マジェントは訳も分からないまま、砂糖喰らいのバーサーカー・
シュガーの砂糖変換『シュガーアタック』を受けていた。
周辺は、砂煙……にしては白煙の濃い。危険な『砂糖』の白煙に満たされている。
どういう災難だ! と文句垂れようにも、マジェントは思わず咳こむ。
困惑するマジェントに、穏やかで人の良さそうな青年の声が呼びかけた。
「まさか聖杯戦争で再会できるとは思わなかったぜ、マジェント」
「ディ………『Dio』!?」
飄々とした装いでマジェントに近づくのは、本物の『Dio』だ。
マジェントの知る、騎手の姿をした。
反射的に銃口を『Dio』に向けてしまうが不思議と、マジェントは謎めいた不安を抱く。
自分は『Dio』を撃とうとしている……そうだ! 自分を見捨てた相手だ。例え、過去に助けられたとしても。
暗い川底から自分を助けなかった以上、奴は救世主ではない。
すると――『Dio』は立ち止まり
「俺を撃つのか。撃ちたいんだな、マジェント」
「………………」
威勢良くマジェントが引き金をひきたい衝動が霧散してしまう。
眼前に居る『Dio』は、何でだろうか。撃って良いのか。いや、撃っていい筈だ。
マジェントは、自分が酷く混乱しているのを自覚している。
対して『Dio』は静かに告げた。
「撃っていい。お前は俺を撃つ『権利』があるんだ。……最期に俺の弁解を聞いてくれないか?」
「あ……ああ……」
困惑気味にマジェントが返事をし、『Dio』は無表情ながら淡々と語る。
「俺は、お前が死んだとばかり思っていたんだ。
連絡が取れなくなって、お前は大統領に始末されたと軽率に判断してしまった。
まだ川底に沈んだまま生きていたなんて……本当にすまなかった、マジェント」
「…………………………………………」
「川底に沈んだと知っていれば『必ず』お前を助けたさ。――『氷の海峡』の時と同じように」
「Dio……」
「ああ、これで俺の話は終わりだ。もう撃っていいぜ、マジェント。
俺は聖杯なんか興味がない、せめてお前に聖杯を勝ち取って欲しいと願う」
――――Dioが、俺に謝ってくれた?
マジェントはポカンと目を丸くさせ、これは夢じゃあないかと疑ってしまう。
『あの』Dioが謝罪なんて、ましてや聖杯を譲るなど、自分に対して言ってきたのか?
疑念は少なからずあったものの。
確かにと納得する部分が幾つかあった。
Dioは果たしてマジェントが沈み、動けなくなったと把握できただろうか。
知らなければ、助けようもできないし。
連絡が途絶えれば、マジェントは死んだものと勘違いするのも頷けた。
気付けばマジェントは銃を下げていた。
「撃つ訳ないだろッ。偽物じゃあねぇかって疑っちまったんだ、へへ」
「そうだったのか」
「ああ、そーさ! なんたって俺達は『運命の糸』で結ばれているからな。同じ聖杯戦争で巡り合えたんだぜ、運命だろ!」
「運命か。成程……確かに『運命』かもな」
あのDioがにこやかにマジェントの意見に賛同してくれた。
無性に、マジェントも嬉しく感じてしまう。
ところで―――Dioが、どこからともなく拳銃を取り出しマジェントの頭に向ける。
「『裏切り者』は―――お前だよ。
スティーブン・スティールを調査しろ。俺の『命令』を完遂出来なかった時点で、お前はもう用済みだ。
分かるな? 『裏切り者』がどうなるか」
引き金に指をかける悪魔めいた笑みを描くDioの表情が、ベッタリとマジェントの脳裏にこびりついた。
★
レミリアのスペルカード。
セイヴァーが意気揚々と回避をしたが、共に居た沙々といろはの二人は迅速な反応を起こせないのは当然のこと。
ましてや、戦闘能力が劣る沙々に関しては攻撃を対処するのも困難を極めた。
「沙々ちゃん!」
飛び出したのは、いろはだった。沙々には彼女が居る。
洗脳状態にあるいろはが、親友と認知する沙々の盾となって前に立つ。
クロスボウの矢で弾幕を打ち消そうと奮闘するが、無理があった。
対して沙々はどうする?と必死に薄っぺらい知恵をフル回転させるが、一刻過ぎるたびに弾幕が拡散していき。
周囲に圧をかけ、彼女達の逃げ道を封じて行く。
もはや絶望に満ちた瞬間、屋上にポッカリ開いた穴を発見する。
あの穴は先ほど無かったはず。だけど、沙々は最早猶予がない状況にとやかく文句をぶつける訳にはいかなかった。
弾幕を運良く避け、沙々は迷わず穴へ飛び込む。
ただ、魔法少女の変身が解けた沙々の体。ただの人間でしかない少女が、ビルの下の階層へ落下する衝撃に耐えられるか?
勿論だが『無理』だ。
落下した下の階層は会議室らしく、テーブルが設置されていたものの。
そのテーブルに真っ逆さまに落ちた沙々は、思わず叫ぶ。
「いっ、―――――だぁ!」
頭も、体も強打し、すぐに起き上がれず、しばらくの間はテーブルをベッドのように寝伏した状態が続く。
やっと起き上がった時。
沙々はブツブツと呪詛を吐くように独り言を口にする。
「……わ……わたし………セイヴァーに、あのセイヴァーに洗脳させられた……!? ふ、ふざけんな……ふざけるなッ!」
沙々が魔法少女として叶え、手にした力は『自分より優れた者を従わせる』こと。
……しかしながら。
沙々の『自分より優れた』という無意識な言葉でも分かる通り。
彼女自身、優れた人間ではないと自覚している。
セイヴァーは紛れもなく、英霊の実力を差し引いても沙々より優れている筈。
故に、セイヴァーに『従わされてた』屈辱は彼女のプライドに傷をつけた。
頭脳明晰、魅力的な美貌、カリスマ性……セイヴァーは、沙々の嫌悪するタイプを全てつぎ込んだ良い例である。
少なめの脳みそで思いついたアイディアに我を返った沙々は、上機嫌だった。
「セイヴァーのマスターなら従わせられる! あの馬鹿がベラベラ喋って好都合でしたねぇ!!」
実際の戦闘能力で果たして沙々よりも劣る魔法少女がいるだろうか?
少なくとも、魔法少女たる暁美ほむらならば! 必ず沙々は従わせられる。
冷静に判断出来ぬほど、沙々の思考回路は劣った状態だった。
例えば――沙々が逃走に利用した『穴』の正体など。
「私が……なんだって?」
第三者の一声。
ヒッと悲鳴を漏らす沙々が、恐る恐る振り返る。
優雅にテーブルで腰かける救世主の姿と、彼の手の中で弄ばれ続けている沙々のソウルジェム。
まだ、呪いに帯びた色彩の宝石に、沙々の背中に冷や汗が湧きあがったのを実感した。
「あ……ああ、せ、セイヴァーさ……その…………」
どう弁解すればいいのか。
元より、ソウルジェムなしでは現在のいろはの洗脳が解けなくとも、再び洗脳をかけ直すことも。
セイヴァーの手中に存在する以上、彼が沙々の生死を握っているに等しい。
「ご、ごめんなさい。本当に……本当に、ごめんなさい。私を助けて下さい、お願いします………」
震える声で、涙目の沙々が静かな謝罪を申す。
決して、セイヴァーの魅了に影響された類ではなく。心の底から、死にたくないと命乞いしていた。
彼女は救いようもないクズで間違いないが、クズなりに魔女の呪いから脱するべく足掻き。
『運命』に抗う為に、尽くしてきたのである――これでも。
刹那。
室内に一匹の蝙蝠が飛来。ソレはセイヴァーに突撃するべく急加速を行った。
だが、セイヴァーは見向きもせず。手だけをかざす。
セイヴァーを、過去の自分が『悪意』を以て攻撃しろとサーヴァントに命令したのならば。
いいや、過去の自分ならば必ずや『そうする』と確信を得て。
悪の因果宝具を発動させれば、蝙蝠はスルリとセイヴァーに吸収された。
レミリアの『サーバントフライヤー』を無力化するだけではなく、彼女の魔力たるソレを吸収したことで。
悪以外にも魔力を補えてしまう。
沙々が呆然と、異端の光景を眺め続ければ。
やっと事でセイヴァーは、沙々に見向きをしながら問いかけた。
「私に救いを乞うということは――君は自ら『悪』であると認めるのかな」
「……は………はい」
おずおず答えた沙々を僅かに眺めた後。物のついでの様に一つ、彼女に命じるセイヴァー。
「なら彼女は君が運ぶといい」
「え? ――――えっ」
沙々がセイヴァーの視線を追って、思わず驚愕の声を漏らした。
レミリアの弾幕を受けきれなかったのだろう。ボロボロになったいろはが気絶した状態で床に転がっている。
ではない!
『いつの間に』……一体『いつ』から、いろはがそこで放置されていた?
セイヴァーの仕業?
否! 例え彼の仕業だとしても『どうやって』いろはを―――沙々が気付かぬ間に会議室へ連れてきた?
彼の宝具……??
沙々がセイヴァーの能力の片鱗に畏怖する中。当のセイヴァーが無言で会議室から出ようする。
慌てて沙々は彼を追うしかない。
起こす暇がないから、沙々が気絶状態のいろはを背負う。
勝手に進みつつ、救世主は些細な独り言を語って行く。最中でも呪い色のソウルジェムは手元で転がし続けている。
「私の記憶が正しければ、この近くに『
鹿目まどか』の家があってね」
「え、えっとぉ……誰でしょうか…」
「ホムラの親友にあたる少女さ。まだ直接会ってはいない」
「あ、わかりました! 私が鹿目まどかを洗脳すればいいんですね!」
「…………」
「い……いいん、です……よね………?」
セイヴァーの鋭い視線は、沙々ではなく別の物に向けられていた。
彼も、まだ攻撃をしかけた幼き吸血鬼の気配を探っている。無論その吸血鬼と語り合いたい願望はあった。
けれど、彼女には金魚のフン染みた『余計な物』が付きまとう。
過去の自分が、どうして聖杯戦争にいるかは興味はある。
しかし、過去の自分そのものには興味は無い。
何故なら結局ソレは『自分』なのだから掘り下げようもない。自分の事は自分が一番分かっているのだから。
呪い帯びたソウルジェムへ視線を戻すセイヴァー。
いつ魔女が孵っても変でない状態が、常に維持し続けているのはセイヴァーの手元にあるからだ。
手中に収まっている以上。
沙々の『悪』はセイヴァーの掌でコントロールされた。
逆を言えば。
セイヴァーの手から離れれば、その瞬間に沙々は魔女へと変貌する。
「………」
沙々は事の重大さを知った。
故に、彼女は無視と無関心をするセイヴァーに対し、変な話『安心』を抱いてしまう。
一言で表すなら「コイツはヤバイ」である。
冗談じゃあなく、沙々も以前まで彼を、自分の嫌いな典型的な『優れた者』だと勘違いしていた。
実際は違う。
セイヴァーは『悪』だ。
学校や会社なんて平凡でありきたりな日常の地位で、猿山の大将を気取る人間ではない。
否、あれらと比べる方が良くないほどの『悪』だ。
沙々は思う。嗚呼、自分はなんて『平凡な世界』で生きていたのだろうか。と
セイヴァーは、沙々を馬鹿にし、侮辱している訳でなく。心底どうでもいいのだ。
生きている存在とすら認識されて無い。強いて、喋れるロボットとして片隅に放置され忘れ去られる運命にある。
無視してくれるなら良い。
残念だが、セイヴァーの手にソウルジェムが握られている以上。
嫌でも関わらなくては……沙々は、それが嫌で仕方なかった。もうセイヴァーとは言葉も交わしたくない。
コイツは私を助けてくれない。救ってくれない。
救うどころか、使い潰すつもりなんだ。
魔女に、まさか本当に魔女にさせられてしまうんじゃ…………違う。本気でやるつもりだ。
彼女が出来る事は一つ。藁を掴む思いで、セイヴァーの後をついていく。
沙々の中で焦りと、セイヴァーへと恐怖が着実に積っていった。
そして……
沙々は忘れていた。
自分が転倒の強い衝撃を受けてしまった事で、いろはの洗脳が解除されたことを。
【C-3 住宅街/月曜日 未明】
【セイヴァー(
DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(回復)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
優木沙々のソウルジェム(穢れ:極大)
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得と天国へ到達する方法の精査
0.鹿目まどかの家へ向かってみる
1.他サーヴァントとの接触を試みる
2.『時の神』は優先的に始末したい
3.『悪』の回収。暁美ほむらをあえて絶望させる?
4.再び
ナーサリー・ライムの固有結界に侵入する。
5.頃合いを見て沙々を『魔女』にする。
6.どこかでレミリアと話がしたい。マスター(ディオ)が邪魔。
[備考]
※ナーサリー・ライムの固有結界を捕捉しました。
※『時の神』(杳馬)の監視や能力を感じ取っています。時の加速を抑え込んでいる事には気付いていません。
※自らの討伐令を把握していません。
※ウワサに対し『直感』で関心ある存在が複数います。
※過去の自分(マスターのディオ)には関心がありません。
※ランサー(レミリア)の存在を把握しました。
※沙々に関しては救う価値がないと見なしています。
※沙々のソウルジェムは、DIOの宝具で魔女化せずに保っています。彼の手から離れれば、魔女が孵ります。
【優木沙々@魔法少女おりこ☆マギカ~symmetry diamond~】
[状態]健康、『悪の救世主』の影響あり(畏怖の意味で)、いろはを背負ってる
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]一人くらし出来る程度
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い
1.セイヴァーはヤバイ奴。どうにか逃げ出したい。
2.でも、ソウルジェムの浄化はどうしたら……
3.見滝原中学には通学予定。混戦での勝ち逃げ狙い。
[備考]
※シュガーのステータスを把握しました。
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
※ほむらの友人である鹿目まどかの存在を知りました。
※いろはの洗脳が解除されたことに気づいていません。
【
環いろは@マギアレコード】
[状態]魔法少女に変身中、肉体ダメージ(大)、気絶
[令呪]残り1画
[ソウルジェム]有
[装備]いろはのソウルジェム(穢れ:なし)
[道具]
[所持金]おこづかい程度(数万)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の調査。戦いは避ける。
1.沙々と共に行動する……?
2.セイヴァーは危険だと判断
[備考]
※沙々がダメージを受けた事で洗脳は解除されます。
※『魔女』の正体を知りました
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
★
甲高い女性の笑い声が響く。
一瞬にしてレミリアに抱えられ、現場より離れたディオは彼女に降ろせと叫ぼうとした矢先。
『砂糖』の爆発で白煙塗れとなった場所。
ついさっきまで、ディオ達が居た方向よりパン!と破裂音が聞こえた。
音は、ディオに恨みがあると吠えたてていたアサシンの拳銃のもの。
そして、アサシンは? 俄かに信じられないのが、ディオはハッキリ目にした。
アサシンは、謎めいた奇声を上げ、拳銃を乱射し始めた。
誰も居ない場所ばかり狙って、どう見ても正常ではなかった。
「やはりな。『逃げ』が正解だったのよ、ディオ。あの『砂糖』が、幻覚か錯乱を引き起こしているんだわ」
爆発はダメージだけではない。
煙にも幻覚や錯乱、他にも麻痺などの効力が含まれたりする。
アサシンは、何らかの幻覚と錯乱状態に陥っていた。
理屈は分かった。
けど、ディオの中で腑に落ちない苛立ちがフツフツと湧くのを覚える。
例の神父? セイヴァーを取り逃がしたせいか?
ディオの疑問が解消される前に、白煙より不気味なおかっぱ頭の女性が不規則な足取りで現れる。
『砂糖』で酔っているせいか。支離滅裂な言葉を吐かず、ケラケラと笑うばかり。
思考が読みとれぬ態度が、一層不安を駆り立てた。
レミリアは適当な距離を取ったところで、ディオを降ろし、再びスペルカード発動の構えを見せた。
「生憎だけど、流石に貴方を庇って戦闘は続けられないわ。
貴方は自分の『直感』を信じてセイヴァーを避けて、ここから離れるの。分かった?」
「ランサー……ああ、わかったよ。分かったが、僕を舐めた態度は二度とするんじゃあないぞ」
ちょっとばかり、小物っぽい捨て台詞を吐いて踵を返そうとするディオ。
対し、レミリアは紅い悪魔らしい笑いを零した。
「それでいいのよ、ディオ」
―――………なにがあろうと気高く、誇り高く生きるのよ。
―――そうすればきっと、天国に行けるわ。
何故かディオは、凄まじい勢いで振り返った。そこに居たのは、まさか!?
期待を抱いていたのだろうか。
先に居るのは、他でもない。彼のサーヴァント・レミリアだけである。
ディオは自棄に決死の様子で、呼吸を整えようと頭をかかえた。
そうだ、もう母さんは死んだんだ! どこにもいない! だが今のは……
どうしてだ? レミリアの言いまわしが『母』を彷彿させたのだろうか。
彼女は、確かに聖杯戦争に関する『教え』をディオの母の如く伝授しているものの。
ディオにもソレが愛想も含まれてない。世辞に過ぎないと分かる。
分かるが………まさか、アサシンと同じ『幻覚』が?
ディオが嫌な予感を覚えた傍ら、再び爆風が巻き起こる。
どうやら、あのバーサーカーは無差別に『砂糖』を攻撃手段に使用している。
『砂糖』の白煙にディオが引っ掛かけない為、再びレミリアは彼を抱えるしかない。
しかし、次は光弾とナイフを組み合わせた即席の弾幕を、バーサーカーに投擲する。
果たして命中したか?
バーサーカーは腕に『仮面』を結び付けており、弾幕の盾として利用。
破壊されても『砂糖』で意図も容易く再生し続けていた。
レミリアは弾幕という遠距離攻撃手段を持っているが。
一番の難点は、マスター・ディオの存在。彼が先ほど提案した通り、自力で逃走できればいいが簡単にいかない。
今度は、遠方の『砂糖』が攻撃に変貌したらしく。流石に住人の声が聞こえ始める。
いよいよ人目もつき始めた。
そして―――セイヴァー。
砂糖喰らいのバーサーカーを完全に無視するなど、心底関心がない訳だ。
逆に、バーサーカーより『優先順位』の高いアテへ目指している可能性もある。
「おい……おい! ランサー、もう降ろせ!!」
相変わらず、高慢な態度で命じる少年。
だと、レミリアは一蹴しかけたが、声色から違和感を覚え、チラリとディオの顔を伺えば。
顔を手で覆い、わなわなと体を震わせている。
明らかな異変を露わにし、眉をひそめレミリアが少年の様子を伺う。
「ちょっと、ディオ?」
「ぼくを呼ぶな!! そうだ! ずっとその態度がッ『そういう態度』が嫌で仕方なかったんだよ!!」
「あのね。口喧嘩している場合じゃないのよ、ディオ。分かってる?」
「ぼくに優しくするな!!!」
「…………は?」
レミリアは、自分の妹並にディオが正常でないと察した。
どう考えたって。少なくとも、レミリアはディオに『優しく』したつもりはない。
気使いよりも、右も左も分からぬ子供を仕方なく誘導してやってる程度だ。
再び発砲音。
向こうで銃を乱射するアサシンは、幸いにもディオ達の方に近付いて行く様子はない。
とは言え。状況が些か厄介極まりないし、好転している訳じゃあなかった。
最低限、錯乱状態のアサシンからは距離を取らなければならない。
本当のところ。レミリアは素直に『撤退』を提案したかった。
ディオの気がおかしいのは幻覚か、神父のライダーから途方もない未来の情報を与えられた影響もありえる。
割と短期間で、未来の自分という予想外の存在を前にし、精神が不安定なのかもしれない。
が。
あのディオが退くなどありえない。
「ぼくはおかしくない!」と如何にも気の触れた狂人が吐きそうな台詞を述べそうだった。
まぁ、レミリアの妹よりも気は触れてない。
だけど絶対に提案は飲まない。むしろ逆で―――
「セイヴァーが近くにいる! 奴だけは確実に仕留めろ、ランサー!!」
レミリアが想像した通りの威勢を吐くディオに、彼女はいよいよ低い声色で告げた。
「少しいいか。『マスター』」
彼女は安全位置たる空中へ飛翔し、片腕でディオを掴み上げ、片手より真紅に発光した槍を無数に出現させる。
レミリアが決断したのは。
撤退でも、戦闘続行でもない。明快なトドメを刺す事!
―――――『鮮血翔る紅魔の神槍(スピア・ザ・グングニル)』――――
対軍宝具たる魔力で形成された槍の雨。
必殺必中の対人verよりも劣り、運命次第で必中効力や標的を捕捉し続ける追尾機能は健在していた。
現に。
バーサーカーは再び『仮面』で受けきろうとするが、無数に攻撃『し続ける』槍の軌道に
『仮面』の再生が追いつけなくなっている。彼女の肉体を、心臓(霊核)には至らないが槍が複数刺さった。
彼女は、咄嗟に地面――アスファルトで舗装された部分に手をかけ『砂糖』を量産。
「はっ――削り切ってやるわ!」
自らの魔力でもある槍の起動操作を運命頼りではなく、自らで行うレミリア。
白煙より顕わになったバーサーカーに拡散し、ついでにアサシンも狙っていただろう槍も一点集中させる。
レミリアが空中に居る時点、それだけで彼女に不利だった。
強いて、彼女が出来るのは―――
バーサーカーはなるべく高く『砂糖』を投げあげ、爆発させていく。
無論、レミリアには攻撃は届かない。届くとすれば『砂糖』が攻撃で消耗したことにより発生する『白煙』。
彼女が狙ったか定かじゃあない。
狂戦士に劣る本物の『狂人』が行う攻撃なのだから。
レミリアは宝具を発動したまま、飛翔したまま後退していき『砂糖』の白煙から距離を取る。
やがてバーサーカーの攻撃は止んで。静寂が広まると、彼方より野次馬のざわめきとサイレン音が響いた。
確認の為、レミリアはディオの方を伺う。
ディオは―――情けない事に気絶していた。
最も、これが彼女の狙った一つに含まれている。
膨大に魔力を消費し、ディオに負担をかければ急激な悪化により、気絶ないし行動不能になる筈と踏んだ。
レミリアは、狙った事なので格別ディオに呼びかけず、彼の懐にある『ソウルジェム』を取り出す。
ソウルジェムは無色透明だった。
(あの三下も生き延びたのか? 運が良いのか、悪いのやら)
そして、まだバーサーカーも消滅してない。
レミリアが霊体化していると踏み、軽く一体に弾幕をばらまくが――やはり駄目。ソウルジェムも無色のまま。
バーサーカーが『ソウルジェム』を持っていれば、アサシンの魂がそちらに移った可能性もある。
けど、バーサーカーに魂の回収を任せるかと問われれば難しい。
『ソウルジェム』。
レミリアは思い出した。
気絶したディオを抱え、騒がしい現場から離れながら。
セイヴァー。つまるところ『未来のディオ』がレミリアのスペルカードを見切っていた屋上の光景。
彼の手に『ソウルジェム』があり。それは、色彩が付与されていたような……
実際は戦闘に集中し、レミリアも流石に曖昧だが。
(奴が……もう一騎倒したなら、私たちも悠長にいられないわね………)
もう夜明けが近い。
レミリアの活動限界時間。それは、セイヴァーも同じ。残された時間内で、あとどれほどやり切れるか……
★
「今回はおっきくて、怖いコウモリちゃんの勝ち」
「うーん……冷え過ぎ」
「私、眠くなっちゃった」
【C-3 住宅街/月曜日 未明】
【
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(大)、怒り(中)、錯乱(軽度)、気絶
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]数万円
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、天国へ行く。
1.セイヴァー(DIO)とライダー(プッチ)はどんな手を使ってでも殺す。そいつらに味方する奴も殺す
2.他の参加者と接触したら、ライダー(プッチ)の知っている情報をばら撒く。
3.レミリアの態度が気に入らない……
[備考]
※ライダー(プッチ)のステータスを確認しました。
※ライダー(プッチ)の真名を知りました。
※自身の未来(吸血鬼になる事、スタンド『ザ・ワールド』、ジョースターとの因縁)について知りました。
※アサシン(マジェント)とバーサーカー(シュガー)のステータスを把握しました
※セイヴァーに関しては完全な視認をしてない為、ステータスは分かりません
※バーサーカー(シュガー)の砂糖により錯乱状態ですが、時間経過で落ち着きます
【ランサー(
レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]魔力消費(中)
[ソウルジェム]有
[装備]スペルカード
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの運命を見定める
0.この場から離れる
1.ライダー(プッチ)の言う『天国』は気に入らないので阻止する。
2.セイヴァーに対抗するには……
[備考]
※ライダー(プッチ)の真名を知りました。
※ディオの未来(ディオが吸血鬼になる事、スタンド『ザ・ワールド』、ジョースターとの因縁)について知りました。
※現在、ディオが正常ではないと思っています
※バーサーカー(シュガー)とアサシン(マジェント)が消滅してないと判断しました
※セイヴァー(DIO)のソウルジェムに色があったと思っています。
実際、彼女が見たのは沙々のソウルジェムです。
【バーサーカー(シュガー)@OFF】
[状態]肉体ダメージ(大)、魔力消費(大)
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:砂糖を食べる
0.しばらく、おやすみする
1.本物のいろはを探す
[備考]
※時の神(杳馬)の存在を気付いているか言動的には怪しいです
※洗脳されているいろはを『本物』ではないと判断しています。
※無意識に令呪に従っている状態です。本人はまだ令呪の支配下にある事に気づいてません。
※怖いコウモリちゃん(レミリア)を記憶し続けられるかは、怪しいです。
※令呪『見るもの全てを砂糖にして下さい』(2画分)で得られる魔力は、消費しました。
★
―――助けて貰いたかった。それが事実だろう。
マジェントはデラウェア河の底で身動きが取れなくなり、成す術を失った末。
きっと『Dio』が助けに現れてくれると、信じていた。
氷の海峡でもそうだった。あそこに偶然『Dio』が通りかかって、マジェントに手を差し伸べなかったら……
紛れもなく。
『Dio』は
マジェント・マジェントにとっての『救世主』である。
そして――『救世主』に対し銃を乱射していた。
『どうした? マジェント。俺はお前を「助け」に来たんだぜ。何故、攻撃をする?』
『まあ、その前に「任務失敗」の罪を償って貰うが』
「うおぉおおぉっ、俺の傍に近寄るんじゃねぇ――――!!!」
しっかり『Dio』に銃口を定めている筈なのに!
マジェントがいくら『Dio』を撃ち尽くしても彼が倒れる事は無く、一層不敵で邪悪な笑みを浮かべているのだ。
当然だ。
彼の知る男は、サーヴァントは存在しない。ディエゴ・ブランドー……『Dio』は、そこにはいない。
バーサーカーの砂糖により、マジェントは錯乱状態にある。
彼が望んだ『幸福』が入り混じった支離滅裂な幻覚で惑わされ続けていた。
マジェントは落ち着きを取り戻す頃。
彼の中には、ディエゴに助けられたい願望やディエゴに復讐する恨みも消えており。
金輪際、関わりたくないという『恐怖』『畏怖』に近い感情が渦巻く。
「ハァ……ハァ……! Dio!? 逃げたんだなッ!!? もう二度と俺の前に現れるんじゃあねぇ!」
拳銃を片手に周囲を警戒して、彼が安堵を獲得しようとした矢先。
レミリアの宝具。
紅の槍による無数の拡散攻撃が襲いかかる。マジェントは『巻き込まれた』形に近い。
不運にも『運命を操る程度』の能力により必中攻撃が、的確にマジェントに一撃貫かれた。
だが、彼はタダで死なない。
宝具『死に損ないの虫螻(ボーン・トゥ・ブギー)』で確実な生存を保て、そして『仕切り直し(偽)』で離脱。
傷だらけの、相当な負傷状態ではあったが、一死報いるべく惨たらしく生にしがみ付く、
とはいえ満身創痍である。
何より、復讐心を打ちのめされた愚か者は、果たして立ちあがれるのだろうか……
【C-3 住宅街/月曜日 未明】
【アサシン(マジェント・マジェント)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(中)、肉体ダメージ(極大)、錯乱(中)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い。ディエゴの殺害優先?
0.今は戦線離脱を優先
1.???
2.二度と来るんじゃねぇ――! Dio!!
3.まだDioに似てる奴がいる!? 昔のDio!!?
[備考]
※Dioに似たマスター(ディオ)とそのサーヴァント(レミリア)を把握しました。
※バーサーカー(シュガー)の砂糖により錯乱状態ですが、時間経過で落ち着きます
最終更新:2018年08月02日 17:47