▼


 ――――四月一日、早朝。
 無断での夜間外出から戻った龍賀沙代(わたくし)は現在、この冥界における住居である女子学生寮の大浴場(パブリックバス)に、二人の人物を伴って入浴していた。

「―——ふう。やっと人心地付いたな」

 一人目は金糸のような髪に赤い瞳をした童女。
 彼女はその身を湯船に浸し、優雅に揺蕩わせながらそう溢す。
 一糸纏わぬその肌は絹のように滑らかで、湯水に濡れたことで艶めかしさを増している。
 しかし、その右腕を覆う鱗と臀部から生えた尾の赤さが、彼女が只人ならざる存在であることを示していた。

「やはりテルマエはよい。心が安らぐ」
「俺は別に、部屋付きの風呂でもよかったんだけどな。
 ドラコーが“せせこましい風呂は嫌だ”なんて文句を言うから、面倒な礼装を用意する羽目になった」

 童女へとそう言葉を返したのが二人目。
 亜麻色の長髪を水面に揺蕩わせた、私と同年代と思われる少女。
 こちらもまた一糸纏わず湯船に浸かっており、私だけバスタオルで身を隠している事が、逆に恥ずかしくなってくる。
 彼女は童女の様な異形化した部位はないが、男勝りな口調とのアンバランスさが違和感を引き立たせる。
 それもそのはず。彼女は本当は―――

「……あ、あの」
「何を言うか葬者よ。身を清めるだけならともかく、安らぐために湯に浸かると言うのであれば、広い湯船を求めるのは当然であろう。
 それに大浴場であれば、こうして湯に浸かりながら話し合いもできるしな」
「だとしても、貴重なリソースの無駄遣いは避けるべきなんじゃないのか?
 せっかく買った礼装を潰して別の礼装に加工するなんて、効率が悪すぎる」
「そこは貴様の不足を恨むがよい。数多の能力を有していようと、行使できるのは一度に一つだけとは、全く難儀よな」

 そのことについて問いかけようとするが、あっさり聞き流されてしまう。
 声が小さかったのだろうか。
 そう思いもう一度、今度は少し強めに声をかける。

「あの!」
「む。なんだサヨ、そのように声を荒げて」
「あまり大きな声は止めてくれ。人が来たら面倒だ」

 それでようやく彼女達が私の方へと振り返り、だが向けられた二対の視線に一瞬怯む。
 しかしまた話し込まれても困るので、意を決して目下最大の疑問をぶつける。

「あの、えっと……岸浪さんは、その……だ、男性でしたよね! どうして女性になってるんですか!?」

 そう。童女――ドラコーと呼ばれたサーヴァントの葬者(マスター)である少女――岸浪ハクノは、間違いなく男だったはずだ。
 だというのに、目の前にいる岸浪さんの外見は、どう見ても少女のそれだ。
 私の部屋から大浴場へと向かう際に、何かしらの作業をしたと思ったら、唐突に今の姿へと変わったのだ。
 これはいったいどいう事か、と問いかけると、彼女(?)は自らの目元を指さしながら答えた。

「ああ。それはこの礼装の機能だ」
「れい、そう……?」

 メガネだ。示されるまで気付かなかったが、彼女(?)はメガネを掛けている。
 だがあまりにも存在感がない。こうして示された今でも、注視しなければすぐに意識から外れてしまう。

「簡単に言えば認識阻害だ。
 俺の外見に岸波白野(ある人物)の幻を被せて、俺を見た人間に“この場所に居てもおかしくない人間”だと思わせることができる。
 例えるなら……そうだな。今の時期的に、早めに入寮してきた新入生、くらいに思われるんじゃないか?」
「幻、ですか……?」
「と言っても、そんなに強力なものじゃないからNPCくらいにしか通用しないし、マスターなら……そうだな、幽霊を捜すようなつもりで見られれば簡単に見破れる。
 加えて、魔力の乱れですぐ使えなくなるから、コードキャストや他の礼装との併用もできないし」

 そう言われて、改めて岸浪さんの姿を、今度はしっかりと意識して視詰める。
 すると先程まで見えていた少女の姿は消え、彼本来の裸体―――が!?

「ひう!?」

 自分の顔が一気に赤く染まるのを自覚する。
 わかっている。さっきまで見えていた少女の姿が裸なのだから、彼の本来の姿も裸なのは当然だ。
 だが一度意識してしまったことで、同時に“この状況の異常さ”も強く意識してしまう。
 先程の繰り返しになるが、ここは大浴場で、私達は今、一緒に湯船に浸かっている(・・・・・・・・・・・・)のだ。
 私とドラコーさんは女で、岸浪さんは男だというのに、だ。

「そ、そそ、そもそも! いくらお風呂だからって、なんで二人とも裸なんですか!?」
 あまりの羞恥に、可能な限り声を抑えつつ叫ぶ。
 私みたいにバスタオルで隠すとか、簡単な仕切りを用意するとか、何か方法があったはずだ。

「お風呂で裸なのは当然だろう?」
「いえそうですけど、そもそも男女が一緒に入浴だなんて、やっぱりおかしいですよ!」
「それは、おかしいのか?」
「おかしいんです! 男女七歳にして席を同じゅうせず、という言葉を知らないのですか!?」
「そうがなるな。我が葬者は成り立ちと経歴が特異故に性差に疎い。
 貴様の乙女心からくる羞恥心はまだ理解が難しかろう」
「意味が解りません! そう言うドラコーさんは恥ずかしくないのですか!?」
「無論、恥ずかしくなどないぞ。余の肉体に恥ずべきところなどないからな」
「っ~~~……!」

 だが岸浪さんは状況のおかしさを理解していないのか首を傾げ、ドラコーさんはむしろ見よと言わんばかりに裸体を曝してくる。
 その光景を直視できず、赤面した顔を両手で隠しながら湯船に沈み込む。
 だが、つい男性である岸浪さんを意識してしまい、指の隙間から彼の方を覗き見る。
 そこには、あの男の枯れた身体とは全く異なる、年相応に均衡の取れた男性の―――

「―――!!」
 咄嗟に顔を逸らし、強く目を瞑る。
 私に出来ることは、どうしてこんなことになったんだろう、とそんなことを考えることくらいだった。


「―――では、そろそろ本題に入るとしようか」
 ここまで散々に話を横道に逸らしてきた張本人がそう宣う。
「サヨ。我等は偶然にも貴様を助け、貴様はその謝礼として自らの拠点であるこの場所へと我等を招き入れた。相違ないな」
 その言葉に、羞恥に顔を染めたまま姿勢を正し、肯く。

 そう。岸浪さん達をこの場所に連れてきたのは私自身だ。
 彼女が口にした通り、敵サーヴァントの襲撃を受け窮地に陥った私を、偶然にも居合わせた彼等が助けてくれたのだ。
 彼等からすれば、偶々巻き込まれ自身に降りかかった火の粉を払っただけなのだろうが、結果として私が助かったことに変わりはない。
 私はその礼をしたいと彼等に告げ、休める場所を求めていた彼等に自らの拠点を提示したのだ。
 私の住んでいるこの寮は女子寮だが、元々僚艦の目を逃れて夜間外出していたのだ。逆に彼等を連れ込むことに支障はなかった。
 だが想定外だったのはその後。何故か話し合いを、大浴場で行うことが決まってしまったのだ。

 ドラコーさんが部屋付きの狭い風呂に難色を示したので、大浴場があると言ったのがいけなかったのだろうか。
 ならばついでに情報交換もそこで行おうという事になり、女子寮だから男性である岸浪さんが見つかるのは問題だと言えば、先ほどの礼装が用意される始末。
 私に出来た抵抗は、せめて自身の裸は直接見られぬようにと、バスタオルで体を包み隠すことぐらいだった。
 本当に、どうしてこうなったのだろうと、あまりの羞恥に茹りそうな頭で思う。

「では質問だ。サヨよ、貴様は自身を襲ったサーヴァントの事をどれだけ覚えている?」
「え?」
 どれだけ覚えている?
 意味が解らない。どうしてそんなことを、彼女は訊いてくるのだろう。
 そう思いながらも、自身を襲ったサーヴァントの事を思い出そうと――思い、出そうと………して。

「……あれ? 思い……出せない……? そんな、どうして?」
 茹っていた頭が、急速に冷えていく。

 襲われた記憶は、ある。
 戦ったことも、殺されかけたことも、助けられたことも覚えている。
 私がこの冥界(とうきょう)に招かれてから窮地に陥ったのは、今回の襲撃が初めてだ。
 そんな死の恐怖を齎した存在の事を、忘れる事なんてありえない………はず……なのに――――

 ■■■を使い■の■■を持った、■■の■■のサーヴァント。■■■■――■■■■・■・■■■■。

 記憶に刻まれているはずの、私を襲った存在に関する情報が、何一つとして思い出せなかった。
 その事実を否定するために私は、岸浪さん達と出会った時の事を、改めて初めから思い返した。


    §  §  §


 それは、日付が変わって間もない、日が昇るにはまだ遠い未明の頃の事だ。
 聖杯戦争を戦うと決めた私は、他のマスターを捜して夜の東京を彷徨い歩いていた。
 だが戦うと言っても、真正面から決闘を申し込むわけではない。
 何故なら私には、他のマスターと比べ劣っている点が確実に二つはあったからだ。

 一つは戦闘経験の無さ。
 私の生まれ育った哭倉村において、荒事は『裏鬼道』の役割であり、私自身は真面な戦いを経験した事がない。
 妖怪『狂骨』という力こそ持っているが、特殊な力を持っているのは他のマスターも同じだろう。これだけを当てにはできない。

 そしてもう一つが、ライダーが自我を持たぬ人形であること。
 普通の主従であれば、マスターの不足はサーヴァントが補ってくれるだろう。だがライダーにはそれが出来ない。
 私の指示には完全に従ってくれるが、逆に言えば一から十まで私が指示しなければ、何も出来ないのだ。

 つまりこの聖杯戦争でどう戦うかは、マスターである私が決めなければならない。
 これまでの人生でただの一度も実戦を経験したことのない、この私が、だ。


 最初に思いついたのは、ライダーをバーサーカーのように単独で暴れさせる方法だった。
 だが、それは早々に破棄した。他のマスターが多数生存している現状では、先日の怪物達のように複数組で処理されるのが目に見えていたからだ。
 そこでその逆。アサシンのように立ち回る方法を模索した。

 そうして考えを廻らせた末に、私は自らを囮として他のマスターを釣り出す策に思い至った。
 『狂骨』の最大の特殊性は、妖怪であること。つまり、“普通の人間には視認できない”。
 姿を消した状態ではサーヴァントにも視認できないことは、ライダーで試して証明済みだ。
 あとは無力な少女のフリをして他のマスターに接触し、その際に『狂骨』を憑りつかせればいい。
 成功したなら私自身は安全圏へと離れ、そのマスターが隙を晒した瞬間、『狂骨』に命じて殺害する。
 それで終わりだ。

 当然、他のマスターとの接触には危険が伴うが、たとえその場で戦闘になったとしても大丈夫。
 ライダーは非常に頑丈なサーヴァントだ。相手がどんなサーヴァントだったとしても早々に負けることはないはずだ。
 そして『狂骨』の方も、実際に害をなす際には姿を現す必要はあるが、憑りつかせるだけならその必要はない。

 重要なのは、『狂骨』と私の繋がりはもちろん、その存在を悟られないこと。
 この冥界にはあまりにも死霊が多い。
 哭倉村の『裏鬼道』がそうであったように、他のマスターが幽霊や妖怪への対策をしていてもおかしくはない。
 『狂骨』も強力な妖怪であるため、多少の対策程度なら簡単に破れるが、より特化した対策をされてしまえばわからない。
 もし『狂骨』の力が通用しなければ、私にはライダーを暴れさせる以外の方法が無いのだ。
 だから、『狂骨』を用いた寮からの抜け出しは頻度を減らし、その移動も最低限にした。


 ――それがいけなかったのだろうか。
 私自身を囮にして他のマスターを釣り出すという作戦は、思ったような成果を得られなかった。
 マスター達の動きが活発になる筈の夜間の外出中にも係わらず、まだ一度も他のマスターと遭遇できていなかったのだ。
 昨日の昼間の赤い覆面の人が、私が最後に遭遇したマスターだった。

 そうして辿り着いた庭園――新宿御苑で、はぁ、と溜め息を吐いて空を見上げる。
 東京の街明かりに照らされた夜空は、星明りが幽かに見えるだけ。
 月は見えない。今日が偶々新月だったのか、高層ビルの陰に隠れているのか。
 嫌な思い出しかない哭倉村だが、夜空の光景だけは都会よりも美しかったのだと、この冥界に来て初めて知った。

「……今日はもう、帰りましょうか」
 視線を下ろし、一人そう呟く。
 まだ昼間で、仮にも私を助けてくれた(ヒーロー)だからと、彼に『狂骨』を憑りつかせなかったのは失敗だっただろうか。

 ……いや、戦うと決めてからの夜間外出数は、まだ片手の指で数えられる程度。
 それに昨夜に都内上空で行われた戦闘の影響で、偶々他のマスター達も外出を控えていただけ、という可能性もある。
 まだ焦る必要はないはずだ。そう自分に言い聞かせ、公園の外へと足を向けた。
 ―――その時だった。

「ライダー?」
 命令した訳でもないのに、唐突にライダーが実体化した。
 こんなことは初めてだった。

 一体どういうことか、と声を掛けるが、返事はない。
 彼はいつものように命令を待っているだけ……いや、もしかして周囲を警戒している?
 普段とは明らかに違うその様子に違和感と、滲み出るような焦りを覚える。

 自分が気付かないうちに、いったい何が起きているのか。
 そう思い、慎重に辺りを見渡し、ようやく周囲のおかしさに気づく。

 ―――公園の街灯が妙にぼやけ、視界が白く霞んでいる。

(これは、■でしょうか……?)
 哭倉村でも時折見た光景に、そう判断する。
 東京でも■は出るのですね、と妙な感心を懐き、あれ? と首を傾げる。

 ……おかしい。
 確かに春は■の季節だが、その主な発生条件は風の弱い雨上がりの朝だ。
 しかし昨日は雨など降っていないし、今は朝と呼ぶにも早過ぎる時間だ。
 田舎と東京とでは条件が違うのかもしれないが、だとしても濃くなるのが早過ぎる。
 風が弱いことが条件である以上、他所から流れてきたという事もあり得ない。

 つまり、この■は正常なものではなく、それが意味することは即ち―――!

「っ、ライ……ッ!?」
 瞬間、鼻の奥で火花が散るほどの痛みに襲われた。
 反射的に咳き込み、口を抑え込む。
 間違いない。この■は、敵の攻撃によるものだ……!

「ライダー、■を掃って!」
 咄嗟の判断で自身に『狂骨』を憑りつかせ、身体機能を強化。
 痛みを堪え、敵の攻撃と思われる■の排除を命じる。

「御主人サマの、仰セの通リニ……!」
 即座にライダーがその腕を振り抜き、周囲の大気ごと■を“弾いて”排除する。
 すると鼻の奥で爆発していた激痛が、完全にではないがスッと引いていく。

(やはりこの■は、敵の攻撃で間違いないですね。
 ならこの■をどうにかできれば、私からも反撃できるはず、ですけど……!)

 ライダーに弾かれたはずの■は、未だに自分たちの周囲を漂っている。
 いやむしろ、ライダーに弾かれながらも周囲に留まったことで、この■の異常さが浮き彫りになったと言っていい。
 むしろ浮き彫りになったことを幸いと、一気にその濃さを増して私達を飲み込もうと迫ってきている。
 その度にライダーに弾かれ、結果空いた穴は周囲の■が即座に埋めている。

 ……おそらく、ライダーが全力を出せば、この■を完全に排除することは出来るだろう。
 意思を持ったように動くとはいえ、所詮は衝撃波に飛ばされる程度のもの。ライダーの全力攻撃に耐えられるとは到底思えない。

 だが、それは出来ない。
 なぜなら、■は大気に溶け込んで周囲一帯に漂っている。それを全力で排除するという事は、“全方位に強力な衝撃波を放つ”という事だ。
 私の脆弱な身体では、たとえ『狂骨』で身を守ったとしても、その衝撃に耐えられない。
 そして私が傷付かないよう加減した一撃ではこの■を掃うことは出来ず、そもそも主人の尊命を第一とするライダーは、それ故にその命令を実行できない。

 ならば逆に、こちらから反撃に打って出る?
 それこそ不可能だ。敵はまず間違いなく、この■の中に潜んでいるだろう。
 だがそれを見つけ出す術を、私達は持っていない。
 私が今無事なのは、ライダーが■を弾いて寄せ付けないようにしているからだ。
 濃度の薄い状態であれほどの痛みを齎したのだ。
 彼を攻撃に回してしまえば、私は途端に■に飲まれ、そのまま死ぬだろう。

 ならば『狂骨』はどうか。
 確かに『狂骨』なら、この■の中でも問題なく進めるだろう。
 だが私の方で敵を見つけられない以上、『狂骨』自身に探してもらう必要がある。
 加えて、敵が一人とは限らない。私達がそうであるように、マスターとサーヴァントが一緒にいる可能性は十分にある。
 この■がどちらの能力かはわからないが、もう一人が周囲の警戒をしていれば、それだけで『狂骨』には対処されてしまうだろう。

 つまりは詰み。今の私達に、この敵を倒す術は存在しない。

 可能性があるとすれば、ライダーの足手纏いとなっている私が“この場からいなくなり”、ライダーがその全力を発揮した場合だけだろう。
 ライダーの能力を用いれば、私だけがこの場から撤退し、その全力を発揮させることが可能となる。
 だがそれは、敵の正体が何もわかっていないこの状況で、命令されたことしか実行できないライダーをこの場に残すという事だ。
 そして同時に、ライダーが戻るまでの間、彼という最大の守りを失うことと同義でもある。
 もしその瞬間に敵に襲われれば、私は成す術なく殺されるだろう。

 ここでライダーと共に撤退する、という選択肢もある。
 だがそれは、敵の事が何もわからないまま、私達の情報を、少しとはいえ敵に渡してしまうという事だ。
 その場合、敵が積極的に私達を狙ってきた時に、何の対処もできないということに他ならない。
 間違いなく、私が考えた作戦は実行できなくなる。
 この聖杯戦争中、この敵が敗退したと確信できるまで、怯えて過ごす事しか出来なくなるのだ。

 ……あるいは、ここで令呪を切るか。
 元よりライダーは命令に従順だが、令呪にはサーヴァント単体では不可能な無理を可能とさせる力があるという。
 これを用いれば、私がこの場に残ったまま、ライダーにこの■を完全排除させることも可能かもしれない。
 だがそれは、たった三度しか使えない切り札を、こんな序盤で切るという事に他ならない。

(いったい、どうすれば……!)

 残された選択肢は三つ。
 私だけ撤退するか、ライダーと共に撤退するか、令呪を切るか。
 そう長くない時間。悩みに悩んだ末に、私はライダーへと命令するために声を上げ―――

「ライ――」

 ―――ライダーの巨大な背中に、同化するように張り付く、■■の■■の姿を見た。

「――ダー?」
 そのおかしさに、下そうとした命令が頭の中から消し飛ぶ。

「残念、時間切れ」
 奇妙に濁った声だった。
 何人もの■■が二重、三重に同じセリフを口にしたかのような、不思議な声。

「ッ――――――――!」
 ■■の存在を察知したライダーが、マスターの危機を排さんと即座に動く。
 だが、致命的なまでに遅い。ライダーが振り抜いた腕をひらりとかわし、■■はそのまま私へと肉薄する。

「じゃあ、斬るね」
 そしてその手の■■■を、私の首を目掛けて振り抜き――――。


「―――そこだ、ドラコー」


 ■■■を持った少女の■手を、赤い閃光が貫いた。

「ッ!?」
 ■■は即座に私から、否、閃光を放った襲撃者から距離をとる。
 一方の私は何が起きたのか全く理解できず、そのまま尻餅をつく。
 そして閃光を放った襲撃者は、赤い尾で■を掻き分けながら悠々と姿を現した。

「チッ、狙いも魔力の収束も甘い。やはり実体化しておくべきだったか?」
「いや、それだと多分気付かれてたんじゃないかな。ドラコーの気配は、どうにも他のサーヴァントを刺激するみたいだし。
 それはそうと、あの見た目。この■と併せて、ドラコーの予想していたヤツで間違いないな」
「うむ。つまり生かしておけば、後々面倒になる。よって手筈通り、ここで仕留めるぞマスター」

 現れたのは、高校生くらいの少年と頭と両肩に王冠を被った金髪の童女。
 少年におかしなところはないが、童女の方は左腕以外の四肢が赤い異形となっており、尾まで生えている。
 その姿からして、少年がマスターで、童女がサーヴァントだろうか。
 何か対策をしているのか、周囲の■の影響を受けた様子もなく平然としている。

「■手、なくなっちゃった。ひどいことするなね」
 ぽつり、と■■が呟く。その■い瞳は真っ直ぐに二人を見ている。
 ■の中からの奇襲という自身の御株を奪われた■■は、酷く冷淡な表情を浮かべている。

()かせ、殺人鬼(アサシン)。その程度の傷など、魂喰いをしている貴様なら容易に治せよう」
 まあそのような隙は与えぬが、と異形の童女も怯むことなく言い返す。
 ■■と金髪。■い■と赤い瞳。背丈もよく似た両者は、ともすれば鏡合わせの存在のようにも思えた。
 ―――だがそれは勘違いだ。

「へえ、よく分かったね。でも、別にいいじゃない。魂喰い(それ)はあなたも同じでしょ……ねぇ?」
「貴様と一緒にするでない。余は丹念に調理された皿しか食わぬ。まあ、悪食であることは否定せぬがな」

 次の瞬間、童女の顔先で火花が散る。
 いつの間にか放たれた■■の■■■を、童女が異形の右腕で弾いたのだ。
 だがその隙に■■は後方へと飛び退き、■の中へと身を隠す。
 童女も即座に右手から魔力の弾丸を乱射するが、■の中に隠れた■■には中らない。

「チッ、面倒な。だがよい。貴様はどの道、ここで敗退(デッド・エンド)だ」
「やだよ。まだ、お腹すいてるんだもん」

 異形の童女が魔力を滾らせる。
 その背後に、無事な■手に■■■を構えた■■が肉薄する。
 ■に潜んだという利を逆手に取った奇襲。私では反応すらできない。
 だが童女は即座に反応し、■■の奇襲を迎撃する。

 鏡合わせの様な姿の彼女たちは、歪んだ鏡像(相手の存在)を否定するために、躊躇うことなくその凶器(ちから)をぶつけ合っていた。


「―――よし。対策は、これで出来たはず。
 それで、アンタはどうするんだ?」

「え?」
 不意に声を掛けられ、呆けた声を出してしまう。
 声の方へと向けば、異形の童女のマスターだろう少年が、彼女達の戦いに意識を向けたまま、私を横目に見ていた。

「どうする、とは……」
「見ていた感じ、あのアサシンに殺されかけてたみたいだけど、まだ戦う気はあるのかって訊いてるんだ」
「あ――――――」

 言われて、ようやく思い出す。
 そうだ。私は殺されかけたのだ。あの■■の■■に。

「は、っ…………!」
 今更にやってきた死の実感に、息が詰まり、体が震えだす。

 死んでいた。
 彼等がいなければ、間違いなく殺されていた。
 ……戦うと決めたのに。
 自分を囮にしてでも、他のマスターを殺すつもりでいたのに。
 何も出来ないうちに、逆に一方的に殺されかけた。

 だというのに、彼は何と言った?
 まだ戦う気はあるのか、と訊いてきたのか?
 誰と? あの■■と? それとも……彼等と?

「いえ……私に、戦うつもりはありません」

 出来る訳がない。
 彼のサーヴァントはあの■■と、この■の中で平然と戦っている。
 きっとライダーとも互角以上に戦えるのだろう。
 けど、ライダーではあの■■に敵わないことは、すでに証明されてしまった。
 もし彼のサーヴァントがあの■■に殺されれば、そのまま私も、今度こそ殺されるだろう。

 つまり私に出来ることは、彼のサーヴァントと協力して■■と戦うか、彼女たちの戦いを見届けるかの二つだけだ。
 けれど、殺されかけて恐怖に竦んでしまった私には、ライダーに戦いを命じることが出来なかった。
 ライダーが近くに居ても殺されかけたのだ。戦いのために彼が離れれば、その瞬間に今度こそ殺されるかもしれない、なんて。
 そんな風な考えが、頭にこびり付いて離れなかった。 
 結局私は、装うまでもなく、無力な少女に過ぎなかったのだ。

 ……ああ、でも。
 今ならば。
 こうしてサーヴァントから離れている、この瞬間であれば。
 この少年に、『狂骨』を作戦の通りに―――

「そうか。アンタの後ろの連中(・・・・・・・・・)はやる気みたいだったから、アンタもそうなのかと思ったけど、違うんだな」

 ――――――――。

「――――――え?」

 待って。
 今彼は、何と言った?

「もしかして、視えて……いる(・・・  ・・)んですか?」
 元の世界で私が殺した、私に取り憑く彼等の怨念。
 それを彼が、“あの人”と同じ様に視ることが出来るのだとしたら、それは―――

「視ようと思えば、だけどな。
 基が似たようなものだからか、その手の気配には敏感なんだ」

 ―――それは、つまり。
 サーヴァントであっても見付けられない筈の『狂骨』を、彼は捉えることが出来るという事で。
 延いては、ただの一度も実行にすら移せないまま、私の作戦が瓦解したという事に他ならない。

「そん、な……」
 その事実に、戦うと決めたはずの自分の心が、ポキリと折れた音を聞いた気がした。


「ここで仕留める! 合わせよマスター!」
 異形の童女は全身から魔力を放出し、己がマスターへと声を張り上げた。
 彼女の周囲の■はまさに雲散霧消といった有り様で、当然そこに隠れていた■■の姿も露わとなっている。
 少年は即座に私から視線を外し、■■の方へと右手を向けた。

「コード・キャスト――《shock(64);》!」
 彼の手から放たれる何かしらの術式。
 それは■から炙り出された■■へと見事に命中し、その動きを一瞬だけ硬直させる。

「死に絶えよ!!」
 その一瞬の隙に、童女は異形の右腕に膨大な魔力を込め、■■へと叩き付けた。

 公園の地面が砕け、周囲の■の大半が吹き散らされる。
 ライダーの本気にも劣らない必殺の一撃。その直撃を受けたのであれば、あの■■であっても無事では済まないだろう。
 だがその一撃を放った童女は、不満げな表情を浮かべていた。

「―――わたしたちの真名()は、■■■■・■・■■■■。
 つぎに会ったときは、あなたたちのお名前、教えてちょうだい?
 ぜったいに、ころしてあげるから……!」

 どこからか響く、殺害予告の様な■■の言葉。
 それが終わると同時に、僅かに残っていた■も完全に消え去った。

「すまぬ葬者よ、逃げられた。おそらく敵マスターの令呪であろう」
「いや、令呪を使われたのならしかたない。ここは相手に令呪を使わせただけ良しとしよう。
 それに一応だけど、アイツのスキルへの対策はしたしな。まあ、それが上手く機能するかは賭けだけど」
 それを確認して、少年と異形の童女も戦闘態勢を解く。

 それが私の、聖杯戦争における初めての実践。
 その顛末だった。


    §  §  §


 私を襲ったサーヴァント。その詳細を、思い返した記憶を頼りに再び思い出そうとする。
 だが……。

 ■■■を使い■の■■を持った、■■の■■のサーヴァント。■■■■――■■■■・■・■■■■。

 やはり、何一つとして思い出すことは出来なかった。
 ……いや、今となっては、私を襲った存在が、本当にサーヴァントだったのかすら怪しく思えた。

「《情報抹消》、というスキルがある」

 覚えているはずの事を何一つとして思い出せないという事実。
 その異常さに酷く混乱し動揺する私に、ドラコーさんは落ち着いた声でそう話しかけてくる。

「その効果は文字通りに、戦闘終了時に自身を目撃した者の記憶から自身に関する情報を抹消するというものだ。
 無論、その度合いはスキルのランクにもよるが、高ランクになれば記録媒体などからも消し去れるという。
 余らが貴様を襲ったサーヴァントに関する情報を思い出せぬのも、おそらくはそのスキルか、類する効果を持つ宝具が理由だろう」

 ―――なんですか、それは。
 戦いが終われば、自分に関する情報を全てを忘れさせるスキル?
 そんな能力、反則もいいところではないか。

 だってそうでしょう?
 それはつまり、もし仮に私を襲ったサーヴァントが無害なフリをして近づいてきても、私達には判らないという事だ。
 最初に敵対して情報を抜き出しておきながら、次に会った時には味方のように振る舞うことも出来てしまう。

 言ってしまえば、私が行おうとした作戦の上位互換。
 利用するだけ利用して、最後に寝首を掻くなんてことは容易だろう。
 もし途中でバレて敵対しても、“離脱してしまえばまた忘れる”のだから。

「故にこそ、可能であればあの場で仕留めたかったのだが……。
 あそこはやはり、我が宝具によって逃げ場を断つべきであったか」
「いや、宝具の発動にはタメがいる。相手が令呪を使ってきた以上、結果は変わらなかったんじゃないか?
 だとしたら、余計な情報を与えなかった分こっちが正解だ」

 ………、あれ?

「あの、どうして令呪が使われたことは覚えているんですか?」
「そこがこのスキルの穴よ。
 情報抹消は確かに情報を消し去る。だがそれは、あくまでも“目撃者の得た、自分に関する情報のみ”に対する効果だ。
 交戦中にその場におらぬ者と連絡を取れば、その者へと情報は洩れる。目撃者ではないからな。
 そして自分ではない以上、マスターの情報も完全には消せぬ。
 確かに自身のマスターがその場にいた場合、その者が自身のマスターである事は抹消できよう。
 だがそのそのマスターと敵対していた場合、その敵対したという事実はそうそう消し去れぬ。自身が相手と敵対することと、マスターが相手と敵対することは別の話だからな。
 故に、このスキルを持つサーヴァントのマスターは、大抵は戦いの場に姿を見せぬ」

 それは当然だろう。
 いくらサーヴァントが自分の情報を消そうと、マスターが特定されてしまえば意味がない。
 そして一向にサーヴァントの詳細が分からないマスターなんて、危険視されて然るべきだろう。
 だって何をされるか判らないのだ。そんな危険な人物を放って置く訳がない。
 何しろマスターさえ殺してしまえば、たとえサーヴァントがどんな能力を持っていようと、それで御終いなのだから。
 ――――それに何より、聖杯戦争は元々、ただ一人の生き残りを決める殺し合いなのだから。

「そしてそれは、令呪であってもそうだ。
 確かに令呪とサーヴァントの関係性は深い。だがそれ以上に、その主体はマスターの方にある。
 加えて余は、別に相手マスターが令呪を使ったと確信していたわけではない。
 確実に仕留めていたはずの状態から逃したという事実。そこから“おそらく”“あの場に居なかったマスターが”“令呪を使ったのだろう”、と予測を立てたにすぎん。
 もしかしたら我らが気付かなかっただけで、彼奴にも協力者がおり、その者の手によって逃れた、という事とて十分にあり得る。
 むしろ“彼奴のマスターが令呪を使った”と確信していれば、その情報(きおく)は容赦なく消されていたであろうな」

 関係性のない、確信のない不確定の情報だからこそ抹消できない。
 なるほど。確かにそれは、情報抹消スキルの穴だと言えるだろう。

「して、我が葬者よ。
 貴様は言っていたな。彼奴のスキルへの対策はした、と。
 その対策とやらを教えてもらおうか」
「わかった」

 岸浪さんはドラコーさんの言葉に頷くと、これだ、と言って左腕を見せてきた。
 そこにはマジックペンで、何かの名前が書かれている。

「えっと、フランシスコ・ザビ―――」

「違う、それじゃない」
 岸浪さんは慌てて左腕を戻しながらそう言って、何かを確かめる様に書かれた文字に触れる。
 そして不意に後ろを振り返った後、首を傾げながらメガネを外し、再び左腕を見せてきた。

「なんだ。悪戯でもされたか?」
「どうやらそうらしい。ついでに、ばかじゃないの、と罵倒もされた。意味が解らない」
「ふはっ! もしも(if)の月の王め、内心は鉄の如きであろうと、乙女であることには変わらぬという事か」
(悪戯に、罵倒もされた? それに、イフの月の王って……)

 二人の会話に、意味が解らないのは私の方だ、と思いつつ、改めて岸浪さんの左腕を見る。
 そこには、何かの刃物で付けられたような傷が、文字のように刻まれていた。
 これは、英語……だろうか……。

「えっと……えふ……あーる……おー……」
「FROM HELL―――フロム・ヘル。日本語に訳せば、“地獄より”だな。
 ……なるほど、彼奴か。確かに“コレ”を見れば、余は奴を思い浮かべよう」
「あの、何がわかったのですか?」
「無論、貴様を襲ったサーヴァントの正体だ」

 ドラコーさんはそう言うが、私にはサッパリ解らない。
 私を襲ったサーヴァントとこの文字に、一体どんな関係があるというのか。

「奴のクラスはアサシン、真名は“斬り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)”。
 イギリスのロンドンにて娼婦たちを惨殺したとされる正体不明の殺人鬼。その正体の一つとされる、堕胎された水子たちの怨霊の集合体だ。
 そしてフロム・ヘルとはな、ジャック・ザ・リッパーが送ったとされる手紙の署名のことだ」
「地獄から……怨霊の、集合体……」
 それは、まるで――――。

 と物思いに耽る私を横に、二人は言葉を交わし合う。

「しかし、よくこのような証拠の残し方を思いついたなマスター。
 ジャック・ザ・リッパーは確かに正体不明であるが、それでも二つの証拠を残している。
 一つはジャック・ザ・リッパーが送ったとされる手紙。だがその送り主が、真にジャック・ザ・リッパーであったのかは定かではない。
 つまりその情報だけで、あのジャック・ザ・リッパーを指す証拠である、と断言することは出来ない。
 そして二つ目が、惨殺された娼婦の死体だ。如何に奴がスキルによって自身の痕跡を消そうと、殺された者の死体は残る。
 なぜなら、“殺された娼婦の死体が発見されなければ、ジャック・ザ・リッパーという伝説は生まれなかった”からだ。
 そして死体には、何を使って殺されたか、という情報――つまりは傷跡が確実に残る。
 その傷は彼奴のナイフによるものであろう? 奴めが取り落とした物を使ったか」
「多分な。俺にはもう内容を思い出せないけど、戦いの前に、ドラコーからあのサーヴァントの情報を聞いた事は覚えてる。
 なら“あのサーヴァントの情報”は思い出せなくても、そいつとは関係のない“ジャック・ザ・リッパーの情報”としてなら、連想させることが出来るかも―――と考えた……んだと思う」
「そこは断言せよ。確かに賭けの要素も大きかったが、貴様はその賭けに勝ったのだ。誉めて遣わす。
 そして、だ。彼奴らは今頃、我らが自分達の事を忘れていると思っているはずだ。
 すなわち、再び奇襲してくるにせよ、味方のフリをしてくるにせよ、その裏をかくことができるという訳だ」
「ああ、わかっている。次は令呪を使う隙も与えずに、確実に倒そう」

 その様子はまるで、それこそがマスターとサーヴァントの正しい関係性のようで。
 私のサーヴァント(ライダー)がただの人形でしかないことが、少し恥ずか(うらめ)しく思えてしまった。


     ▼   ▼

 ――――一方その頃。

 多彩な事業に手を出す大企業、外資系企業ベネリットグループ。
 その末端である、福祉工学に関与するシン・セー開発公社の東京本社。
 そこに、龍賀沙代を襲ったサーヴァントであるジャック・ザ・リッパーと、そのマスターのプロスペラ・マーキュリーは居た。

「―――これで、良し。
 どうジャック? 違和感はない?」
「うん、だいじょうぶ。ちゃんと思った通りに動くよ、おかあさん」

 プロスペラの問い掛けに、ジャックは右手を前へと突き出し、その動きを確かめるように動かしながら答える。
 それは龍賀沙代を殺す直前、見覚えのない学生服の少年のサーヴァントによって横槍を入れられた際に吹き飛ばされたはずの右手だ。
 それがこうして、何事もなかったかのように存在していた。

 無論サーヴァントである以上、霊核が無事で魔力さえ十分なら、たとえ半身を吹き飛ばされようと回復できる。
 でありながら、ジャックがこうして右手の動きを確認しているのは、通常とは異なる理由があるからだ。

「一回はずして、つけなおして」
 カシャン、と音を立ててジャックの右手首が外れ、ジャックはそれを当然のように付け直し、再び動作確認をする。

 ―――義肢。
 それが今、ジャックが自身の右手の動作確認をしている理由だ。
 ジャックは異形の童女によって吹き飛ばされた右手を、魔力補給によって回復するのではなく、なんと義肢へと置き換えていたのだ。
 そして、その義肢が普通と異なるのは。

「うん。ちゃんとつけていれば、ふつうの手にみえる。あとは――」

 ジャックが一瞬霊体化し、すぐに実体化する。
 そして再び自身の右手を確認すれば、実体化とともに再構築されるはずの右手は、義肢のまま。
 さらに言えば、右手の義肢はジャックの霊体化に追従して消えていたのだ。
 それは即ち、後付けの義肢がジャックと霊的に結びついている、という事に他ならない。
 そしてそれを可能としたのは、プロスペラの技術とジャックのスキルの合わせ技によるものだ。

「霊体化も……うん、もんだいなし。さっすがおかあさんだね」
「凄いのは貴女もよ、ジャック。私では霊的な処置は行えないもの」

 そもそもジャックは、プロスペラに召喚されたことで、《義肢製作者》というスキルを後天的に習得していた。
 だが基となったスキルの影響か、そのスキルによって作成される義肢は、機能としては十分だが、一見して義肢であると判別できる物になってしまう。
 しかしそれを本職の義肢製作者であるプロスペラが一からサポートすることで、霊体化を可能としながらも本物の右腕と見紛う一品として完成させたのだ。

「ふふ、おかあさんといっしょ」

 ジャックが自身の右手を義肢へと置き換えたのは、彼女がそう望んだからだ。
 失ったのはプロスペラと同じ右手。治すのは容易だが、どうせだったらおかあさんと同じにしたい、と。
 プロスペラは母としてそれに応えたが、ジャックのその様子に、内心ではどのように思っていたのか。

「けど残念だったわねぇ。まさかあんな邪魔が入るだなんて」

 それを顔に出すことなく、プロスペラはそう口にする。


 龍賀沙代。
 画期的な医薬品の開発で栄えた大地主の子女。
 彼女が葬者(マスター)であることは、比較的早期にに把握していた。
 何故なら『龍賀』とは、プロスペラにとって警戒すべき、ベネリット本社以上の権力を有した存在の一つだったからだ。

 当然プロスペラは東京に存在する『龍賀』の関係者を調査した。
 結果出てきたのが、龍賀沙代の存在。
 アサシンに指示を出して周辺調査を行えば、一人上京してきた大地主の子女という、実に分かりやすいプロフィールがそこにはあった。
 加えて調査を行ったジャックは、彼女を指してこう口にした。

 ―――あの人からは、わたしたちと同じようなにおいがする、と。

 ジャックと同じ匂いとは即ち、怨霊の集合体の気配だ。
 そんなものを、一介のNPCがさせているはずがない。
 龍賀沙代がマスターであることは明白だった。

 後は簡単。彼女とそのサーヴァントの情報を抜き出し、利用できそうなら利用して、そうでなければ殺せばいい。
 しかも都合のいいことに、彼女は現在の住処を夜な夜な脱け出し、深夜徘徊をしているではないか。
 これはもう接触するしかない、と折を見てジャックを送り込んでみた結果が、あれだった。

「ごめんなさい、おかあさん。令呪、つかわせちゃった」
「気にする必要はないわ、アサシン。だって、使ったのは“私達の令呪ではない”もの」

 その言葉とともにプロスペラが向けた視線の先には、右腕の義肢が保管されている。
 ただし、その義肢はプロスペラが作ったにしてはあまりにも歪なものだった。
 だが注目すべきはその拙さではなく、その義肢の手首から先。つまりは右手の部分だ。
 何故ならその右手は“生身のもの”であり、さらに言えば、その右手の甲には、二画から成る赤い模様――“一画欠けた令呪”が存在していたのだから。

 “それ”は、プロスペラのものではない。
 プロスペラの右腕は完全な義肢である為か、彼女の令呪は左手の甲に宿っている。
 であれば、その令呪の宿った右手は何なのか。
 簡単だ。プロスペラ達が殺したマスターから奪い取ったものに他ならない。

 令呪狩りの噂を聞いたプロスペラは、“令呪は奪い取れるものである”事を理解した。
 そして義肢を利用することで、その令呪を自らのものとして利用することを思いついたのだ。
 無論、たとえ義肢を経由しようと、奪った右手をただ繋いだところで令呪は使えない。
 だが、プロスペラにはジャックがいた。

 ジャックのスキル《外科手術》は、令呪の移植さえ可能とする。
 そのスキルは現在《義肢製作者》に置き換わってしまったが、元々の機能が失われたわけではない。
 つまり現在のジャックは、プロスペラと他者の令呪を霊的に繋ぎ使用可能とさせる義肢を製作できるのだ。
 これはプロスペラにも出来ない、ジャックだけの特殊技能だ。
 それによってプロスペラは、『令呪の補填が容易である』という、他のマスターと比べて圧倒的なアドバンテージを得ていた。

 と言っても、それにも限度はある。
 一度に使える令呪は、自分本来のものと義肢のものを合わせた六画分までであり、それ以上は義肢を交換する必要が出てくる。
 令呪自体を直接プロスペラに移植すればその制限はなくなるが、他のサーヴァントと繋がっていた令呪の移植にはリスクが伴う可能性があった。
 ならば義肢の生身部分に移植すれば、と思うかもしれないが、

「でも令呪の負荷で義肢の部分が壊れちゃったから、後で直さないとね」
「うん。もっとたくさんれんしゅうして、次はこわれないように作るね」

 生身と生身を義肢で繋ぐという無茶を行っているためか、どうにも義肢に掛かる負担が大きく、今回のように令呪を使用した際に壊れてしまう可能性があった。
 そして義肢が壊れてしまえば、義肢に補填された令呪全てが使用不可能になる。
 令呪の使用を可能とする義肢の作成はジャックにしかできない。戦闘中に壊れても、その場で直すことは出来ないのだ。

 加えて最悪の場合、義肢の破損の影響で、令呪のある右手自体が駄目になる可能性もあった。
 そうなってしまえば、補填のための令呪も集め直しとなってしまう。そして令呪を得るには、他のマスターを殺す必要がある。
 だがそもそも、令呪とは一人のマスターに三画だけ与えられるもの。マスターを殺す手段を得るためにマスターを殺す、という矛盾がそこにはある。
 今はまだそのマスターが複数人いるために解決は容易だが、残り人数が減る程に補填の難易度は上昇していく。
 たとえ補填が容易であろうと、令呪がいざという時の切り札である、という事実に変わりはないのだ。

「それに、次はぜったいまけないんだから」

 その言葉に思い返すのは、令呪を使う原因になった相手。
 彼らの存在は、プロスペラにとって完全な想定外であった。
 彼らさえいなければ、ジャックは龍賀沙代を殺し、彼女たちは一歩、聖杯へと歩みを進めていただろう。
 だが結果として龍賀沙代は殺せず、彼らが手を組む余地を残してしまった。

 無論、得るものはあった。
 龍賀沙代の能力の一端と、彼女のサーヴァントの姿。
 特に驚いたのは、あのサーヴァントだ。様子こそ異なっていたが、自警団を自称するヘイローを持った少女と同じサーヴァントの姿をしていた。
 彼女のサーヴァントは、ヘイローの少女のサーヴァントと同じ英霊なのか。それとも、ただ姿が似ているだけなのか。
 同じであれば、彼女たちに対する情報収集は、今よりずっと容易なものとなるだろう。
 ……しかし。

 その得たものを上回る懸念事項。
 あの少年とそのサーヴァントは、初見かつ霧の中という、こちらが圧倒的有利な状況下でジャックを追い詰めて見せた。
 そして、そもそも令呪を使う前に殺されてしまえば、どれほど大量の令呪を持っていても意味がない。
 今回はプロスペラの令呪使用に対する抵抗が低く、更には初めから撤退を視野に入れていたために事なきを得たが、場合によってはあの場で敗退していた可能性もあった。
 加えて。

「だいじょうぶだよ。だってあの人たち、わたしたちのこと忘れてるもん。
 だからね、安心して、おかあさん」

 単純な能力差でアサシンを圧倒できるであろうサーヴァントは、彼等以外にも存在する。
 昨夜に東京都内上空で起きた三騎のサーヴァントによる戦闘は多くの者(マスター)が目撃しており、それはプロスペラも例外ではない。
 そして純粋な戦闘能力という面においては、ジャックでは到底彼らには敵わない。
 故に、もし真正面から戦うような事態になった場合、令呪の使用は必須となるだろう。

「そうね。信じてるわ、ジャック」

 何か、相手の虚を突き、隙を作れるような一手を用意する必要がある。
 攻撃であれ、撤退であれ、それによって一瞬でも隙を作ることが出来れば、令呪の行使によって能力差の不利を覆せるはずだ。
 プロスペラは楽しそうに右手を動かすジャックの、その義肢を見つめながら、そう口にしていた。


【千代田区・シン・セー開発公社東京本社/一日目・早朝】

【プロスペラ・マーキュリー@機動戦士ガンダム 水星の魔女】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]いつもの義肢(右腕)、拳銃及び弾薬
[道具]義肢令呪(残り?画)、他不明
[所持金]とても潤沢
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。エリクト・サマヤが自由に生きられる世界を作る。
1.自身の社会的地位や、アサシンの《情報抹消》スキルを活用して他マスターの情報を収集する。
2.1.によって得た情報で、他マスターを利用できそうなら利用する。出来なさそうで、かつ可能なら殺害。
3.他マスターを殺害した場合、可能であれば令呪も奪い、義肢令呪に加工する。
4.学生服の少年(岸浪ハクノ)とそのサーヴァント(ドラコー)のような、初見でアサシンを殺し得る存在を警戒。
5.アサシンの対戦相手に隙を作れるような一手を用意する。
[備考]
※3月31日深夜に都内上空で行われた戦闘を目撃しています。
※龍賀沙代の冥界におけるプロフィールを把握しています。

【ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apocrypha】
[状態]回復済み、右手義肢化
[装備]『解体聖母』、スカルペス
[道具]なし
[所持金]おかあさんにあずけてる
[思考・状況]
基本行動方針:おかあさんの指示にしたがう
1.おかあさんといっしょの右手!
2.次はぜったいころす
[備考]
※龍賀沙代から、自分と似たような匂いを感じ取りました。

【義肢令呪】
他マスターを殺して奪った令呪付きの右手を、ジャックがスキルで義肢へと加工したもの。
加工された右手に刻まれた令呪を、プロスペラが自身のものとして使用可能になる。
しかし令呪使用時にその負荷によって義肢部分が破損する可能性があり、破損した場合、残りの令呪は使用不可能になる。
残った令呪ごと破損する可能性もあり、令呪を複数同時に、または連続して使用するほどに破損する可能性は高くなる。


    ▼  ▼  ▼


 そうして視点は半ば戻り。

 これ以上はのぼせるから、と大浴場から上がった岸浪ハクノは現在、龍賀沙代の自室の窓辺で涼んでいた。
 春の早朝の風は火照った体には心地よく、しかし藍色に染まり始めた空の明るさは、徹夜明けの目には少々眩しかった。

「して、マスターよ。貴様はこれからどうするつもりだ?」

 そんな彼へと、そのサーヴァントであるドラコーがそう話しかけてくる。
 彼女はドレスのような衣装を纏っており、その手足も竜ではなく人のものとなっている。
 と言っても、尻尾や右腕の鱗などは残っているため、完全に人と同じではないが。

「どうするって、アサシンのことか?」
「アサシンめをどうするかなど、話し合うまでもなかろう。
 彼奴は状況が整い次第、早急に倒す。敵として生かしておいて良いことはないからな。
 そうではなく、サヨのことだ。あの娘が純粋な謝意で我らを招いたのではないことは、貴様とて気付いていよう」

 この部屋の主である龍賀沙代は、まだ戻ってきていない。
 身嗜みを整えると言っていたが、すでに十分近い。女性の身支度は時間が掛かるというが、それだろうか。
 ドラコーはそれを利用して、彼女が戻るまでの間に対応を決めておきたいのだろう。

「謝礼として一泊の宿を与えられた以上、今すぐ分かりやすい敵対をするという事はないであろう。
 がしかし、もし仮に敵対したならば、あの娘を殺し、ここを我らの拠点とするのも一つの手だぞ?」

 確かにここは東京の中心に近い。
 外敵からの防衛を考えなければ、拠点とするには適しているだろう。
 だが。

「ドラコー、その気もないのにそういうことを口にするのはやめろ。
 もし彼女に聞かれでもしたら、それこそ敵対まっしぐらだ。
 必要のない戦いをする気はないぞ、俺は。せっかくの休息をふいにしてどうするんだ」
「ふふ……そう睨むな、ただの冗談だ。
 それでどうするのだ?」
「そうだな……」

 龍賀沙代が自分の拠点に岸浪ハクノたちを招いた理由は、まあ簡単に想像がつく。
 彼女はアサシンに一方的に殺されかけた。そのアサシンを簡単に撃退した俺たちを、護衛として自分の近くに置いておきたいのだろう。
 だがそれに俺たちが付き合う理由はない。一泊が終わり次第、すぐに彼女と別れたって構わないのだ。
 もとよりこれは聖杯戦争。そのルールに従うのなら、結局は彼女とも殺し合うことになるのだから。
 ……けどまあ。

「別に、どうもしないかな」
「ほう、それは何故だ?」
「俺はまだ、この聖杯戦争に対するスタンスを決めていない。
 最終的にどうなるにしても、それが決まるまでは、俺の方からどうこうするつもりはないよ」

 なんだったら、彼女が目論んだ通り護衛のように働いたって構わない。
 俺だって、月ではリンとラニに何度も助けられたのだ。
 なら今度は、俺が誰かを助けるというのも十分アリだろう。
 と言っても、唯々諾々と従うつもりはないし、彼女から申し出てこなければそれもないが。

「まあ要するに、今の所は彼女次第ってことだ」
「そうか。ちゃんと理解した上での判断であれば、異論はない。
 余もサヨの出方を待つとしよう」

 そう言うとドラコーは霊体化して姿を消した。
 そうなると沙代が戻るまで暇になってしまうのだが。

「そうだな。今持っているアイテムでも確認しておくか」

 岸浪ハクノが現在所有しているアイテムは、大きく分けて三種に分類される。
 一つ目は主に現地調達した資金や食料、寝袋。そしてそれらを持ち運ぶためのデイバッグだ。
 入手元は主に冥界に呑まれた、あるいは呑まれる寸前の民家などであり、冥界における社会的地位を与えられなかったハクノにとっては、唯一の入手手段だ。

 二つ目が、深夜0時にマスターにだけ開かれる謎のショップで購入した、いくつかの魔術礼装や、即席の武器やデコイの作成に使用するための触媒だ。
 あの店は濃密な死の匂いがするためできれば頻繁には利用したくはないが、購入できる礼装は自前では一度に一つの能力しか使えない俺にとって、戦闘の手札を増やす非常に有難い代物だ。
 実際ここで購入した水晶玉の礼装が、アサシンへと奇襲を掛ける際に非常に役に立った。
 もっとも、これらの購入のために調達した資金の大半はこの店で消え、その結果、今に至るまでは野宿生活となっていたのだが。

 そして三つ目が、そうして購入した礼装や触媒を利用して製作した、自作の礼装だ。
 岸浪ハクノを構成する死者の数は、千年近い集積の中で膨大なものとなっている。
 当然その中には陣地作成や道具作成を得意とする者もおり、ハクノはそれらの情報を引き出し行使することができる。
 大浴場で沙代に見せたあのメガネも、モノクル型の礼装を素材として製作した物だ。
 相手の情報を見れるというから購入してみたが、効果を確かめる前に素材となってしまったのは惜しかった気もする。

「まあ、こんな所か」

 所持品の確認を終え、ハクノはそう一人呟く。
 龍賀沙代はまだ戻ってこない。
 女性の身嗜みは時間が掛かるらしいが、それにしても長いと思う。
 もっとも、岸浪ハクノの基準は電脳世界であるSE.RA.PHであり、情報だけで構成されたアバターだ。
 データを切り替えれば済むSE.RA.PHと違い、現実の物理法則に即しているらしいこの世界ではこんなものなのかもしれない。

「――――――」

 ドラコーの言ではないが、沙代と手を組むにしろ、敵対するにしろ、この場所を拠点とするのはアリだ。
 だがその場合、工房(マイルーム)として利用できるよう部屋を改装した方がいいだろう。
 そう思い、工房の素材として利用できる礼装や触媒を見繕っていく。
 まず休息の効率を上げるための礼装に、この部屋は狭いため中での戦闘は行わないものとして、外からの奇襲に備えるための―――

「………………」
 そう思考を巡らせる中、不意に外を見る。

 夜明けとともに藍色に染まる、誰かの記憶で作られた偽りの世界。
 それはいい。別に気にするようなことではない。
 真偽を問うのであれば、SE.RA.PHは電脳空間上の仮想世界だし、サーヴァントだって過去の英雄の再現だ。
 そもそも俺自身が、数多の敗者たちの集合体という、誰でもない誰かでしかない。

「…………」
 だから、気に食わないのはそれ以外。
 この偽りの世界、その土台となっている冥界だ。
 誰かの記憶で覆い隠しているだけの、この淀んだ世界そのものが、俺には――――。

「……」
 ――――、――。


「…………、眠ったか。
 この一週間戦い通しであったからな、思いの外疲れていたのであろう。
 よいぞ、我が葬者(マスター)よ。この一時ばかりは、ゆっくりと休むがよい」


    §  §  §


「申し訳ありません、遅くなりました」
 そう謝罪を口にしながら、沙代は自室へと戻ってきた。

 身嗜みを整えるのと同時に大浴場での話し合いで掻き乱れた心を落ち着けていたら、思いの外時間を費やしてしまった。
 岸浪さんに待ちぼうけを食わせてしまったが、彼は呆れたり、はたまた怒ったりはしていないだろうか。
 そう恐々としながら自らの部屋を見渡せば、彼は窓辺に腰掛けたまま、深く目蓋を閉じていた。

「岸浪さん……?」
「………………」
 慎重に呼びかけてみるが、応えはない。
 ……寝ている、のだろうか。

 物音を立てないよう足音を忍ばせ、慎重に岸浪さんへと近づく。
 彼からはゆっくりとした、静かな吐息の音が聞こえる。
 やはり待たせ過ぎてしまったのだろう。彼は寝てしまっているようだ。

「――――――」
 そんな岸浪さんへと、徐に手を伸ばす。
 彼が起きる気配は感じられない。
 僅かに震える私の指先が、そのまま彼へと触れる―――その直前。

「―――そこまでだ。
 娘、貴様が我がマスターに触れる事を、余はまだ許してはおらぬ」

 唐突に聞こえたその声に驚き、咄嗟に手を引き戻し数歩後ずさる。
 改めて部屋を見渡せば、ドラコーさんが部屋の片隅で寛いだ様に椅子に座っていた。
 その左手には一抱えほどもある大きな金の盃。彼女はそれをくるくると回し、注がれていた中身を口に含んで味わっている。

「遅かったなサヨ。見ての通り、葬者は貴様を待っている間に眠ってしまった。
 まったく、不用心だとは思わぬか? 我らはまだ正式に手を組んではいないというのにな」

 その姿を見て、今更に思い出す。
 そうだ。ドラコーさんは岸浪さんのサーヴァント。彼の傍には、必ず彼女がいる。
 そして彼女の言う通り、私達はまだ仲間ではない。
 私の“行い”がどういう心算のものであったとしても、彼女は“それ”を許さないだろう。
 その事を私は、すぐに理解することになる。

「しかし、だからこそ不用意なことをするでない。思わず殺してしまいそうになる」
 徐にドラコーさんが、その赤い瞳で私を見据える。

「ッ……!」
 瞬間、私の背筋がアサシンに殺されかけた時とは異質の恐怖に泡立った。

 それはまるで、あまりにも巨大な大蛇に見下ろされているかのような悪寒。
 解っている。これはただの警告だ。殺意はおろか害意すら込められていない。
 だというのに私は、彼女の瞳に、自分が死ぬ未来を幻視した。
 そしてもし私が岸浪さんに触れてしまっていたら、その未来は現実のものとなっていただろう。

 だが、そう理解させられた直後、今度は巨大な圧迫感に襲われる。
 私のライダーが唐突に実体化したのだ。

「ライダー!?」
 私は驚き堪らず声を荒げる。

 ライダーは七メートル近いその巨体を限界まで縮こませ、それでも私の部屋を軋ませながら、いつでもドラコーさんを攻撃できるように構えている。
 彼が命令もなしに実体化したのはこれで二度目で、ここまでの反応を示したのはこれが最初だ。
 今までは命令がなければ何の反応も返さなかったというのに、一体どうしたというのか。

「静かにせよ。葬者が起きてしまうであろう」
 だがドラコーさんはライダーを一瞥すると、そう口にして視線を切り、杯を傾ける。
 自分より遥かに巨大なライダーから敵意を向けられているというのに、全く気にする様子がない。
 その様子にまるで、私達と彼女との格の違いを見せつけられているような気さえしてくる。

「はい。申し訳ありませんでした。ライダーも下がってください」
 私は素直に謝罪を口にして、ライダーへと命令を下す。
「……。御主人サマの、仰セの通リニ……」
 ライダーはいつもと違い、少しだけ間を置いた後にそう言って霊体化した。

 本当に、彼はどうしたというのだろうか。
 そう思いつつ部屋を見渡して、壊れた箇所がないことに安心しつつ、岸浪さんから離れ部屋付きのベッドに腰を下ろす。
 迂闊なことをすれば、今度こそライダーとドラコーさんの戦いが始まってしまうかもしれない。
 だが彼らの戦いの場とするには、この部屋はどうしようもなく狭すぎる。
 開戦と同時に消し飛んでしまうことは、まず間違いないだろう。気を付けなければ。


「アサシンと戦っている時も思ったが、なかなかの偉丈夫だな貴様のサーヴァントは」

 このまま岸浪さんが目覚めるまで待っているのだろうか、と思っていると、ドラコーさんが不意にそう声を掛けてきた。

「これが通常の聖杯戦争であったのならば、優勝候補の一角であったことは間違いあるまい」
 さっきは一瞥で視線を切ったというのに、彼女はそうライダーを称賛する。
 けれど。

「ライダーが、ですか?」
 その称賛を、私は素直に受け取ることが出来なかった。

 ドラコーさんがライダーを見たのは、アサシンに襲われた時と今の二回だけだというのに、一体何が解ったというのだろうか。
 確かにライダーは、その能力だけを見れば強力なサーヴァントだと思う。
 けれど彼は、自我のない人形でしかない。
 予め決められたことを行うだけの絡繰りと同じ。マスターの命令がなければ、その力を発揮することは出来ない。
 そして命令を下すべきマスターである肝心の私は、アサシンを相手に、真面に戦うことも出来なかったのだ。
 だというのに、そんなマスターを引き当てた彼が優勝候補かもしれない、なんて思えるはずもない。

「信じられぬか?」
「……ええ」
「ま、無理もあるまい。
 一見ではあるが、彼奴が酷く機械的なサーヴァントである事は分かる。
 クラスもライダーだ。どこぞの梟雄のように暴走することもまずあるまい。
 おそらく、何らかの理由で意思を封じられ、何かに乗られてきた人物なのだろうな」

 先程とは違う理由で、背筋に悪寒が走る。
 彼女達が得たライダーに関する情報は、ほんの僅かなものの筈だ。
 だというのにもう、彼がどんなサーヴァントなのかを殆ど言い当てている。
 それは同時に、私達の有する問題点も把握出来るという事に他ならない。

「彼奴の霊基は、“道具”あるいは“兵器”としての側面が強く表出している。
 言い換えれば、その性能を発揮できるかは良くも悪くもマスター次第だという事だ。
 余が先ほど奴を一瞥しただけで済ませたのもそれが理由だ。その意味は、貴様が一番解っていよう」

 その予想は正しく、彼女はその問題点を言外に言い当てた。
 即ち、私が命令しなければ、ライダーは殆ど何も出来ないという事を。
 そして彼女達は、私がライダーへと命令を下す一言の間に、私達に対処してしまえるのだ。

 けど、だからこそ解らない。
 どうしてドラコーさんは、そんなライダーを高く評価したのだろう。

「本当にわからぬか?」
 彼女の言葉に肯く。
「ならば問うが、余が貴様へと警告した時、彼奴が実体化した理由は何だ?
 あの時、余は貴様へと警告したが害意は示しておらず、貴様が奴へと何かしらの命令を下したわけでもない。
 だというのに奴は実体化し、剰え余に対して攻撃態勢をとった。それは何故かわかるか?」
「それ、は……」

 わからない。
 あんな事は初めてだった。それまでの彼は、ただ命令に従うだけの人形だった。
 だから、どうして彼があんな行動をとったのか、私には理解できなかった。

「答えは簡単。ライダーは貴様を守ろうとしたのよ」
「え?」
 守る? 私を? 何故?

「彼奴が完全な機械と化していたのであれば、仮に余が貴様を害したとしても、貴様の命令がなくば実態かすらせぬだろう。
 余とて憐れにこそ思えど、彼奴を敵とは見做さなかったに違いあるまい。
 ―――だが、あのライダーは違う。
 どれほど強く意思を封じられようと封じきれぬ意志。余はあの瞬間、奴の姿にそれを見た。
 そして意志があるという事は、たとえ命令などなくともマスターの意志に応えることができるという事だ。
 マスターと心を通わせたサーヴァントは、たとえどれほど矮小な存在だったとしても侮ることは出来ぬ。
 もし貴様が決意を固め、ライダーと意志を通じ合わせ、我等に挑んで来る事があれば、それは決して油断ならぬ戦いとなろう」
「ちょ、ちょっと待ってください。私達と貴女方が戦うって、一体なぜですか!?」

 しかも、私達が挑む側だなんて、意味が解らない。
 アサシンに手も足も出なかった私では、岸浪さん達には敵わない。
 そんなこと、少し考えれば解る筈なのに、何故―――。

「何を驚く。聖杯戦争のルールに則るのであれば、生き残れるのは聖杯を手にした一組だけ。
 この先貴様がどうするつもりであろうと、我等の内どちらかはいずれ確実に死ぬのだ」
「あ――――」

 そうだ。それがこの聖杯戦争の決まりなのだ。
 聖杯を求める限り、両方が生き残ることは出来ない。
 私達は、どうあっても殺し合う運命にあるのだ。

「ふむ、そうだな。後で我が葬者にも問われるだろうが、先んじて訊いておこう。
 この先の聖杯戦争、貴様はいったいどうするつもりだ?」
「そんな、こと………」
 ドラコーさんの問い掛けに、私は答えを言い淀む。

 ――この先、わたくしはいったいどうするつもりなのか。
 考えるまでもない。その答えは決まっている。
 決まっている、のに。
 どうしてその答えを、口にする事が出来ないのか。

「まあ、今すぐ如何こうせよという訳でもない。その答えはいずれ聞かせてもらうとしよう。
 だが忘れるな。――――死にたくなければ剣を執れ(Sword, or Death)
 貴様がどう思っていようと、戦わわねば生き残れぬという事をな」

 そう言うとドラコーさんは、中身を飲み干した金の杯を霧散させ、そのまま自身も霊体化させた。
 後に残されたのは、何も答えられなかった私と、静かに寝息を立てる岸浪さんだけだ。
 よほど深く寝入っているのか、彼が目を覚ます様子は全くない。
 そんな彼の横顔を見ながら、私は再び彼と出会った時の事――その続きを思い出していた。


    §  §  §


「すまぬ葬者よ、逃げられた。おそらく敵マスターの令呪であろう」
「いや、令呪を使われたのならしかたない。ここは相手に令呪を使わせただけ良しとしよう。
 それに一応だけど、アイツのスキルへの対策はしたしな。まあ、それが上手く機能するかは賭けだけど」

 私を襲ったサーヴァントが撤退し、二人はそう言葉を交わしながら戦闘態勢を解く。
 それは即ち、今この場における危機が一つ去った事を意味する。
 けれど私は、その事に何一つ安心することが出来なかった。
 ―――当然だ。

「……逃げ、た?」

 という事は即ち、あの■■がまだ生きているという事で、
 それはつまり、また命を狙われる可能性があるという事だ。
 いやそもそも、聖杯戦争に参加する限り、命が狙われるのは当然で。
 でも、サーヴァントと契約していなければ、この冥界では生きられなくて………。

「私、は……」

 ―――死にたくない。

 どうしてこんな目に遭わなければならないのか。
 私はただ、せめて、自分の中の穢れを消し去りたかっただけなのに。
 ……ああ、でも。

 震える自分の手を見つめる。
 尻餅をついた時に擦り剥いたのか、その手の平には血が滲んでいた。
 けど私にはそれが、冥界に落とされる前に殺した人達の血で汚れているように見えて。
 でも手の震えは、犯した罪の重さではなく、死への恐怖から来るもので。

「やっぱり……」

 聖杯を手に入れるということは、他のマスターを全員殺すということ。
 自身の願いの(穢れを消す)ために、この手を他のマスター達の血で汚す。
 そのおかしさを気にも止めなかった時点で、結局私も龍賀の一族なのだと思い知らされる。

 だからきっと、これは罰なのだ。
 私が殺した人たちのように、殺される恐怖に怯えることが、
 この冥界で下された、穢れた私の罪に対する―――


「なあアンタ、どうかしたのか?」

 不意に声を掛けられ、我に返る。
 見上げれば、少年が不思議そうな顔で私の方を見ていた。

「いえ、何でもありません。
 危ない所を助けて下さり、ありがとうございます」

 頭を振って立ち上がり、彼等へと礼を述べる。
 けど彼は、無愛想な口振りで私の謝礼を拒否する。

「別に礼はいらない。アンタを助けたつもりはないからな。
 俺たちがアンタたちの戦いに割り込んだのは、ようやく取れたまともな睡眠を邪魔された仕返しだ。
 対毒付与のコードキャストが効かなかったら、奇襲のための潜伏なんてしないで、さっさとここから離れてた」
「そ―――」
 ……分かっている、そんな事は。
 穢れた私に、都合のいい救いの手など、差し出される訳がないのだ。

 それにこれは葬者達が殺し合う聖杯戦争で、そして私はマスターで、彼もマスターだ。
 つまり私達は、互いに殺し合う関係。あのサーヴァントと、何も変わらない。
 ……ただ、NPCでしかない筈の市民さえ守ろうとするヒーローの様なマスター達もいたから、少し勘違いしそうになっただけ。
 それだけなのだ。
 それなのに。

「? アンタ、怪我してたのか」
 彼はそう言って血に汚れた私の手を取ると、何かしらの力で淡い燐光を放った。
「え?」
 その途端、私の手の平からは痛みが引いていた。
 診れば私の手の平には、擦り剥いた怪我どころか血の跡さえ残っていなかった。

「あの、どうして?」
 彼の行動が理解できず、思わずそう彼へと尋ねる。
 互いにマスターである以上、私達は敵同士の筈だ。
 それなのに、どうして。

「どうしてもなにも、アンタは戦うつもりはないんだろう? つまりは敵じゃない。
 敵じゃないなら、ちょっとした怪我くらいは治してやるさ。大した消耗でもないしな」

 その問いに、彼は不思議そうに答える。
 戦うつもりがないのなら、私達は敵ではない、と。
 でもそれはおかしい。だって彼は―――

「視えているのなら、気付いているのでしょう!?
 私はとっくに人殺しなんです! それなのに、どうして―――」
「それがどうかしたのか?」
「な――――」

 彼は何でもない事のように、私の罪を許容した。

「別に驚くような事か? 聖杯戦争なんて、初めから殺し合い(そういうもの)だろ。
 俺たちだって、この場所に来るまでに何組ものマスターやサーヴァントから襲われて、それを返り討ちにしてきた。
 つまりは人殺しだ。
 アンタがどういう理由で“後ろの連中”を殺したのかは知らないけど、それについて何か言うつもりは俺にはないよ」

 私の罪を否定するのではなく、かと言って肯定するのでもなく、ただそういうものだろうと容認する言葉。
 それはまるで、たとえ私の罪が許されなくても、そこに居てもいいのだと認められたようで、 

「………貴方達は、聖杯が欲しくはないのですか?」
「別に。今のところ聖杯に興味はないよ。
 それよりも先に、決めなきゃいけないことがあるからな」

 その言葉を口にした彼は、睨み付ける様に、この偽りの東京の空を見上げていた。


「葬者よ、今夜中に休息をとるつもりなら、そろそろこの場を離れるべきだと思うが?
 戦いの気配を察して他のサーヴァント等がここに来るやもしれぬし、夜が明けてしまえば、人目を避けるのにも苦労しよう。
 もちろん、目くるめく戦いの連鎖をまた味わいたいというのであれば、余は構わんのだが?」
「それは勘弁してほしい。
 ここ数日ロクに寝れてないんだ、いい加減休みたい。いくら俺が人より丈夫でも、限度がある」

 童女の言葉に促されて、彼はこの場を立ち去ろうとする。
 事実、このまま何もしなければ、彼の名も知らないままに別れる事になるだろう。
 その事に私は、どうしようもない不安を覚えて、

「じゃあな。お互い、生きてまた会えるといいな」
「あ、あの!」
 私達に背を向けてそう口にする彼を、思わず呼び止めてしまう。

「? どうかしたのか?」
 それに彼は足を止め、私の方へと振り返りながらそう訊いてくる。
「あ、えっと、あの、その……」
 何も考えずに呼び止めたため、次の言葉が咄嗟に出てこない。
 それでも懸命に思考を巡らせて、どうにか捻り出した言葉は、

「お、お礼をさせてください!」

 そんな、当たり障りのない言葉だった。

「さっきも言ったけど、俺はアンタを助けたつもりはない。だから――」
「それでも、貴方方のおかげで、私達が助かったのは事実ですから」
「…………」
「それに言ってましたよね、いい加減休みたいって。
 私の住んでいる場所になら、案内できます。場所が場所なので行動に制限は掛かりますけど、休むくらいなら問題ないはずです」
「それを言われると、ちょっと拒否しづらいな」

 そう言うと岸浪さんは、腕を組んで迷ったような素振りを見せる。
 もう一押し。
 私はそう思うと同時に、どうして彼を呼び止めたのか、と自問する。
 決まっている。不安だからだ。

 私を襲ったサーヴァントはまだ生きている。
 ライダーではあのサーヴァントに敵わないというのに、いつまた襲われるかも判らない。
 けど、彼等がいれば、あのサーヴァントにまた襲われても安心できる。

 ――――本当に?

 だって、それ以外に理由がない。
 たとえあのサーヴァントが襲ってこなかったとしても、彼等を懐柔することが出来れば、この聖杯戦争を生き残る上で大きな力になる筈だ。
 それ以外に、どんな理由があって彼等を引き留めようというのだろう。

「娘。貴様がよくても、貴様のサーヴァントの意見はどうなのだ?」
「言い聞かせます」
 私の背後のライダーを見据えながらそう訊いてくる彼のサーヴァントに、私はそう即答する。
 ライダーに意見などあるはずがない。彼にとっては私の命令だけが唯一の指針なのだ。

「だそうだが、どうするマスター?」
「…………わかった、その提案を受けよう」

 わかっている。これは私の弱さが齎した、醜い保身の表れだ。
 それでも。

 この世界が、罪を犯したことで落とされた地獄なのだとしても。
 この恐怖が、私が犯した罪に対する罰なのだとしても。
 聖杯を求めることで、更なる罪を重ねるのだとしても。

「場所を借りるのなら、自己紹介はしておくべきだな。
 俺は岸浪ハクノ。こっちはドラコー、クラスはアルターエゴだ」
「私は龍賀沙代と申します。どうぞ沙代とお呼びください」
「ではサヨ、まずは一泊世話になるぞ。存分に持て成すがよい」


 それでも私は、もう二度と、死にたくなどなかったのだ。
 だから―――


    §  §  §


 ――――死にたくなければ剣を執れ(Sword, or Death)

 脳裏によぎる、ドラコーさんの言葉。
 それに正しく、きっと私は、彼らと戦うのだろう。
 この聖杯戦争(じごく)参加し(おち)て間もなく、自らそう決意した通りに。

 それを、彼女へと明確に答えられなかったことだけが、
 自分でも不思議でならなかった。


【文京区・女子学生寮/一日目・早朝】

【岸浪ハクノ@Fate/EXTRA Last Encore】
[運命力]通常
[状態]健康、睡眠
[令呪]残り三画
[装備]礼装(詳細不明)、擬・奏者のおしゃれメガネ
[道具]デイバッグ、礼装(自作含む。詳細不明)×?、触媒(詳細不明)×?、食料
[所持金]ハサン寸前
[思考・状況]
基本行動方針:まずは情報を集め、スタンスを決める。
0.……、………………。
1.今後の事を話し合うため、沙代が戻ってくるのを待つ(つもりだった)。
2.工房(マイルーム)作成用の礼装と触媒を見繕う。
3.アサシン(ジャック・ザ・リッパー)を警戒。対策を考える。
[備考]
※深夜ショップから購入した礼装は、Fate/EXTRAシリーズの物を参照しています。
※サイバーゴーストを視認できるマスターを含む死者の集合体であるため、通常視認できない幽霊などの気配を察知し、捕捉することができます。

【アルターエゴ?(ソドムズビースト/ドラコー)@Fate/grand order】
[状態]健康
[装備]黄金の杯
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:葬者の指示に従いつつ、彼がこの聖杯戦争で何を成すのかを楽しむ。
1.周囲を警戒しつつ、葬者が目覚めるのを待つ。
2.アサシン(ジャック・ザ・リッパー)を警戒。状況が整い次第、今度こそ排除する。
[備考]

【擬・奏者のおしゃれメガネ】
岸浪ハクノが礼装「聖者のモノクル」を素材に自作した、専用の擬装用魔術礼装。
素となった礼装が装着者が視た相手の情報を表示するものだとしたら、こちらは相手が見る装着者の情報を擬装する。

岸浪ハクノを構成する死者(要素)の中から、岸波白野(♀)の肉体情報を引き出し、幻影として纏わせる。
魔術としては外殻投影に類するものであり、装着者がその場に居る事への違和感を軽減する認識阻害効果もある。
しかし即興で作成されたものであるため術式の強度が低く、見破ることは難しくはない。
また多少の魔力の乱れで簡単に効力を失ってしまうため、戦闘はもちろん他のコードキャストや礼装などと併用することも出来ない。


【龍賀沙代@鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎】
[運命力]微減
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]潤沢(大地主の子女としておかしくない程度)
[思考・状況]
基本行動方針:自分の中の穢れの痕跡を消し去りたい。
0.もう二度と死にたくない。
1.岸浪さんが目を覚ますのを待って、今後の事を話し合う。
2.岸浪さんを懐柔して、味方に付ける。ただし、ドラコーさんへの対応には要注意する。
3.アサシン(ジャック・ザ・リッパー)を非常に警戒。
[備考]

【ライダー(バーソロミュー・くま〔隷〕)@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:仰セの通りに御主人サマ……。
1.……………………。
2.要警戒対象(ドラコー、■■■■)確認……。
3.要警戒対象の情報ニ一部欠落ヲ確認。得タ情報(ジャック・ザ・リッパー)ニテ補完、完了……。
[備考]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年08月24日 14:54