ハンドアウト
平和な世界、平和な街。しかし、裏切りの世界の中では、指先一つで破壊される

危うい平和。
世界はいつまでも残酷なまま。優しくなんてない。


受けたのは傷。手に入れたのは、甘い毒。
信念を信仰へ、信仰を魔法へ、魔法を奇跡へ。



ダブルクロス ” Paradise Lost ”



罪を犯す人は罪の奴隷なり。  (―― ヨハネ伝八章三十四節より)





PC1 水奈月 灯  幸福感/不安 推奨カヴァー:高校生


「こんにちは。 私?元気だよ。えへへ」
貴方と仲の良い彼女。 彼女はいつも、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。
争いと無縁の平和で暖かい日常を、貴方はただ感じていたのだった。
それが、ただの序章だとも気付かずに。



PC2 三ツ角 元春 幸福感/隔意  推奨カヴァー:高校生


「お前、お前! 今度ガッコで、天使降臨のお呪いしようぜ! イケてるだろー?さ

っすが元春さんだよなー。 なー?」


…面白いもの好きで、好奇心旺盛な友人の話を冷静に聞いて見ると、「この地に

は嘗て天使なるものが居る。今でもその力を借りる事が出来れば、願いを叶える

事が出来る」――のだとか。恐らく、外国からの伝道者による言い伝えか何かだろ

うが。 …しょうがない奴だなあ。



PC3 悪筆家《バッドエンドメイカー》 有為/嫌悪  推奨ワークス:UGN関係者



彼(或いは彼女)の名は、貴方も良く知っている所だ。
正体は不明。影すら現わさず、存在の証だけを残し、無残な惨劇を引き起こして

去る悪辣なオーヴァードだ。サンジェルマン・セルというオカルト主義的なセルを率

いているというのだが、それすらも、詳しい事は良く分からない。 
 その彼(以下彼で統一)が、ここF町に訪れているらしいという情報を得た貴方は、彼についての調査を開始する。


PC4 子子子子 十  尊敬/猜疑心


楽園教という、最近流行のカルト教のポスターをふと見かけた。
世界はやがて楽園へと導かれるらしい。 ……そうですかー。
にしても、この人の名前凄いなあ。 教祖なのかあ。最近このポスターここらへんに結構あるなあ。
って、 あれ? こんな夜、墓場に怪しい人影がいるゾー。

  • - - - -

水奈月 灯。女、17歳。高校生。
明るい。幸せそう。普通の女の子。普通ってなに?



三ツ角 元春。男、17歳、高校生。
明るい。元気。普通の男の子。エリエリーサバクタニーッ。好きなものは焼肉のハラミ!



悪筆家/バッドエンドメイカー。不詳。FHセルリーダー。
悪戯に悲劇だけを描き続ける筆を持つオーヴァード。
今までに起こした悲劇は数知れない。 あなたに今宵だけの奇跡とトラウマを。サンジェルマン・セルリーダー。


→サンジェルマン・セル?
魔術だの妖怪だの幽体離脱だの天使だの、この科学の時代にそんな事をのたまっているらしいセル。 詳細は不明。



子子子子(すねごし) 十(つなし)男、中年、宗教家。
その瞳は酷く妖しく輝く。 胡散臭そう。
楽園教を率い、やがて世界は楽園に導かれるであろうと説く。終末思想臭い。



F町?
→K市近郊の小さな街。 静か。 田舎。唐木田か藤沢か。






登場NPC
NPC
水奈月 灯
三ツ角 元春
西京寺 巳戸子
衣文 響夜
十七夜 たたら
子子子子 九
相楽 一葉
中村 覇王樹
神座 蔵人

子子子子 十

十七夜 海斗
綿貫由香利
柿栖川秀人

水奈月 切継
悪筆家《バッドエンドメイカー》

#裏話に全キャラクター紹介ファイルpdfファイルポイポイ添付ずみ
#第十話キャラ紹介にネタバレ付きのちょっと詳細なの。


シナリオ内容
FH、ゼノス双方に不穏な動きがあるとして、F町に派遣された狛井。
F町唯一の高校、私立聖天文高校へと、潜入、またはワークスとして転入させられ

た。
然し調査を続けども、時期尚早過ぎたのか、あるいは彼が情報収集に向いていなかったのか…。

時同じくして、天文高校に通っているオーヴァードがもう一人。
田井中みちるだ。 ミッシングリンクから他のFH・セル、またゼノスに動きがあるとして、適当に調査をしておけという情報があるも、それとは関係なし。 彼女は欲望のまま、この高校に通っていたのであった。

二人は同じクラス。
クラスメイトとも、もう大分馴染んだものだ。
狛井に好意を寄せている少し天然気味の女の子、水奈月 灯。
田井中と同テンションでカルい同じ穴の狢、三ツ角元春。
大財閥の娘でいつも執事を侍らせ、三ツ角と仲の良い、西京寺巳戸子。
彼女の執事たる衣文響夜。
真面目なクラス委員長十七夜たたら。
根暗な厨二オカルト好き少女、子子子子九。
ミリタリーオタクの相楽一葉。
魚屋の息子ではおーくんという仇名の、中村覇王樹。
ボードゲーム好きで物静かな神座蔵人。
文化祭やら体育祭やらも終わって、ただ、ゆるやかに楽しい日々だけが続いた。

一方、此方は、F町への捜査に乗り出そうとするエージェント、新条梢。
UGN上層部から命令を受けたK市支部長の命を受けさあ家を出よう、という時、ドアの前に長身の男が立ち塞がった。
彼曰く、上層部のメッセンジャーのような存在であるという。「F町で変わったモノを見つけたら自分に連絡してくれ」、と言うのだ。
また柿栖川と名乗る関西弁のその男は、
最後に意味深な言葉を口にした。「エンドレスナイン」、と。
男に不信感を抱きつつも、新条はF町へと向った。

既にF町へと訪れていた、嵐山聖。
成果をあげられない狛井の手助けに派遣された彼は、拠点確保に勤しんでいた。昔からの生業の何でも屋の看板を掲げてようやく一心地ついた彼の元に、一人の女学生が訪ねてきた。

何処か焦燥とした彼女は、何かを話そうとして、突如立ち上がった。
CMに移るのは子子子子 十。楽園教、というカルト教団の教祖だった。
そのまま、その女の子は逃げるようにその場を去ってしまう。
とある場所の、住所を残して。

未だに部活に入っていない田井中と狛井を、部活へ勧誘するように誘う三ツ角と友人たち。
水奈月の新聞部で先輩オーヴァードの悪戯の影を見て、
相楽のミリタリー部で彼女の見事な射撃を知る。
子子子子のオカルト研究会に行ったモノの、物凄い香の匂いに外で待っていた田井中を尻目に、情報収集になればと割り切って中に入る狛井。
そこには、怪しげな部屋で怪しげな女神像へ祈りを捧げている子子子子の姿。彼女は言う。「てんしさまはいるの」、と。

取り合えずの見学を終え、放課後クラスメイトと共に教室でたむろしていると、
卒業を間近に控えた今、思い出作りのイベントを興したいという三ツ角。
F町に伝わる、「天使降臨のお呪い」――。
"願いを叶えてくれる天使"を喚び出す儀式。
オカルトに詳しい子子子子が、その誘いをかけてきたのだと言う。
ちょっとした肝試し代わりに、狛井と田井中、クラスメイトらを誘う三ツ角。
皆何だかんだで快諾し、翌日の放課後、彼らの「最後の思い出作り」が決定した―

―。

水奈月と帰路を急ぐ狛井。
別れ際、水奈月は、夕日を背に、笑顔で言う。
「明日、言いたいことがあるの。だから――明日、絶対来てね!」、と。

一方、田井中は。
また、時同じくして三ツ角と帰路を共にしていた。
ふと見えたのは、彼の欠けた片耳。どうしたの、と問えば怪我をしたのだという。
田井中が触れようとすれば、それを神経質に振り払う三ツ角。
気まずそうにしながらも、その別れ際だった。
「明日、お前らに言いたいことあんだよ。…、絶対、来いよ!」
――笑いながら少年は言う。

その結末に、何が待つかも知らずに。


嵐山は、女学生が残した場所へと向った。
そこにいたのは、車に乗り込み去ろうとする子子子子十の姿。
そして、無数の白ローブの集団が、儀式をしている様相で埋め尽くされた墓場だった。
やがて様子を見ていた嵐山へと一斉にローブの集団が向直り――人間とは思えない叫び声をあげる三人のローブ姿がワーディングを展開し、嵐山へと襲い掛かる。
が、それは嵐山の最後を意味するものではない。
その時、墓場にてオカルト的な儀式が行われている、との通報を受けた新条梢が到着。 嵐山と共に、その人間達を薙ぎ払い、病院送りにした。


その頃、帰宅した田井中へ、FH連絡員からのメッセージが届いていた。
「やはり他のFHとゼノスが動いているようだから、適当に調査しておいて欲しい」、と。
翌日の約束をすっぽかそうとしたものの、相棒に引き止められてそれを止め、代わりにその夜を調査に当てる事にした彼女。そして一つの情報を知る。
FH最大規模の研究機関セル、ツータイムがこのF町に来ていることを。


情報調査をしていたUGN側も、また新たな情報を知る。
天文高校が、どちらかといえばFH側に偏った施設であること。

また、エンドレスナイン。99.9999%完成している、人工のレネゲイドクリスタルのこと、またはその計画について――嵐山は懐かしい記憶の扉を、少しずつ開きだす。

その夜。
悪質な悲劇を好むその執筆家は、
自らの手駒を、きつくきつく縛り。
明日開かれるその儀式のクライマックスを想いうかべ、ただ、
その時を待ち望んだ。

翌日。
学校へ行ってみれば、何人かのクラスメイトが朝から居ない。
その時点で、嫌な予感が心を過る狛井と田井中。
然し、放課後には全ての参加メンバーが揃った。
体調が悪そうにしている十七夜、家族と喧嘩してきたという西京寺、愚痴に付き合わされたらしき覇王樹。
そして、黒のローブで放課後に現れた子子子子。

怖いながらも、手馴れたチームワークで準備は進んだ。
ついに、儀式が始まる。

「――表れよ、天使!」

子子子子の高らかな詠唱の後、満たされる幻想の世界。
虚実を真実に、妄想が具現する――。
田井中と狛井は、ふと抗えぬ眠気を感じ、そのまま眠り込んだ。



新条梢はついに情報に行き当たる。
ツータイム、ミッシングリンク。サンジェルマン以外のセルまでが動き出している、ということを。
記憶の扉を開いた嵐山は、全てを思い出す。
エンドレスナイン。
愚かな研究者の最後の願いと、それを托されたことを。
一冊の詩集、それに彼の隠れ家の事を。
過去、彼がいつか帰ってくるまでと触れていなかったその研究。
最早彼の意思を引き継げるのは、自分しかいない。
嵐山と新条は、愚かなその研究者――水奈月 切継の家へと向う。

天文高校は、既に幻想に抱かれていた。
学校の食堂にいつのまにか着席していたクラスメイトと、狛井と田井中。
探してみれば、三ツ角がおらず。あるのは、ただ出来たてのフルコースの料理だけ。
田井中と狛井のレネゲード的な能力は全て封殺され、武器や道具すら取り上げられ、普通の学生と、今は最早同じ体にされていたのだ。
鳴り響くのは、機械で変性された男の声。
儀式は失敗、お前達は皆殺しだが、それを救済しよう、と男は言う。
サンジェルマンと名乗る彼。
そして見せ付けられる。三ツ角の無残な最期と、暖かい料理の正体。
紳士服に、道化師の仮面の男の姿を。
田井中は天使を信じる不穏な言動をする子子子子に不信感を覚え、テーブルナイフで突き刺して殺す、が。
《妄念の姿》を持って――天使のような羽を生やした子子子子が顕現。
廊下の奥へと飛び去る子子子子。


そして、全ての灯りが唐突に消えた。



水奈月の隠れ家は、燃えていた。
嵐山と新条が到着した頃、白衣の男達が家から何かを運び出し、
車に持ち込んで逃げ出す所だったのだ。
それを追おうとする二人を止める影、柿栖川。
憤る新条と冷静な嵐山に、彼はにやにやと告げる。
「どうしても開かん金庫があるんよー。ジブンらなら、何か覚えがあるんと違うんかな、と想うてね? だーじょーぶ、連中はUGNがスクランブルして追っとるから。」

水奈月の隠れ家の地下には、巨大な金庫。
長文パスワード式で、またエフェクトの痕跡が周囲には散見するのに、
全く傷ついていないカウンター・レネゲード加工のされている分厚い扉が待ち受けていた。
嵐山は、静かにパスワードを打ち込む。

Thank you so much for you taught me to know this meaning of "True Love" I

already found when i received your love from you.

“真実の愛”の意味を私に教えてくれてどうもありがとう。あなたの愛を受けて、それがわかりました。

I showed you all of my love for you at that night.

あの夜、私はあなたに私の愛のすべてを伝えました。


詩集の言葉によって、扉が開かれる。
あったのは、エンドレスナイン計画の概要と、その生産方法の全て。
柿栖川はそれが目的だった様子だったものの、静かにその場を去ってしまう。
彼の置いたPDAには、件の連中が向った場所が示されていた。
新条と嵐山はそこへと向う――。
西京寺グループ本社センタービルへと。


灯りが付けば、狛井が手を取った水奈月が倒れていた。
苦しそうな彼女の体は、やがて激しい光を放つ。
凄まじいレネゲードの光――田井中はそれを咄嗟に浴び、レネゲードの力を取り戻そうとしたものの、不可思議な力で再び、無力者へと戻されてしまう。
その光に怯えた十七夜は化物と水奈月を罵り、走り出してしまう。
田井中がそれを追い、他の面々もそれを追い――やがて動けない水奈月、相楽、狛井だけがその場に残された。
それを見計らったかのように、相楽が獲物を取りだし、それを狛井へと向けた。「計画とは違うが、仕方が無い………水奈月を、渡してもらおう」
戸惑う狛井。 やがて、彼女は、自らの正体を明かす。
ティンダロス所属の軍人である、と。
彼女の求めに従い、UGNの証明証を渡せば、彼女は一度獲物を引いてくれた。
何があったんだ、と詰め寄り彼女に、何も言いようの無い狛井。
その時、また構内アナウンスが鳴り響く。
「儀式の為にワインを作らなきゃ。そのためには血が必要だから、体育館まで持ってきてね。手伝った子は、願いを叶えてあげよう!」
そして、鳴り響く銃声。


凶弾を放ったのは、十七夜だった。
あの後、教室へと十七夜は飛び込み、それを追ってきた面々。
彼女は田井中が人を殺したことがある、などと語ると、突如冷静になり――響いた校内放送。「殺せ」の機械音一言で、鞄から大拳銃を取り出し、慣れない手つきで田井中へと射ったのだ。

怯える様子で、「殺さなきゃ」と叫ぶ十七夜。取り押さえようとする田井中。
必死に逃げ出す他の面々――。
やがて田井中がなんとか彼女を押さえつけると、彼女は言う。
FHでしょう、あいつらの仲間じゃ、と。錯乱した様子の彼女に正直に話す田井中。
その言葉に嘘は無いと見えた十七夜は、田井中に投げ返されたデザートイーグルを受け取るも、言った。
海戸を、弟を助けて、お願いと。私はあいつらを裏切れないから、一緒に行けない、と、田井中の一緒に行こうという誘いを断り、その拳銃を托す。悲劇は止まる所を知らず、また彼女らの耳にも、無慈悲な銃声の音が届く。
マシンガンと、覇王樹の悲鳴が。
食堂へと向う田井中。

食堂では、命からがら逃げ出してきた神座が状況を説明していた。
一刻を争うと判断した狛井達はそこを出、西京寺と覇王樹、田井中の捜索を開始。
進む廊下で見つけたのは、
銃傷を無数に負い、致命傷の覇王樹の姿。
悲劇を嘆く覇王樹を励まし、状況を説明する狛井だが、
中村は錯乱し、叫ぶ。 「お前達は、一体何なんだよ!」と。
合わせる様に、廊下の曲がり角から伸びる黒の濁流。
血液の触手は狛井と中村を打ち据え、そのまま二人を理科実験室へと引きずり込む。

血液の檻に囚われた狛井の前で、中村はいつのまにかそこにたっていたピエロの仮面の男に、切り刻まれる。
いつも三ツ角が持っていた、銀の鋏に切り刻まれて。
その後部屋の外へと放り投げられた狛井は慌てて部屋に戻るも、そこにはもう唯の肉くずしか残っていなかった。

皆の下へと戻る狛井。準備室へ行こうとしていた相楽も、その様子に落胆し。
一行は、まだ見つけていない田井中、西京寺を探すため、更に進む一行。

田井中と合流し、先ほどの教室に向うと、
そこには十七夜は居らず。 更に上のフロアから聞こえてきた二人分の足音に慎重にそちらに向えば、居たのは西京寺だった。

そぐわぬ冷静さの西京寺は言う。
「何故、そんな化物と一緒に行動していますの」、と。

「人を助けるのに理由がいる?(キリッ」と言う田井中の言葉や、
「大丈夫だ」と信頼し、言い切る狛井の言動に、やがて溜息を吐く。
刹那、彼女が「友達想いは結構ですけれど」と言うと、
彼女の執事たる衣文がマシンガンを取り出して向ける。
デリンジャーを執事から受け取った彼女は回り込みながら、共に体育館に来て貰うといい――狛井に警棒を密かに渡して指示し、衣文を殴らせて気絶させる。
彼女曰く、彼女の父親は楽園教のいいなりであり、いつかこのような下らない儀式をいつか起こすだろうと実は予測していたものの、ここまでとは思っていなかった。父は脱出ルートを密かに教えてくれたものの、友達は残して行けと言われ、また父親に義理立てをしなくてはいけない衣文を気絶させる必要があったのだという。

新条と嵐山は、宵のビルへと到着していた。
何だか多数の人でにぎわっているビル。また、ただの素人ではなさそうな男達が、そこを警備していた。
男達を横切って行こうとする二人を、警備が止めようとするが――嵐山の不思議な言葉の旋律と新条の無数の鋭い一撃を受け、倒れてしまう。
「邪魔をするな」
「今は貴方達に構っている暇なんてないの」。
数々の警備を薙ぎ払いながら進む彼ら。 このビルのエレベータに乗ろうとしていた男へそのまま嵐山が尋問を掛ける。
情報はぺらぺらと男が喋ってくれた。
「エンドレス・ナイン計画」「サンジェルマン・プロジェクト」「ジャーム量産計画」。
駆け上がり、無数の警備の波を薙ぎ払う。
その先に居たのは、ツータイムのセルリーダー、綿貫由香利。
「もう遅い」と言う彼女が踵を返すのを二人が追うと、そこにいたのは、
無数の白いローブを着込んだ楽園教の教徒達と、子子子子十の姿。
十の言葉に従い、一斉に二人に襲い掛かる教徒達だが、再び薙ぎ払われてしまう
。子子子子は追い詰められ自ら戦闘を仕掛けるも、新条の一撃の前にあっさりとその身を穿たれ、倒れ付した。

「サンジェルマン…私に…私が、神に」
「君に、その資格は無かったと言う事だ。」

綿貫が消えた通路の更に先へ行くと、そこには綿貫の姿があった。
但し、彼女は状況が不利と見たのか、消えてしまう。
そのテラスに残されていた、巨大な装置を残して。
装置は、エンドレスナイン計画において、ジャームを無力化して安全に始末する為の装置だと調べがついた。 これでどこか一帯のレネゲード活動を、彼らは無効化していたのだ。
彼らがそれを破壊しようとしているところを、一人の男性が止めに入る。
西京寺孝三。彼は言う。妻が、もうすぐ蘇るのだから、邪魔をするなと。
全てを悟った上で、新条が言う。
「そんなこと、奥さんが望んでいると?」
「望んでいないだろうとも!これは、私の願い――《欲望》だ!」
嵐山が言う。
「なら、奥さんがそれを望んでいない、と知った上で……奥さんの、その意思を無視して、奥さんの望んでいないことを実行しようとしていると、彼方は」
嗚咽を漏らしながら崩れ落ちる西京寺氏。
装置を、二人は破壊した。


脱出ルートがあるのは体育館だった。 負傷者や意識不明の者らを背負いながらも、なんとか体育館に忍び込んだ面々。
血みどろがその入り口にはあり、それに浸かっている辞書――十七夜のものを見つけ、その死を知りながらも、耐え進む面々。
ただ、そこで子子子子に見つかってしまう。
「わざわざ、生贄をもってきてくれるなんてぇ。」
サブマシンガンの射撃音が響き、相楽が負傷する。
狛井は子子子子を脚止めすべく、子子子子と対峙する――。
不慣れな手つきで放たれる銃弾をなんとか避けながらも、攻撃をすれば、人外の動きでよけられてしまい、怪我を負ってしまう狛井。

残りのメンバーは脱出路である体育館二階の扉へとたどり着いたものの、そこを開こうとすれば、あかない。慌てる西京寺。
扉を殴りつける田井中――。
狛井を追い詰める子子子子。

「じゃあ、これでおわり! ニンゲンが天使に逆らおうなんて――っ」


子子子子の高らかな声は突如、止まる。
ピシパシ、という何かが――幻想が、砕け散る。
狛井の体に、消えたはずの武器とレネゲードの能力が戻ってゆく。

扉が開き、他の者達を助け終えた田井中もまた、助力しに戻ってきた。
滾るレネゲードの力に歓喜する田井中。

忌々しげに、最早学生服へ戻った子子子子は、そのレネゲードの能力を使い、空を自在に飛び回り、光の槍を無数に放ち、二人へ攻撃。
然し、人外の力を取り戻した二人にはそれも最早通じず、
狛井の打撃に耐え切れず、倒れ伏せる子子子子。

「――わたし、は、お父様に、愛、し、もらうの、  楽園が、開いたら、わたしを、あいし、て 、 。」

幻想を破り、一心地ついた彼ら。
そこに到着する、新条と嵐山。
装置を破壊した後、戻ってきたレネゲードの力を追ってきたというのだ。
先に逃げ出した友人らと合流しようとしていた田井中を止めるように、柿栖川が、いつのまにかそこにやってきていた。
水奈月の娘は、と聞く彼に、合流を急ごうとする田井中――。
そこで、体育館二階から、強烈なワーディングが放たれた。

相楽、西京寺は、気絶し、倒れていた。
そこに立っていたのは、もう、神座蔵人のみ。

意識の無い水奈月を、仮面の男へと差し出す神座。
丁度そこに駆けつけた面々だが、それを嘲笑うよう、
仮面の男は水奈月と共に消えてしまう。

自らをツータイムの観察員だと名乗った神座も、その場を静かに去ってしまう。
体育館の中、そこから再びまた強烈なワーディングを感じ、神座よりもそれを追ったPC達。
悲劇はカーテンコールを迎える。

体育館、一段高い壇の上には紳士服、道化師の仮面の男。
口から水奈月お気に入りの熊のストラップを引きずり出し、それを放り投げる。

狛井は、激しい口調で男を問い詰める。
「てめえっ、水奈月を何処に――」


「最高の思い出作りだったろぉ? 狛井ィ。」


聞き覚えのある声。
仮面を掴み、男はそれを放り捨てる。

皮肉気に「そうでもないわね、」と返す田井中。

「――それに、田井中。そちらはお客さんかなァ?」

声の主は、三ツ角元春だった。

たじろぎ、状況を把握しきれていない新条を尻目に、言葉を続ける三ツ角。

「俺、お前たちに言いたいこと、あったつったよなあ?」

「愛してるぜ。 とってもだ。  そんで狛井よぉ、お前にも個人的に言いてえことがある。 水奈月が、お前の事好きだって事、知ってるかぁ?」

「俺も水奈月の事が好きだったんだ。愛してる。――でもよぉ、俺に取って、愛する、ってのは。」

欠けた自らの左耳を隠していた髪を掻き揚げ、笑みを浮かべる三ツ角。

「こうして、鋏で。チョキチョキチョキチョキ――バラッバラに、ぐちゃぐちゃに、切り刻んでやることなんだよぉ。 そう、俺は、そう"愛されて"きたからよおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」

その破壊衝動が漏れ出す。その力は、彼を殺さなければ、やがて、この町を覆い、F町の全てを”無かったことに”、完膚なきまでに破壊するだろう、


「なるほどね、」
静かに、呟く田井中。


その身にレネゲードの強大な力を背負った三ツ角は叫ぶ。

「最ッ高――これが!レネゲードの!エンドレスナインの!バッドエンドメイカーの力かよッ! これが、神の力って奴か!」


「それが、本当に神の力だとでも?――そうだというなら、それを証明してみせろ」
そういう嵐山に、三ツ角は、その腕を何本も、何本も増殖させ、狂気的に叫ぶ。

「神ッ!!違うねッ!!!これは。  ………神を超えた力さぁああッ!!!」


無数の腕から放たれる攻撃。戦闘体勢を取った狛井達へと向いた攻撃を、新条が素早くその髪で庇いきる。
執拗に身体を引っつかみ、切り刻む鋏。傷口には、できそこないのデミクリスタルがぼこぼこと張り付き、身体の動きを抑え、その身を蝕む。
田井中が銃撃を放つも、増殖した三ツ角の腕がそれを止めてしまう。
折り重なった腕は硬く鉛玉を通さず、その隙に反撃で延ばされた腕に田井中も当たり、その身をデミクリスタルで汚染されてしまう。
――然し、その時動いたのは狛井と新条だった。
嵐山の支援を受け、疾風の如く駆け抜ける髪は――無数の腕での防御を赦さぬ一撃を、三ツ角に放つ。
飛び出した陰は狛井だった。一度、二度。 防御の効かない三ツ角の動きは鈍く、致命傷を与えることに成功する。

また三ツ角が無数の腕を放つと、田井中がそれを銃撃で静止しようとする。一度は止められたものの、もう一度は防がれてしまった。
ジャームとなった彼の動きは最早通常のオーヴァードでは考えられず、二度とまた攻撃を放つも、それを新条が時を静止することで防いだ。
攻勢に出ようとする新条の身体を、力が襲う。 バロールの秘儀をコピーした三ツ角が放った《時の棺》が、それを抑えたのだ。
ここを逃すわけにはいかない。 狛井はまた嵐山の力を受け――防御の効かない、無防備な三ツ角へと肉薄する。

「――あぁぁぁぁいしてるぜえええええッッッ、狛井ィィィイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!!」

「悪ィなぁ。  ………もう俺、彼女いるン、だよなああああッ!!!」

まさに、《一閃》。
狛井の放った一撃に、三ツ角の無数の腕は静止し、崩れ落ちる。

「………俺だって、  もっと普通に、愛したかった……」

その身体が、デミクリスタルと化して膨らんでいく。
最後に、首下までクリスタル化した三ツ角の首は取れ、転がり落ち。 結晶となって、崩れ去る。

それを指で掬いながら、田井中は言う。

「最後は格好良かったじゃない。 アンタ、最後は神になった。私だって行けない領域に。 踏み出そうと想って、私が行けない領域に――」

狛井は、絶望的な気持ちでクリスタルを掻き分ける。
そこには、顔から血の気が引いた水奈月。

「………水奈月っ!」

「…ぐう 」

「   ………」

彼女を引っ叩いて起こした狛井。
のんきな水奈月と共に、暫く漫才のようなやり取りをしているところへ、田井中が銃を向ける。
何があったのかすべてわからない彼女は、その説明を求めた。
狛井が水奈月に誤って押し潰されて気を失い、寝惚けながら田井中の足に飛びついたと言うハプニングはあったものの。
嵐山と新条の説明を受けた田井中は、ただ一言。
「何それ、メッチャ欲しい……」

やがて、UGNが到着する。
逃走する田井中。眠っている狛井と水奈月。
それを見つめながら、二人のエージェントと協力者は語らう。

「私は、彼の思いを受け継がなければならない。 …また、彼女を、見届けることも。」
新条は嵐山の言葉に応えながら、また一つ成長した。


十七夜の弟、十七夜海戸の居場所を先に突き止めた田井中は、UGNより先に踏み込んだ。
雑魚を追っ払い、部屋にいる弟へと声を掛けるも、反応が無い。
「彼方のお姉ちゃんから、アンタを宜しくって頼まれたのよ」

――ソラリス能力にきつく犯された彼の精神は既に崩壊していた。
手持ち無沙汰で彼を背負い、後から踏み込んできたUGNを尻目に、窓からハリウッドアクションガラスパリン逃走をした田井中。

その途中で神座に出会う。
神座は事情を聞きたがり、聞き終われば、実験に予想外の対象を巻き込むのは不本意なのだ、と言い、田井中の手伝いを申し出る。
何故という最も至極な田井中の質問へ、
「友人を助けるのに、理由が要るか」
表情を変えずにそういう神座。田井中は”誰かさんが言った言葉”を思い出して、赤面した。そうして、彼が作り出したディメンジョンゲートへと、共に消える。

某イタリア料理店。
手打ちそばを啜りながら、柿栖川と、彼に労いと招待された新条、嵐山。
あまり食の進まない二人に、彼は言う。
「エンドレスナイン、消えてまったんよ。誰がもっていってしもたんやろな?」
正直に、知らないと応える二人。それに、納得したように去っていく柿栖川。
巻き込まれ損、といった風な二人は、この事件を振り返りながら――そこに、ドンと置かれた、山盛りカレー。

この店のコック長と思しき筋骨隆々のイタリア人は、良く分からないが、「景気悪いツラしてんな」的ニュアンスのイタリア語を喋り、サムズアップ。

「―サービスならば、頂こう」
と、スプーンに手を伸ばす嵐山。
ここはイタリア料理店です。

某病室。
目を覚ました狛井の周りには、色々な人が居た。
水奈月。それに覇王樹、西京寺、相楽、十七夜。田井中。
幻想の世界で死んだ人間は、蘇ったらしい。
林檎を虐待する水奈月(剥いているだけです)を横目に、
「俺達、全部覚えてる。 でも、記憶は消されるからな。最後に挨拶したくて来たんだ」という覇王樹。
西京寺は旅行鞄を持ちながら、狛井に礼をした。
「UGNへも、FHへも、このことは忘れないと言っておきますわ――」
そしてその後、隙を見て狛井の頬へとキスをし、去ってゆく西京寺。
「UGN。そしてFHのお前にもだ。感謝する、有難う。まあ、二度とはごめんだが」
と吹っかける相楽に、対抗するように田井中が銃を取り出し、また相楽も銃を取り出し。その頭上に、辞書が降り注ぐ。
振り下ろしたのは十七夜だ。 
「辞めなさい、病院で。…私、UGNの預かりになることになったから。…もう、いかないとね。  ……、水奈月! ぼーっとしてると、とられちゃうわよ!」
最後に少し悪戯っぽい笑みを浮かべ、去っていった十七夜。

「ぐぐぐ…――で、では、私は、護衛に雇われているのでな。…また会おう」
と、西京寺のあとを追いかける相楽。

「俺はもうこんなのは御免だ。UGNもFHもさ。身体ちょっきんちょっきんなんてよ。 …じゃ、アデュー、だ」
狛井にも「やめておけ」、と言われて、ちょっと照れたような笑いを浮かべて、去ってゆくはおーくん。

入れ替わるように到着した嵐山と新条。
事の次第を説明し、最後に「オーヴァードとしてどうするか」を問う新条。
そこで田井中が銃弾を放った。 水奈月を庇い、傷を負う狛井。
「戦うってのは、こうなること。誰かが傷つくってこと。 アンタ、その覚悟はあるの?」
そう問うた田井中。 流血を望むほどに、彼女は真剣だったのかもしれない。

そして、それをみてきょとんとしていた水奈月は、静かに微笑む。
「戦うっていうのは、傷つく事。 でも、代わりに誰かを守れるんでしょう?」

新条は少し驚いた様子で、嵐山はふっと笑い。
「君の負けだな」と言えば、
田井中も「完全に……」と悔しげにしていた。

そしてやがて、階下に聞き覚えのある声がした。

「ここにクッサいFHの匂いがするわ!これ以上ウチでは養えないわよ!」

――田井中は慌てて逃げ出した。

鬼の形相のK支部局長と二人のエージェントをおいて、
水奈月と狛井は、中庭を散歩した。

「私、言いたいことがあるっていったよね。 それに。…私、あのね。戦うことにしたのっ」
「誰とだよ」
「だ、だから…人を傷つける、ジャーモとか」
「ジャームな」
「そ、そうそれ」
「やめといた方がいいと思うがなあ」
「いいの。  …だって、そうしたら。」

「…狛井君の傍に、ずっといれるじゃない」
消え入るような声。

「今何か言ったかあ?」
「ううん、なーんにもっ!ひーみつだよっ」
そのまま、笑いあいながら進む二人。
開いたのは病院の玄関扉。




「兄さん、その女は、誰?」





逃げ惑う狛井らを見下ろしながら、
嵐山、新条達は病室で笑っていたかもしれない。




  • - - ED 終了 - - -


「エンドレスナインはどこへ」

「知らないわ。 私が知りたいぐらいよ…」

「そう。」



「――人形が、余計なコトを学んでしまったみたいね」
冷徹なる彼女は、消えた少年にそう呟く。



  • - - 最終マスターシーン終了 ---




PCのセリフなんかで印象的なものなんかもうろ覚えで書いてますが、
あちこち間違ってるかも。
コメントで教えて頂ければ。

裏設定ファイルさんをあげたり。

第十話の感想があればこちらへどうぞ。
  • 結局ヤンデレばかりじゃないですかー!!やったー!! セリフは言った本人があんまり覚えてないけどそんな感じだったと思います。 この書き方真似ようかな。セリフ書いておくとカッコイイ…… -- みりん (2011-02-12 23:32:53)
  • 最初はNPCわらわらでどうなるのかと不安になったが、見事にまとまってて素直に感心。というか俺より遥かに上手い(汗)。初心に戻って精進せねば。 -- やまびこ (2011-02-18 02:19:18)
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最終更新:2011年02月18日 02:19