まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

05話 - 先行き不安

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f29m1

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トリトドン
「はじましてトリトドンです~。ニックネームは『ぽにょ』なのです~。あなたはどこのマリルリですか~?」
マリルリ
「どこの……、って言われても……」
ムクホーク
「こいつは今日からこのボックスの新しい仲間になったマリルリだ」
トリトドン
「つまりここのマリルリですね~よろしくです~。ところでニックネームありますか~?」
マリルリ
「いや、無いよ。普通のマリルリ」
トリトドン
「じゃあマリルリと呼びます~。マリルリはかわいいですね~」
マリルリ
「か、かわいい……?」

 トリトドンは体を伸び縮みさせて色んな角度からマリルリを観察している。とても嬉しそうだ。

ムクホーク
「おいおい、こいつは♂だぞ?」
トリトドン
「でもかわいいですよ~。ぽにょマリルリ気に入りました~♪」
ムクホーク
「そうか。よかったなマリルリ」
マリルリ
「は、はあ……」

ムクホーク
「さて、マリルリ。ボックスの仕組みについては説明無用だと思うが、わかっているな?」
マリルリ
「は、はい」
ムクホーク
「うむ。ボックスとは電脳空間に作られた仮想空間であり、ポケモントレーナーはパソコンを経由して、ネット上に存在するポケモンボックスにアクセスすることで、私達ポケモンを自由に預けたり引き出したりする。電脳空間でありながらここが現実世界と何ら遜色無い状態に在るのは、我々ポケモンの肉体を構成する情報を電子データに置き換……」
マリルリ
「も、申し訳ありません! 僕はそこまで詳しい仕組みは知りませんでした……! てっきり手持ちじゃない控えのポケモンはここに預けられるとかそういう話だとばかり……」
ムクホーク
「ああ、すまんな。……何も泣く事は無いだろう。私も専門的な事は何も知らないんだぞ。この話も単にトレーナーから聞いた情報を話しているだけの事なのだからな」
トリトドン
「ムクホークはたまに真面目にボケをかますから注意するです~」
チェリンボ
「『かがくのちからって、すげー!』だね」
ブースター
「それってなんか違うんじゃない?」
マリルリ
「ムクホーク先生……。バトルがしたいです……!」
ムウマージ
「……ボケに……ボケで返すと……、収拾つかなく……なるよね……」
マリルリ
「わあっ!?」

 マリルリが某漫画のような状態になっていたら、いつの間に移動したのか真正面にムウマージが現れた。
 マリルリは驚いたが他の皆は慣れているのか特に驚いた様子は無い。チェリンボに至っては楽しそうに跳ねている。

ムクホーク
「マージ。姿を消し、突然他人の目の前に出て来て驚かせるのはやめろ」
ムウマージ
「……驚かすのは……、ゴーストポケモンの……本分……」
ムクホーク
「む……。それは確かにその通りだが……」

 ムウマージはくるりと一回転しながらヒラヒラと体を揺らめかせる。

ブースター
「もう、リーダーってば難しい説明はいいって。マリルリ君、困ってるよ?」
ムクホーク
「おっと、そうだな。つまりはボックスとは待機施設兼住居と考えていい。それから先程も話したが、このような部屋が5つあり私達はここで生活している。あくまで目安だが最大6匹まで入れる」
ブースター
「6人部屋が5つある、ってことね」
ムクホーク
「今日からお前はこの部屋で暮らせ」
マリルリ
「わかりました。ではよろし……。ええっ?」
ムクホーク
「どうした?」
マリルリ
「あ、いや、その……、この部屋で、って……ひょっとしてここの皆さんと同じ部屋ですよね?」
ムクホーク
「そうだ。丁度この部屋は一月前に欠員が出てな。今日から私達のルームメイトだ、よろしくな」
マリルリ
「そ、それって、つまり、皆さんと、同じ部屋で、い、一緒に暮らしたり、寝泊りしたり、きょ、共同生活するということになるので、ではではではございませんでしょうかでありませんかそうですかくあqwせdrftgyふじこlp;?」

ムクホーク
「……落ち着け。何を今更。先程まで普通にしていたではないか」

 突然の提案にパニックに陥るマリルリ。彼も一応♂ポケモン、すなわち男だがこのような♀ポケモンが大勢いるという状態に慣れていない為(というより普通は慣れない)に素直に喜べず戸惑っていた。
 それでも今まで落ち着いていられたのは、それよりも異常な状況が連続で続いていたからである。

 ――で、ようやく落ち着いて来た所でこの発言。今まで溜まっていた混乱が一気にきたのだった。

マリルリ
「今更……。た、確かにそうですね……。女の子だけのボックスに来てしまった事はもう仕方が無いと諦めましたけど、でもまさか部屋まで同じとは思わなかったので……。ちょっとそれはマズイんじゃないかなー、と」
ムクホーク
「だから、『何を今更』だろう。変に緊張するな。
 それに♂と♀の差など対した問題では無い。多少気恥ずかしいとは思うだろうが、じきに慣れる」
マリルリ
「で、でも皆さんは……」
ブースター
「私はかまわないよ」
トリトドン
「ぽにょも平気です~」
ムウマージ
「……面白そうだから……、いーよ……」
チェリンボ
「わーい! マリルリお兄ちゃんと一緒だ♪」
ムクホーク
「問題無いようだぞ」
マリルリ
「で、ですが……」
ムクホーク
「それとも何だ? お前はそのマズイ事が起こるとでも? 何かよからぬ事でも考えているのか?」
マリルリ
「ま、まさか!!」
ムクホーク
「ふむ。なら問題は無いだろう。だが……」

 ギンッと彼女の視線がマリルリを捕らえる。そして表情を変えずにこう続けた。

ムクホーク
「最も、ここの者達によからぬ事をしたならば私が全殺しにしてやろう。
 何、心配するな。万が一にでもそうなった場合はせめてもの情けで一瞬で決めてやるから安心しろ」

 凄まじい威圧感を発しながら鋭い双眼がマリルリを射抜く!

ムウマージ
「……ムクホーク……それ……死んでる……」
ムクホーク
「おっと、すまない。九割殺しの間違いだった。……なんてな、今のは冗d……」
マリルリ
「はぁーい! マリルリでーす!
 みんなー今日からよっろしっくねー!!」
三匹
「「「はーーーーい!!」」」

ムクホーク
「……む、やはり私は冗談が下手だな。私はこういう固い性格だからもう少し柔軟性を持とうと努力はしているのだが……。ハハ、なかなか上手くいかないな」
ムウマージ
「……ムクホークは……そのままが……一番いいよ……」
(……面白いし……)
ムクホーク
「そうか? それならいいのだが。
 さて、そろそろ反省室であいつらに説教しに行ってくる。……おっと忘れていた。
 マージ、お前は反省室に行ってもすぐ抜け出すから明日までに反省文を書いておけ。10枚以上な。
 言語は日本語、ポケモン語、アンノーン文字のどれでもいいが間違っても呪いの呪文なんて書くんじゃないぞ」
ムウマージ
「……やだ……。めんどくさい……」

 こうして、なんだか先行き不安ではあるもののマリルリの♀ポケボックスでの生活が始まった。
 今後、彼に振りかかるのは……、幸運か凶運か……。
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