ヘンリーと火炎瓶

見慣れない大地に放り出されてから、1・2時間。
「やぁっと着いたぜ…」
ゼルは呼吸を整える。その顔には、疲労の色がありありと滲んでいる。
無理もない、この街=アルブルクを目指して、山の中を全力で走り続けていたのだ。
これで疲れないのは、アンデッドか『リノアしか見えない』モードのスコールぐらいだろう……
などと考えながら、休めそうな場所――目に映った民家の扉を開けた。
その瞬間。

ばっしゃぁああん!

頭上から、逆さになったバケツと液体が降り注いだ。
警戒をすっかり忘れていたゼルは、もろにびしょ濡れになってしまう。
「なんだよ、子供のイタズラか!?」
怒りに任せ、床のに落ちたバケツを蹴っ飛ばし、……そこで、彼は気がついた。
液体から漂う匂い。キツイ酒、つまりは『アルコール』の匂いに。
「……まさか」
ゼルの感じた悪寒を肯定するように、奥から炎の灯ったビンが飛んできた。

「うわああああああああ!!」

避けきれなかった。炎は、一瞬にして燃え広がった。
全身を焼かれる苦痛に、地面の上をのた打ち回る。
その視界の端で、人影が近づいてくるのが見えた。
(……スコール、リノア、それに、…………)
最期の時を覚悟した彼の脳裏に、あの、三つ編みの図書委員の姿が浮かんだ。
(……帰れなくて、ごめんな。)
いつの間にか、彼の瞳からは涙がこぼれていた。
しかし、それも束の間の事。
人影は容赦なく、手に持った武器で彼の身体を分断していた。

「ちっ……ロクなモンがないな」
ヘンリーは少年(ゼル)の死体からふくろを奪い取り、中身を物色していた。
しかし入っていたのは、基本的な道具を除けば魔道書が数本だけ。
それも、彼が元々知っているイオの呪文だ。
(まぁいい。無いよりはマシだろう)
そう思いなおし、魔道書を自分のふくろに移しかえる。
そして、今まで作っていた火炎瓶を全部、ベルトにくくりつけた。
「……日没後に雨が降る、とか言っていたな」
雨の中では、折角作った火炎瓶も役に立たない……が、残念だとは思わない。
むしろ雨の方が、参加者の動きが止まる分、不意打ちもしやすくなるだろう。
「……さてと」
ヘンリーは、今だ燃え続けている少年の身体を蹴った。
炎が戸口にこぼれた酒に燃え移る。
やがてこの家全体を焼き尽くすであろう火のゆらめきを背に、ヘンリーはアルブルクの町を後にした。

【ヘンリー 所持品:ミスリルアクス イオの書×3 火炎瓶×3
 最終行動方針:皆殺し】
【現在位置:アルブルクの町・民家→ベクタ方面へ】

【ゼル 死亡】
【残り 69人】
※家が一軒燃えています。消火しない限り、雨が降るまで燃えつづけます


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最終更新:2011年07月18日 06:49
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