「へ、へへッ。今度こそやったぜDio!」

銃声の方角へと皆が視線を向ける。
その先に立つのは、銃を構え下卑た笑みを浮かべたアサシン、マジェント・マジェント
如何にもなチンピラ同然のサーヴァントがあのDIOを撃った。その事実に、一同は息を呑む他なかった。

「やっちまえ、イロハ!」

彼の背後から、魔法少女の姿に変身したいろはが飛び出しDIOへと駆ける。
が、既に跳躍していたさやかがそのままいろはとDIOの間に着地し、いろはは思わず動きを止める。

その刹那。そう、まさに刹那だ。

今しがた頭部を撃たれた筈のDIOは既にさやかの背後にまでまわっており、彼女の背を蹴り飛ばしいろはへとぶつけ吹き飛ばす。

「て、テメエ!」

慌てて銃を撃つマジェントだが、ロクに狙いも定まっていないため、弾丸は虚空に消えていく。

「クソッ、当たらねえ!」

マジェントが瞬きした瞬間、DIOは距離を詰め、マジェントの首を掴み喉輪をキめる。

「グエッ」
「確かきみとは先ほど会ったな。それに...環いろは
「ガ...」
「マジェントさん!」
「ずいぶんとご挨拶じゃあないか。私たちは正当な取引を交わした仲だというのに」

DIOは己の額に手を当て、スッと指をなぞらせる。すると、銃痕はたちまちに消え、出血も完全に止まった。

「これくらいの傷ならたいしたことはないが」

DIOはマジェントを持つ手を振り上げ、そのまま床に叩きつける。
その際にあがったマジェントの呻きに、DIOはフッと口元を緩めた。

「このくらいの報いは受けねば釣り合わないだろう」
「て、メエ...Dio...!」
「先の戦いでもそうだったが...その憎しみは指名手配からのものではないな。『俺』とどこかで会ったことがあるのか?」

なに言ってやがる、と言い返そうとしたマジェントだが、DIOの双眸を見つめるうちに気がつく。
彼は、なんとなく自分の知るDioとは違う気がする、と。

「Dio...あれ?あれれ?」
「...フンッ」

DIOは、目をパチクリとさせるマジェントをいろはの足元へと投げ捨てた。

「...さて。なにはともあれ、これでこの場の私の敵はサーヴァントが三体、マスターが二名となったわけだが...」

くるり、と踵を返しDIOはほむらへと向き合う。

「多勢に無勢とはよく言ったものだ。流石にこの人数を相手取れば、私とてただではすまないかもしれない。...きみはまだ答えを出さないのか?マスターよ」
「え...?」
「この戦いはきみの背負う少女を巡り起こったものだ。きみが今まで渦中にいなかったのは、その娘の処断を下していなかったからだ。だが、この先も不干渉を貫くのなら、私はきみを救済することは決してないとだけ言っておこう」
「ッ...!」

ほむらは思わず息を呑む。
彼女がDIOの『救済』に信を置いたのは、彼のソウルジェムを浄化する力と魔法少女システムの本質を見破った確かな"眼"を有しているからだ。
だからこそ、危険を感じつつも彼とは敵対しないように振舞い追い詰められたまどかを会わせようともした。
DIOという救世主は、ほむらにとってそれだけの価値があるのだ。

狼狽するほむらを愉しむようにDIOは口角を吊り上げる。

「勿論、守るというのならそれも選択のひとつだ。だが、よく考えるといい。
君の背負うソレは既に魔法少女だ。仮にきみが聖杯を手にしたとて、鹿目まどかが魔法少女である限り同じことの繰り返しになるだろう。
聖杯を手に入れずそのままもとの世界に帰還してもそうだ。彼女が契約している以上、やはりきみは針を戻すほかない。
君の願った"普通の日常"を遠ざける者をなぜそこまでして守る必要がある?」

ズキリ、ズキリとほむらの心臓が締め付けられる。
DIOの言うことは間違っていない。
いくらこのまどかが友好的に接してくれたとしても、彼女が魔法少女である以上は『約束』を果たすことができない。
魔法少女となった以上、もとの身体に戻す方法は、誰かがキュゥべえにそう願うか、聖杯に願うかしかない。
だが、誰かの犠牲の上で身体を戻したところで、心優しい彼女が受け入れるはずがない。
どのような道を辿るとしても、このまどかとは別れなければならないのだ。

「不要ならばソウルジェムを砕いて殺せばいい。殺すのが嫌なら彼女が魔女になるのを待ち、殺してグリーフシードを手に入れればいい。
マスター...いや、暁美ほむら。聞かせてもらおうか。きみは願いの過程でなにを選ぶ?」

DIOの問いかけを合図にするかのように、一同の視線がほむらに注がれる。

まどかを守ろうとする篤とさやかも。
邪悪の意思に唆されつつある少女を警戒するマルタも。
状況を把握しきれずとも、答えの如何によってほむらの立ち位置が変わることを察しているいろはとマジェントも。

皆、戦いの手を止めてほむらの答えを待ち受けている。

沈黙が、下水道に舞い降りた。

「わ、わたしは...」

やがてほむらは口を開く。
震える身体を押さえきれずに。
意を決し、彼女は口に出した。





「...それがきみの答えか」




ハァ、ハァ、と少女の吐息が漏れる。

DIOの手に指輪が握られている。鹿目まどかのソウルジェムだ。

彼はそれを両掌で優しく包み込み、数秒後に開け、ほむらへと放り渡した。

ほむらの手からは令呪の紋様がひとつ消えていた。

彼女は命じた。DIOにまどかのソウルジェムを浄化するようにと。

(鹿目さんは傷つけさせない...誰が相手でも...!)

結局、彼女は救済への安心よりも、目先のまどかの命を選択したのだ。

「...フンッ」

くるり、と踵を返し、DIOはいろは達のやってきた道へと歩みを進める。

「どこへ行くつもりだ」
「私のマスターの意志は確認できたのだ。これ以上ここにいる意味もない。まだ戦うつもりならば受けて立つが」

篤とさやかは揃って武器を構え臨戦態勢をとる。
殺気を醸し出す二人にもなんら反応も示さないまま、DIOの背中は遠ざかっていく。
来ないならばこちらから仕掛けてやる―――そんな想いで、足に力を込めようとするも、しかしマルタが両者の間に割って入り、ふるふると首を横に振った。

「ランサー。それにさやか。あなた達も傷を負っている。...避けられるべき戦いは避けるべきです」

マルタは先の交戦で確信していた。
篤もさやかも無視しきれない怪我を負っており、現状では、セイヴァーを倒すことはできないと。

彼から発される邪悪なオーラは写真越しに感じたそれ以上のものだった。
まさに邪悪の化身といえる彼と相容れることは決してないだろうとマルタは解を出していた。

(そしてそれはセイヴァー、あなたから見てもそうでしょう。だから、極力私には宝具で対応をしていた)

マルタは聖女だ。光だ。闇からすればそれはそれは鬱陶しい輝きだろう。
触れることすら嫌うのならば、彼から自分へと手を差し伸べることは決してない。

マルタとセイヴァーは、互いに反撥しあうしかないと理解しているからこそ、引くときはあっさりと引けるのだ。

「あ、あの...」

おずおずといろはが四人に話しかける。
DIOと敵対しており、且つそれが気を失っている少女の為であることがわかった為、彼らが自分と同じく好んで聖杯戦争に臨んでいるわけではないといろはは判断した。
その為、情報交換を持ちかけようとしたのだが...

「それ以上近づくな」

当然、初対面である以上、警戒する者はいる。

「ランサー。彼女は敵ではないのでは?」
「味方である証拠もない。さっきセイヴァーは対等な取引をしたと言っていたからな。用件があるならその位置でだ」

ギラリ、と篤の眼鏡の奥の双眸が光り、見据えられたいろはの背筋に寒気が走る。

その敵意は、かつて小さいキュゥべえを庇った際に向けられた七海やちよのものに似ており、その上でより容赦ない殺意も込められているのがヒシヒシと伝ってくる。
いくら英霊とはいえ、如何な戦場を渡ればこのような敵意を放てるようになるというのか。

ごくり、といろはの喉が鳴った。

「おい、イロハ!早くあいつを追わねーと見失っちまうぜ!」

マジェントの声にいろははハッと我にかえる。
そもそも彼らが戦いに乱入したのは、マジェントが強奪してでも沙々のソウルジェムを奪ったほうがいいと考えたからだ。
ここでDIOを見失えば、彼女達の本来の目的を見失うことになる。

「あの、私、環いろは。魔法少女です!見滝原中学に通ってます。私はこんな戦いは止めたいと思ってます。よければ、力を貸してください!」

それだけを言い残すと、いろはは先にDIOを追ったマジェントに続き、この場から走り去っていった。

そんな彼女達を見て、ほむらも動き出す。

(私もいかなくちゃ...)

DIOを失望させてしまった、と彼女は思っている。
別に、DIOからの評価がどうとかいう問題ではない。
問題なのは、彼がほむらへの失望をきっかけにまどかへ害を加えかねないという点だ。

彼はあれほどまどかを捨てるようにほむらへと打診したのだ。
それだけ彼女のことを相容れない存在だと認識したのだろう。
邪悪の体現者である彼を敵にまわせばどれだけ恐ろしいか、想像だにできない。
だからこそ、いまはDIOを追い、できるだけまどかへと関わらせないようにするべきだと彼女は判断した。

「待って」

まどかのソウルジェムを篤に渡し、駆けるほむらをさやかが呼び止めた。
ほむらは足を止め振り返る。

「あんた、セイヴァーを追うつもり?」
「...鹿目さんと彼を会わせてしまった以上、目を離した隙に彼女になにをされるかわかりませんから」
「...あたし、正直、あんたのことはまだ信用し切れてない。あんたがあたしの味方なのかもわからない」

さやかの言葉にほむらの面持ちが沈む。
繰り返してきた時間軸の中では誰からも信用されないのが常だが、やはり何度経験しても堪えるものはあるのだ。

「けど、あんたのまどかを守りたいって気持ちだけは信用できる。じゃなきゃ、あんな顔で令呪なんて使えやしないよ」
「......!」
「まどかを守るよ、あたしたちで」

ほむらは思わず唇を噛み締める。
偽りなく嬉しかった。まどかの友達であるさやかからその言葉をもらえたことが。
まどかを守る存在でいていいと、認められた気がしたから。

「まも、りますっ。絶対に!」

それだけを吐き捨て、ほむらは返答を聞く前に踵を返し走り去る。
彼らにいまの自分の顔を見られたくなかった。
涙が滲み、みっともなく顔を赤らめたこの顔を。

涙の理由は自分にもわかっている。
認められた嬉しさだけじゃない。
自分はあくまでも聖杯を狙う身だ。
戦いを由としない彼らに心まで迎合することはできない。

まどかの一番の友達の美樹さやかを。
怪盗Xやバーサーカーからまどかを守るため戦ってくれた篤を。
事情を知らずともまどかを守ろうとしてくれたマルタを。

もしかしたら、聖杯を手にする過程で斃さなければならないかもしれないからだ。

もちろん、そんなことは避けたいに決まっている。
聖杯はなにも全員を殺さずとも満たすことはできるらしい。ならば、彼らが聖杯戦争からの離脱を完遂しても、自分の願いを叶えることはできる。
だが、やはり彼らを手にかける可能性がある以上、罪悪感や後ろめたさはあるに決まっているのだ。


―――ずいぶん都合がいいのね。


ほむらの足が思わず止まる。
また、なにかが聞こえた気がする。
けれど、周囲には誰もいない。これこそが、罪悪感から生まれた幻聴なのだろうか。

「......」

ほむらは言い知れぬ不安に駆られつつも再びその足を進めた。



あれだけ喧騒に包まれた場も、人が散るのは一瞬だった。

8人もの人数があっという間に4人だ。

取り残されたさやか・篤・マルタは、自分達の持つ情報交換の場を設けていた。

「あのいろはって娘、どう思う?」
「まだ情報が少なすぎる。ただ、セイヴァーと友好的な関係ではないようだ」
「身元を明かしてくれたのですから、一度会ってみるべきでは?」
「まあそうなるよね。まだロクに会話もできてないし」


共闘したこともあり、自然と互いの態度も柔らかくなっていたのはこの戦いにおける貴重な戦果だろう。


いろは達への認識を共有した後、まずはさやかが己の持つ情報を大まかに語った。
まどかの家に向かったが、家は荒れ放題だったこと。
中から数匹の恐竜が飛び出したかと思えば、恐竜使いのライダーが現れたこと。
そのライダーとの交戦中に、ソイツのマスターに刺され、ライダーにも追い詰められ、窮地に陥った時にソウルジェムだけの杏子に助けられたこと。
そして、この下水道でマルタ、そしてほむらと篤に遭遇したこと。

さやかは流れるように篤に質問した。
まどかの家で何があったのかと。
篤の答えに、さやかは驚愕で目を見開いた。


「まどかの家族が怪盗Xに襲われた!?」
「ああ。奴は姿を自在に操る。まどかの弟と親父さんは奴に殺された」
「タッくんとパパさんが...うっ」

あの時、ディエゴが投げつけた『赤い箱』の中身がタツヤか知久のものだという事実に、さやかは吐き気を催した。
アレがまどかの家から出てきた時点で嫌な予感はしていたが、やはり改めて突きつけられるとクるものがある。
罪もない家族を襲撃した外道どもに怒りを覚えつつも、マルタは冷静を保てるよう努めつつ、篤から話を聞く。

「父と弟...母親はどうしたのです?」
「お袋さんも殺されかけたが、まどかの魔法で一命を取り留めた。その後はほむらちゃんが呼んだ救急車に任せた」
「...そっか。まどかが...」

さやかが、未だ眠るまどかの額にそっと触れる。

「...ごめんね、まどか」

家族を殺され、心もズタズタに引き裂かれたであろう友は、それでも遺された者を守ろうと必死に足掻いた。
そんな友の力になれなかった自分を酷く恥じる。
すぐにまどかのもとへと駆けつけなかったのは、聖杯戦争以上に自分の問題だ。
もっと早く決断していれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

「...あなたの所為ではありませんよ」
「でもっ...でも!」
「悪いのはその怪盗です。彼らもあの杏子を襲った恐竜使いと一緒に懲らしめて...」

恐竜使い。自らの言った言葉に、マルタは妙な引っ掛かりをおぼえる。
なにか、大事なことを見落としていないかと。

(まどかの家族は母だけが命を拾い、そして後の処置は救急車に任せた。後からやってきたさやかが、数匹の恐竜とともに恐竜使いのライダーと遭遇した...ッ!)

生き残った母。出てきた数匹の恐竜。現れたライダー。
その三つが繋がったとき、マルタは思わず口走っていた。


「あの下種野郎...!」


さやかはおろか、歴戦の篤でさえ面を食らったほどの怒りの形相は、もはや口が裂けても聖女とはいえないものだった。

「申し訳ありませんが、慰めの言葉をかける時間すら惜しい...すぐにでもあの下種をシメあげなければ」

怒りが一週まわったせいか、口調は辛うじてもとに戻ったマルタは入り口への格子を掴む。
その様子を見た篤は遅れて理解する。

「...そういうことか」
「え?」
「さやか。お前が見たという恐竜はお袋さんと救急隊員の可能性が高い」
「......!」

再びさやかの目が見開かれる。
まどかが必死に守ったものがこうも容易く壊されていく現状に、後悔以上に怒りが真っ先に脳髄を支配していく。

「ライダー!あたしも行くよ。杏子を助けることもだけど、それ以上にあいつをブッたぎってやらないと気が済まない!」
「さやか。あなたを連れて行くことはできません」
「なんでさ!」
「あなたにはそこの彼女を守ってもらいたい。...家族を失った彼女には支えが必要でしょう」
「俺からも頼む。この事を知った時、支えるものがなければあいつは壊れてしまうかもしれない」

二人から指摘され、さやかはハッとする。
この事実を知れば、最も悲しみ怒りを覚えるのはまどかだ。
そんな彼女を放置してライダーを倒しに向かうことはできない。
篤とまどかの関係がどういうものかはわからないが、少なくとも聖杯を願わない主従が側にいることは多少なりとも悲しみを紛らわすことはできるだろう。

「...わかった。ライダー、約束して。あのキザヤローは絶対にぶっ飛ばすって!」
「約束するまでもありません。奴は必ず...!」
「ライダー、恐竜は恐らく傷をつけることで感染者を増やしていく。俺とほむらちゃんが連れていた奴もそれで恐竜にされた。
いいか、決して手傷を負わされるな。もしも傷を負わされかねないほど追い詰められたら迷わず殺せ」

えっ、とさやかは言葉を漏らす。
いま、篤はなんと言った?
傷を負うなというのは解る。けれど、恐竜達は元人間なのに、それを殺せ?まどかの母親もいるのに?

「...彼らはライダーの魔力さえ途切れれば、元に戻ることが出来る。殺せというのは承諾致しかねます」
「あくまでも最終手段だ。だが、もしもお前が恐竜にされたら俺達でも抵抗できるかわからない。恐竜にされるくらいなら、敵を殺して被害を減らした方がいい」
「...手傷を負うな、という助言だけは聞き入れましょう」

先ほどまでのヒートアップした空気はどこへやら。
篤の冷酷な助言でマルタもさやかも一気にクールダウンしてしまった。

マルタがマンホールを開け地上へと登り、残るは篤とさやかと未だ眠るまどかの三人。
さやかは睨みつけながら篤へと問いかけた。

「あんた、どういうつもりさ。まどかのママがいるかもって言ったのはあんたでしょ」
「ああ、わかっている」
「だったらなんであんなこと」
「言っただろう、被害を減らすためだと。確かに本体を倒せば恐竜は元に戻るかもしれない。だが、その可能性にかけて俺たちまで恐竜にされてしまえばそれこそ本末転倒だ。
そんな経験は腐るほど体験してきた」

篤の眼鏡の奥で光る双眸を見たさやかは思わず息を呑む。
酷く冷たい目だった。DIOともディエゴとも違う。
人を守る為に戦っている者とは思えないほど冷たく寂しい目だった。

「...あたし、さっきセイヴァーがあんたに言ってたこと聞こえたんだ。まどかの家で起きた事件があんたの仕業じゃないかってこと。
まどかがそんなことを命令するとは思えないし、あの子を守ろうとしてくれてるあんたがそんなことをするなんて思えなかった。
だから、あいつの勘違いだって思ってた。...でも、あんたの目をこうして改めてみると、あいつの言ってることが正しいように思えて仕方ないよ」
「......」
「...あいつの言ってたこと、本当なんだね」
「...ああ。あいつらを殺したのは俺だ。俺の独断でまどかは知らない」
「なんでそんなことを」
「あいつらは、まどかを車で轢きかけた上に、車が壊れたのをいいことにまどかを脅し、それが達成できなければ腹いせにあいつの家を放火しようとした奴らだからだ」

聞いていて頭が痛くなるようだった。
意味深にDIOが語っていた為、てっきり無実な一般市民を虐殺しているのかと思えば、創作物でも滅多にお目にかかれないような殺したほうがいいと思えるような悪党共相手だったとは。
けれどそれでもだ。

「でも、それで守られてもあの子は喜ばないと思う」
「そんなことはわかっている。だが、俺は決めたんだ。そんなあいつだからこそなにがあっても守るとな」

篤の言葉を聞いていて、さやかは思う。
DIOの言っていた『最も悪に近い』というのは間違いではないと。

性根がそうなのか、かつての経験がそうさせているのかはわからないが、彼はひどく危うい。
基本的には悪人ではないが、ふとしたきっかけでどう転ぶかわからない。

(見張りが必要なのはセイヴァーだけじゃないか)

さやかはやれやれ、とかぶりをふった。

「...それで、これからどうするかは決めてるの?」
「とにかくまどかを落ち着かせられるところを探す。ライダーの襲撃があった以上、まどかの家も安全とは言いがたいからな」
「まどかのお母さんのことはどうしよう」
「しばらく伏せておきたい。これ以上まどかの精神の負担が増えるのは避けたいからな」
「そっか...そうだよね。まどかが知る前にライダーがあの親玉を倒してくれれば万々歳だもんね」

さやかは、篤が持つソウルジェムをまどかの指に嵌め、額をそっと撫でる。

「ぅ...」
「うん。大丈夫みたい」

まどかの意識が戻りつつあるのを確認したさやかはホッと胸を撫で下ろした。

「ねえランサー。ひとまずまどかと一緒にあたしの家に来る?」
「いいのか?」
「あたしの家ならまどかもそこまで気を張らなくてもすむと思うからね」
「ならお言葉に甘えさせてもらうよ、さやかちゃん」
「それで、このまま下水道から行く?それとも地上に戻る?」
「恐竜のことを考えれば下水道を進みたいが、もしもバーサーカー(カーズ)と出会えば一たまりもないからな。恐竜ならまだ対処できそうだし、地上から行くとしよう」

さやかは先んじてマンホールに手をかけ持ち上げ、顔を出しキョロキョロと周囲を見回した。

「OK、誰もいないよ」

さやかが地上へと戻るのに続き、篤もまどかを背負いながら格子を登り地上へと戻った。

(すまない、まどか。だらしないサーヴァントのせいで全てを失わせてしまった。
お前はもうこれ以上の悲しみを知る必要は無い。怪盗X、それに恐竜使いのライダー...奴らとの決着は、俺一人でつけてやる)

己の背の小さな温もりの儚さを愛しく想いつつ、篤はそう密かに決意するのだった。





【D-2/月曜日 早朝】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]精神的疲労(絶大)、気絶中
[令呪]残り三画
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金] お小遣い五千円くらい。
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯戦争を止める。家族や友達、多くの人を守る。
0:...
1:ほむらと情報交換する。
2:聖杯戦争を止めようとする人がいれば手を組みたい。




【ランサー(宮本篤)@彼岸島】
[状態] 全身に打撲(中~大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、腹部裂傷
[装備] 刀
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯は手に入れたいが、基本はまどかの方針に付き合う。
1.怪盗X及びバーサーカー(カーズ)は必ず殺す。
2.怪盗X・セイヴァー(DIO)には要警戒。
3.恐竜化した者は最悪殺す。
4.ライダー(ディエゴ)は見つけ次第殺す。
5.まどかはもう戦わせない。荒事は全て引き受ける。
6.さやか、ライダー(マルタ)、ほむらは信用する。

※恐竜化が感染する可能性を得ました。
※襲撃した恐竜が『鹿目詢子』だと気付いておりません。
※ほむらがセイヴァーの能力の影響下にある可能性を持ちました。
※ライダー(マルタ)、さやかと情報交換しました。

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(小)、負傷(治癒済み)
[令呪]残り三画
[ソウルジェム]有
[装備]セイバー(アヌビス神
[道具]大き目のバッグ(アヌビス神を入れる用)、さやかのソウルジェム(穢れ:小)
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:平和を乱す奴をやっつける
0.ランサーとまどかを自分の家に泊める。
1.ライダー(ディエゴ)は放っておけない。倒す。
2.ライダー(マルタ)、ランサー(篤)はたぶん信頼できる。ほむらもまどかを守るという一点だけは信用できる。
3.魂のエネルギーで願いが叶う……?
4.余裕ができたら環いろはに接触する。
5.セイヴァーに要警戒。まどかを狙うなら敵だ。

[備考]
※まどか・マミ・杏子の電話番号は知っていますが、ほむらの電話番号は知らないみたいです。
※ライダー(ディエゴ)のステータスを把握しました。
※ライダー(マルタ)のステータスを把握しました。彼女が杏子のサーヴァントかは懐疑的です。
※配布されたソウルジェムが魔女を産む可能性を考えています。
※ライダー(マルタ)、ランサー(篤)と情報交換しました。

【セイバー(アヌビス神)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)、水に濡れた、ディエゴに対する戦意喪失
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:さやかを自分の有利な方へと扇動する。
0.DIO様に勝てる訳が無いッ!
1.DIO様が行ってしまわれた...
※ライダー(ディエゴ)とレイチェルの主従を把握しました。
※ライダー(マルタ)の存在を把握しました。



【D-2/月曜日 早朝】

佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]肉体死亡
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に乗り気は無いが……
0.―――
[備考]
※ソウルジェムが再び肉体に近付けば意識を取り戻し、肉体は生き返ります。


【ライダー(マルタ)@Fate/Grand Order】
[状態]魔力消費(小) キレ気味
[ソウルジェム]無
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争への反抗
1.杏子のソウルジェムを取り戻す。恐竜使いのサーヴァントは即急にシメあげブチのめす。
2.アサシン(杳馬)は何か気に食わない。
3.ひとまずさやかとランサー(篤)は信用する。
4.セイヴァーには要警戒。きっと、相容れることはないだろう。
[備考]
※杏子のソウルジェムが破壊されない限り、現界等に支障はありません。
※警察署でXの犯行があったのを把握しました。
※卯月とアサシン(杳馬)の主従を把握しました。
※ディエゴの宝具による恐竜化の感染を知りません。ただディエゴの宝具に『神性』があるのを感じ取っています。
※ライダー(ディエゴ)とレイチェルの主従を把握しました。
※セイバー(アヌビス神)とさやかの主従を把握しました
※ランサー(篤)、さやかと情報交換しました。


マジェントといろはが追った先で、DIOは壁にもたれ待ち構えていた。

「さて、環いろは。わざわざあんな真似をしたのだ。目的は彼女だろう?」

そう言うDIOの傍らには、横たわる沙々の肉体があった。

いろはたちは、戦いの被害を受けないよう、沙々の肉体を通路の脇に置いていた。
それをDIOが拾い、ここまで担いできたのだ。

「私は確かにきみが時間泥棒を見つけてくれれば返すつもりでいたのだが、それほどまでに信用できなかったかな?」
「それは...」

ここで素直にはいと言えば、DIOは気分を害し沙々を殺してしまうかもしれない。
言いよどむいろはの代わりにマジェントが吐き捨てた。

「頭脳が間抜けかテメーはよぉ~。沙々の身体が保ってる間になんの手がかりも無い奴を探し出せるかよぉ~」
「身体が保つ間...?」
「心臓が止まってたら身体は腐るんだよ。そのくらい解りやがれ!」
「ふむ、それは失念していた。それに、君達より後に出た筈なのに私のほうが早くあそこに到着していたな...」

DIOは顎に手をやり数秒口を噤み、思いついたかのように沙々の腕を持ち上げ指輪を嵌めた。

「カハッ!」

横たわっていた沙々の身体が、ビクン、と大きく跳ね上がり、溜まっていた空気を大きく吐き出した。
意識を取り戻した沙々は、口端を垂れるよだれを拭くことすら忘れ、キョロキョロと周囲を見回した。

「あ...あれ?私...」
「さて。これで窮屈な時間制限は無くなった。時間さえあれば探索が苦手なきみでも人一人を探し出すことはできるだろう?」

DIOの掌がポンと頭に乗せられ、沙々のビクリと跳ね上がった。
言葉にされずとも彼女は本能的に感じ取っていた。
いろはがDIOの頼みを果たせなかった場合、自分はゴミのように殺されるのだと。

「い、いろはさん、たすけて」
「...私が時間泥棒を探し出すまで、沙々ちゃんの安全は保障してくれますか?」
「約束しよう。私に牙を剥けば話は別だが」
「......」
「信用できない、という顔だが、きみの望みどおりある程度浄化した彼女の魂を戻し、時間泥棒を誘い出してくれればそこのアサシンから受けた弾丸も水に流そうというのだ。
これ以上、きみはなにかを望むのかな?」
「...いえ」

本音を言えば、こんなことをせず、沙々を返してもらいたいものだが、彼相手にそこまで求めればそれこそ彼女の命が危うくなる。
いろはは拳を握り締めぐっとこらえ、DIOの取引に応じることにした。

「それと、そう。そこのアサシン。きみは私を『Dio』と呼んで銃撃したね?」
「お、おう。けど、改めてみるとなんか違うような気がするんだよなぁ~」
「恐らくきみの言うDioは私でもなければ『俺』でもない。云わば平行世界の住人だろう」
「平行正解?」
「平行世界...ようは、私のそっくりさんがいるというわけだ」

DIOのだいぶ噛み砕いた解答に、マジェントはポンと己の掌を打ち、なるほど!とジャスチャーをとった。

「私はきみの言うDioに心当たりがある。いろはと一緒に探してみてはどうかな?」
「ん~、どうすっかなぁ」

DIOの提案にマジェントはあまり乗り気ではなかった。
というのも、彼はDioへの直接的な報復はほとんど諦めてる。
いろはとの仲良しぶりを見せ付ける作戦も、彼女の取引したDIOと自分を幾度も裏切ったDioが別人ならば意味もなさない。
となれば、できる復讐は、せいぜい不意打ちからの銃弾くらいしか思いつかない。
そんな相手をわざわざ捜し求めるのも、あまり気は乗らない。

(けどイロハがササを連れて来れねえと捕まったままだしなぁ。仕方ねえ)

「待ってろよササァ、イロハと一緒に時間ドロボーを探してきてやるからなぁ~」

マジェントは暢気な声音で、震える沙々にそう呼びかけた。

「ふふ...では期待しているよ、環いろは」

嘲笑にも似たDIOの激励を受け、いろはは歯がゆい想いを抱きつつ、彼らへと背を向ける。
チラ、と背後に向けた視線は沙々のものと混じり、いろはは口だけを動かし彼女に告げた。

必ず助けます、と。

【D-2 下水道/月曜日 早朝】

【環いろは@マギアレコード】
[状態]肉体ダメージ(大)
[令呪]残り0画
[ソウルジェム]有
[装備]いろはのソウルジェム(穢れ:なし)
[道具]
[所持金]おこづかい程度(数万)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の調査。戦いは避ける。
0.時間泥棒を探す。
1.沙々ちゃん大丈夫かな...
2.余裕ができればアヴェンジャー(ディエゴ)たちを追いかける。
3.マジェントさんと協力する。たぶん、悪い人じゃないよね?
4.バーサーカー(ヴァニラ・アイス)さんには要注意。

[備考]
※『魔女』の正体を知りました
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
※アサシン(マジェント)、アヴェンジャー(ディエゴ)のステータスを把握しました。
※少女(ほたる)がアヴェンジャー(ディエゴ)のマスターだと勘違いしています。




【アサシン(マジェント・マジェント)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(大)、肉体ダメージ(中~大)いろはへの好意
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い。ディエゴの殺害優先?
0.優しくしてくれるからいろはについていく。スキになってきたぜ。
1.もうDioとは関わりたくないから、いろはと仲良くしてDioに間接的な嫌がらせをする。
2.DIO...Dio...別人なのか?ワケわかんねーよもう。
[備考]
※Dioに似たマスター(ディオ)とそのサーヴァント(レミリア)を把握しました。
※バーサーカー(シュガー)の砂糖により錯乱状態ですが、時間経過で落ち着きます。
→錯乱状態は落ち着いてきてますが、場合によっては再び悪化するかもしれません。
※ほたるがマスターである事を把握しました。





「さて。そろそろ姿を見せたらどうだ、ホル・ホース。それに我がマスターよ」

DIOの言葉から数秒遅れて、ほむら、ホル・ホースと玉藻がそれぞれ別の曲がり角から姿を現した。
突如現れた彼らに、沙々はヒッ、と喉を鳴らす。

「よ、よお、ほむらちゃん」
「......」

数時間前に出会った為、一応挨拶の言葉をかけるも、ほむらは反応を示さない。
無論、そんなことでホル・ホースは腹を立てたりはしない。
というのも、DIOがここまで側にいるのだから、マスターであれ緊張しても仕方ないことは理解しているからだ。

「ふむ、知り合いだったか。ならば紹介する手間も省けるな。マスター、彼は『俺』の優秀な部下だ。これからは彼にサポートをしてもらうといい」

えっ、とほむらは思わず言葉を漏らす。
サポートにホル・ホースが選ばれたことに不満がある訳ではない。
なぜ、彼の期待に添えなかった自分にサポートなど付けてくれるのか、純粋に疑問に思ったのだ。

「あの、どうして私なんかに。先ほどは、あなたの要望を拒んだのに」
「要望?ああ、あれはあくまで道を提示しただけだ。『俺』ならば、相応の罰を与えたかもしれないが、『私』はただ道を増やすだけだ。
どれを進むかは、結局のところきみ次第に過ぎない」

そう。本来のDIOならば任務を拒んだとして、ほむらへ『洗脳』か『死』の罰を与えただろう。
だが、いまのDIOは『救世主』。救世主は誘導こそすれど、あくまでも導くだけだ。選択肢を強要する謂れはない。

「ただし、覚悟しておくといい。きみの選択を援ける術を私は知らないし、知るつもりもない。
きみの本当の願いは、きみ自身が認めなければ達成することはできないことを」

ほむらは俯き、目を伏せる。
DIOの言葉は意味こそ理解しきれないが、嫌でも不安と恐怖を掻き立て刺激してくる。
本当にこれでよかったのかと。正しいのはDIOではないのかと。

(関係ない...私は、誰になんと言われようとも鹿目さんを守る。それが、私に最後に残された導だから)

まどかを守り、聖杯を手に入れ皆と仲良く、普通に暮らす。
その願いは、きっと間違いなどではないはずだ。



冗談じゃない。
優木沙々は頭を抱えそうになった。
目を覚ませたのはいいものの、現状は未だにDIOの掌の中。
命が握られているという事実はなにも変わりはしない。
加えて、こんな傘下染みたものの輪に入れられれば、馬車馬のごとく働かされるのは想像に難くない。

ここにいる連中に魔法を使おうにも、DIOがそれを許す筈もない。

頼みの綱のいろはとマジェントも、いつDIOからの頼みを遂行してくれるかわからない。

「さて。沙々と言ったかな?」
「は、はひっ!?」

突然名前を呼ばれたせいで、妙な声が出てしまった。
そんな様を嘲るように笑みを浮かべるDIOに思わず苛立ちかけるもどうにか抑える。
もしも笑っているのがマジェントであれば、容赦なく毒を含めたさりげない罵倒を浴びせられるのにと歯がゆく思う。

「きみにはきみで頼みたいことがある。力を貸してくれるな?」

疑問詞を用いているが、沙々にこれを断る権利はなく、ハイヨロコンデーと満面のゴマすり笑顔で引き受けるしかなかった。

(環いろはぁ、約束したんだから絶対に助けに来いよ!なにをおいても私の命の保護を優先しろ!じゃねーと今度こそ魔女に変えて私の気が済むまでサンドバックにしてやるからなぁ!!)

優木沙々。ひとたび殺されかけたというのに、彼女の下種な性根は一遍の乱れもなかった。




ホル・ホースは思い返す。
DIOに『私のマスターにならないか』ともちかけられたときのことを。

彼のマスターになれば、それだけで戦力としては最高峰であり、令呪があれば強制的に退場させることもできる。
そんな喉から手が出るほどの魅惑の権利を、しかしホル・ホースはハイ喜んでと承諾しかねた。

まずはこの契約に対するDIO本人への理不尽さ。
ホル・ホースは彼の部下であれど、忠誠心が薄いほうなのはDIO自身が体感していることだ。
そんな男をマスターに据えるメリットがわからない。それなら、まだ人がよさそうな暁美ほむらの方が安心できるはずだ。

次に、そんなリスクをわざわざ負う男だろうかという懐疑。
DIOは慎重な男だ。自分の能力ひとつ隠す為に、最も縁が深い老婆を平然と殺害するほどにだ。
そんな彼が、わざわざ自分をマスターに据えるだろうか。否、必ずなにか裏があるに違いない。

以上の点から、彼はDIOの提案を保留した。勿論、理由までは口が裂けても言えなかったが。
その判断に、彼は頬を撫でながら微笑みかけた。

『目先の欲に駆られず冷静にメリットとデメリットを捉えられるその判断。私はきみのそういうところが好きだよ』と。

もしも、考えなしにはいと頷けばどうなっていたかは、想像もしたくなかった。

そして、極めつけのマスターのサポートという仕事。


ホル・ホースは確信する。
自分はいま、DIOに試されているのだと。

(奴は最初に、暁美ほむらとマスターを変わらないかと提案した。普通に捉えるなら、俺が彼女ととってかわれる余地があるってことだ)

この場合のマスターの交代とは、片方のマスターの喪失を示す。
つまり、ホル・ホースが暁美ほむらを殺し、玉藻との契約を解除し、DIOのマスターになることだ。

ほむらの話を聞く限り、DIOは神出鬼没だ。彼の目が無い隙にほむらを殺すことは出来る。
だが、迂闊にもそんなことをしようものなら、間違いなく討伐令の報酬を与えられる前にDIOに粛清されてしまうだろう。
それも、確実にほむらが助かるなにかをあらかじめ施しておいてだ。
DIO自身から明確にほむらを殺せという指示がない限り、DIOへの叛意とみなされてもおかしくはないのだ。

じゃあ隙なんてないじゃないか、どうせ殺せないなら素直にDIOに従った方が楽だと大半の者は考えるだろう。
それがDIOの狙いだ。
楽なほうへと逃がすことで思考を殺し、DIOの忠実な僕とする。
それが奴のやり口だ。安心という名の麻薬だ。

(俺は耐えるぜ。俺が俺らしく生きる為にな)

これはDIOとの根競べだ。
目の前にある獲物に引き金を引かず、諦めに逃避もせず。
そして決定的な隙が出来たその瞬間にようやく弾を放つ。

果たして、弾は放たれるのか、その弾が貫くのが暁美ほむらなのかDIOなのかはまだわからない。



DIOは考える。
己に下された討伐令、その意味を。

討伐対象にあるのは、暁美ほむらとセイヴァー、DIO。
この両名のどちらかを殺せば、その者に報酬を与える、または聖杯戦争を放棄させるという制度だ。
一見、これは報酬を餌にマスター達を炊きつけ、ほむらとDIOを追い詰めるためのものに見える。

しかし、この討伐令の条件は、『暁美ほむらとセイヴァーのどちらかの死亡』だ。
両者が揃っていなければならない訳ではなく、報酬の受け取り手も制限はない。

即ち―――暁美ほむらもこの恩恵に与れるということ。

DIOはサーヴァントであるため、令呪であろうが可能な限りの武器だろうが元の世界への帰還だろうがなんの意味もなさない。
しかし、マスターであるほむらならば、その恩恵をどれも与れる。

加えて、彼女は時間跳躍者だ。
この聖杯戦争に留まる意味がないと判断すれば、DIOを自害させ、元の世界に戻り、再び戦いの道に戻ることもできる。

そう。見方によっては、これはほむらへの緊急措置にも成りうるのだ。


ホル・ホースにマスター交代の提案を持ちかけた理由もこれだ。
ほむらが保身でDIOを切り捨てようとしたとき、ほむらを始末した後の代わりになるマスターのストックとして彼を欲したのだ。
なにより、彼は己の保身を優先する男。再契約を迫られた時、拒絶すれば殺されることはわかっているはずだ。
自分の身と引き換えにDIOを追い詰める、なんて正義の味方には程遠い男だ。
いまはまだ快諾していないが、それくらいの慎重さだからこそ、マスター候補に選んだ側面もある。


そして、なによりほむら自身。

ほむらは言った。魔法少女なんて関係ない、好きな者たちと普通に暮らしたいと。
DIOは言った。ほむらの理想において魔法少女の鹿目まどかは不要だと。
しかし、彼女はまどかを殺すどころか、貴重な令呪を消費してまで命を救ってみせた。

(彼女はまだ口にしていない。己の望む本当の願いを)

それは、決してDIOを騙そうとしているわけではなく。
おそらく、彼女自身、その本当の願いを理解し切れていない、あるいは本来の願いを捻じ曲げ無理やり己の器に納めているのだろう。
だからこそ、魔法少女のまどかを助けるという己の夢に砂をかけるような真似が出来るのだ。

(願いと行動の矛盾...『俺』ならば捨て置いたことだろう。だが、私は『セイヴァー』だ。悪に成りうる者の願いは、聞き遂げねばなるまい)

果たして、無自覚の仮面で包まれた願いは如何なるものか。
それを知ったとき、彼女は正真正銘『悪』の道を往くのか、あるいはまた別の道を見出すのか。

それはきっと、神【ディオ】すら知らぬことに違いない。




【D-2 下水道/月曜日 早朝】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(中)手首負傷(処置済み)、DIOに対する恐怖(小)
[令呪]残り2画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
0.DIOのマスターになる...俺が...?
1.ひとまずほむらと行動を共にする。女の子の為できれば殺したくはないが...
2.DIOと似たサーヴァントは何なんだ…?

[備考]
※玉藻を『キャスター』クラスだと誤認しています。
※弥子&アーチャー(魔理沙)の主従を確認しました。
アイルがマスターであること把握しました。
※アヴェンジャー(ディエゴ)を確認しました。
※ほむらからはあまり情報をもらえていません。少なくともまどかに関することは絶対に教えられていません。



【バーサーカー(西条玉藻)@クビツリハイスクール】
[状態]肉体負傷(小)魔力消費(中)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯って……えーと、なんでしたっけ?
1.ズタズタにしますー……あたしがズタズタになってますー?
2.DHCでお得なキャンペーンが行われるらしいですよぉ、急ぎましょう
3.間違えました。DNA検査場でイベントがあるみたいです
4.DHAでしたっけ?
5.まあいいか。全部記号です。
[備考]
※ホル・ホースの影響でなんとなーく『DIO』に関する覚えが残っているようです。
※戦闘しましたが、あまり記憶は残ってません。(平常運転)






【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(中)、魔力消費(小)、魔法少女に変身中
[令呪]残り2画
[ソウルジェム]無
[装備]見滝原中学校の制服
[道具]学生鞄、聖杯戦争に関する資料、警察署から盗んだ銃火器(盾に収納)、まどかのソウルジェム(穢れ:中)
   ほむらのソウルジェム(穢れ:小)
[所持金]一人くらし出来る仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得。まどかを守る。
0.私の、『本当の願い』...
1.ひとまずセイヴァーと帰宅する。
2.学校には通学する
3.セイヴァーに似たマスターは一体…?
4.またセイヴァーのそっくりさん...あと何人いるんだろう
5.怪盗X&バーサーカー(カーズ)、恐竜使いのサーヴァントには要警戒
6.さやか、ランサー(篤)、ライダー(マルタ)への罪悪感
[備考]
※他のマスターに指名手配されていることを知りましたが、それによって貰える報酬までは教えられていません。
※セイヴァー(DIO)の直感による資料には目を通してあります。
※ホル・ホースからDIOによく似たサーヴァントの情報を聞きました。
※ヴァニラ・アイスがDIOの側近であることを知りました。
※ライダー(プッチ)がDIOの友であることを把握しました。
※恐竜化が感染する可能性を得ました。


【セイヴァー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)
[ソウルジェム]有
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得と天国へ到達する方法の精査
0.ほむらの家に一旦戻る。
1.他サーヴァントとの接触を試みる
2.『時の神』は優先的に始末したい
3.『悪』の回収。暁美ほむらをあえて絶望させる?
4.再びナーサリー・ライムの固有結界に侵入する。
5.頃合いを見て沙々を『魔女』にする。
6.どこかでレミリアと話がしたい。マスター(ディオ)が邪魔。
7.ホル・ホースと組むのも面白いかもしれない。
8.アヴェンジャー(ディエゴ)の追跡 は一旦中断。

[備考]
※ナーサリー・ライムの固有結界を捕捉しました。
※『時の神』(杳馬)の監視や能力を感じ取っています。時の加速を抑え込んでいる事には気付いていません。
→杳馬の能力が時間操作の上位である空間支配だと推測しています。
※自らの討伐令を把握していません。
※ウワサに対し『直感』で関心ある存在が複数います。
※過去の自分(マスターのディオ)には関心がありません。
※ランサー(レミリア)の存在を把握しました。
※沙々のソウルジェムは、DIOの宝具で魔女化せずに保っています。彼の手から離れれば、魔女が孵ります。
※アヴェンジャー(ディエゴ)と彼の宝具を把握しました。
※ライダー(ディエゴ)とライダー(プッチ)の存在を把握しました。
※DIOからしてみればアヌビス神は普遍的な信奉者であるため、あまり覚えていません。



【優木沙々@魔法少女おりこ☆マギカ~symmetry diamond~】
[状態]魔力消費(中)、『悪の救世主』の影響あり(畏怖の意味で)
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具] 優木沙々のソウルジェム(穢れ:中)
[所持金]一人くらし出来る程度
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い
0.私、ついていかなくちゃいけないの?マジ?
1.セイヴァーはヤバイ奴。どうにか逃げ出したい。
2.でも、ソウルジェムの浄化はどうしたら……
3.見滝原中学には通学予定。混戦での勝ち逃げ狙い。
4.助けていろはさん、マジェント
[備考]
※シュガーのステータスを把握しました。
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
※ほむらの友人である鹿目まどかの存在を知りました。
※いろはの洗脳が解除されたことに気づいていません。
最終更新:2019年02月26日 23:47