まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

01話 - チャーレムとピチュー

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f29m1

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マリルリ
「……」

 彼は困惑していた。自分が見知らぬボックスに送られたからでは無くトレーナーの大雑把さに呆れているのでも無い。

マリルリ
「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……。『僕はボックスに預けられたと思ったら、いつのまにかポケセンに戻っていた』
 な、なにを言っているかわかんねーだろうが、僕も何が(ry」

 混乱のあまり一人で意味不明な事をつぶやいていると後ろから声を掛けられた。

???
「やっ、新入りかい?」
マリルリ
「え?」

 振り向くと一匹のチャーレム♀が笑顔で手を振りながら近づいてきた。

チャーレム
「いやー、しばらく前に欠員が出てからなかなか新しい子が入って来なかったんだよね。……あれ? あんたもしかして♂?」
マリルリ
「え? あ、ハイ……! マリルリの♂です……」
チャーレム
「ははぁ……。
 もしかして、トレーナーに適当に放り込まれたクチでしょ?」
マリルリ
「え、えっと……、た、たぶんそうかと……」
チャーレム
「だろうねー。あたしも前に『でんせつハウス』ってボックスに入れられた事があってさ。これが笑えるくらい伝説だらけ。
 つーかどこで捕まえてきたんだか。最初はなかなか打ち解けられなくてね、何せ伝ポケでしょ? まあ結構面白かったけど」
マリルリ
「そ、それは確かに大変そうだね……」

 時空竜と空間竜はノリが悪いけど案外単純バカだったとか、霊界竜はそうでもなくて一緒にお茶飲んだりしたとか、
 ホウエン地方から来たという兄妹竜の兄がシスコンだとか、なかなか凄い体験をしているのに楽しげに話すチャーレム。
 だがマリルリは状況がまだ飲み込めておらず適当に返事をしていた。

チャーレム
「おっと、忘れてた。あたしは見ての通りチャーレム。よろしく!
 あとN.N(ニックネーム)と自分で勝手に考えた通り名もあるけど好きなように呼んでいいよ」
マリルリ
(それって通り名と言わないんじゃあ……)
「は、はい。あ、僕も見ての通りマリルリです。よ、よろしくお願いします」

 緊張しながらも挨拶を終えてホッと一息ついたマリルリ。が、ふと重要な事を思い出した。

マリルリ
「あ、あのチャーレムさん。失礼ですが二、三質問があるのですが……」
チャーレム
「そんな堅くならなくていいって。それにあたしにはタメ口でいいよ」
マリルリ
「あ、はい。
 じゃあ質問なんだけど、確か僕はボックスに預けられたはずなのになんでポケモンセンターのロビーにいるの? というかここどこ?」
チャーレム
「あー、それね!」

 チャーレムは両手を腰に当てて自信満々に答えた。

チャーレム
「答えは簡単。ここは正真正銘ボックスの中。で、ポケセンっぽいのはここのボックスの壁紙が『ポケセン』だから」
マリルリ
「へー、なるほd……、って、ええええええええええええ!?」
チャーレム
「電脳空間って何でもありみたいね。内装もこっちでいじれるし。とりあえず『かがくのちからってすげー!』って思っとけばいいんじゃない?
 あたしも難しい事はよくわかんないからそう思うことにした」
マリルリ
「そ、そういえば僕がよく預けられていたボックスも何も無い部屋だったり草原みたいな場所だったりしていたけど……。よくよく考えれば不思議だよなぁ。
 そっかあ科学ってすごいな。あ、それともう一つ質問なんだけど……」

 言いかけてマリルリは俯いてしまった。何やら微妙な表情をしている。

チャーレム
「ん? もー、そんなに緊張しなくても何でも聞いていいってば! 新人は先輩に何でも質問するもんよー」
マリルリ
「わっ、ととっ……」

 チャーレムはマリルリの背をバシッと叩いた。本人はそんなに強くつもり叩いたつもりでは無かったが、
 マリルリは思わずよろけて転びそうになってしまい、体勢を建て直して改めてチャーレムに話しかけた。

マリルリ
「うん……。じゃあ、ちょっと笑わないで欲しいんだけど……。
 さっき「あんた♂?」って聞いたのって……、なんでかなって。
 深い意味は無いのかもしれないけど、ちょっと、気になって。
 僕そんなに♀顔かなーって、ね」
チャーレム
「あー、あーあーあー! ハハハなーんだそんなことかぁ」
マリルリ
「わ、笑わないでって言ったのに~」
チャーレム
「あ、ごめんね。うん、深い意味は無いよ。ただね、このボックスに関係があってね」
マリルリ
「関係? そういえばここってどんなボックスなの?」
チャーレム
「一言で言えば賑やかなボックスなんだけど、一番の特徴はボックス名を見ればわかるよ。ほら、そこに名前が出てるでしょ」

 チャーレムが指差してた先は、本来のポケモンセンターならジョーイが立ってい場所。当然そこに誰もいないがディスプレイにはボックス名が表示されていた。

マリルリ
「あ、本当だ。えーっと……。え……? 『♀ポケ ボックス』……?」
チャーレム
「そ。ここは男子禁制、女の楽園、乙女の花園、♀ポケモンだけのボックスなの。
 ここに放り込まれたのをラッキーと取るか災難と取るかは自由……、だけどね」
マリルリ
「ど、どうしよ……」
チャーレム
「まー、放り込まれちゃったのは仕方ないんじゃないの? トレーナーの性格は大体みんなわかってるし」
マリルリ
「で、でも女の子ばっかりのところに僕が来たら迷惑なんじゃあ……。
 それにみんな嫌がるかも……」
チャーレム
「んー、それはあるかもね。あたしは別に気にしないタイプなんだけど、中には男嫌いな子もいるかも」
マリルリ
「ええええ!?」

 おろおろ慌てふためくマリルリに対しチャーレムは至って楽観的だった。腕を頭上に上げ軽く伸びをしている。

チャーレム
「まーまー、そんな真剣に悩まないの。事情を説明すればわかるって。まずはねえさんに挨拶に行こうか」
マリルリ
「ねえさん? お姉さんがいるの?」
チャーレム
「違う違う。『姉さん』じゃなくて『あねさん』と書いて『姐さん』。このボックスで一番立場の強いヒト。代表みたいなもん。
 そのまま「あねさん」とか「お姉様」とか「お局様」とかみんな好きなように呼んでるけどさ。姐さんに挨拶して認めてもらえば誰も文句言わないって!」
マリルリ
「へぇー。あれ? じゃあ認めてもらえなかったら?」
チャーレム
「あー、そうだねー、姐さんの事だからそん時は半殺s……。
 あははは! 冗談冗談! たぶん大丈夫だって!」
マリルリ
(……いま、何か物凄く物騒なこと言いかけたような……)
チャーレム
「姐さんの部屋は……あ゛ーーーーー!!」
マリルリ
「ど、どうしたの!?」
チャーレム
「やっばーーー!! 風呂の水出しっぱなし!!
 ちょっと止めてくるからあとヨロシク!!」
マリルリ
「はいい!?」
チャーレム
「あ、姐さんの部屋は2階だから!! んじゃ!!」
マリルリ
「ちょっ、僕一人で行くの!?」
チャーレム
「へーきへーき! 万が一認められなくても、あんたそんなにヤバそうじゃないから三割殺しぐらいで済むから!!」

 そして彼女は猛ダッシュで走り去って行ってしまった。走り去った方向から「ショートカットーーーー!!」という声や、何か豪快な破壊音しているの気がかりだが……。

マリルリ
「……。と、とりあえず行こうか」



 【2階】

マリルリ
「で、2階のどの部屋なんだろ?」

 やはり基本構造がポケモンセンターを模しているのか2階にはユニオンルームやコロシアムらしい部屋があった。
 更に増築したのか廊下が作られており、他にもいくつかの小部屋があるようだ。とりあえず2階に上がってみたものの
 どの部屋にいるのかまでは教えられていなかったため、どうすればいいかマリルリは考え込んでいた。

マリルリ
「やっぱり戻ってチャーレムさんを待ったほうが……。あっ」

 ふと、前方に一匹のピチューが横切っていくのを見つけた。

マリルリ
(あの子に聞いてみようかな? でも不審者だと思われないかな? 男子禁制とか言ってたし……)

 だが、先にピチューのほうがこちらに気づいた。見知らぬポケモンに対して警戒しているのかマリルリを強く睨み付けている。

ピチュー
「おい、誰だお前」
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