「悪い奴は許さないぞ。
僕は勇者なんだから」
「こいつ…!?」
ソロは嬉々と剣を振るう。自分の正しさを証明していることに他ならないからだ。
明後日の方向を見ているにも関らず繰り出される確かな剣筋に、
バッツは幾分戸惑う。
「やめろ、俺はあの女だけは許せないんだ!」
「女の人を殺そうだなんて、やっぱり悪い奴じゃないか」
「そうだよ!そんな奴やっつけちゃえ!」
自分たちがこれまで何をしてきたのか、全てを棚に上げていうソロと
テリー。
「あの女は子供を殺そうとしたんだぞ!懐いている子供に毒を盛ったんだ!」
「悪い奴のいうことなんて信じられないよ」
切り結ぶソロとバッツ。ソロは笑っていた。心の底から嬉しそうに笑っていた。
それがたまらなく醜悪だと、バッツは思った。
「俺は悪党であの女は正義の味方だってか!?何でそんなことがわかる、お前は何をもって悪い奴と正しい奴を見分けているってんだ!?」
「僕は勇者だから、わかるんだよ」
「ならお前の正義は誰が証明するんだ!俺は認めない!笑って人を斬ろうとする奴が正義であってたまるか!」
そんなバッツの言葉に、ソロの顔色が変わった。
笑顔が消え、怒り、脅え、焦り、そんな感情が取って変わる。
「黙れ…」
「何が勇者だ、何が悪い奴はゆるさない、だ!それなら真っ先に
ゾーマを倒せよ!」
「黙れ、黙れ!」
「本当に勇者なら、みんなを救ってみせろよ!レナと
ファリスを救ってみせろよ!あいつらはこんな所で死ぬ奴じゃなかった!」
「――――!!」
『人殺しはそっちでしょう!レナ姉ちゃんは何にも悪い事してないのに!最低よ!』
バッツの言葉を引き金に、
バーバラの言葉がリフレインする。
それがソロの剣を鈍らせ、そしてバッツは見逃さなかった。
すかさず刃を返し、ソロの首に剣を通す。
「あああっ!」
テリーの悲鳴。ソロは口をパクパクと動かし――――咽喉が切られて声が出ないのだ――――そのまま倒れる。
それが、自分を見失い、視野狭窄に陥り、次から次へと「正義の名の元に」人を殺めた勇者の、末路だった。
「よくも、よくもソロを!」
バッツはいきりたつ子供から視線を外すと、
エリアがいたところを見る。
すでにエリアの姿はない。ただ、転々と伝う血が廊下の向こうへと続いている。
「この悪党めぇー!!」
テリーはソロの手から
エンハンスソードを奪うと、バッツに切りかかる。
子供の手には扱いに余る大きな剣。それはバッツの元に届く前に、あっさりと弾き返された。
バッツの平手がテリーを張り倒し、テリーは比喩抜きで吹っ飛ぶ。
「安っぽい正義ごっこに付き合っていられるか!」
「う、ううう…!」
「お前をこのまま見逃すわけにはいかない。非力な子供でも剣は握れるし人は殺せる」
逃げよう。テリーは立ち上がろうとした。だが、出来なかった。
バッツの気合に押されて、縮み上がってしまった。
「子供は殺したくないが、更生するチャンスを与えてやる余裕は、もう、ない!」
抵抗する心の強さも、もう、なかった。
一閃。
小さな命が消えて、バッツの迷いも消えた。
「…やっとわかったよ。俺に出来ることは、自分の勝手な都合を通そうとする奴を止めることだ。
自分の都合に皆を巻き込む奴を倒すことだ。
そうだろう、レナ、ファリス…」
バッツは剣を収めると、静かに歩き始めた。
エリアを追うこともできる、だがアビリティを白魔法に換えれば
クーパーを戻す事ができるかもしれない。
ならば、今優先させることは決まっていた。
【バッツ@魔法剣士(アビリティ:時魔法)
所持品:
ブレイブブレイド
第一行動方針:クーパーの治療
第二行動方針:エリアを倒す
第三行動方針:
アリーナ(アニー)、
とんぬら、パパス、
エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:神殿】
【ソロ 死亡】
【テリー 死亡】
【残り 46人】
二人の荷物は神殿内に放置されました。
いまのところ、バッツは回収していません。
最終更新:2011年07月17日 22:37