サマンサが神殿に入ったのは、ソロたちが神殿に入ってから間も無くである。
そして、すぐにソロたちの死体を目の当たりにすることになった。
床に滲んでいく血は、まだ殺られて間もないことを示している。
つまり、それは神殿はとても安心できる場所ではないと言うことである。
サマンサは入り口の側、死角になるところでレムオルを唱えた。
姿を消す呪文。気配察知に優れるエルフなどには無意味だが、人間の目は十分だませる。
距離が離れているならとにかく、体力が貧弱なサマンサは、こうして
デスピサロたちが来るのを待っているしかなかった。
そして暫くして――――入り口に人が現われた。
「うう、サブイサブイ」
老人。身なりがいいところを見ると、富豪か何かかもしれない。
(…あるいは王族か。よくこれまで生きてこれましたね)
当然自分に気付く事はなく、老人…
ゼニスは奥へと進んでいく。
少し気になったので、サマンサはその後をつけることにした。
ゼニスはソロたちを死体を見つけるとまず驚き、続いて祈りを捧げだした。
(随分と余裕のあること…)
祈り終えると、何事もなかったかのように奥へと行ってしまう。
(危機感がないというか…さて、どうしましょうか)
先程のように入り口の側に戻り、ジっと身を潜めて待つというのも一つの手だろう。
だが、神殿の中を探索したいという気分もあった。
彼の後をついていけば、たとえ「ゲームの
参加者」がいても、まず彼を狙うだろう。
その間に自分は逃げればよい。神殿内を見て回る絶好の機会といえないだろうか?
結局、サマンサはゼニスに付いていくことにした。
ゼニスはやはり危機感のない様子で不用意に歩き回っている。
そのおかげで、サマンサも神殿内の様子を見て回る事が出来たのだが…
(他にも…犠牲者がいた。やはり、この中に参加者がいる…)
サマンサは背筋に寒いものを感じた。早く…デスピサロに会いたい。
ゼニスはとある部屋に入っていた。
他の部屋と違って何故か明かりがついている。
(………!)
サマンサは息を飲んだが、ゼニスの断末魔は何時まで経っても聞こえてこない。
そろそろと部屋の中を覗いてみると…部屋の中にはゼニスしかいなかった。
「ほうほう、上手そうな料理よな。シチュー…いや、リゾット、というのかの」
無造作にコンロの火を入れ、鍋の中をかき回す。
熱が通るに連れて、良い匂いが漂い始めていた。
(何と、こんな状況で食事とは…大胆というか)
呆れるサマンサだったが、直後オナカが小さな音を立てる。
よく考えたら、自分もほとんど食事を取っていないことに気付いて、サマンサは赤面した。透明になっててわからないけど。
ゼニスは適当な皿にリゾットを盛り、食べ始めた。
サマンサは食べたくて仕方がない自分の気持ちに気付いて非常に情けない気分になった。
服の下に隠れているキツネリスも抗議するかのようにバタバタ動いている。
と、そのときだ。
(…え?)
ゼニスの体が灰色にくすんでいく、そしてあっという間に石になってしまった。
触ってみるが、正真正銘の石である。
(ワナ…ですか?何ともしょうもない…)
と、湯気を立てる料理を見る。
(…と、言う事もありませんか。外の寒さに疲弊した体には何とも魅力的です)
とりあえず、ここにいても仕方ないのでサマンサは引き返すことにした。
(これは始末しておきましょう。別に食べてしまいそうだからではありませんよ?)
鍋の中身を流しに捨てた。流しの中が具で詰まってしまったが、知ったことではない。
(料理なんてしませんから問題ないです。別に苦手と言うわけではありませんよ?)
こうしてサマンサは石になったゼニスを残して食堂を出た。
途中レムオルを何度かかけ直し、周囲を探りながら無事戻ることが出来た。
サマンサが入り口から離れている間に
ジタンがやって来て、そして争いがおこったのだが…
彼女はまだそれを知らない。
【サマンサ(レムオルで透明化)
所持品:勲章 星降る腕輪 手榴弾×1
第一行動方針:デスピサロが来るのを待つ
基本行動方針:デスピサロを手伝う
最終行動方針:生き残る】
【現在位置:神殿入り口付近】
【ゼニス(石化) 所持品:
アンブレラ 羽帽子?
第一行動方針:
神殿へ行く
基本行動方針:物見遊山】
【現在位置:神殿食堂】
※毒を大量摂取してます
最終更新:2011年07月17日 21:55