人の造りしもの(適当) ◆HUcbVDnc1c
王からの命令で姫を救う勇者、彼に倒されるための魔王が存在するように、物語の登場人物全てには役割と言う物が与えられている。
そして現実に置いてもそれは変わらない。
男は狩りをし女は家を守り貴族は散財し貧民は納税をし上司は責任を取って部下が尻拭いをする等と誰もが社会の歯車として機能させられているのだ。
「そんな・・・・・・こんなのあんまりです・・・・・・」
体育座りで俯く少女の名前は
朝比奈みくる。
Max Factoryから販売されている商品名称《figma 036 涼宮ハルヒの憂鬱 朝比奈みくる 戦うウェイトレスver》の巨乳少女のフィギュアである。
壊し合いが始まり暫し呆然としていたみくるであるが、彼女を絶望の淵へと誘ったのはこの場で与えられた役割とは関係ない。
上体を起こし、確認するかのように片手で胸部に手を這わせてみる。
無い。
突然だが、当該
プロジェクトを観戦しているオーナー達に告ぐ。
貴方はフィギュアの胸を触ったことがあるだろうか?
いやそんな汚い物を見るような目をしないで欲しい。誰にだって経験があるはずだ。
女性型フィギュアを買う人間はそれぐらいの劣情をぶつけるはずだ。
だから正直にあの頃の気持ちを思い出して欲しい、自分の嫁の胸を触ったときめきを―――
大体が予想通りで溜め息を付いてえ?気持ち良かった?ああうんそりゃいい素材使っているんだろうね良かったね。
柔らかいフィギュアの素材といえば代表的な物はシリコンだけどむっちゃ高い。
どんぐらいかって言うと最底辺のソフビより高いPVC(塩化ビニール樹脂)とABS(ABS樹脂)、この三者を比較できるほどの価格差としたら5倍ぐらいかそれ以上ってぐらい高い。
そんなもん使っていたら2万3万ぐらいのフィギュアじゃないと利益を取ることができないのだ。
対してみくるのお値段は2,381円+税と大変お手ごろでリーズナブルな値段となっている。
もちろん素材も比例してPVCとABSが使われているので大量生産されていたのだ。
まあ何が言いたいかって言うと こ の 朝 比 奈 み く る は お っ ぱ い が 硬 い。
「人工知能与えるならせめてボディもアップグレードしてくださいよぉ・・・・・・」
欠け落ちた自分の胸を見て落胆する。
みっともなく腰のコルセット辺りでぶら下がっているそれは軟質素材で外面だけ朝比奈みくるの巨乳を形作っており、
中身は何も詰まっていない。
figmaのフィギュアの胸は軟質素材+空洞で柔らかさを表現しているが、廉価品だけで構成されたそれには限界と言う物があった。
もう少し新しい物であれば同サイズで近い値段のフィギュアでも乳房の弾力を表現できたであろう。
だけど朝比奈みくるはfigmaでは番号が若い、つまりはアクションフィギュアとしてはオールドタイプなのだ。
触っても彼女の満足行く柔軟性を出し切れておらずムキになって服を剥ごうとしてみた結果、胸部パーツごとエプロンがズレ落ちてしまった。
自分の巨乳を確認するために服を脱いだら虚乳だと判明してしまったわけである。
最後に残ったのはなだらかな丘どころか開拓され尽くした荒地でしかなかった。これには長門有希も思わずほくそ笑む(気がした)。
「あの宇宙人にも劣るなら私の取り得って一体なんなんですか!」
涼宮ハルヒの憂鬱本編では空気で不人気扱いだった上に唯一自身を持っていたスタイルの良さまで奪われたのだから仕方が無い。
これならいっそのこと魔改造で全裸にして欲しかったとは思う。
無駄に豊かな表情が今となっては恨めしい。ボディにはほとんど手が加えられていないと言うのに。
「いいもんいいもんどうせ私は不人気ですよぉ~
巨乳枠も朝倉さんが人気独占しているから私の出る幕なんてないんですよねぇ~
いいなぁ神姫さん達は。マスターと大人のコミュニケーションができるとかフィギュア界のエースオブエースじゃないですか。
どうせ私なんか・・・・・・」
すっかり自虐モードに入ってしまったみくる。
本来の朝比奈みくるならいざ知らず、彼女は涼宮ハルヒの憂鬱という物語を作品という観点で知っている朝比奈みくるだ。
長年刊行されているが目立った活躍もなくSOS団のマスコットとして存在し続けていることを知ってしまっている朝比奈みくるだ。
だからこそ数少ない個性が喪失してしまったことに耐え切れなかったのだろう。
そしてだからこそ、背後に迫り来る巨体にも全く気づかなかったのである。
「すいません、コンセントどこですか?」
「ふぇ?」
幼い少年の声だった。
声だけならみくるよりも年下の、中学生ぐらいの子供だろうか。
しかし大きい。全高約13.5cmの自分に影がかかる程の大きさである。
少年型のフィギュアであれば精々13~14cm程度だろうが、声の方向が頭上から聞こえてくるのは明らかにおかしい。
「な、なんなんですかぁ?」
恐る恐る後ろを振り返ってみることにする。
するとそこには紫の装甲の逞しい胸部が出てきた。
(ロボット?)
僅かに落ち着きを取り戻しながらロボットの顔を確認しようと視線を上に逸らしていく。
獣を思わせる顔つき。
猛禽類のような鋭い目。
それでいて明らかに地上の生物とは異したなんかやばい角。
「すいませんコンセントを探しているんですけどどこかで見ませんでした?」
乙女の柔肌程度なら容易く食い千切ってしまえそうな顎が赫々と開閉する。
商品名《ROBOT魂<SIDE EVA>
エヴァンゲリオン初号機》。
前世紀でブームを引き起こし社会現象にもなった巨大ロボットアニメの主人公機である。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あの、コンセント」
初号機の腕がみくるに向かって伸びたその時だった。
「ぴゃああああああ!!!!!!」
みくるは大きく悲鳴を上げて初号機から後ずさったのだ。
いくらフィギュアといえ初号機の風貌は二本足の獣、何の予備知識もない少女が間近で見たらびびってもおかしくない。
「待って!コンセント!」
「自分で探してくださぁぁぁぁぁぁい!!!」
焦る初号機を尻目にみくるは猛ダッシュでその場から逃げ出した。
【深夜/喫茶店前 エリアQ】
【朝比奈みくる@figma】
【電力残量:90%】
【装備:拡張パーツ(大砲)@不明】
【所持品:クレイドル、基本パーツ、拡張パーツ×1~2(未確認)】
【状態:損傷なし(胸パーツがズレ落ちている)】
【思考・行動】
基本方針:?????
1:初号機から逃げる
「ちくしょう!なんだってんだよ一体!」
みくるの姿が見えなくなり、エヴァンゲリオン初号機は地団駄を踏む。
いくら非リアで根暗な少年だったとはいえ、通りすがりの女の子から拒絶された経験はオリジナルの碇シンジの記憶にさえなかった。
だから地味に傷ついた。泣きそうだった。
「コンセント探していただけなのに畜生・・・・・・」
それとも何か、自分の外見が悪かったのだろうか。
てかパイロットの人格ならリアルアクションヒーローズに碇シンジあるんだからそっち使えよって突っ込みたかった。
日本人に道を尋ねる外国人に初号機はちょっとだけ同情した。
「そうだ、コンセント探さなきゃ」
先ほどから彼が言っているコンセントとはアンビリカルケーブルを取り付ける差込口のことである。
家内ではテレビや冷蔵庫に洗濯機といった電化製品を動かすためにお世話になり、屋外でも自動販売機に電力を供給しているアレだ。
最近マナーの悪い人間が自分の携帯電話を充電するために使用して電気窃盗行為で問題になっているアレだ。
公共で設置されているコンセントを私用で使うことは法律で禁じられているのである。
「もう電力が3分の1も切れたよ。いくらエヴァだからって燃費悪すぎだろ。
S2機関でもあれば良かったんだけどね」
この初号機も原作に習い、アンビリカルケーブルから電源を供給することで機動している。
文明が栄えている都市ならば電力は無尽蔵であるが、裏を返せばケーブルがなければほとんど動くことができない命綱である。
内部電源はあるが、原作では持って数分というところだ。
クレイドルでの充電は無防備になるので実質コンセントが見つからなければこのままリタイアとなる。
「あ、コンセントあった」
そろそろやばいなーと思ったが、喫茶店の脇に隠れるようにコンセントが設置されているのを発見した。
誰も来ない、店の建て看板の照明を照らすための電源だろうか。
別にこんなところに閑古鳥が鳴こうが知ったこっちゃないのでさっさと引き抜き充電を始めるのであった。
【深夜/飲食街の自動販売機前 エリアQ】
【エヴァンゲリオン初号機@ROBOT魂】
【電力残量:70%(回復中)】
【装備:アンビリカルケーブル】
【所持品:基本パーツ(同梱装備一式)、拡張パーツ×1~2(確認済み)】
【状態:損傷無し・充電中】
【思考・行動】
基本方針:???
1:なんなんだよ一体・・・・・・
2:とりあえず充電する
※ケーブルを外すと電力消費が酷くなります。
※ケーブルの長さについては後の人に任せます。
※その他ケーブルの制限も後の人に任せます。
【アンビリカルケーブル】
エヴァンゲリオンシリーズに登場する電源供給装置。
エヴァンゲリオンの背部に差込口があり、元の電源と繋がっている間はほぼ無制限に活動することができる。
当プログラムに置いては電源と繋げる先端のプラグがコンセント対応となっており、
これに繋いでいる間エヴァンゲリオン初号機は電力の消費を気にすることなく行動できる。
最終更新:2014年06月02日 11:49