時計』 のロジック解明がなされないとそのまま牢屋に逆戻りの運命なんで無駄骨になっちゃいますが・・・そっちのほうは大丈夫でしたか?」

「まあ8割がたは」
「あ、そうですか。で『時空時計』 って結局、何でした。」
ウィッキーはそうあっさりと答えた。対する弟子もまたあっさりした返事だった。

「”迷宮時計”―貴方方の呼び名では『時空時計』ですか―は複数の転校生または転校生クラスの力の複合によってもたらされた現象です。時逆順の能力はメインではありません。真犯人に関しては不明ですが、メイン動力―実行犯といえる存在に関しては判明してます」

「なるほど、で実行犯は?」
「無論、貴方方ですよ。」

時逆順の力の結晶”迷宮時計”。それはかけらの所有者が唯一人になるまで続く戦いの物語。
結合まで この時点で、のこり8個。



◆◆◆

「ということで残りの詰めはそちらにお任せします。細かいデーターは元の世界の私のデスクに入ってますから君なら開けれるでしょう」
「はい。じゃ次の話題にいきますね。」

        ストーーーーープーーー!!!

「そこーー師弟だけで分かり合わないでください。しっかりとした説明!解説!解明お願いします。ウィッキーさん。」

電話口の声が変わった。
軽く流そうとする師弟をぶったぎるように待ったをかけたのは受付担当だった。口調を改め、先方のウィッキーさんに話しかける。

「改めまして、阿摩羅識ぎりかです。

既にご存知かと思いますが、貴方のお弟子さんはとある連続事件の容疑者として疑いをかけられており、それはまだ晴らされていません。そのうえで彼は今回の事件の発生を予期し、『解明の過程で自分の無実が証明されるだろう』と我々に示唆し、事件の解決の適任者として貴方を推薦しました。
つまり事件解明が大前提です。その点、十分ご配慮の上ご発言お願います。

ウィッキーさん、時逆順殺しの犯人は判明したのですか?」

「実行犯はね。そして、その人物の救出方法を我々はこれから考えていかないといけない。
このトラップ仕掛けた人物『真犯人』は実に性悪デス。今無理に解決して取り出そうとすると”また”新たな犠牲者が出ることになるでしょう。」

実行犯の救出。
想定外すぎる言葉にぎりかと名乗った阿摩羅識は沈黙する。聞き手の変化を感じ取ったのかゆっくりとウィッキーは言葉を続けた。
「では順を追って説明しましょうか。まず、ぎりかさん。時逆順の能力の確認です。
彼の能力は平行世界の行き来だそうですが、その能力を用いて、『その世界線上』で過去”失われた”恋人や家族をよみがえらせたり、
参加者の『望む通り』の幸せを”取り戻す”ことはできますか?」

問われたぎりかは言葉の意味を十分、吟味したうえで、首を横に振った。
「無理ですね。時逆順の能力では”似て非なるモノ”しか用意できません。あくまで”オルタナティブ”です。」

能力を駆使し、平行世界から家族や恋人を連れてくることもできる、自分自身が家族のいる平行世界に行って幸せに暮らすこともできる。だが、それは世界線上で失われた恋人や家族が実際に蘇ったことを意味しない。
あくまで同じ存在を連れてきたというだけで元の人間はそのまま墓の下だ。過去に戻ったとしてもそれは同じこと。
その過去にたどり着いた時点で世界は二つに分岐し、死んだ元の世界を置き去りにして大事な人が死ななかったという平行世界をその人間は生きていくことになる。

「ピザ屋のデリバリーとはわけが違います。”その世界”で失った”その世界のもの”は戻らない。それを行うのは改変能力の領域です。」
「OK
ところが時空時計では勝ち残った者の傷を復元したり、時間を巻き戻したり、融合して新しい能力を生み出したりと改変能力としか思えない事例が頻発していました。
そして平行世界に参加者を飛ばしつつも基軸となる元の世界は固定されて揺らぐことはなかった。

「そういう意味では最初から情報の食い違いがあったといえるでしょう。ただ誰もその点、詮索しなかった。
”迷宮時計”参加者にとっては願いが叶うことこそが重要であり、『誰』の力で叶えるかなどどうでもいいことですから当然といえば当然です。そして作成者はその思い込みを巧みに利用し、『物語』はより間違った方向に誘導されていったわけです。

次に私が注目したのはレギュレーションでした。」


「「レギュレーション?」」
意外な言葉に電話口の向こうの二人の声がはもった。

「そう”迷宮時計”には『試合に対する明確な取り決め』がありました。
曖昧な部分が非常に多い”迷宮時計”でしたが、その部分だけはっきり明文化できるレベルで明確になっています。これはデスネ、言い換えると、”試合の段取り”に関して何者かの意思決定が明確に反映されているということです。
そこで、何かヒントはないかと古今東西、世界中で開かれる魔人大会とそれに類するもので照合したところ
最もルール条件が近く、関係性も深いと思われるものが一つ出てきました。

それが、2014年夏にて希望崎の近くで開催された魔人大会(注:ダンゲロスSSの舞台)。
規模的に小さい大会にも拘わらず特殊空間による戦闘会場設置、大会参加者の治療・蘇生措置など大変整った環境で行われていました。たぶんそのイメージが作成者の中に残っており、迷宮時計の仕様に反映されたのだと思われます。」

「先生、それは多分GK側の大人の事…いえ、なんでもありません。続きお願いします。」
何か言いかけた弟子は師の殺気を感じ、賢明懸命にも口を噤む。危なかった。この人への下手な口答えは命に係わる。

「そこの大会で参加者の治療・蘇生を一手に受け持っていたのが転校生の『ワン・ターレン』。
蘇生能力者という触れ込みでしたが実際は少し毛色の違うタイプの能力者ようでしたね。どのようなものでしたっけ?ぎりかさん」
 、、、、、、、、、、、、、、
「「誤診」による改変能力です。彼の能力は診断を100%誤るというもので、その結果、死亡診断を出された者は死んでなかったことになるというもので…
つまり、まさか、…いや、しかし、まて、これは…「誤審」なのか」

「誤審ですか、うまいこと言いますね。
ワン・ターレンは大会終了後しばらくして行方不明となっています。
彼は行方を断つ前、知人の死亡確認に向かうと言い残し行方を断ちましたが、誰も不審に思いませんでした。
そりゃ一仕事終えた転校生の行方が分からなくなるなんて当たり前に当たり前すぎる話なので、誰も疑問に思わなかくても不思議ではない。
ただその時の彼の部屋は特に片づけられた様子はまるでなかったそうです。
そう、まるで本人は日中出向いてそのままその日に帰ってくるつもりだったように整理されていなかった。」

『時逆順』は希望崎学園近くで人知れず死亡した。だが、逆だった。

「順序が逆なんですよ、
『時逆順』が死んだから”迷宮時計”が発生したのではなく、死んだと連絡を聞いたワン・ターレンが『誤診』を下したから”迷宮時計”が発生したのであり、
あらぬ場所で『時逆順』が死んでいたのではなく、ワン・ターレンが直ぐかけつけれる場所で”人知れず”死亡したため、蘇生の名目で彼だけを上手く誘い出すことができた。

ワン・ターレンは強力な能力者ですが、戦闘向きの転校生ではないようでした。うまく無力化して強力な催眠術でもかければ操ることは可能かもしれない。
そうなればしめたもの、あとはちょっと長めの『誤診結果』を彼女の前で読み上げてもらえればいい。それで作り上げられる―不可思議なコロシアム、魔人格闘大会の続きをね。」

改変能力者がそこにいたからこの事件が始まった。物語に、配役を、設置する。そして虐殺に至る経緯を見守る。ウィーキーは近くに落ちていた本を手に取りぱらぱらとめくる。

「平行世界の移動は無限に発生するページを行き来するようなモノです。そこを自在に移動している存在をとらえるのは極めて困難でしょう。ただ、どこにでも天敵は存在する。」

彼は本を地に落とすと、どさと土をかぶせてページを固定した。
「策は幾つかあります。例えば、改変能力者の能力で重石を被せ。その世界に固定して移動できなくしてしまうとか。迷宮時計勝利者の治療を続けている以上、ワン・ターレンは生きている可能性が高く、試合のたびに『誤診』=『誤審』の繰り返し行われていっています。
こう”土”が何層にもかぶさっていくような状態。そして徐々にキャラクター性や存在がゆがんでいき、どんどん元ある『時逆順』という存在を「生き埋め」にしていってしまった。
力は砕き、利用しつつ、本体は生きたまま別の者として上書きして葬りさってしまう、物語が進むほど彼の存在は別のものとなっていくわけです。」


酷い殺し方ですね。
噂をばらまいたのも恐らく布石の一環なのだろう。いまや、この世界の認識すべてが彼の個性を殺す敵と化しているのだ。ああ彼女でしたっけ?失礼。彼はそう言った。こちらの認識ではもう【ほぼ彼】なんですよ。

スーツ姿の男は本をもちあげると、かかった土を落とす動作をした。
ページは汚れ、字は既に読める状態ではなくなっていた。


◆◆◆

しばしの沈黙の後、電話口から聞こえてきたのは阿摩羅識ぎりかの唸るようなうめき声だった。

「誰が蘇生を依頼した、阿摩羅識の誰かか?・・・・・少なくとも俺は知らないぞ。」
「獅子身中の虫ってやつだよね。
ワン・ターレンに蘇生指示を出したりできる人物または命令形系列に割り込める人間ってだけでもきりがない。ほかにもお茶会事件の調査に加わった名探偵たち。時逆順が事件に疑念を持つよう彼女に耳打ちできる立場、もしくは逆に煽って神経逆なでした人物etcetc、疑わしい人なら盛沢山。そもそも単独なのか複数なのかも不明だし」

ぎりかは呻く。”彼”の言うとおりだった。こうなると疑心暗鬼がなにより一番怖い。
どう対応すべきなのか、考えるだけで脳が疲れる。
陰謀や駆け引きなど、彼の本分からはるかに遠い最も不得意な分野だった。
彼は自分のことを深く理解していた。自分の本領は本来、スポーツ観戦や翌日朝番組での球団別応援合戦をトリケラトプスの背にでも乗って見てダラダラすごす日常にある。
こんなことならウィッキーさんのサイン貰えるかもーとか変なスケベ心だして仲介役を買うんじゃなかった。

「―――ぎりかさん紅茶のお替りいる?」
「―――――――――――――頼む。あとパンケーキのお代わり、シロップとクリームたっぷりで」

糖分補給が必要だった。

「ハイハイ。で、先生、その上でお聞きしたいことがあるんですけど。」
「なんでしょう?」
「一つはこの事件の真犯人に関して、印象や感じたことでもいいので先生の意見を聞かせてください。
転校生以外からの視点がほしいんで。」
「『性悪』、『とにかく性悪』以外の感想はありませんでしたが、詳細やヒントとなりそうなことが知りたいのですね。いいでしょう調査中の部分もあるのでそこと併せて詰めましょう。」

「ありがとうございます。もう一つはこんなどんずまり状況でしょう。僕自身が事件解明に動きたいんですが、秘密裏に動くにあたって行動の自由を確保するため、阿摩羅識家の人間を最低一人は抱き込まないといけないんです。どうやったら上手くいくと思います?
僕は他人のこう機微を読むのが苦手の上、人の説得に関して一度も成功したためしがないので自信がなくて」

しかし、コイツの作るデザートは本当に美味いな。生クリームとか特に、瞬間的に自分の食べたものが、
なんだかわからないくなるっていうか、見失うっていうか、今オレなにくったの?って感じだものな。
これ喰ってたなら、うちらの意識唯への菓子折り作戦失敗するのも納得するわ、袖の下としての格が違うもの。・・・・・・・。こいつの世界とか丸ごと農場だし。・・・・・・本当、余計なことせず料理だけしてれば平和なやつなんだが・・・・・・・・・。

「例えばぎりかさんとかは先生のファンらしいんで説得もしやすいかなと。その辺、『誠意の見せ方』というやつですか?実地で教えていただけると嬉しいかなと」

なんだろう、なにか今すごい性質の悪いペテンに引っかかってるような気がするが、でも甘~い~癒される~

「君、それをこの現状でいいますか…というか、寧ろ、それを聞きたいがために今回のコレ仕組んだんですか?」
「??ええ、そうですけど『苦手分野は無理せず、他の人に上手く補ってもらうこと』ってのが先生の教えでもあったでしょう。自分で何でもしようというのはやめて、日夜、他力本願を頑張って実践しています。」

「・・・・あー。
ちなみに今、目の前にいるだろう、ぎりかさんはどのようなリアクションされていますか?」
「生クリーム味わい中です。
正確に言えば瞳孔が通常より3%開いて、頬筋はじめ顔全体の筋肉が弛緩していますね。良い感じでトリップしてます。あ、すいません追加のパンケーキ焼くので、ちょっと席外します。」

そして電話口から人が遠のく気配がした。流石というか移動する音自体は彼の鋭敏な聴覚をもってしても全く捉えられない。ウィッキーリークスはそっと目を閉じる。
ある意味、魔性だった。本人に悪気はないがとにかく、はた迷惑なことこの上なかった。
願わくば新たに起こされるトラブルと災厄と胃痛が味方ではなく相手方のみに集中してくれるようと祈るばかりだった。無論”経験上”そんなことが”一度も”起こらなかったこと百も承知の上でだが。

「まあそういう子なんで」

達観したようにウィッキーは呟いた。

「一つ面倒のほどよろしくお願いいたしますね。」

かくて阿摩羅識の胃痛が始まる。

                        『Tai-kansoku last edition S.B.M.(簡易版)』(了)
最終更新:2017年12月04日 21:31