ふたば系ゆっくりいじめ 507 火の用心

『火の用心』 25KB
虐待 悲劇 ギャグ 理不尽 自滅 家族崩壊 ツガイ 現代 独自設定 多少愛を育むシーンあり

・最初からいきなりお話の場面が変わります







会議の席で一人の男が立ち上がり、多数の人間が座っている円卓の前方へと向かう。
背筋を正した男は、自信が漲った良く通る声で、会議室の隅々まで響かせた。

「これが私の提案です!」

声と同時に巨大なプロジェクターが白いスクリーンに映像を転写させる。
スクリーンには、廃屋に向かうゆっくり家族が映像が会議室に流れ出した。





「ゆー。」
「ゆゆー。」

廃屋の隅で、れいむとまりさが跳ねる。
厳しい冬に備えて新しい家の建築をしているようだ。

「ゆっくりできたよ!」
「すてきなおうちだねっ!」

拾ってきたダンボールと廃材で、念願のゆっくりプレイスを手に入れたれいむ達。
この場所は人通りが少なく、ゆっくり達にとっては穴場の場所だ。空き地には他の野良家族が一杯居た。

「ゆっくりおめでとう!」
「これはしんちくのおいわいだよっ!」

既にその場所に住んでいた先住者が新しい仲間を受け入れる。お祝いの言葉と共にボロボロのお布団をプレゼントした。
それを受け取ったれいむ達は感謝を述べて、ツガイのまりさはそのまま休まずにご飯を狩りに行く。

「ゆっくりいってらっしゃい!」

れいむはまりさに声を掛けた後、狭いお家の中で子供達にお歌を口ずさむ。
子供達の数は2体。どちらもれいむそっくりなお子様だ。親子3体は眼を瞑りお歌を合唱する。
それに釣られて他の野良家族も美声を放つ。空き地はゆっくり達の演奏会場と化した。

「ゆっくりかえったよ!」

それから数刻が過ぎ、狩りに行ったまりさが帰宅。
この空き地の近くには手付かずになった人間の畑があり、伸びっぱなしになった野草が生えているので、
ここのゆっくり達の狩場となっていた。多少遠出をすれば山も近くにある。
旨く行けば果物さんも手に入るだろう。

ここのゆっくり達は食に不自由はしなかった。

「いっぱいたべてねっ!でも、ふゆさんがきたときのためにのこしておいてね!」

まりさは口の中から涎交じりの食べ物を出してれいむ達にたべさせた。
2体の子供達は美味しそうに、"ぱーくぱーく!!"と食べている。とても幸せそうな笑顔だ。

「れいむはたべないのかだぜっ?」
「おなかいっぱいだから、れいむのぶんはおちびちゃんたちにあげるよっ!」

「ゆゆ?じゃあ、まりさのぶんもおちびちゃんにあげるんだぜっ!」
「まりさはゆっくりたべないとだめだよ!いっかのだいこくばしらなんだからねっ!」

別に無理はしていない。このれいむはたくさんの幸せでお腹が満たされていたのだ。
れいむ達はこの空き地に来るまでに数え切れない位の嫌な目にあった。
可愛い赤ちゃんが人間に潰されたり、お腹が空いたままゆっくりしてしまった赤ゆも沢山いたし、
まりさやれいむもイキナリ殴られた事もあった。暑い夏の炎天下でカラカラになって辛い思いも経験した。

(それが今はとてもゆっくりしている!最高の気分だよ!!)

れいむはこの理想郷に辿り着けたことに感謝していた。怖い人間が周囲には居ないし食料も豊富にある。
厳しい冬も、ここならば楽勝に越せる事が出来ると考えていた。



日が落ちて闇が深まった深夜2時。
ダンボールで身を寄せて固まる家族は声を上げる。

『『 ざっ!?ざむいいいいいいいいいいいいいいいっ゛!!!?? 』』

身を寄せ合って得た体温が、冷たい風に急速に奪われていく。
成体ゆっくり2つに子ゆっくりが2つの家族に対して、そのダンボールハウスは狭すぎた。
家族の目の前には大きな玄関が口を開けていて、そこから容赦なく突風が吹きつけてくる。
構築した家の隙間から、ふよふよと漏れてくる風の吐息も、一層寒さを感じる材料となった。

『『 ざむいよおおおおっ゛!ゆっぐぢでぎないいいいいいいっ゛!? 』』

周囲にある他のゆっくり達の家は防寒対策は万全だ。
入り口は開閉式になっていて、隙間風が入ることはなく、雨対策のビニールシートも完備。

最初からこうだった訳では無い。誰もが少しずつ工夫をして、ゆっくり空間にかえていったのだ。
つまり、この凍えるれいむ家族は誰もが通るべき道を歩んでいる事になる。

そのまま家族は眠れない一夜を過ごした。



そして何時の間にか朝日は昇り、
もそもそとれいむ家族がダンボールハウスから這い出してきた。

「………ゆっくりいってくるよ。」
「………ゆっくりいってらっしゃい。」

目の下にクマをこしらえたまりさが狩りへと向かう。
れいむはまりさを送り出し、家の改修へと動き出した。

「ゆぴぴぴ……。」
「ゆぷぷぷ……。」

れいむが家に戻ると、子れいむが安らかに寝ていた。
死んでいる訳では無い。昨晩の寒気を親の体温で無事に乗り切り生き残った。

でも、寒さと暖かさを中途半端に交互に与えられた為、凍死もしないが睡眠も取れない生き地獄を味わった。
一睡も出来なかった子れいむ達は、暖かくなった日差しを受けて、今ようやくゆっくりと夢の世界へと旅立つ。

その様子を見ていたれいむは大きなアクビをした。

「れ、れいむもちょっとだけ。ちょっとだけおひるねするよっ!」

睡魔が襲ってきたれいむはもぞもぞと子供の側に座り込み、ボロボロのお布団を咥えてお腹に掛けた。
暖かいれいむママの体温を感じた子供は、幸せ一杯の感情を表した表情で眠っている。
日中に訪れたひと時の気温上昇の恩恵を受けて眠るれいむ親子。

そして、そのまま太陽が姿を消えかけた時刻になっても、れいむ達は起きなかった。






「どぼじでざむいままなのおおおおおおっ゛!?」
「ざむいいいいいいいいいいいいいいいっ゛!?」
『『 ゆっくじできないいいいいいいいっ゛!!!?? 』』

その日の夜にれいむとまりさ。そして、子れいむ達の叫びが暗闇に響く。
れいむ達は昨日と同じ寒さと苦しみを味わい、体をガタガタと震えさせる。
ダンボールハウスがその振動の余波を受け、元々開いた隙間が更に広がり風の通り道が順調に開通していく。

「れいぶはおびるになにをやっでだのおおおっ゛!?」
「まじざだっでがえりがおぞがっだでじょおおおおっ!?」
『『 けんかはゆっくちやめてねぇえええええええっ゛!? 』』

夜まで爆睡していたれいむは家の改装は実行できずに、欠陥住宅のまま夜を迎えてしまう。
昨日よりも激しい寒さがれいむ達を襲った。

「まじざがかりにっでるどぎに、れいぶはすーやすーやしでだんでじょっ゛!?ゆっぐりでぎないんだぜっ!!」
「ぎょうのごはんざんはなんでずぐながったのっ!?まじざもすーやすーやじでだんでじょおおおおおっ゛!!」

まりさが狩って来た獲物は、小さな団子状の塊しかなかった。
このまりさは狩りの達人(自称)で、いつもは頬一杯に詰め込んで来るのが存在意義だと偉そうに語っている。
と、言っても人里離れたこの空き地に来た時に始めて公言した内容だった。(つまり一昨日)

「ちちちちょうしがわるかっただけなんだぜっ゛!?」

焦りながら下手な弁解をするまりさ。
このまりさも、狩りを始めようと出かけたまでは良かったが、その後直ぐに暖かい日差しの恵みを受けて爆睡。
ゆっくり眼が覚めたら太陽が東の山に沈みかけていた。
仕方なく周囲に生えた美味しくない雑草を噛んで柔らかくして、転がるように帰路へとついたのだ。

『『 ざむいよおおおっ゛!?ゆっくりざぜでぇええええええっ!! 』』
「ゆゆっ!?おちびちゃんたちゆっくりしてねっ!ぺーろぺーろ!」
『『 あーーーーーっ!?きんきんにひえちゃううううううううううううっ゛!!!?? 』』

母れいむに舐められた所の水分が冷えて子れいむの体温を奪っていく。全くの逆効果。
子れいむ優先で掛けられた毛布もボロボロの穴だらけで、保温性が皆無の状態だった。

『『 ゆうううううううううううううううっ゛!? 』』

家族は声を揃えて寒さに耐える。
今日は大きな入り口からは風があまり入ってこないが、気温の冷え込みが昨日とは段違いだ。
れいむは対策をしなかった事を後悔していた。

ちなみに同じ空き地に住む他のゆっくり達は、防寒対策に枯葉や新聞紙を使ってぬくぬくのヘブン状態。
でも、昨日から煩いこの家族達に少々お怒り気味のご様子。ゆっくり空き地連合組合は、この家族を追い出すことも視野に入っていた。

「ゆううううっ゛!しょうがないからとっておきをだすんだぜっ!」

ガタガタと寒さで震えるまりさが黒い帽子から小さな棒を取り出した。

「これはまっちさんだよっ!つめたいゆきさんがふったらつかおうとしたけど、いまつかうことにするよっ!」

先端が赤いマッチを擦る。これは何処でも着火する事が出来るマッチだった。
ご都合主義だと言ってはいけない。

「ゆー。めらめらのあかいひはゆっくりできるよーー~♪」
「あたたかくてゆっくりできるね!まりさっ!!」
『『 ぽーかぽーか!しあわせーーーー~っ!! 』』

とりあえず、まりさはボロボロの毛布に火を付けた。
暖かい炎がまりさ達家族を照らし、幸せな温もりを与える。

「ゆゆ?なんだかあつくなってきたよ!」

まりさの体が熱くなってきた。『これもマッチさん効果なのか?』と、考えていたらしい。
現在、まりさの体は物理的に燃えていた。だから熱いのだ。マッチが原因なのは間違いないだろう。

「あづいよっ!まりさのおぼうしもえちゃうよっ!?」
「かべさんがもえちゃうよっ!?ゆっくりできないっ!」
『『 あんよさんがうごかないよおおおおおおおおっ゛!? 』

色んな場所に燃え盛る炎がメラメラと飛び火をしていく。
まりさの帽子が燃えてハウスの天井に火が移り、家族のゆっくりプレイスは本格的に火の海になっていった。
逃げだそうにも、体に敷いていたボロボロの毛布から真っ先に大切な足を焦がされてしまい、全く動く事が出来ない。

「ゆっくりきえてねっ!?」

れいむは息を懸命にまりさに吹きかけるが、帽子の火は消えなかった。
まりさに付いた火は次第にもの凄い火柱と化して、まりさの金髪も素敵な帽子も炎の中で溶けていく。

「あああああああああああああっ゛!?」

奇声をあげながら溶けながら燃えていくまりさ。
れいむの足元では子供達が同じ様に火達磨になって体を黒くさせていく。

「いやぁあああああっ゛!?ゆっぐりもえぢゃうのはいやああああああっ゛!!!?? 」

体が燃えていく感触に苦痛を訴えるれいむ。
既にリボンに引火しており、れいむもまりさに負けず劣らずの火柱を上げていた。
足は機能を果たさず、後頭部が焼け、口に入る酸素も熱気を帯びている。

息を吸う度に、中身が沸騰していく感覚。

「もっどゆっぐぢじだがっだあああああああああああっ゛!!! 」

家族のダンボールハウスは炎に包まれて燃え盛る。飛び火した他のゆっくりハウスも燃え出した。
一気に空き地は大火災の様を見せつけ、ゆっくり達が残らず焼き饅頭と化していく。

まりさ達家族は、この理想郷だと信じていた空き地で、丸焼きのゆっくり出来ないゆん生を終えた。


……ウーッウーーーッ!カンカンカン!!ブシャアアアアアアアアアッ!!!(消火)





映像の上映会が終わった会議室内。

「どうですかっ!?この案は!」
「どうですかって。君ねぇ……。」

映像の内容を見た男達は、苦虫を噛み締めたような顔をして唸っている。
その中の初老の男性が社員に意見を述べた。

「ちょっとシツコイ感じがするねぇ。」
「そんな事もあろうかとB案をご用意しています!」

映像がスクリーンに再度写される。





真っ暗な室内。
ここはゆっくり達の巣の内部。
山に住むゆっくり家族が冬支度を終えて、出入り口を強固に封印して冷たい侵入者を遮る。

「ゆっくりしようね。」
「ゆっくりできるね。」

暗くて良く見えないが、家族が固まって暖を取りながらぬくぬくと過ごしているらしい。

「ゆ?なんだかくさいよ?」
「だれかおもらししたの?」

足元に居る小さな子供達は首を振る。

「ゆー?くさくてゆっくりできないよ。」

眼を凝らすが暗い室内は全く見えない。
暗さに慣れても光が届かない穴の中では一寸先も見通せない状態だ。下手に動くと誰かを潰してしまうだろう。

「らいたーさんをつかうよっ!」

親はライターを手探りで掴み、カチカチとスイッチを押し始めた。
森のぱちゅりーから貰った至高の一品。暗い室内を明るく照らす魔法の道具らしい。

「ゆっくりついたよ!」

"ボッ!"と小さな火が灯り、室内が明るくなった。
一瞬、最愛のツガイの姿を確認した後、


"ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!"


突然の大爆発が家族を襲った。

巣の内部から寒い外に飛び出したゆっくりは、黒煙を口から吐きながら硬い地面へと落下。
飛び出さなかったツガイ達は巣の中で真っ黒焦げになり、爆発の衝撃で崩れた壁に埋もれていた。

万全の冬篭りの体勢だった一家が、あっという間に転落の道を辿る。
『全部ぱちゅりーが悪い。』そう思いながら変わり果てた巣を見ていたゆっくりが呟く。

「もっぢょ……ゆっぎゅり………じだが。ゆげぇ。」


……ウーッウーーーッ!カンカンカン!!ブシャアアアアアアアアアッ!!!(鎮火)





映像が消えて会議室に重い沈黙が満ちる。

「どうですか?あっさりとした中に潜む、ぱちゅりーの陰謀の匂い!」
「………どう言う事なの?」

額に手を当てて唸る男達。

(何なのだ?この流れは?)

頭を抱えながら数人の男が同じ事を思う。
かなりのシンクロ率だ。それだけの異常事態が目の前で起こっている。

「更にもう一つあります!これで止めといきます!」
「いい!?もう解った!」

「VTRスタートォッ!」
「君は人の話を聞いてないね?」

止めの映像がプロジェクターで写しだされた。





枯れ草のベットでまりさとありすが横になっている。
ふかふかのありす自慢のベット。ご近所に住むれいむ達が羨む位の仕上がりだ。

「ねぇ?まりさ。」
「なんだい?ありす。」

ありすはしなを作りながら、何かをねだる様にまりさの体に擦り寄っていく。

「あのどんぐりさんがほしいな?」
「ゆっ。そんなのおやすいごようだぜ。」

倉庫の奥にある綺麗などんぐりを要求するありす。
あれがあれば、今より素敵なコーディネイトをする事が出来る。

「まりさー。ありすおなかへったわ?」
「ゆふふ。いっぱいたべるがいいぜっ!」

枕元に置かれた赤い果物を、惜しげもなく丸ごとありすに与えたまりさ。
一口齧ったありすは、口一杯に広がる甘酸っぱい味を噛み締めて、溢れた果汁と果実を喉の奥へと通す。
美味しい食べ物が体に最高のゆっくりを伝えて来てるのが解る。

「ゆっくりできたわ。まりさ。」
「それはよかったんだぜ。」

"シャクッ!!"と、まりさも赤い果実を齧る。
ありすの食い残しなどではない。枕元に詰まれた沢山の果物から新しい物を取り出したのだ。
食べ残しを齧るなど、まりさのプライドが許さない。

「やくそくのあれはとってきてくれた?」
「もちろんだぜ。」

黒帽子の中から取り出したのは大きな蜂の巣。
山のゆっくり達にとって、ハチミツは最高のご馳走だ。

「ありがとう。ま・り・さ。」
「らくしょうなみっしょんだったぜ。」

ありすのキスの嵐を受けながらニヒルに顔を作るまりさ。だが、眼はデレデレになるのが隠せない。
それを確認しながら魅力一杯に体を摺り寄せるありす。甘い空気が室内に立ち巡る。

まりさは狩りの達人だった。
誇張ではなく本当に玄人の域に達している。

倉庫には美味しい草が積まれている。苦い草などひとつも無い。
別積みされた隣の山には、狩りをするのが難しいとされる果物が保管されていた。

取った虫などは狩りの途中で全てを食べ切り、その得た力で大きい獲物を獲得するのが、まりさの狩りのスタイル。
高い所や遠くの場所にある幻の食べ物を簡単に調達してくるまりさは、群れにいる誰もが憧れの存在だった。

このありすも、まりさの愛人に関する群れの一体。
まりさは正妻は持たず、群れの美ゆっくりを独占状態にしていた。

でも、誰も文句は言えない。
生まれた赤ちゃんを全部まりさは引取り、自分の巣で不自由なく過ごさせていた。
その貫禄ぶりに太刀打ちは出来ず、恨めしそうな眼で見る他のゆっくり達。

その羨望と嫉妬の視線がまりさは心地よかった。



「ねぇ?ありすにあきちゃったの?」
「………。」

貰ったハチミツを突付きながら呟くありす。
以前なら、この後激しい愛を自分に与えてくれていたのにと、疑問を持ち始めていた。
遠くでありすが生んだ子供が眠っている。ありすは自分に若さが足りなくなってきたのかと思い始めたようだ。

「まりさのすきにしてもいいからね?」
「………。」

まりさは黙ったまま煙草(シケモク)に火を付けて吸い始めた。
煙草先端の光が増して、白い煙がまりさの体へと吸い込まれていく。

ありすは知っていた。最近まりさは美れいむにアプローチしている事を。
でも、ありすはその事を口にしない。まりさは皆の物だと思っていたから。

目元に涙をためるありす。
そんな切ない感情を胸に宿したありすの目の前に、乾燥してカラカラになったドライフルーツが置かれた。
驚きに顔を上げるありす。そこには笑顔のまりさが。

「もっていくがいいのぜ?」
「まりさっ……!」

これはまりさ特製のドライフルーツ。
狩りの名人まりさが、群れに革命を起した奇跡の食べ物。
これが開発された事により、冬篭りの食料保管事情が大きく進展した。

そして、まりさがこれを差し出す時は愛のサインとなる。
今から激しくするから後で栄養を取るがいい。的な。

「まりさあああああああああっ!」
「ありすうううううううううっ!」

干草のベットの上で愛が育まれる。

「まりさああああっ!ありすあつくてとけちゃうううううっ!?」
「まだまだこんなもんじゃないんだぜっ!」

嫌な音が巣の全体に響き渡る。
遠くで寝る赤ちゃん達は起きる様子は無い。慣れているのだ。

「まりさあああっ!あつすぎよおおっ!?はげしすぎるわあああっ!」
「ゆゆゆっ!あつい!あついんだぜっ!?まりさもあつくなってきたよっ!」

体に宿る熱い思い。
それを愛するありすにまりさの全てをぶつける神聖な儀式。
そして、立ち上る火柱。

(………ひばしら?) 

まりさ達は赤い炎がベットから立ち上っているのを認識した。自分達の体を熱く焦がしている。

『『ゆあああああああああああっ゛!?』』

まりさとありすは地面を転がり、体に引火した炎を消す事に成功した。
しかし、その時舞い上がった燃えた干草が、倉庫に積まれていた干草へと燃え移る。

「あああああっ!?ゆっくりきえてねっ!!」

体当たりをして燃え移った炎を消そうとしたまりさ。
そのまりさの行動は身を結ばず、自体を悪化の方向へと誘う。散らばった干草が燃え広がり巣の中は炎で満たされていく。
まりさは再度体に引火した炎を消す為、床を転がりながら出口へと向かう。

「あっ。あじずのあがぢゃんがああああああああっ゛!?」

ありすの前に炎の壁が立ちはだかる。奥からは泣き叫ぶ赤ちゃん達の声がしてきた。
今すぐにでも飛び込みたいが、ジリジリと体を焦がす感覚が足を前に突き出すのを拒否していた。
ありすは、ただただ泣き喚くだけだ。

「ありす!おちびちゃんはあきらめるんだぜっ!?」
「どがいはなあがぢゃああああああああああああああああんっ!!!?? 」

まりさに引きずられるように巣の外へと出て行くありす。
苦しみと絶望で泣き叫ぶ赤ちゃん達の声は、ありすの耳に何時までも残った。




燃え盛るまりさのゆっくりプレイス。
洞穴を利用した物だったので、木の根に住む他ゆっくり程の被害は出ないだろう。
火か落ち着けばまた住めるはずだ。

原因は煙草の火がベットに燃え移った事による出火。
あっという間に燃え広がり、まりさの財産とありす達の赤ちゃんを炭に代えた。

「ゆー。しょうがないね!ゆっくりあきらめるよっ!きょうはありすのおうちにとめてねっ!?」

まりさは何でも無いかのように気持ちを切り替えている。
それを見ていたありすは怒り心頭だ。
騒ぎを受けて飛び出してきた他ゆっくり達の中にも、焼け殺された赤ゆの母が居た。
ありすと同様に憎しみの視線をまりさへと送る。

「ゆん?どうしたんだぜっ?おめめさんがこわいよっ!」

まりさを囲む愛人達。

「ゆゆゆっ!?やべでねっ!まじざのすてきなあんよさんをかじらないでねっ!?
 ぶちぶちとちぎれちゃうよっ!やべでねっ!やめるんだぜえええええええええええっ゛!?」

まりさの足を集中的に攻撃する愛人達。

「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおっ゛!!!?? 」

それぞれが制裁を終え、死んでいった赤ゆ達を嘆きながら巣へと戻っていく。
まりさはそのまま冷たい地面へと置き去りにされた。

「まっでねっ!?まじざもぽかぽかのおうちにつれていってねっ!?」

地面を鈍足で移動していくまりさ。
痛々しく傷ついた足は、以前の軽やかな機能を奪い取り、あの狩り名人まりさの面影は無くなっていた。

「ゆゆゆっ!?ゆきさんがふってきたよっ!」

空から舞い落ちる氷の粒。
それらがまりさの頬に当たり、今は体温で儚く溶けていく。
そう。今だけだ。

このまま雪が降り続ければ、体温が低下した体へと積もっていくだろう。
完全に凍死を辿る未来しか無い。まりさは寒さと恐怖に震える。

泣き叫ぶまりさ。
頬を伝う涙が更に体温を奪い、体が白く化粧されたように彩られてく。
体の機能が停止して動かなくなったまりさは、視界が白で覆われていく世界を見ながらこう呟いた。

「もっど……、ゆっぐぢしだがっだよ………。」


……洞穴の炎は何時の間にか消えていた。





「どうですか?あふれるエロスとサスペンス!ありすったら残酷ね!!」
「……サスペンス?」

ちょっとネジが飛んだ社員を見ながら、何処からか溜息が漏れる。

「どうでしょう?これらを我が社のPR企画に提案したいと思います!」

眼を輝かせながら熱弁した社員。
それに下された判決は?

「えーと。人間を使って再構築をお願いします。じゃないとクビ。」
「どぼじでごんなごどに……。」

バッサリと切り捨て御免。社員は膝を地面について絶望を表した。

「ん?あーキミキミ。この案はとってもゆっくり出来るね。これは許可しよう。」

ゆっくりが発言するような絶望のテンプレを吐き出した社員に、判決を下した男ではない別の重役が声を掛ける。
今まで手元の資料に目を通していたようで、その中の一案にいたく興味を惹かれたようだ。

「はい!ありがとうございます!直ぐに手配いたします!」

鳴いたカラスがもう笑い、嬉しそうに会議室を飛び出していく社員。
残された者達は生暖かい視線で溜息を深く吐き出しながら、部屋を去る社員を見つめていた。





控え室の扉を勢い良く開き、社員が中へと飛び込んできた。

「仕事だっ!」
「ゆ?」
「ゆゆ?」
『『 ゆっくりしていってね!? 』』

そこには大小様々なゆっくり達が、テーブルの上でお菓子を貪り食っていた。
ゆっくり達の周囲は汚く散らかっている。

「今から早急に現場へと向かう!」
「ゆっ!れいうたちのでばんがきたんだね!」
「まりさがびしっとしたえんぎをみせてやるんだぜっ!」
「ありすのすてきなしょーがはじわるわーっ!」

先程のプレ映像の中で焼け死んだれいむ達が声を上げて意欲を見せる。
焼け焦げたシーンは全てCG加工されていたので、誰もずっとゆっくりはしていない。
元気にあまあまを食らう雇われのタレントゆっくり達。

「れいむのあかちゃんかわいいでしょ!?でも、かわいそうだけどしんでもらうよっ!」
「ありすのとかいはじゃないあかちゃんもずっとゆっくりしてね!
 えいこうのみちをあるくためには、これはしかたのないぎせいなのよっ!」

本映像はリアルを追求する為、前回CGで代用した赤ゆ達を本番では本物の赤ゆを焼く事を伝えてある。
その赤ゆ達の生産をこのタレントゆっくり達にお願いしていた。

「ュュュュュュゥ゛ゥゲェ゛……。」

親に酷い言葉を浴びせられた実ゆ以上、赤ゆ未満の固体達が震えながら涙目になり、
強烈なストレスを受けて口から餡子を吐き出した。

「ゆゆゆ!?このままじゃれいむのしゅっせどうぐがゆっくりしちゃうよ! 
 こうきゅうなあまあまたくさんもってきてね!!」

慌て出す親れいむ。他の親達も似たりよったりの状況だ。
半分の赤ゆは親のせいでずっとゆっくりしてしまった。でも、その方が幸せなのかもしれない。

「はいはーい。これから移動しまーす。」

社員はスタッフに合図して、れいむ達をケースの中へと乱雑に詰めていく。
鮨詰めの隙間の無い状態のゆっくり達は苦しみを露にする。

「ゆゆゆぎゅっ!?せまくでゆっぐぢでぎないっ!ゆああっ!れいぶのしゅっせどうぐがぁああっ゛!!!?? 」
「ゆああああっ゛!?あじずのえいこうのみちがあああああああっ゛!?」

ゆっくり達の体がぶつかり合い、頭に生やした赤ゆが実った茎を互いにへし折っていく。
折れた茎を踏んだり、口に入ってきてそのまま食べたりの小規模な地獄が展開される。

雪が降る寒空の下、ケースに入ったれいむ達をトラックの荷台に乗せて、現場へと移送した。





現場に着いてケースから開放された一部のゆっくり達。

「れいむたちをらんざつにつかうと、しゃちょうさんがおこるよっ!?くびになってもいいのっ!!」
「ありすのとかいはなびはだがきずついてしまったわ!いしゃりょうをせいきゅうします!」

騒ぎ立てるれいむ達を動く床の上へと乗せる。

「ゆゆ?ゆっくりすすむよっ!」
「これはとかいはなのりものねっ?ありすにはわかるわっ!」

ウキウキとおもちゃを与えられた様に喜ぶれいむ達。
暫く進むと、赤く輝いた部屋に辿り付いた。

『『ええええええええええええええええええええええっ!!!?? 』』

火のカーテンがれいむ達の目の前にある。
視認したと同時に足元が高速で進み出し、体がバーナーへと一直線に向かっていく。

「いやあああああああっ!?ゆごええええええええええええっ!!」
「どばいはじゃないわあああああああああっ!?げぼおおおっ!!」

サッと焼かれたれいむ達の体は抵抗を行えない位の重傷をうけた。
足を動かして逃げる事も出来ず、れいむ達はそのまま奥へと流れていく。
れいむ達は自ら流した涙が焼けた肌に染みて、更に涙が溢れ出してきた。

『『あやばるがら………、あやばるがらだずげでよおおおおっ!?』』

そのれいむ達の様子を見ながら社員と映像に収めるカメラマン。
れいむがバーナーで炙られた一瞬の時間、その時垣間見せた絶望の表情が旨く撮れたと喜んでいた。

「中々いいんじゃないか?流石、ゆっくりタレント」
「まだまだお楽しみはこれからですよ。」

この社員が最初に企画を纏めたのは、ゆっくり達を使った火の用心を促すPR映像を作るという案を提出した。
しかし、結局プレ映像は採用されずに人間のタレントを起用する事に纏まったのだ。

そして、用済みになった大勢のゆっくりタレント達に、会社から正式に処分勧告が出た。
そのまま捨てるのも勿体無いので、最後の一花咲かせてやろうとこの企画を承認されたんだと思う。
題して、『 処分されていく悲劇のゆっくり達。 』
ドキュメンタリー的な話の一角にこの映像は使用される事になる。

「あああああああっ!?だめええええええええええっ゛!」

れいむの目の前に地獄の大窯が迫る。
ここが最終地点にして自分のゆん生の終着駅。
足は意に反して流れるように絶望へと向かっていく。
微妙に下を向いたれいむの額に炭になった何かが垂れ下がってきた。

それはれいむの出世道具だったなれの果て。
もう赤ゆが成っていたのも解らない位に炭になっていた。そして自分も今からこうなるとれいむは悟ったようだ。

「ごべんだざいっ!?あがぢゃんごべんだざいっ!みんだみんだごべんだざいいいいいいっ゛!!」

れいむは全力で謝った。貶した赤ちゃんと人間さんに向かって。
れいむの隣で流れていくありすも同じ事を叫んでいる。ありすの頭にはれいむと同じ様な一本の炭が垂れ下がっていた。

「ごべんだざいごべんだざいごべぇええええええあああああああああああああっ゛!!!?? 」

謝りながられいむ達は火が燃え盛る処分場へと落ちて行く。
焼け焦げていたれいむの体は一層黒さを増しながら、底に沈む炭になった同士と同化した。

「おーい。そこは、『もっとゆっくりしたかったよ。』だろ?聞いてるかーいれいむー?」

社員はセリフの要求を炭と化したれいむへと告げる。
当然、反応が返ってくるはずも無く、

「れいむは使えないなあ。よし、宜しくな!まりさ!!」
「ゆゆゆゆぜえぜぜぜっぜえぜぜっ゛!?」

社員達が撮影している場所は処理場の全貌が見える所だった。
処分されるゆっくり達が訪れるはまず無い。
先程焼かれたれいむの様に、幸せ一杯で移動する床からのスタートが普通だ。

「やじゃっ!!やじゃやじゃやじゃあああああああああっ゛!?」

ケースに入ったまりさ組は暴れ出す。
もう自分達がどんな目に合うのかを記憶に焼き付けたのだから。
まりさは幼児退行をおこして赤ちゃん言葉を放ちながら、動くレーンに乗るまいと入れられたケースの隅に齧りついている。

しかし、抵抗空しくまりさの体はレーンへと落ちた。
既に足場のスピードは速めに移動していくゾーンからのスタートだ。
先行していったまりさ組の仲間が、燃え盛るバーナーの餌食となっている。
まりさもゆっくりなど微塵も感じさせない堂々たる速度で、勇敢にバーナーへと体を進めていく。

「やめちぇええええええっ゛!?まりしゃはわるいきょとにゃんてちてにゃいのにいいいいいいっ゛!!」

目を瞑りながら首を振り、一杯漏らしながら直火の洗礼を体に浴びたまりさ。
そしてその後、

「ゆっきゅりちゃちえてえええええええええええええええっ゛!?」

そう叫びながられいむの待つ大窯へとまりさは姿を消した。
もちろんNG。テイク3だ。





『ゆんやぁああああああああああああああっ゛!?』

「今のが最後?」
「その様ですね。」

結局テイク8まで撮ったが、理想であった『ゆっくりしたかったよ。』と言う固体は居なかったらしい。
社員は溜息混じりに撤収を現場に伝えた。

「まあ、良い絵がとれたから何とかなるだろ。」

あまりこれに時間は掛けていられない。
今からゆっくり達で作るはずだった企画を、人間が演じれるように再構成しなければなら無い。

「後はよろしく。ご苦労様。」
「お疲れ様でーす。」

スタッフ達の挨拶を背に受け社員は処理場を後にする。

「ゆっくりで作れる物をまた考えるか。」

そうボッソリと呟きながら。
この社員は全然懲りてない様だった。



後日発売された、れいむ達が興じる迫真の演技が満載に収録されたDVD。
『 処分されていく悲劇のゆっくり達。 』は、そこそこの売上げだったと社員は報告をうけた。








・火でゆっくり達を燃やすお話
・本当は最初のシーンでお話を膨らませる予定がどんどん右斜め下へと失速していった
・会議でこんなハイテンションな社員は流石にいないと思う






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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

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  • そんなことよりおっぱいもみたい -- 2017-05-27 21:46:06
  • 火を扱えるとなると本格的に滅ぼさなきゃ人間に被害がおよぶのでだめです -- 2014-04-26 23:50:20
  • ↑注意書き読めますか ?
    ゆっくりが燃えながら発狂する様は想像すると笑える -- 2010-08-02 08:54:27
  • つまらん -- 2010-07-26 14:47:31
最終更新:2009年11月21日 09:31
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