まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

02話 - そしてボックスへ

最終更新:

f29m1

- view
管理者のみ編集可
『えーと……、ポケモンのニックネーム……「ナズナ」、種族サーナイト、性別は♂と……。
 これでよし。お前が必要になったらすぐ引き取りにくるよ。それまでゆっくり羽根を伸ばしてるといい』
「じゃあみんな、後は頼んだよ」
「「「まかせてくださーい!」」」

 僕は続投の3匹と入れ替わりで引き取られて行ったもう3匹に挨拶をすませると、モンスターボールに収納されボックスサーバーへと転送された。



 徐々に周りが明るくなって来た。もうすぐ到着するのかな?
 サーバー転送中にモンスターボール内に表示されていたボックスのチュートリアルによるとボックスは寮のようなもので、それぞれに役割が与えられるという。
 センターの端末から18個に割り振られたボックスにポケモンを預けているように見えるけど、あれはあくまでトレーナー個々のアカウント上での管理画面であって実際は他のトレーナーのポケモンが共同で暮らす「寮」へと送られ、引き取られる時は親IDと登録したデータを照会してトレーナーの元へ帰って行くという流れ……、ということらしい。
 あとどうやら一度決まった「寮」は次回からもそこで固定のようだ。

 これは僕の予想だけど、こんな管理上面倒なことをするのは多分野生に返す場合が出てきたとき、生活能力を失っているという事態を防ぐためだろう。
 こんな複雑なシステムを組み上げるのは相当難しかっただろうなぁ……。えーと作ったのって誰だったっけ……。えーと……、マ、サ……あれ? ミ……ズ……?

 ガコン

「へぶらっ!!」
 大きな衝撃と共に僕は壁面で鼻をぶつけた。どうやら到着したようだ。
「痛ててて……。鼻がもげるかと思った……」
 鼻をさすりながら顔を上げてみると想像していた殺風景な空間とは裏腹に自然を模した賑やかな空間が広がっていた。以前アヤトさんに見せて貰った本に載っていた『地下シェルター』という建物に感じが似ている。意外と設備もゴージャス……。
 周囲を見回すと入り口と思しき扉を見つけたので僕は気を取り直し入ってみることにした。
 扉にそっと手をあてると、ゆっくりとサイドに扉が開いく。
 飲み込んだ唾が喉を鳴らす。



「あら、いらっしゃい」
 扉を開けると目の前に立っていたのはエプロンを付けたガルーラのおばs──いやおねえさんだった。
「は、初めまして。今回ここに預けられることになったサーナイトのナズナといいます」
「私はガルーラのロデアロス。長いからロデアで区切って呼んでくれて構わないわ、ここの寮母みたいなものよ。ナズナくん、ね。雄なのに可愛い名前付けてもらったのね」
 僕は心底驚いた。大抵のトレーナーやポケモンは僕の姿を見て雌と間違うがこのガルーラのお姉さんは一発で僕を雄だと分かってくれた。
「え、よく僕が雄だってわかりましたね」
「あたりまえよ、こう見えて寮母歴はかなり長いのよ。大抵のポケモンなら雄雌の区別は着くわ」
 この時僕は口を半開きにして心底間抜けな顔をしていただろう。感心と驚愕は表裏一体だ。
「さ、こっちに来て貰えるかしら? この"寮"の面子を紹介しておくから」
「あ、はい。わかりました」

 ガルーラのロデアさんに連れられて僕はリビングらしき空間へと足を運んでいった。
 ……うん? 何だか進むにつれ雄からは感じられない空気が伝わってくるんですけど……。



 リビングに着くと、僕はしばし硬直した。
「おいこらお前達、少し静かにしろ!」
 ロデアさんの喝の入った声が響き渡る。視線は一気にこちらに集中した。
「新しい寮生を紹介する。サーナイトのナズナ"くん"よ」
 "くん"、の所だけ強調されて言われた気がするのは多分、気のせいじゃない。
「うぅーん? "くん"ってことは……」
 リビングの中央に置かれた机の端に座っていたマニューラがニヤニヤしながら僕を見る。ちょ、そんなに見ないでよ……。
「男の子……、ってこと、ですよね……?」
 付け足すようにソファーに座って本を読んでいたビークインが呟いた。なんでちょっと泣きそうなの。
「……」
 ビークインの横でお座りの格好をしているグレイシアに至っては無言で僕をガン見している……。

 硬直している僕をよそにロデアさんは話を続けた。
「そうなるわね、このボックス寮「初」の男ってことになるわ」
「え、ちょ、ちょっと待ってくださいロデアさん、ということは僕以外の人は皆……」
「ええ。見て分かるだろうけど貴方以外は全員女の子よ」
「……!!」
「とりあえず簡単に紹介しておくわね、机の上に座ってるのがマニューラのユウラ、座って本を読んでるのがビークインのハニカム、その隣がグレイシアのキサラ。
 他にも居るんだけどまた夕飯の時にでも紹介するわ。私はこれから定例会議に出ないといけないから貴女たち、彼頼んだわよ」
 そう言い残して、ガルーラのロデアさんはリビングを後にした。

「にゃーっはっはっはっは!
 君も運がいいねー、預けられた先が女ばかりなんてなー!」
「ちょ、ちょっとユウラちゃん……。ナズナちゃん……、あ、ええとご免なさい! ナズナくん困ってるじゃない……!」
「……」
 この状況をあくまで楽しもうとするマニューラのユウラさん。それに困惑するハニカムさん。そして我関せずのグレイシア、キサラさん。

 ……はぁ、アヤトさん。なるべく早く引き取りに来てほしいです……。
ウィキ募集バナー