ズェピア&ライダー ◆yy7mpGr1KA
深夜の街。
平時は人々の営みにより照らされる道々も闇に染まる。
彼方に見える摩天楼とぽつぽつと道を照らす街頭、僅かに見える月だけが僅かな明かり。
そこに光が一筋差し込んだ。
一台のタクシーが寂しい道を駆ける。
そろそろ切り上げようかと考える運転手だったが、視界の端に映った景色に最後の一仕事と気合を一息。
道を歩む一人の男がこちらに向かって手を上げたので、車を停止させ、ドアを開けて迎え入れる。
「あのひときわ大きなホテルまで頼む」
「はい」
目的地を短く告げて深々と座り込む乗客。
夜も深く、眠ってしまうかと思いきや窓から外をぼんやりと眺めているようだ。
「お客さん、この街には仕事で?それともやっぱりギャンブル?」
「……Sightseeing, と答えれば満足かな?」
「こんな夜中じゃあ外を見たって見るものなんかありませんよ。それに――」
一度も日に当たったことのないような、透き通りそうな白い肌に金色の髪が月明かりに輝く。
どこぞの舞踏会にでもそのまま紛れ込めそうな、古めかしいローブと礼服が気品を漂わせる。
「あまり旅慣れたようには見えませんしね。こんな時間まで出歩いてるってのも……ああ、ひょってして女ですか?
もしそうだとしたら、いい店を知ってますよ?そんなに着飾らないでもいい、ドレスコードの煩くないところをね」
「結構だ。間に合っている。この時間まで起きているのは体質のようなものだ」
「時差ボケですか?」
「時差ボケ……時差ボケか」
くく、と何がおかしかったか笑いを漏らす。
興に乗ったのか客の方から語り始めた。
「この街には探し物に来たのだよ。ある噂を聞いてね」
「噂ですか」
「ご存知かな?願いをかなえてくれる、白紙のトランプの噂を」
まっすぐと運転手の方に向かい、探るような視線をその背に刺す。
「生憎とそういう流行には疎いもので」
運転手は流れるような返答をした。
しかしミラー越しに見えるその調子を念入りに、表情の隅々まで観察する客の熱意に少したじろぐ。
「……知らないか。なら君は私と杯を争うものではないらしい。では最近この街で騒がれている怪物の噂は?」
「いやあ、それも知りませんね」
「そうか。おっと、ちょっと停めてもらいたい」
車窓から前を眺めると一人の通行人が目に付く。
夜の帳が下りた中でも目立つ赤いコートを纏った女性が小さく手を振っていた。
「連れ合いだ、乗せてくれ」
「はいはい」
後部座席の扉を開いて迎え入れる。
女はというと一言も発せず、物音ひとつ立てず、滑り込むように席に着いた。
それを確認して発進。
ミラー越しに映る女の姿は、派手な赤いコートを着て、顔の下半分を覆うような大きなマスクをつけている。
荷物も受け取ろうかと考えるが、そろって手ぶら。
これではチップはあまり期待できないかな、金を持ってそうな客だが惜しい、女は間に合っているとは答えたが、商売女という感じではないから元々の連れだろうか。
などという考えを運転手はぼんやり巡らせていた。
「さて、どこまで話したか。そう、街にいる怪物の話だ」
「え?ああ、そうでしたね」
あくびを噛み殺しながら今度も流れるように反射的な答えを乗客に返す。
ちらりと時計を見ると深夜の3時をまわっていた。
「2~300年ほど前の極東が起源。
動物霊に憑かれ、呪われ醜くなってしまった女。あるいは愛憎の果てに鬼になった女が発祥だそうだ」
「そりゃ由緒正しい。USA以上の歴史ある化け物ですか」
「今の形になったのはここ数十年ほど。ある三姉妹が交通事故にあい、顔に大きな傷を負った。
その治療、整形手術を行ったが失敗し、末の妹の手術だけ失敗し彼女の口は耳まで裂けた。
その怒りと憎しみで暴れ狂う、『口裂け女』。そんな噂の怪物が跋扈している……」
「へえ。まるでアメリカンコミックのヴィランみたいな生まれ方してますね」
ハンドルを切る。
対向車一つない道を曲がるとそこは4番ストリート。
もうすぐ目的のホテルに着く。
「手術が終わったときに女は担当医に問うた。私は元の綺麗な顔に戻れたか、と。
医者は真摯に答えた。手術に失敗し、醜い顔になってしまった、と。
女は怒り、暴れ、手術室にあったメスでその医者を惨殺した」
途端、車内の空気が冷たくなった。
得体のしれない何かが混ざりこんでしまったような、異様な空気で満たされていく怖気が運転手の背筋を冷たくする。
「その女は正気を失い、自らの顔を醜いと評したものを次々と人に害なす怪物…まさしく殺人鬼になってしまった。
返り血の目立たないよう赤いコートを着て、裂けた口が露わにならないよう、大きなマスクで顔を覆って」
ミラーに後部座席の女の姿が映る。
赤いコートと、大きなマスクが目に付く。
ふと、女の目に冷たい笑みのようなものが浮かんだ。
「その女は何ゆえか分からないが三のつく場所に、三のつく時間に現れることが多いそうだ。
事故にあった場所の地名だとか、手術室が三番だったとかいろいろ言われているが」
この女を拾ったのは4番ストリートに入る前の、3番ストリート。
現在時刻は3時7分。乗ってきたのは3、4分前だったように思える。
運転手の冷え切った背筋にいやな汗が流れた。
「私は先日まで極東のある街にいた。三咲町といってね。
ジャパニーズは分かるか?三というのはジャパニーズで3を意味する文字だ。
私は……私たちはそこから来た」
物語の語り部のように、芝居がかった口調で朗々と。
女の成り立ちを、自らの旅路の一端を語る。
男の口元は大きく歪み、まるで口が裂けているかのよう。
「……そ、そうですか。あ、もう着きますよお客さん!」
悲鳴になる前に声を絞り出し、降車を促す。
ホテル前に猛スピードで駆け込み、入り口前に急ブレーキで停めるが、さすがにこの時間ではホテルマンも見当たらず、それを咎める者もない。
もうチップなどどうでもいいから何事もなく離れてくれ。
そう心中で強く願う。
「ご苦労……フム、おやおや、彼女から君に聴きたいことがあるようだ」
カチカチと歯の根が合わず、それでも後ろを振り向くと女と目が合う。
ゆっくりと、マスクの下からくぐもった声が聞こえた。
「私、綺麗?」
マスクで顔が覆われ、美醜の区別などつきはしない。
長い髪と、コート越しの細い肩からは女らしさが感じられ、そして響いた声はどことなく惹かれるところのある女の声だった。
まるで川の向こう岸や暗闇の先から響くような、浮世離れした艶っぽく不気味な声。
「は、はは。面白いジョークだ……」
助けを求めるような視線を男のほうに向ける。
反応といえばけんもほろろ、なしのつぶてだ。
何と言っていたか、走馬灯のように必死に想起する。
噂の女は醜いと自分のことを言うものを惨殺する……
「美人ですよ!ミス・ユニバースも夢じゃない!」
必死になって答える。
どこか冷静な自分が、そんな噂を本気にして、あげく目の前の人物に重ねているのをバカにしている。
それでも、目の前の男女の放つ異様な気配が、背筋を走る嫌な予感がこの判断は正しいと告げている気がしてならなかった。
答えを耳にした男が口元をさらに歪め、女は両の手をマスクにかける。
………………ゆっくりと、マスクが外されていく。
「これでも?」
女の口は耳まで裂けていた。
普通ならこんなカタチをしていてはあんなに明確な声なんて出せないんじゃないか、と冷静な自分が疑問を覚えている。
恐怖に晒された表層の自分はそれどころじゃない。
特殊メイクだ、イタズラだなんて考えが浮かんだ気がするがそんなのはどうでもよかった。
むしろそうであってほしかった。
だが女が掴みかかり、目と鼻の距離まで顔を近づけてみて確信する。
コイツハヒトジャナイ
「ッーーー!」
悲鳴を上げようとした。
悲鳴を上げるはずだった。
だが、女の腕が首元を抑え声が出せなかった。
右腕が喉元を抑え、指を伸ばして口が開けさせれた。
「女は医者に対して問うた質問を、自分と同じく手術を受けていた二人の姉にもしたそうだ。私は綺麗か、と」
恐怖に染まった脳に男の声が染み通るように響いてきた。
「妹を不憫に思った二人の姉は、綺麗だと答えた。すると妹はこれでも綺麗か、と声を荒げた。
手術に成功した姉への恨み、妬み、憎しみ、怒り……そんな念の籠もった声だったのだろう」
語る男の口調はとても愉しそうだ。
「この顔が美しいというなら、お前たちも同じ顔にしてやる…………そんな意図があるのかは知らないが。
妹はすさまじい怪力を発揮し、素手で二人の姉の口を耳まで裂いた。悍ましき喜劇!麗しき悲劇!
……女の顔を美しいと称したものは、口を耳まで裂かれて惨殺されるそうだ」
なんだそれは。
どう答えようと殺されるのか。
「無慈悲。対抗神話なくしては抗う術なき伝説の具現。全くもって理不尽甚だしい。
しかしこの世もこの夜も、所詮は仮初の舞台。主催が望んだシナリオならば然様に踊るもまた一つの粋というもの」
男ガ嗤フ。
男の顔も目は血走り、口は耳まで裂けて、二人目の異形。
もう一人現れた怪物、その恐怖の重ね塗りにすでに運転手の思考は麻痺している。
しょきり、と刃と刃がこすれる音が耳に届いた。
女の左手に、どこから取り出したのか大振りの裁ち鋏が握られていた。
すう、とゆっくり鋏を握る手が動く。
その刃がこじ開けられた口に当てられる。
震える歯に鋏が触れるたびカチカチと音を鳴らす。
口の中に無機質な鉄の匂いと味が広がる。
暴れる。
それを女は何でもないように抑えてくる。
悲鳴の一つも出ない。
涙がにじむ。
怖い。
異様な怪物の面容を視界に収め。
迫りくる刃の味と匂いを押し付けられ。
悍ましい怪力を肌に感じ。
最後に。
しょきん
と刃が合わさる鋭い音。そして
ぶつ
と肉に刃が食い込む鈍い音。
口に入れられた鋏が頬の肉を切り裂いた。
薄い皮膚と柔らかい肉を押し刈られる一瞬の感覚。
刹那の空白。
それだけおいて、耳元まで大きく切り裂かれ、まるでイビツな笑いを浮かべたような顔に、頬のあった箇所に空白感と激痛が叩きつけられる。
「が…!!ぎゃ……あああああああああああああああああ!!」
大きな叫びが肺の中の空気全てを絞り出した。
空っぽになっても、いまだに続く痛苦に酸素がなくなっているのに叫び続ける感覚。
息を吸う。
すると分かる。
自らの口が耳まで裂けているのだと、この激痛はそのために起きているのだと脳髄に叩き込まれる。
声を上げるたびに口元が震え、息を吸うたびに喉が焼け、その全てが切り裂かれた頬の神経を刺激する。
「ぁああ……!あ、ぁぁあ……?」
ゆっくりと、またゆっくりと鋏が引き戻されていく。
そして、今度はすぐに。
反対の頬に刃が押し当てられる感覚。
拒絶の悲鳴を上げる間もなく
しょきん
ぶちっ
血と脂に濡れて鈍くなった刃がもう一度肉を裂く音が、肉と骨から伝わってきた。
左右共に頬を切り裂かれ、完全に口が耳に届いた怪物の風貌がそこにある。
その整形手術に伴う耐え難い苦痛のに魂を呑まれ、男の意識は闇に消えた。
「キ…キキキキキ!」
車から降りていた異形の男が口から笑いをこぼす。
「魂魄ノ華、爛ト枯レ」
女を押しのけるようにして手を伸ばし、傷口に触れる。
「杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ、例外無ク全テニ配給」
流れる赤い血を掬い、嘗めとる。
「嗚呼、是即無価値ニ候」
傷口からあふれる血がいかに甘露か、舐りつくすように味わう。
異様な量の血が流れ出て……少しして、それが止まる。
傷口を掬う指も動きを止め、味わう舌は語る舌へと動きを変える。
「妹に口を裂かれた二人の姉は、それでも妹と同じく生きていた。
ゴルゴンの三姉妹はメドゥーサのみが怪物となったというが、こちらは違う。
姉二人もまた、妹に起きた悲劇の被害者となり……妹と同じ怪物になった。
死徒に噛まれたものがまた死徒となるように、怪物に口を裂かれたものも怪物となるのだ。お前も、な」
運転席に伏していた肉塊に生気が戻り、立ち上がる。
運転手だった男の面影などどこにもない。
口は、耳まで裂けていた。
流れた血で、服は朱く染まっていた。
髪は伸び。
背丈は縮み。
男は、『女』になっていた。
「私、綺麗?」
運転手の口を裂いた怪物と同じような声で同じような問いを投げる、かつて運転手であった怪物。
「まあまあだ。メイクの出来は上々、私の舞台のヒロインとしては些か役者不足のきらいはあるが、あとは真名を覆う仮面を纏えばマスカレードの準備は万全だ」
脚本家(マスター)の演技指導(アドバイス)に素直に応じる女。
どこからともなく大きな白いマスクを取り出し、その裂けた口を覆い隠す。
それで満足したのか、運転席について怪物はハンドルを握る。
「粗筋(プロット)はできた!配役(キャスト)も揃う!姫(ヒロイン)はお前だ、ライダー!
入場券(トランプ)は配られ、後は観客(オーディエンス)を待つのみ!ヒロイン御自ら広報に汗を流してくれたまえよ」
乗客であった男と女の降車を確かめ、怪物はアクセルを踏みこむ。
怪物の駆るタクシーが夜の闇に消えていく。
二体の異形はそれを見送り、ホテルへ。
女はすぐに溶けるように姿を消し、男は堂々と闊歩する。
ロビーを抜け、エレベーターに乗り込み、最上階の一室へ。
そこは街を一望する神殿(シュライン)。
「人の身では届かぬか。人ならざる身でも叶わぬか」
窓から見える街並みを眼下に、はるかに望む月へと手を伸ばす。
伸ばした手が空中でもがくように蠢き、何かをつかみ取ったような仕草を見せる。
そして腕を指揮者のように一振り。
「カット!!!」
体から流れ出る魔力量がほんの少し増える感覚。
口裂け女が知名度を増していく実感。
「奇妙な都市に送り込んでくれたものだ、姫君。
黒の吸血姫には入場券を賜り、白の吸血姫には器を賜った。
その果てに至るがこの祭典か。神の子の悪戯か、カインの子の悪戯か!まったく、姫君も人が悪い」
アトラスの蔵で小耳にはさんだ儀式・英霊召喚に東洋の蠱毒を取り入れた願望器形成の儀式か。
あるいは聖堂教会が血眼になるであろう真の聖杯の奪い合いか。はたまた……
「いずれでも構わぬ。朱い月の血を以てしても叶わぬなら、なすべきは一つ」
それは宣誓。叶わぬと言われた夢にそれでも手を伸ばすという堂々たるもの。
これは開幕。脚本家(ズェピア)自ら演じる筋書き無し(アドリブ)の殺戮(ドラマ)。
「我、神の子の血で以て救世へと至らん」
今度こそ、破滅の未来を棄却するために。
【クラス】
ライダー
【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B+ 魔力D 幸運D 宝具C
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
騎乗:B+
都市伝説と言う存在、彼女をはじめとする噂に乗るライダーは騎乗スキルを持ちえないものが多い。
しかし口裂け女には乗り物を扱う逸話があるため騎乗スキルを持つ。
野獣ランクまでなら乗りこなし、都市伝説に類する存在であるならば魔獣クラスであっても乗りこなす可能性がある。
―口裂け女は赤いスポーツカーに乗って現れる―
―口裂け女は人面犬を駆る―
対魔力:E
近現代の存在であり神秘が少ないことに加え、呪われたと言う逸話があるため魔なるものに対する耐性は極めて低い。
クラススキルにより最低限得た程度。無力化はできず、ダメージを僅かに軽減する。
―口裂け女の容姿は犬神憑きによるものである―
【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
―口裂け女は素手で人の口を耳まで裂く―
飛翔:EX
空中を飛ぶ能力。赤い傘が必要と言う逸話もあるが、別になくても飛べる。
さらにその神出鬼没な在り方により、空間を“飛ぶ”ことを可能とし、後述の宝具によりスキル:加虐体質を向けるものが3のつく時間に3のつく場所にいることを認識できている場合、そこへ転移することを可能とする。
―口裂け女は空を飛ぶ―
―口裂け女は3のつく場所によく現れる―
―口裂け女は3のつく時間によく現れる―
―口裂け女の悪口を言った者を口裂け女は殺しに現れる―
都市伝説:A
噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。
最強の都市伝説の一角である口裂け女は最高ランクで保持する。
聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『口裂け女』を知るものがいる限りステータスが向上し、その知名度によっては新たな技能を獲得することもあり得る。
噂は一人歩きするものであるため同ランクの単独行動を内包する。
このランクが上がればあがる程、固有の人格より現象に近づく。Aランクともなれば伝承にあるような言葉程度しか発せず、僅かに基となった存在の残留思念が残る程度である。
口裂け女は「私綺麗?」、「これでも?」くらいしか意味ある言葉は発さない。
残りは悪の大妖怪オロチの極大の悪意・殺意のみの災害に近い存在となっており、老若男女も時刻も場所も選ばずにひたすら殺戮を振りまく。
【宝具】
『承認欲求~白雪姫の母は鏡に問う~(ワタシキレイ?)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:上限なし
噂に乗らなければ存在できない、誰かに問わねば在り方が曖昧な口裂け女という都市伝説において最も象徴的な逸話。
「私、綺麗?」という問いに対して明確な答えを返したものと戦闘を行う場合、Cランク相当のスキル:加虐体質を獲得し、追撃時に攻撃判定を3度追加できる。
また問いかけに加えて、口裂け女の異様な素顔を目にしたものは"威圧"のバッドステータスを受け、敏捷が1ランク低下、さらに精神防御判定を行い、失敗したものは戦意喪失の追加効果を受ける。
精神防御で抵抗可能。
なおある意味当然のことだがこの宝具を発動した場合、それを視認したものはまず確実に『口裂け女』という真名を看破する。
『信ずる者は巣食われる~口の裂けた赤ずきんの老婆は狼~(マッド・トリニテ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人
恐れ、噂するものが存在する限り膨らみ続ける都市伝説という存在に口裂け女の逸話が合わさり、昇華した宝具。
口裂け女が口を耳まで裂いた者もまた口裂け女となる。
ステータスや宝具など全て同一の口裂け女そのものである。同時に存在できるのは3体まで。
―口裂け女に口を裂かれた者も口裂け女になる―
―口裂け女は三人姉妹である―
『末妹不成功譚~この灰かぶりは小鳥に出会わない~(ポマード、ポマード、ポマード)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
三にまつわる口裂け女の噂と、三と言う数字の神秘性、末子成功譚の逆を行く逸話が宝具と化したもの。
シンデレラ、三枚のお札、三匹の子豚など3つ目、もしくは第三子が成功するというのは世界中で散見されるモチーフである。
しかし口裂け女は三女であるにもかかわらず、交通事故や手術の失敗など要因は違えど一人だけ口が裂ける結果となったと噂される。
またポマードやハゲ、べっこう飴などと三度唱えると逃げ出すという噂もあり、三位一体をはじめとする聖なる数字3は口裂け女にとっては失敗をもたらす数である。
『口裂け女』に対する全てのスキル・宝具を三度目に無効化できる。
なお四度目、五度目には通常の効果を発揮し六度目に再び無効化できる。
また「ポマード」など前述の文言を唱えた場合幸運判定を行い、失敗した場合1ターン恐慌状態になる。
ただし加虐体質のスキルを獲得している場合判定の成功率は上昇し、この効果も三度目には無効化される。
『転身鬼女蛇王三昧~狂える茶会でアリスは目覚めない~(ORoTi)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
悪の究極妖怪、オロチであることそのもの。
本来は周囲の妖怪を取り込んで己が一部に変換、より強力な妖怪へと進化していく宝具。
しかしズェビアの固有結界『タタリ』が噂によって最恐の存在に姿を変えるものであること、かつて再誕したのが霊気によってさまざまな妖怪を再現できる機械を利用したものと近似しておりその影響を受ける。
加えてそもそも悪の究極妖怪、オロチをムーンセルが完全には再現できないため宝具が変質。
『噂にある最強の妖怪』へと姿を変える宝具となってしまった。
それにより今は『口裂け女』になっているため、それ以上の効果の発揮は今のところ見込めない。
ワラキアの夜は明けた、しかしもしかすると妖怪をとり込むこの宝具なら……?
【weapon】
口裂け女は様々な刃物を使うと噂される。ナイフ、鋏、メス、鎌、斧から日本刀まで。
スキル:都市伝説によりその噂は像を結び、魔力消費により様々な刃物を生成可能となっている。
ただし刃物の扱いに長けているという噂はなく、その怪力でもって振るうのみである。
なお同様に赤いコート、赤いスポーツカー、大きなマスクなどの噂に関わる小道具も魔力消費により生成可能。
【人物背景】
学会を追放された科学者、百鬼久作の手により復活した大妖怪。
その復活をぬ~べ~およびその生徒が阻もうとしたために百鬼は口裂け女やはたもんばなど多くの妖怪を産み出し、障害とした後にその妖怪をオロチ復活の糧とした。
復活には成功したのだが、善の究極妖怪ケサランパサランに敗北、消滅した。
その大妖怪が、伝説上の存在であるため噂に乗るライダーとして再現された……のだが変質した宝具の効果により本来とは異なる姿となる。
『噂に聞く最強の妖怪』、その器としてかつて取り込んだ都市伝説上の妖怪『口裂け女』の姿をとっており、その逸話の大半を再現している。
口裂け女は1980年ごろ日本で流行した都市伝説。後には韓国にも伝わっている。
子供が媒介の中心だったゆえか次々と逸話が盛られ物理的な強さは相当なものと噂される。
古くは江戸時代、美濃国の農民一揆の後に処罰された農民の怨念が形を結んだ鬼を起源とする。
その伝説に吉原の遊女が男に弄ばれた愛憎により転じた、口の耳まで裂けた鬼女が同化し妖怪『口裂け女』の起源となったという。
ターボババアのように速く、ひきこさんのように力強く、赤マントのように神出鬼没で、猿夢のように不滅で、くだんのように理不尽で、人面犬のように異形な都市伝説。
くねくねが最狂ならば口裂け女こそ最強の都市伝説ではなかろうか。
さながら吸血鬼のように、強みと同じく多くの弱みを持つ都市伝説、その具現。
八岐大蛇(オロチ)の子とも言われる酒呑童子。
それもまた愛憎の果てに鬼に転じた化生という逸話があり、彼女との近似性も口裂け女の姿となった理由の一つだろうか。
【サーヴァントの願い】
再誕
【基本戦術、方針、運用法】
サーヴァントとしての戦力は高くない。
化け物退治の玄人である英雄に対して、化け物である口裂け女/オロチは相性が悪いためである。
むしろ人類史を否定する側の死徒、その最上位であるズェピアの方がサーヴァント相手には闘えるレベル。
高ランクの単独行動、宝具による増加、威圧、限定的ながら絶対防御、といった強みを活かした雑兵さながらの消耗戦で真価を発揮するだろう。
ただし何らかの形でタタリの起動ができれば、間違いなく最恐の存在となる。
【参加方法】
かつて黒の吸血姫との契約において、術式に白紙のトランプを用いた……気がしている。
あるいはタタリという噂を具現する固有結界が、白紙のトランプという噂とそれに伴うサーヴァントを像にしたか。
【令呪】
赤い丸二つと、三日月が歪んだ笑顔の様に並んでいる。
それぞれの記号で一画。
本編におけるタタリのデスマスクと同じ形。
【マスターとしての願い】
今度こそ第■法に至り人類滅亡の未来を回避する
【weapon】
第五架空元素という存在を編んで作られたナノ単位のモノフィラメントを所持。
医療用に開発された擬似神経でもあり生物に接触すると神経とリンクして擬似神経となる。
他人の脳に接続すれば、対象の思考や精神を読み取り、行動の制御(活動停止、リミッター解除)など可能。
肉体や神経の縫合、ワイヤートラップ的な設置他、用途は多岐に渡る。
戦闘では鞭のように使用する、相手の思考を読み行動を縛る、悪性情報の実体化など。
【能力・技能】
死徒二十七祖第十三位、『ワラキアの夜』。
かつて『黒の吸血姫』との契約ほか様々な保険により『タタリ』という一つの現象にまでなったのだが、『白の吸血姫』の手により一個の死徒に再び堕ちた。
そのため後述する固有結界は現在駆動できないが、それでも二十七祖の一角にして元アトラシアとして卓越した戦闘技能を誇る。
錬金術師としてのエーテライトの扱いや並行・高速思考、吸血鬼としての爪や怪力を武器とする。
『固有結界・タタリ』
周囲の人間の心のカタチをカタチにする固有結界。
ある周期で出現する現象であり、特定コミュニティ内の人間(それに匹敵する知能を持つ者を含む)の噂・不安を煽って増大、集束させ、その内容を元に、不安や恐れのイメージを具現化、自身に転写して顕現し、噂通りの能力を持つ吸血鬼「タタリ」として具現化する。出現したタタリはその一定地域内を殲滅する。
簡単に言えば、噂やら都市伝説を広め、イメージされた通りの姿・能力に変身することができるという能力。
記憶も含めて本物と寸分違わぬ偽物を作り出すことも可能で、存在しないはずの者、既に死んだ者になることも可能。
具現化される噂や都市伝説に制限はなく、場合によっては「願い」めいたものもその対象となりうる。しかし、「具現化」=「吸血鬼タタリの(嗜好・知識を取り戻した上での)復活」であるため、具現化された話がどんなものでも「発生源の住人を皆殺しにする」ものに変えられてしまう。
タタリである死徒ズェピアは既にこの世に存在せず、「タタリ」も一晩しか持たないが、出現したタタリを退けようとも、起動式の条件さえ満たせば再び出現できるため、永遠に存在し続ける。
この固有結界を保持した名残として、恐怖の具現・都市伝説である口裂け女を彼は自在に操ることができる。
アルクェイドによって死徒ズェピアへと戻されたため現在この固有結界は駆動できない。
だが何らかの形で再び『現象』になることができれば……?
【人物背景】
MELTY BLOODのヒロイン、シオン・エルトナム・アトラシアの三代前の祖先(曾祖父)に当たる人物で、五百年前のアトラス院で院長を務めた天才錬金術師。
未来を求めるという過程で初代アトラシアが辿り着いた「人類滅亡」に、彼もまた辿り着いてしまう。それに抗おうと数多の策を講じて実行に移そうとするも、その悉くが失敗に終わる。
覆す方法を模索し続けるもその度に「より明確な滅亡」という計算結果を見せつけられ、最後には発狂してしまった。
死徒となって自身の存在を強化したズェピアは滅亡回避のために第六法を目指すも敗北、肉体は消滅し、構築していた霊子が霧散する。
しかし、それ以前に完成させた「タタリの駆動式」と「霊子の航海図」、アルトルージュ・ブリュンスタッドと交わした「契約」他多数の保険により、意識も記憶もへったくれもない霊子たちを留めて漂流させることに成功、自身を現象へと変える。現在の彼は「特定の時間・地域に固有結界タタリを展開する現象(人々の噂や不安を元にそれを様々な形で具現化する)」であり、タタリとして虐殺を行ないつつ、より強大な存在である真祖の肉体を得て再び第六法に挑もうとしていた。
「ワラキアの夜」という通り名の由来となった15世紀のワラキアを皮切りに、幾度か顕現。一度前は3年前のイタリア。自分を滅ぼしにきたリーズバイフェ・ストリンドヴァリとシオンを返り討ちに仕留めた。シオンから吸血し、彼女を半死徒に変えている。
そして日本三咲町へと舞台を移し、遠野志貴、シオンと交戦。様々な条件が重なり敗北、消滅を迎えようとした瞬間に参戦。
ゲーム出展とすると剪定事象が混在するため、漫画版のシナリオを仮に編纂事象としズェピアの出展とする。
【方針】
聖杯狙い。
『口裂け女』の噂を広め、『口裂け女』を産み出し、勝利で幕を閉じる。
『タタリ』とやることは変わらない。
最終更新:2018年04月22日 00:54