ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-5

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匿名ユーザー

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ルイズメモNo.12-使い魔について-

 あの決闘から一週間が過ぎた。
 意外にも、最大の懸念事項だった謹慎は無し。
 ハゲ曰く、「怪我人が出なかったから今回だけは許す」らしい。
 けれど、もしモンモランシーが機嫌を直していなかったら、ギーシュは確実に死んでたわね。
 何かの陰謀を感じなくもない。だとしてもわたしに出来ることは特にないけど。
 それよりもセッコね。格闘が強いのはうすうす判ってた、
 けど岩を操ったのは何だろう?直接聞いてみたけれど答えは要領を得ない。

  • セッコは朝わたしを起こして、朝食を食べるといつの間にかいなくなる。
    一体どこへ行っているのだろう?要検証ね。
  • 一応呼ぶと現れるので、それほど遠くへは行ってないみたい。
    微妙に感覚共有ができているのかも、そうだとしたら喜ばしいことだわ。
  • ふと思って「来い」と念じてみた。来る様子はなく、肩を落とす。
    しかし声に出して呼ぶと、いつも通りすぐにやってきたわ。意味がわからない。
    これも要検証。

 気になることが多すぎるので一日使ってセッコを監視することにする。

  • 他の使い魔達を連れて厨房に餌をたかりに行っている。
    やっぱり足りてないのかしら?
  • 信じられないものを見てしまった。セッコはともかくとして、ドラゴンとジャイアントモールが食材の搬入を手伝っている。
    誰の使い魔か知らないけど意地汚いわね。
  • 中庭でギーシュと話している。妙にギーシュの腰が低いのは気のせいだろうか。
  • ギーシュが錬金したとおぼしき棍棒をセッコが振り回している。
    もしかして武器が欲しいのかしら?今度の休みにでも何か買ってあげよう。
  • その間ギーシュは横で震えている。その様子は実に面白い。
  • 思ったよりあいつは人望がある。わたしのよく知らない子と普通に会話していた。
    ハシバミ草愛好会って何なのかしら?
  • 部屋に戻るといつの間にかセッコが戻ってきていた。謎の鎧のような服の手入れをしている。
    「大事なもんだ、何に使うかは忘れたが。」と言っていた。
  • 呼べば来るけど念じても来ない謎が遂に判明。
    単にわたしの声を聞いていただけみたい。
    目がいいのに、耳もきくってのは珍しい。才能ね。
  • 不思議な事も言っていた。
    硬い物を持つと身が軽くなる?理解できない。けど嘘ではなさそう。

「起きろー」
 うるさい
「起きろぉー」
 まだ眠いのよ
「起きろおおおお」
 今日は休日じゃない
「起きろつってんだろおおおおおおおおおお!」

「ああ……おはよう」
 そういえば、今日は買い物に行くから早く起こせって言ったんだわね。
「オレも行くのか?」
「当たり前じゃない、というかあなたの武器を買いに行くのよ。」
「うー」
 ひどくやる気のない面でこっちを見ている。
「付いて来るなら飴を一缶買ってあげるわよ。来ないなら当分おやつ抜き。
 もう一度聞くわね。付いて来るかしら?」
「うおお、うん、うん!」
 いつもながらこの扱いやすさは評価できるわ。

「ならさっさと行くわよ。」
「うん。」



 タバサはセッコの事が気になっている。

 召喚した次の日、普通にハシバミ草を食っていたこと。
 自分の使い魔である風韻竜シルフィードと妙に仲がいいこと。
 そして……決闘で見せた不思議な、見たこともない戦い方。
 しかも昨日はサイレントを掛け、かなり後ろからつけていたのにわたしに気づいて話しかけてきた。修行が足りないだろうか。
 勘は鋭いが頭は良くないようで、適当にごまかしたら納得していた。

 そうだ、今日は虚無の曜日だ。休みを満喫すべく図書館に向かうことにする。
 部屋でゆっくり読もうと本を2冊借りて出てくると、窓から馬で町へ出て行くセッコと主人ルイズの姿が見えた。

 どうも気になる。

……空で本を読むのも悪くないか。そう自分を納得させシルフィードを呼んだ。
「きゅい?」
「馬2頭。食べちゃダメ」
「きゅいきゅい!」



 あら?よく見たらセッコちゃんなのだわ!
 たぶん町へ行くのよね、ついでだし乗せてあげちゃおうなのだわ!
 シルフィってなんて友達想い!
「シルフィード?」
 タバサが気づいた時既に遅し。シルフィードは、セッコとルイズのすぐ横まで急降下していた。



「きゃあああああああ!何?何なの?」
 ルイズはあまりのことに落馬してしまった。
 まあ、いきなり横にドラゴンが降りてきたのだ。
 驚くなという方がどうかしている。

「いたた、セッコ生きてるかしら?」

……あら?

「うおっ、おおおっ」
「きゅい、きゅっきゅ!」
「うん!うん!」
「きゅいい!」
「おあ、おうおう!」
「きゅいきゅい!」

 腰をおさえながら起き上がったルイズが見たものは。
 意味不明な言葉でドラゴンとコミュニケーションを取るセッコと、ドラゴンの背中でプルプルと震えている同級生の姿だった。
 しかも……あのドラゴンは確かに校舎の裏手で食材を運んでいた奴だ。



「早い、早いわ!さすがドラゴン!」
 横でルイズがはしゃいでいる。キュルケ並みに騒がしい。
「おっおっ」
「きゅい!」
 シルフィードとセッコが何か言い合っている。はあ、何でこんなことに。
 まだまだ「教育」が必要みたい。

(……シルフィード)
(なに?)
(帰ったらあれよ。)
(な、なにもわるいことしてないの!喋れることもばらしてないの!)
(追跡対象は今乗せた2人。)
(……)

「タバサ、だっけ。ありがとう。凄く助かったわ。」
「いえ、別に。」
 元は乗せるつもりなんかなかったのに。

「あれ、どこ行くの?」
「用事。」
 もう頓挫したけど。
……せっかく街まで来たんだし、秘薬屋に足を伸ばそうか。

「帰りも乗せてもらえる?」
「……」
 シルフィードとセッコはまだ何か話し?ている。
 害はなさそうだし、乗せてもいいか。
「ここで待つ。」
「ありがとう。タバサ」



 タバサとわかれて武器屋を探す。どこだったかしら……
「狭い道だなあ~」
 え?
「ここが一番広いのよ?それはそうと、スリには気をつけなさいよ。」
「わかった。」
 セッコを呼び出してかなり経つ。でもわからない事が多すぎるわ。
 こいつ自体記憶喪失なんだから、どうしようもないのだけれども。
「見えたッ!チクリと見えたぜ!」
 セッコが指差した先には何も見えない。何言ってるのこいつ。
「剣の看板!」
「どれよ」
「その先だ、オメー目が悪いぞぉ。」
 あなたが良すぎるのよ。
 100メイルほど歩くと確かに剣の看板であることが分かった。
 そういえばこんな場所だったわね。

「こんにちはー」
 店の中は薄暗く、乱雑に剣や槍や甲冑が並べられていた。
 店の奥に座ってパイプを銜えていたヒゲ親父が、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめ、口を開く。
「旦那。貴族の旦那。うちは真っ当な商売してまさあ。
 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや。
「失礼ね、客よ。」
「こりゃおったまげた!貴族が剣を!おったまげた!」
「使うのはわたしじゃないわ、使い魔よ。
 後、剣よりもハンマーとかメースとか、頑丈で重いものがいいのだけれど。」

 店主がよく見ると、少女の後ろに変な鎧を着た男が立っている。
 確かに力は強そうだ。

「困りましたなあ、うちは剣と槍が専門でしてね、
 殴る武器はそれ、そこの護身用の棍棒しかありませんや。」
 指した先を見ると、0,5メイルほどの貧相な棒が数本吊ってあった。
「うーん、さすがにこれはちょっと。」
 ですよねー。 といった表情でヒゲ親父が何か考えている。

「ああ、そういえば物凄く頑丈な奴が居ますぜ、片手剣ですがね。
 値段も新金貨で50もあれば十分でさあ」
「いいじゃない。」
「ただ、少々素行に問題がありまして。」
「素行……?」

 突然、奥に積まれていた剣の山から低い男の声がした。
「何が素行に問題ありだ馬鹿親父!おめえと比べたら清廉潔白もいいとこだぜ!」

「やい!デル公!黙ってろって言ったろうが!
せっかくてめえを売り込んでやろうと思ったのによ!」
「デル公って呼ぶなっつーたろう!デルフリンガー様と呼べ!」

「へえ、インテリジェンスソードじゃない。口は悪いけど。」
 ルイズは妙に興味が湧いた。
「こいつの喋る以外の能力って何?」

「強いて言えば、硬いことですねえ。切れ味は悪いですが。」
「どのぐらい?」
「頑丈さだけなら、ここにある何よりも上でさあ。」
 嘘は言ってない。あの外見と罵詈雑言がなきゃ業物で通るだろう、と店主は思う。
 もっとも、その欠点のおかげで数十年売れてないのだが……
「よさそうね、セッコ。ちょっとあの声の主を拾ってきて。」
「うん。」

「本人を無視して勝手に話を進めるなバカヤロー!使い手は自分で選ぶぜ!」
「黙ってろデル公、また話がこじれるだろうが!」

「うわっ変態!俺を掴むな!おめえなんかに使われてたま……ん?
 おでれーた!てめ、[使い手]じゃねえか!」
 セッコは思った。この五月蝿さはともかく、持ち易いし丈夫そうだ、と。

「サビてるわね。」
「ええ、サビてはいます。」
「今にも崩れそうに見えるんだけど。」
「「そんなことはねえ」」
 セッコと剣の声が重なった。
「そうかしら。」
 素手でワルキューレの腕を捻じ切ったセッコが言うならそうなのかもしれない。

 そうだ、いいことを思いついたわ。
「セッコ」
「何だ」
「その剣を、えーとデルフリンガーだっけ?思い切り殴ってみなさい」
「ちょおまやめ」
 剣が何か言っているけど気にしない。
「……わかった。」
 セッコが剣を机に置き、思い切り腕を振り下ろす。

 ドッボオォォ

「UGYAAAAAAAAAAAA!」

 物凄い音と聞くに堪えない叫び声がして、金属でできた机が凹む。しかし、剣は汚い叫びを上げはしたが無傷だった。
 刃を横から叩くなんてことをしたら、普通の人がやっても折れて当たり前だ。
 しかしこいつは……あのセッコに机が凹む勢いでぶん殴られても、曲がってすらいないのだ。
 これはきっととんでもない掘り出し物に違いない。

「これに決めたわ。サビは見逃してあげる。新金貨50でいいのよね?」
「へえ、ありがとうございます。ところでですね。」
「何よ」
「あの……机の修理代を……できればでいいんでがすが……」
 店主は泣きそうな顔で縮こまっている。正直哀れだ。
「いくらよ」
「新金貨20……」
 ヒゲ親父はデルフリンガーを凄い勢いで振り回すセッコをちらりと見て、更に怯えた表情になった。
 セッコにしてみれば、新しい玩具が手に入ったから遊んでいる、
 その程度なのだろう。しかしこの状況ではほとんど脅迫といっていい。
「いや、15でいいでさあ。」
 ちょっと哀れかもしれない。
 それにこの剣はなかなか使えそう。もう少し払ってやってもいいわね。
「わかったわ。合計65枚ね。」
 ヒゲ親父の顔がぱっと輝いた。
「へい!まいどありい! あと、もしあまりにもこいつが五月蝿いようなら、
 鞘に入れれば大人しくなりますぜ。鞘はサービスでさあ。」

……普通鞘は最初から剣についてるもんじゃないのかしら?まあいいけど。
 デルフリンガーを振り回すのを止めさせ、鞘に突っ込む。
 何か言いかけたけど、とりあえず無視が一番ね。
 勝手に出てこないように厳重に紐で縛ってからセッコに持たせた。
 おそらくセッコが使う分には、抜き身でも鞘に入ってても変わらない。
 それに、このインテリジェンスソードはずいぶん性格が悪そうだ。付き合ってられないわ。

「学院に帰るわよ、セッコ」
「待て、飴一缶。」
 すっかり忘れてた。危ない危ない。
「そういえばそうね。菓子屋に寄ってからタバサを探しましょ。」
 飴って砂糖を沢山使うから高いのよね。クッキーとかじゃあダメなのかしら?
 ま、約束しちゃったものは仕方ないか。あ、菓子屋ってどこだっけ。



 その頃、武器屋の店主は満面の笑顔でルイズたちを見送っていた。
 デル公の厄介払いも素晴らしいが、せしめた机の修理代のおかげで笑いが止まらない。
 鍛冶である己の技術をもってすれば、この程度の修理朝飯前である。
 今日はもう休みにし、ゆっくり酒でも飲もう。どうせ客はめったに来ないのだ。



 飴を買って最初に降りたところまで戻ると、既にドラゴンとタバサが待っていた。
 セッコは後ろで買ってやった飴をバリバリと噛み砕き食べている。
 飴は舐める物じゃないのかしら?まあいいけど。

「ありがとう、タバサ。待っていてくれたのね。」
「待ったのはシルフィード。」
「きゅい!」
「似たようなものよ。とりあえず帰りましょ。」
 それにしても、キュルケのサラマンダーもあれだけど、風竜の使い魔とか、それに輪を掛けてうらやましすぎるわ。セッコが悪いとは言わないけど。

「きゃあああああ!」
 突然シルフィードが急降下した。何、何なの?

「よぉーしよしよしよし!」
「きゅい!きゅい!」
 セッコがシルフィードの頭をなでている。
 その瞬間わたしは理解した……飴を投げて空中キャッチさせたのね。
「セッコ」
「シルフィード」
「「やめなさい。」」

「「……」」
 一人と一匹が何が悪いのか理解できない といった表情でこっちを見る。
 セッコを呼び出してから初めて、本気でぶん殴りたくなった。
 ここが空中なのを思い出し、何とか抑える。ちらりとタバサを見る。
 なんだか心が通じ合った気がしたわ。きっと気のせいじゃない。

 風竜は速い。あっという間に馬を停めていた学院入口に到着する。
「今日はありがとう、助かったわ。これからもよろしく。」
「ちょっとした偶然。」
 なんかわたし達を追ってきたように見えたけど気のせいよね。
 気のせいということにしとこう。

「3個やる、3個!」
「きゅいきゅいきゅい!」

「「……」」

「セッコ、帰るわよ」
「……わかった。」



 ルイズが去っていった後、本を読みつつ今日のことに付いて考える。
 使い魔同士なんだか仲良くしているな、程度に思っていた。
 とはいえ、シルフィードがセッコにあそこまで餌付けされているとは、想定の範囲外もいいとこだ。
 やはり教育不足?まあそれは追っ付け叩き込めばいい。
 それにしても……結局セッコの謎については全く不明のままだ。
 かなり慎重に観察したのに。それも近くで。
 もしかしてルイズが能力を隠させているのか?私のように。
 それとも、記憶が?
 たしかキュルケはルイズと部屋が隣同士だったはず。暇な時に調べてもらおう。




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