まりさのれいむ 34KB
自業自得 誤解・妬み 自滅 妊娠 飼いゆ 野良ゆ 都会 現代 独自設定 ぺにまむ ぺにまむ表現に特に注意!
まりさは恋をしていた。
薄暗いケースの中にただ1匹だけ、ポツンと座っている。
四方の壁は黒く塗りつぶされ、とても殺風景。
ただ1つ設置されたのはめ殺しの窓から外を眺めるだけの毎日。
れいむ。れいむ、れいむ、れいむ。
まりさのれいむ…!!
溢れんばかりの笑顔をくれたれいむが、自分に微笑む事はもう、無い。
顔を上げ、ガラスに映る自分の顔を見る。
とても醜いその顔を。
くすんだ金バッジがゆらゆらと揺れる。
だが、今更こんな物に何の価値があろうか。
窓ガラスにおでこをあてると、声を殺して泣く。
一体、何故こんな事になったのだろう…。
まりさは思い出す。
あの平和でゆっくりとしていた日々。
つがいとなる筈だったれいむと過ごしていた幸せな日々を…。
「ただいまー。今帰ったよ」
「ゆ!?おにいさんだ!ゆっくりおかえりなさい!」
「ゆゆっ!おにいさんおつかれさま!ゆっくりおかえりなさい!」
それまで居間で遊んでいたれいむとまりさは、飼い主の姿を認めると大喜びでぴょんぴょんと跳ね寄り、足にすーりすーりしてじゃれつく。
そんな様子にお兄さんは嬉しそうに2匹の頭を撫で回した。
「あー、遅くなってごめん。お腹すいただろ?ご飯用意するからちょっと待ってて」
お兄さんはどこにでもいる一人暮らしのサラリーマンだ。
寂しさを紛らわす為に飼い始めたゆっくり達との生活は既に1年以上にもなる。
今ではお兄さんにとって、なくてはならない大切な存在となっている。
まりさ達も優しく大好きなお兄さんにとても懐いており、両者の関係はこの上なく良好だ。
「じゃ、みんなで一緒にご飯にしようか。いただきますをしようね」
「ゆー。おにいさんゆっくりいただきます!」
「ゆふふ、いっしょにごはんたべようね!ゆっくりいただきまーす!」
「「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」
幸せ一杯の顔で美味しいご飯を頬張るまりさ達を見て、つい笑みをこぼすお兄さん。
自然と会話に花が咲き、微笑ましい団欒の時間が流れていく。
「ゆー、おなかいっぱいだね…。とってもしあわせーだよ。ゆっくりごちそうさま!」
「あれ、もうお腹一杯なのか?残念だなあ。折角、食後のデザートにケーキを買ってきたんだけどな…」
「ゆゆ!?ケーキさんあるの!?ま、まりさ、たべれるよ!ぜんぜんだいじょうぶだよ!」
「ゆー!れいむもケーキさんだいすき!あまいものはべつばらだよ!」
「ははは、まったく食いしん坊だなあ。よしよし、今から用意するからちょっと待っててね」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは大きなホールケーキ。
苺の載った大きなデコレーションケーキを前に、まりさとれいむは目を輝かせて騒ぎ出す。
「ゆわぁ!とってもおおきいね!いったいどうしたの!?」
「ゆー!?クリスマスでもたんじょうびでもないのに、おっきいケーキさんだよ!すごいね!」
「ふふふ…それはね。まりさへのお祝いだよ。
金バッジ合格おめでとう!」
「……ゆ?」
お兄さんはポケットに閉まっていた封筒を取り出し、金バッジ試験合格の通知書を広げて見せる。
信じられないといった表情でポカーンと惚けているまりさに、れいむが大喜びで、
「ゆーっ!ゆっくりおめでとう!まりさならごうかくできるって、れいむはおもってたよ!」
「…えっ…うそ…だって、まりさは……え…?」
「嘘じゃないさ。これで、まりさもれいむと同じ金バッジだよ。
記念に今度の休日、皆で遊びに行くか。まりさも家に閉じこもってばかりじゃいけないからな。
…そうそう、それともう一つご褒美があるんだが。お前達ちょっと聞いてくれるか?」
「「ゆっ?」」
「お前達も、もうゆっくりとしては大人だし…そろそろ赤ちゃんが欲しくないか?
可愛い子供に囲まれた家庭を持ってみたいだろ?
あんまり沢山作られたら流石に困るけど…少し位なら作っていいよ」
「ゆゆっ!!?お、おにいさん…ほんとうにいいの!!?」
今度はれいむも驚いた様だ。お兄さんは笑いながら頷く。
「ゆわあ…!!れいむ、ゆめをみてるみたい…!おにいさん、ゆっくりありがとう…!!」
今まで赤ちゃんが欲しい等とおねだりした事は一度も無かったれいむ。
それでも心の奥底では子を作り、親子で過ごす家庭生活を夢見ていたのだろう。
れいむはこぼれる様な笑顔で隣に居るまりさに振り向いた。
「まりさ!これからもみんなでいっしょにゆっくりくらしていこうね…!」
「ゆっ!?で、でも…」
一番喜んでいい筈のまりさの顔に笑顔は浮かんでいなかった。
不安げな表情をして、戸惑い声で呟く。
「でも、ほんとうにまりさでいいの…?だって、だってまりさは…」
顔を上げるとそこにはこちらをキョトンと見つめるお兄さんとれいむの顔。
そして背後に置かれた鏡に映る自分の顔が目に飛び込んできた。
片目が潰れ、生々しい傷跡が残る醜い自分の顔が…。
まりさはいわゆる野良ゆっくりだった。
ある日、他の野良ゆっくり達の群れとまりさの家族の間で諍いが起きた。
結果親は倒れ、まりさは襲い掛かる敵から必死で妹達を庇い、どうにか逃がしたものの瀕死の重傷を負ってしまったのだ。
幸運にも一命を取り留めたのは、たまたま通りがかったお兄さんに拾われたからだ。
お兄さんはとても優しい人間さんで、まりさが動けるようになるまで熱心に看病をしてくれた。
そして数日経ち、ある程度傷が癒えた頃には、既に家族の消息は分からなくなっていた。
落胆するまりさに対し、お兄さんは行く当てが無いならウチの子にならないかと暖かく迎え入れてくれた。
以後、まりさは命の恩人であるお兄さんに対し計り知れないほどの感謝と尊敬の念を抱き、今日まで過ごしていたのだ。
野良にしては珍しい程に餡子の出来が良かったまりさは、お兄さんの教育が良かった事もありメキメキと躾を覚えあっさりと銀バッジを取得した。
先住の飼いゆっくりであるれいむ達も孤児であるまりさを受け入れ、穏やかで楽しい日々が流れていく。
一度は家族を失いはしたものの、新しい家族に迎え入れられ、まりさは文字通り順風満帆なゆん生を送っていた。
だが、今日いきなりお兄さんの口から出た金バッジ試験の合格とれいむとの子作り。
金バッジ試験に受かった事は未だに信じられない。
こんなに醜い顔をした自分が受かる訳ないと思っていた。
お兄さんは今度、皆でお外に散歩にいこうと言ってくれたが、自分なんかを連れて歩いていたら他のゆっくりや飼い主に笑われないだろうか。
自分が原因で大好きなお兄さんやれいむに恥をかかせてしまうかもしれないと思うと、やるせなかった。
それに、野良上がりのこんなに醜いお化けのような顔をした自分とつがいになって、果たしてれいむは本当にゆっくり出来るのだろうか。
れいむは自分なんかと違って、ペットショップで購入された由緒正しい餡統書付きの金バッジゆっくりだ。
お手入れが行き届いた綺麗な黒髪。柔らかそうなふっくらとしたもち肌。ぱっちりと大きな可愛いおめめ。
性格もとても優しく、家族を失い落胆していた自分を何度励まし、支えてくれた事だろう。
そんなれいむに、自分なんかが釣り合うのだろうか…。
「なんだ、そんな事を心配してるのか。馬鹿だな、まりさは」
お兄さんは苦笑して、まりさの頭に暖かい手を置き、クシャクシャと撫で回す。
「良いゆっくりになるのに一番大事な事は、勉強が出来る事でも外見が綺麗だったり可愛い事でもないんだ。
自分の周りにいる人達をどれだけゆっくりさせてあげれる事が出来るだろうかと考える、思いやりの心を持つ事。
それがゆっくりにとって一番大事だっていうのは…試験に合格したまりさやれいむに今更言うまででもないよね?」
頷くまりさに、にっこりと微笑む。
「まりさの顔のせいでお兄さんやれいむが馬鹿にされて笑われるかもしれない…?
そんな事で笑うような奴には笑わせておけばいいのさ。
他人の容姿を嘲り笑うような奴等の心の方がよっぽど醜いからね。
誰に躾けられるでもなく、自然にお兄さん達を気遣うことが出来るまりさはとても素晴らしいゆっくりだと自慢に思うよ」
「ゆー。おにいさんのいうとおりだよ、まりさ。
そんなまりさだからこそ、きんバッジのしけんにごうかくできたんだよ。
まりさみたいなやさしいまりさといっしょになることができて、れいむはしあわせー!だよ」
「ゆ…っ!おにーさん…!れいむ…!」
「…ま、いくら優しいからってウジウジしすぎなのはちょっと問題だけどな」
「ゆふふ。そうだよ、まりさはもっともっとじぶんにじしんをもってね!」
笑いながら、更にまりさとれいむの頭を撫で回すお兄さん。
泣き笑いのまりさに、ずっと微笑み続けるれいむ。
暖かい笑い声はどこまでもどこまでも響いていた…。
あれから数日経った。
赤、仔ゆ用のゆっくり用品が沢山積まれている。
2匹の巣箱には赤ちゃん用のベッドまでも用意してある。
既にいつすっきりーして、にんっしんっしても大丈夫な様に準備万全だ。
そして、居間で向かい合う2匹。
まりさの帽子には数日前に登録した真新しい金バッジが輝いている。
お兄さんは現在お仕事で、留守を預かっている2匹であるが、今から子作りをするらしい。
夜遅くだと、声でお兄さんの睡眠を邪魔するからという考えのもとに、この時間帯を選んだのだろう。
「れいむ…ほんとうにいいの?」
「ゆ…いいもなにも、れいむはまりさいがいとはいやだよ…」
「ゆ…っ!」
お互い緊張の面持ちで固まっていたが、れいむのその一言に意を決し、まりさはぎこちない動作で唇を合わせた。
「……っ!」
「……っ!」
甘くて何故か酸っぱい気持ちが2匹の餡子を満たしていく。
ゆっくりと身体を離し、お互い真っ赤に染まった顔を見つめ微笑みあう。
「ゆふふ。これがファーストちゅっちゅのあじなんだ…。なんだかはずかしいね…っ」
「…っ!!れいむ…っ!!!」
下に敷いたタオルの山にれいむを押し倒す。
2つの影が1つに重なり合った…。
帰宅したお兄さんは胎生にんっしんっしたれいむを見て喜び、2匹を祝福した。
それから暫くして生まれた赤ちゃんも順調に育ち、可愛い子供達と幸せな時を過ごした。
ある程度育ち、何匹か里子に出した子供達もいたが皆、それぞれ幸せに過ごしているらしい。
ご近所に貰われていった子供達とは散歩中にも時々会える。
この前は近所に住んでいる長女のまりさが初しゅっさんっした。
もう少ししたら、孫ゆっくりと遊ぶ日も来るだろう。
それからいくつもの季節が巡り、まりさもれいむも老ゆっくりとして幸せなゆん生を過ごしている。
子孫は大体が幸せなゆん生を送っているらしい。
暖かい春の日差しを浴びながら、まりさはこれまでのゆん生を振り返る。
幼い頃こそ苦労はしたが、なんて充実して素晴らしいゆん生だったのだろう。
寄り添うれいむにほお擦りをすると、微笑みながら擦り返して来た。
その後もまりさは末永く幸せなゆん生を送る事となる。
子供や孫達、それに愛する妻や飼い主夫妻に看取られながら、老衰でゆっくりとこの世を去るまで、末永く。
まりさの話はこれにて、おしまい。
『まりさのれいむ』
カマキリあき
まりさは恋をしていた。
薄暗いケースの中にただ1匹だけ、ポツンと座っている。
四方の壁は黒く塗りつぶされ、とても殺風景。
ただ1つ設置されたのはめ殺しの窓から外を眺めるだけの毎日。
ガラスの向こうでは居間の様子が透けて見えている。
お兄さんの留守番をしている2匹はクッションに座り、2匹並んですーりすーりしながらTVから流れてくる映像を眺めている。
『すーりすーり…ゆーん。ゆっくりしてるね…』
『そうだね、れいむ。とってもぽかぽかでゆっくりしてるね…』
『しあわせーだね…』
『しあわせー…だねえ…』
ケースに備え付けられたスピーカーから、聞きたくも無い外部の音声が流されてくる。
部屋の窓から差し込む日光を浴び、居間の2匹はとても幸せそうだ。
春らしいポカポカ陽気を全身で感じながら、溢れんばかりの幸せそうな笑顔で隣のまりさにすーりすーりするれいむ。
れいむ。れいむ、れいむ、れいむ。
まりさのれいむ…!!
溢れんばかりの笑顔をくれたれいむが、自分に微笑む事はもう、無い。
…違う、そんな奴じゃない!
れいむはまりさのれいむだ!まりさだけのれいむだ!
そんな醜い野良に笑わないで、まりさを見て!!
叫ぶ、大声で叫び続ける。
防音機能が付いているこのケース内でいくら泣き喚こうとも、居間の2匹に届かない事は分かっている。
無駄とは分かっていても、この衝動を抑える事は出来ない。
ひとしきり喚き続けた後、顔を上げ、ガラスに映る自分の顔を見る。
嫉妬に歪んだ、とても醜いその顔を。
くすんだ金バッジがゆらゆらと揺れる。
だが、今更こんな物に何の価値があろうか。
窓ガラスにおでこをあてると、声を殺して泣く。
一体、何故こんな事になったのだろう…。
まりさは思い出す。
あの平和でゆっくりとしていた日々。
つがいとなる筈だったれいむと過ごしていた幸せな日々を…。
まりさはれいむと一緒に、お兄さんがペットショップで購入した金バッジ付きの飼いゆっくりだ。
初めて飼われて来たあの日、まりさは幸せの絶頂にいた。
まりさの横に居るれいむをチラリと見る。
お手入れが行き届いた綺麗な黒髪。柔らかそうなふっくらとしたもち肌。ぱっちりと大きな可愛いおめめ。
一緒に躾の教育を受けていた友達の誰よりもゆっくりとした雰囲気を漂わせていた。
ペットショップで初めて会ったときから、まりさは恋に落ちていた。
いわゆる一目惚れというやつだ。
だが、飼いゆっくりであるまりさにとって、自由恋愛など許される訳もない。
もし、可能性があるとすれば、まりさを買ってくれる人間さんが一緒にれいむも購入して、つがいとして飼う場合だけだ。
幼いながらも教育され、理解していたまりさはその僅かな望みを胸に抱き…そして、叶ったのである。
「すいません、ゆっくり買いたいんですけど。いや、基本種でいいです。
もし気が向いたら子供を産ませるかもしれないんで去勢してないのがいいかな。予算は…」
「はい、そのご予算でしたら基本種の金バッジがよろしいかと思います。
ええ、ある程度躾もされていますし、餡統もかなりの物なんで人間にとても忠実です。勝手に子作りする事もないですから」
「そうですか。それじゃあ、まりさ種とれいむ種を1匹づつで」
「まりさとれいむですね。先週入荷した金バッジでお勧めなのがこの仔とこの仔と…」
お兄さんは店員さんが最初に指差した、ゆぅゆぅとゆっくり寝ているれいむを覗き込むと、
「ははは、ぐっすり寝てるなー。よし、れいむはこの仔で。まりさは…」
お兄さんの視線が泳ぎ、ぐるっと店内を見回した後、まりさに向かってピタッと止まる。
まりさは緊張のあまり中枢餡がバクバクドクドク鼓動するのがはっきりと分かり、そして…。
「お待たせ、ご飯だよ。ゆっくり食べていってね!」
「「ゆっくち!おにーしゃん、ありがとう!いただきましゅ!」」
その後、お兄さんの家に連れ帰られて初めてのお食事。
躾通り、音を立てずに丁寧に黙々とご飯を食べる2匹。
そんな2匹を見て、気付いたお兄さんが声を掛けた。
「ああ、そうかそうか。ええと、お兄さんの家では声を出して食べていいからね。
食べる仕草とかが好きだから。その代わりあんまりこぼさないでね」
「ゆゆ!?しあわせー!していいの!?」
「ゆわーい!おにーしゃん、ゆっくちありがとう!」
「「むーしゃ、むーしゃ!しあわせー!」」
飼い主は大らかでとっても優しいお兄さんだった。
美味しいご飯に面白い玩具に室内飼いの生活。
休日には近くの公園やレジャー施設に連れて行ってもらい楽しい一時を満喫。
優しい飼い主さんと、もしかしたらつがいになるかもしれない可愛いれいむ。
まりさは、飼いゆっくりにとっては理想のゆん生を謳歌していた。
…あいつが来て、暫くするまでは。
「「ゆ!おにーしゃん、ゆっくりおかえりなさ…」」
挨拶が止まり、れいむとまりさはそれを見つめる。
部屋に飛び込んできたお兄さんの片手に抱えられたそれは、1匹の汚い仔まりさだった。
大事なお帽子はボロボロ。片目が飛び出して頬がざっくりと裂け餡子がはみ出している。酷い状態だ。
意識はないようだが、苦しそうに息をしている所をみるとまだ命はあるようだ。
「ゆっ!?おにーさん、そのこは?」
「ぼろぼろで、とってもいたがってるよ。かわいそうだね…」
「ああ、帰る途中、家の前で拾ったんだ。多分、野良の子供なんだろうけど…まだ息があるし…。
いいかい。今からお兄さんはこの仔の治療をするけど、いいっていうまで近づいちゃ駄目だからな」
「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!」
野良まりさと初めて会話したのは意識を取り戻し、自力で歩けるようになった5日後の事だ。
お兄さんが連れてきた野良まりさの右目は潰れ、頬にその痕が残りとてもゆっくりできない姿になっていた。
鏡か何かで自分の姿を見たのだろう。
2匹を紹介されても恥ずかしがり、俯いたままなかなか喋ろうとしない。
ツギハギだらけのお帽子が震えている。もしかして、泣いているのかもしれない。
比較して1つの解れもない綺麗なお帽子を被っているまりさは、気の毒でなんと声を掛けていいのか分からず両者立ち尽くしたままだ。
そんな静寂を打ち破ったのはれいむの挨拶だった。
「こんにちわ、まりさ。れいむ、あたらしいおともだちができてうれしいな。ゆっくりしていってね!」
慌ててまりさも元気な声で挨拶に加わる。
「ゆっ!?ゆ、ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくりしていってね!!」」
それまで泣きそうな顔だった野良まりさは、一瞬驚いた後、本当にボロボロと泣きながら挨拶を返してきた。
「ゆっ…ゆっぐ…!ゆっくち…していってね!ゆっくちしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
外でどんな事があったのか理解する事は出来ないが、余程辛い思いをしたのだろう。
その後、野良まりさの気が落ち着くまで、れいむとまりさはすーりすーりし続けてあげた…。
段々と自分達の輪に溶け込んできた野良まりさの事を次第に家族と同等に扱うまで時間は掛からなかった。
まりさもれいむ同様、やや自分より小さい野良まりさの事を可愛い妹が出来たと思いとても喜んでいた。
野良ゆっくりと思えない程このまりさは出来がよく性格も穏やかだった。
お兄さんや、まりさ、れいむから教わった事もスポンジが水を吸うようにあっという間に覚えていった。
外で育った影響か、少々やんちゃな部分を残しつつ躾けられたまりさの事を、お兄さんはとても可愛がった。
でも、いつからだろう。
それが、嫉妬と嫌悪に変化していったのは。
あいつが楽々銀バッジを取得したあの時から?
いや、足し算、引き算をあっさり覚えたあの時から?
帰宅したお兄さんが最初にあいつを撫でたあの時から?
それとも、最初にあったあの時。
あいつに、れいむが微笑みを向けたあの時から?
自分が金バッジという事もあり、心の何処かに小さく在った優越心。
野良まりさが賢くなる度、可愛がられる度、れいむと仲良くする度、それは緩やかに刺激してきた。
面白くない。なんだかゆっくり出来ない気がする。
少しお勉強が出来たからって、生意気だ。まりさは足し算も引き算も出来るのに…!
気のせいかもしれないが、お兄さんは最近、自分よりもあいつに構いすぎなんじゃないだろうか?
それに、れいむもあいつに対してベッタリしすぎだ。
家族として扱うとは言ったし、妹みたいなもんだと思っているから可愛がるのは構わない。
しかし、度を過ぎている気がする。
そんな事を心の奥底で考えているせいで、表面上はいつも通りに振舞っているが、まりさは内心全然ゆっくりしてなかった。
実際の所、お兄さんは3匹に対して平等に接していたし、れいむにしたって…いや、むしろまだまりさと多く接していたかもしれない。
だが、嫉みにより歪んだ見方を始めたまりさにとって、元野良まりさを取り巻く環境は一々腹立たしい内容として曲解されていた。
些細なきっかけにせよ、一度付いた嫉妬の炎というものはゆっくりはおろか人間でも中々消せる物ではない。
ましてやそれに恋愛が絡むと尚更だ。
そして、それも些細なきっかけだった。
「いたい!」
食後の居間。
みんなで仲良くボール投げで遊んでいる最中、それまでぴょんぴょん跳ねていた元野良まりさが痛みに顔をしかめ悲痛な叫び声を上げた。
「えっ!?どうした、まりさ!」
不審に思ったお兄さんが痛がるまりさを持ち上げると、あんよに1本の画鋲が刺さっている。
「あっ!さっきカレンダーを取り直すときに1本落ちていたのか。
ごめんな、まりさ。痛かったろ?お兄さんが見落としてなければ…」
「ゆっ!?だ、だいじょうぶだよ!まりさこのくらいへっちゃらだよ!おにいさん、きにしないでね!」
応急処置のオレンジ軟膏を塗る時、染みる痛みに耐えながら強がりを言う元野良の顔を見たその瞬間…。
まりさの中に、えも言えぬ快感が駆け巡った。
あの小憎たらしい野良の苦痛に歪む顔。
…ざまあ見ろ。
高ランクの飼いゆっくりにとってほとんど起こらない筈の。思ってはいけない。あってはならない感情に支配された瞬間である。
見たい。もっと見たい。あの野良が泣く姿を。
しかし、今回みたいな偶然起こる事故はそうそうない。
偶然に頼れないならば…簡単な事だ。
自分の手で行えばいいではないか。
最初はまだ罪悪感に躊躇していた事もあり、ちょっとした悪戯だった。
こっそりと餌に唐辛子を混ぜたり、野良のベッド毛布を崩したり、玩具を隠したり…。
野良まりさが慌てる姿を横でほくそ笑み眺めていたが、その内それだけでは満足出来なくなる。
行動は次第にエスカレートしていった。
餌に針を混ぜ、ベッドの中に画鋲を置き、玩具を強引に借りた後わざと壊して見せた。
泣き叫び、当惑する野良まりさを心の中で大笑いして馬鹿にした。
しかし、金バッジといっても所詮ゆっくりの稚拙な行動。
更に、今のまりさは嫉妬と加虐心に凝り固まり周りがまったく見えていなかった。
「なあ、まりさ。これは、どういう事なんだ…?」
それまで、黙ってTV画面を眺めていた1人と1匹の間に、重苦しい空気が立ち込めていた。
俯き震えているまりさにはお兄さんの表情が分からないし確かめる勇気もない。
最近頻繁に起こる元野良まりさの事故に対して不審に思ったお兄さんがこっそりビデオカメラを仕掛けていたのだ。
画像はまりさがこっそりと元野良まりさのお洋服に画鋲を仕込む姿を鮮明に捕らえていた。
暫くの沈黙の後、青褪めた表情をしたまりさは、震える声でお兄さんに全てを打ち明けた。
「おにいさん!ごめんなさい!もう、もうこんなことはしません!だから!まりさをゆるしてください!おねがいします!!」
「………っ!!!」
床に頭を擦りつけ何度も何度も懇願するまりさを、お兄さんは顔を歪め睨み付ける。
自分や、元野良まりさ達を裏切った事に対する怒り。
れいむに対する想いとその為に湧いた嫉妬心に対する憐れみ。
そして、この数ヶ月共に暮らしてきた日々に対する愛しさ。
その他、様々な感情の混じった表情で無言のまま睨み続けた。
2度としないとは言うが、ここまで歪んでしまった心は、もう元通りにはならないだろう。
隣の部屋で寝ている何も知らない2匹と一緒に、これまで通り飼う事など出来ない。
では、どうする?
見切りをつけて潰す?
無理だ。
1年弱とは言えこれまで過ごしてきた中で言葉に出来ない位愛着が湧いている。
例え、歪んだとは言えこの手にかけるなんて出来そうもない。
回収業者に渡して殺処分してもらうのも辛くて出来ない。
他の飼い主を捜す?
駄目だ。
今の状態ではゲス認定される可能性が高い。
もし引き取り手が見つかっても、その家で問題が起これば取り返しが付かない。
それでは、捨てる?
論外だ。
街中でちらほらと見かけるあの野良ゆっくり達をみろ。
恐らく悲惨な目に遭い苦しみぬいた後、死んでいくだろう。
それでは、どうする…?
お兄さんの出した結論は、2匹から隔離して飼い続ける事だった。
防音機能付きのケースを購入し、中へ閉じ込める。
食事と水は夜中2匹が寝静まった後に気付かれないように交換して、会話してあげている。
殺風景なケースの中で四六時中1匹なのは可哀想に思った。
はめ込み窓になっているマジックミラーからは居間の様子が一望でき、自分で操作できないもののテレビを見る事も出来る。
これはまりさへ対するせめてもの情けと、お仕置きの意味も込めて。
何も無く暇をもてあそぶ事はないかもしれないが、自分からは決して何も出来ない。
ただ指を咥えて楽しそうな2匹の様子を眺めるしかないのだ。
急に姿を消したまりさに当惑する2匹には、まりさは病気になったので入院したと告げた。
「ゆぅ…まりさ、だいじょうぶかな…」
「そうだね。しんぱいだね…。そうだ!ねえ、れいむ!まりさいいことおもいついたよ!」
「ゆっ?」
「まりさがはやくよくなるように、おりがみさんをつくろうね!」
「ゆゆっ!?ナイスアイデアだよまりさ!ゆっくりおろうね!」
「ゆんゆんっ!」
「ゆっゆっ!おにいさん、れいむといっしょにつるさんおったんだよ!まりさにゆっくりわたしてあげて!」
「かわいいつるさんをみたら、きっとげんきになるよね。ゆっくりしないで、はやくかえってきてねまりさ…」
実は2匹が次第にまりさの事を忘れていってくれないだろうかと淡い期待を抱いていたのだが、甘かったらしい。
二度と帰ってこない仲間を待ち焦がれる2匹の姿を見るのに耐えるのも辛くなった。
数日後、入院先の病院でまりさが永遠にゆっくりしたと嘘をついた。
「…うそ…」
「そんな…ゆぐっ!まりさが…!」
「…ゆっ…ゆわああああああああん!!!やだ…っ、やだよう…!」
「ゆう…れいむ…ゆぐっ…なかないで。すーりすーり…」
「ゆぐっ…ゆうぅぅぅ…!ゆわぁぁぁ…!」
小さい頃から一緒にこの家で育って来たれいむの悲しみは特に大きかった。
誰も気付く事は無かったが、実際の所この時点ではれいむもまりさに対して特別な感情を抱いていたのである。
悲しみに暮れるれいむに対し、それまで優しくしてもらった恩返しも込めそっと寄り添い、慰める元野良まりさ。
時間が経ち、心の傷も癒え季節が変わる頃には、れいむの心の中に居たのは、それまで自分を支えてくれた元野良まりさになっていた…。
お兄さんの想像以上にまりさはゆっくり出来なくなっていた。
大好きなれいむが、あのまりさのれいむがあの薄汚い泥棒野良と楽しげに遊んでいるのを見せ付けられ、何も出来ない。
まりさにとっては生き地獄の毎日だったが、本当の不幸はまりさが躾の出来た賢い『善い』飼いゆっくりだった事だ。
自分の過ち、罪をある程度理解出来ているので罪悪感に苛まれつつも、愛しいれいむを奪った元野良を許す事が出来ず嫉妬心はつのる一方。
全ての憎悪を捨て去り、諦めれば寂しくはあるが静かな心で過ごせたかもしれない。
全ての良心を捨て去り、ゲスな言動に徹すればお兄さんも処分してくれたかもしれない。
どんなに苦しくても、どんなに辛くても、まりさは飼い主のお兄さんに対して不満を言う事は出来なかった。
夜中に餌を持ってきて話しかけてくれるお兄さんは相変わらず優しかったし、まりさにとって唯一残された温もりであった。
反抗して残されたこの温もりを失うなど出来るわけもない。
月明かりの中。
ぼんやりした笑みを浮かべ、お兄さんの腕に頬擦りしてくるまりさ。
「…ゆ。…おにいさんのおてて…とってもあったかいね…すーり、すーり…」
こうしていると相変わらず可愛い。
まるであんな酷い悪戯をしでかしたなど信じられない程に。
悲しい笑顔を浮かべ、そっとまりさの髪を撫でる。
結局、お兄さんがまりさの苦しみの深さに気付く事はなく、まりさは生きている間、ただ1度を除き、箱から出ることを許されなかったのだ。
ある日。
夜になり、お兄さんが帰宅した。
『ただいまー。今帰ったよ』
『ゆ!?おにいさんだ!ゆっくりおかえりなさい!』
『ゆゆっ!おにいさんおつかれさま!ゆっくりおかえりなさい!』
お兄さんは2匹を撫でると室内を見回す。
こちらのケースに目を合わせると、軽く微笑む。
お兄さんの目からも、内部の様子が透けてみてる訳はないのだが、明らかに自分に対してだろう。
「…おにいさん。ゆっくり、おかえりなさい…」
か細い声で微笑むながら、まりさは聞こえる筈の無い挨拶を返した…。
そして夕食後。
『…まりさへのお祝いだよ!金バッジ合格おめでとう!』
ピクリ、とケースの中。ケースの外。2匹まりさが驚きに震える。
…金バッジだって!?
ポカーンと惚けているまりさを睨み付ける。
そんな馬鹿な!
あんな醜い顔をした元野良が金バッジだって!?
認めない。何か不正をしたに決まっている。
あの、薄汚い野良が、まりさやまりさの愛するれいむと同じ金バッジなんて認める訳にはいかない!
『ゆーっ!ゆっくりおめでとう!まりさならごうかくできるって、れいむはおもってたよ!』
違う!れいむの口からそんな事言わないで!そいつは汚い野良なんだよ!
こんなのは何かの嘘だ!間違いだ!
『嘘じゃないさ。これで、まりさもれいむと同じ金バッジだよ』
違う!違うよ、お兄さん!
そんな醜い穢れた野良ゆっくりがれいむやまりさと同じな訳ないでしょ!!
心の中で喚きまくるまりさに、更に信じられない一言が届く。
『お前達も、もうゆっくりとしては大人だし…そろそろ赤ちゃんが欲しくないか?』
……………………………………………………。
……………………………………………………。
……………………………………………………ゆ?
オニイサン…イマ、ナニヲイッタノ…?
『まりさ!これからもみんなでいっしょにゆっくりくらしていこうね…!』
初めて会った時と変わらない。いや、それ以上の眩しい笑みを浮かべ、れいむは−−−
「ゆああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
嘘だ!嘘だ!!
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
あのれいむが、あのれいむの口からそんな言葉が出るわけないよ!
これは何かの間違いだよね!?
お願い!お願いします!そんな事は嘘だって言って!
食い入るように見つめるその先には、野良まりさに笑いかけるお兄さんとれいむの笑顔。
ガラス向こうの景色が涙で歪む。
「あああああああああああっあああああああああああああああああああああっあああああああああああー………」
呆けたようにそれを見つめるまりさに構わず、話は進んでいく。
『でも、ほんとうにまりさでいいの…?』
…何だ?
何か不満があるのか?
ふざけるな!何様のつもりだ!!
この野良風情が…!!
『…だから、おにいさんやれいむがわらわれたらっておもうと、まりさ…まりさは…』
どうやら、自分の顔のせいで周りの連中に馬鹿にされるのが嫌なのだそうだ。
当たり前だ。お前みたいな醜い化け物面と一緒になって喜ぶ奴なんかいるものか!
『なんだ、そんな事を心配してるのか。馬鹿だな、まりさは』
お兄さんは苦笑して、まりさの頭に暖かい手を置き、クシャクシャと撫で回す。
なんで?
なんでお兄さんもれいむもそんなに笑っているの?
そいつの言う通りだよ!そんな奴がいたらゆっくりできないでしょ!?
だから…っ!
『良いゆっくりになるのに一番大事な事は、勉強が出来る事でも外見が綺麗だったり可愛い事でもないんだ。
自分の周りにいる人達をどれだけゆっくりさせてあげれる事が出来るだろうかと考える、思いやりの心を持つ事。
それがゆっくりにとって一番大事だっていうのは…試験に合格したまりさやれいむに今更言うまででもないよね?』
………………………。
『まりさの顔のせいでお兄さんやれいむが馬鹿にされて笑われるかもしれない…?
そんな事で笑うような奴には笑わせておけばいいのさ。
他人の容姿を嘲り笑うような奴等の心の方がよっぽど醜いからね。
誰に躾けられるでもなく、自然にお兄さん達を気遣うことが出来るまりさはとても素晴らしいゆっくりだと自慢に思うよ』
『ゆー。おにいさんのいうとおりだよ、まりさ。
そんなまりさだからこそ、きんバッジのしけんにごうかくできたんだよ。
まりさみたいなやさしいまりさといっしょになることができて、れいむはしあわせー!だよ』
…………………………………………………。
あれから数日経った。
居間で向かい合う2匹。
そしてケースの中からそれを見つめるまりさ。
くすんだ自分の金バッジとは対照的に、元野良まりさの帽子には数日前に登録した真新しい金バッジが輝いている。
『れいむ…ほんとうにいいの?』
「よくないいいい!!!やめてえええ!!!」
『ゆ…いいもなにも、れいむはまりさいがいとはいやだよ…』
「ゆあああああ!!!どぼじてそんなこというのおおおお!!!!!???」
まりさは泣きながら懇願する。
「やめて!やめて!やめて!」
まるでそこらへんの野良ゆっくりみたく、単調な叫び声をあげるしか出来ない。
この2匹を止める術などまりさには何も無い。
『ゆ…っ!』
お互い緊張の面持ちで固まっていたが、れいむのその一言に意を決し、まりさはぎこちない動作で唇を合わせた。
「ゆっがあああああああああああ!!!!!!まりざの!!まりざがゆめにまでみたれいぶとのファーストちゅっちゅさんがああああ!!!!???」
『……っ!』
『……っ!』
ゆっくりと身体を離し、お互い真っ赤に染まった顔を見つめ微笑みあう2匹。
『ゆふふ。これがファーストちゅっちゅのあじなんだ…。なんだかはずかしいね…っ』
「ああああーーーーっ!!あああああああああーーーーーーっ!!!
やめてええええぇぇぇ!!!もうやめてえええええーーーーーー…!!!」
『…っ!!れいむ…っ!!!』
元野良が下に敷いたタオルの山にれいむを押し倒す。
「くーーーがあああーーーーーーーっ!!!!!????
のらが!!うすぎたないこのくそのらがあ!!!!はなれろっ!!!ばりざのれいむからはなれろおおおお!!!!」
ガツン、ガツン。
1度、2度、3度。
何回も何回も壁や窓に体当たりするが、頑丈に作られ固定されたケースはビクリともしない。
れいむのお洋服がゆっくりと脱がされていく。
眩しいほどなめらかな肌が露になる。
身に纏っていた物が全て無くなり、窓から差し込む日の光の下に晒される白い裸体。
野良まりさはゴクリと唾を飲み、食い入るように見つめる。
『ゆやぁん…。はずかしいから、あんまりみないで…』
『ゆっ…!ご、ごめんね!』
「ふほぉぉぉおおおおおお!!!??
みるな!!みるなあああァァ!!!!!」
再び重なる2つの影。
最初は恥ずかしがりながら慣れない愛撫を繰り返していた2匹だが、時間が経つにつれ甘い息遣いに変わってくる。
『ゆっゆっ…!!ふうん…!!まりさっ!!まりさ!!』
『れいむ!れいむ…っ』
ぬっちゃぬっちゃ。
ディープちゅっちゅをしながら身体を絡め合い、悩ましげなポーズを取り、擦り付けあう。
興奮してきた元野良の表皮からどろりとした液が分泌されれいむの身体に塗りたくられていく。
「ゆあっゆあっゆあっ……!!やめろ!やめろ!!やめろ!!!やめ」
『ゆうんっゆふうんっ!やあ!まりさ!そこっ、はずかし…』
『れいむ…れいむ、れいむっ…かわいいよれいむ!ここ、とってもきれいだよ』
『ゆやぁん…!』
「ゆっはああああああアァーーーーーっ!!!!
なにやっでるんだおまえ!!ふざげるな!!もむな!ざわるな!!がむな!!
どこなめでるんだ!!いいがげんにじろおおおおおおお!!!!!」
ぶんぶんと頭を振って泣き喚きぴょんぴょんと飛び跳ねて地団太を踏む。
だが、このまりさには2匹の愛の営みを延々の見続けるしかないのだ。
悔しくて悔しくて切なくて涙が止まらない。
『ゆああんっ!!ゆあっ!ゆあっ!…ねえ、まりさ…』
『ゆふーっ!ゆふーっ!ゆっ!?』
れいむは腰を上げると、濡れそぼったまむまむはくぱっと開いた。
まだ何物の侵入も許した事の無いソレが、涎を垂らしながらぴくぴくと動き、まりさ達を虜にした。
『…おねがい。れいむのはじめて、もらってください』
ゆっ。
「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!???
だめよおおおおお!!!それだけはだめなのおおおおお!!!!!!!!!!!!
それは!!!!!それは!!!!!まりざがもらうはずだっだ!!!!!
まりざのだいせつな!!れいむのじゅんけつのバージンなんでずううううう!!!!!!!!!!
ぞれだげは!!!ぞれだげはかんべんじでぐだざいいいいいいい!!!!!!!!!」
『ゆっ!いくよ…れいむ…』
『ゆっ…!れいむ、がんばる…!』
「がんばらないでねえええ!!!やめええええええええてえええええええ!!!!!!」
れいむは恥ずかしそうにコクリと頷き、元野良のそそり立ったぺにぺにが、愛しいれいむのまむまむに押し当てられ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
やめでやめでやめでもうやめでそれだげはやめでいれないでえええええ!!!!!!!!!」
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします
お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします
お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします
どうかそれだけはやめておねがいしますつらいんですくるしいんですこれ以上まりさのれいむを奪わないで
ぶちっ!
『ゆぐっ!!?』
『れ、れいむ!だいじょうぶ!?』
『ゆっ…だいじょうぶだよ…!ゆふふ、うれしいな。れいむのじゅんけつをささげることができて』
『れいむ…』
『ゆっ…いいよ、まりさ。うごいて…』
『ゆん…っ』
コクリと頷き、ずっちゃずっちゃと淫らな音を立てて腰を前後左右に動かせる元野良まりさ。
「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
奇声を上げ、大声で泣き崩れるまりさ。
涎、涙、それに大量のくやしーしーを垂れ流し、足元に軽い水溜りが出来ている。
もはや見ることも辛く、目を閉じてもスピーカーからは卑猥な音と嬌声が絶え間なく聞こえてくる。
『…れいむ!れいむ!もうっ!もう!!』
『まりさ!まりさ!きて!れいむも、もうっ!!』
『『すっきりーーーーーー!!!!!』』
2匹は同時に絶頂を向かえ、たっぷりの餡精液がれいむの胎内に流し込まれる。
「ゆああああああぁぁ………」
その声を聞いたケース内のまりさは、ぎりぎりと唇を噛みしめるとゆっくりと目を開き、事後の2匹を呆然と眺める。
『ゆふうっ…はあっ…ん…っ、ねえ、まりさ…』
『ん?』
『…まりさのことが、だいすきっ』
これ以上無い極上の笑顔を輝かせると、れいむはまりさに軽くちゅっとしてみせた。
照れたように恥らうれいむに元野良まりさ。
まりさはその笑顔を見て、これ以上無い程打ちのめされ完全に思い知った。
身も心も。れいむは既にあのまりさの物で。
まりさのれいむなんて、既に何処にも存在しなかったのだという事に。
れいむのまむまむからドロリと溢れ出した餡精子には、純潔だった証の餡子が少し混じっていた…。
それからどの位、月日が流れただろうか。
自分の目の前で繰り広げられる元野良まりさとれいむ家族の幸せな暮らしを延々と見せられた。
初めての出産。
育児。
巣立ち。
近所や仲間へ里子に出された子供達が家庭を持つ。
ケース内のまりさを取り残し、広がっていく元野良まりさの世界。
更にそれからいくつもの季節が巡った。
まず最初に元野良まりさが老衰でこの世を去り、その数日後、後を追うように老れいむも息を引き取った。
『まりさ…もし、ゆっくりにもあの世があるんなら。また、れいむといっしょにゆっくりしようね…』
それがれいむの最後の言葉だった。
深夜、お兄さんが数年ぶりにケースから出してくれた。
暗く静まり返った居間に横たわるれいむの遺体。
まりさは、その幸せそうな死に顔を、ただただ、虚ろな目で見つめていた。
その時、まりさが何を想ったのか。
どう感じたのか。
それは、誰にも分からない。
まりさがこの世を去ったのはそれから5日後の事である。
(終わり)
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- お兄さんが野良まりさを招いた後の対応が勉強不足だったことが否めないが、
そもそも仲間が増えた程度で憎悪する先住まりさもゲス因子があっただけ。自業自得。 -- 2018-01-04 10:47:12
- ↓うざいよ!?ゆっくりしてないゆっくりはゆっくりしねえええ!!!
うふんボヨヨン -- 2016-08-29 14:43:53
- さいしょはくそみたいなめでssさんだとおもってたらしっかりぎゃくたいしてたね!ほめてあげるよ!あとあまあまもってきてね!たくさんでいいよ -- 2015-12-28 22:47:28
- ↓一人一人のコメント長すぎワロタwww
あと、知恵遅れ知恵遅れ言ってる奴、お前らの方が知恵遅れに見えるから。馬鹿なね?死ぬの?嫉妬してるの?知恵遅れなの?
長文失礼しました -- 2013-12-16 21:52:00
- ニヤニヤが止まらないいいいい -- 2013-09-18 01:15:05
- この作者も知恵遅れ。 -- 2012-11-24 22:27:53
- いやぁ今までに無い切り口で楽しかったわ。 -- 2012-08-25 19:34:23
- 全くwwwこれだから知恵遅れわwww -- 2012-07-15 17:16:38
- ↑まず自分が知恵遅れだってことを自覚しろよ -- 2012-03-15 03:09:08
- お兄さんが知恵遅れ過ぎて全くゆっくりできなかった
鬼威山が悪意を持って隔離したならとてもゆっくり出来る展開だったが
知恵遅れお兄さんが自分は正しい事している思っている知恵遅れっぷりに腹が立つ
犬・猫のケースがどこまで当てはまるかは知らんが
新参と古株を平等に扱うなんて大間違い、必ず古株を露骨に分り易く贔屓しなきゃ駄目
避妊もしていないれいむ一匹(雌)とまりさ二匹(雄)を序列もあいまいにさせたまま
一緒にするなんてまりさ二匹(雄)で殺し合いしろと言っているようなもの
飼い犬にしろ飼いゆにしろ問題行動は全て人間が悪いってシーザー・ミランが言ってたよ!
虐待鬼威山ならゆっくり出来るのになんでわざわざ知恵遅れお兄さんにしたんだろうか?
この作者様のSSに出てくる人間て大体知恵遅れだけどもしかして作者様も軽度の知恵遅れなの? -- 2011-10-16 22:12:27
- 俺も性描写のとこででゆっくりできなくなった。
白い裸体て・・・まあ飼いゆはおようふく(笑)着てるからそういうふうに
なるんだろうけどさ・・・人間目線じゃ所詮はしもぶくれぶくぶくもるんもるん
じゃねえかよ。お笑いにしかならんと思う。
でもゆっくり目線だとこうも美しく(苦笑)描写されんのかい!
なんかもうゆっくりの美的感覚には脱帽だぜ。
でも本当にこれは凄まじいまでのSSだ。
もはや虐待を超えてると思う。
こういうのをもっと読みたいよ。 -- 2011-08-27 12:57:32
- これはそんじょそこらの虐待よりえぐい虐待 -- 2011-08-27 02:18:51
- まりさは拾われまりさへの嫉妬故にお兄さんからの愛情を削がれ、
恋焦がれ相思相愛だったショップからの幼馴染の心を奪われ、
みんながしあわせーになっていくのをまざまざと見せ付けられ、
どうていっのままゆん生を終えたのね。
…キッツイなーwまさに魔法使い...
こうなる前に「おたべなさい」するものだと思ってた -- 2011-07-20 15:32:55
- なにが「ファーストちゅっちゅ」?「日の光の下に晒される白い裸体」?「はじめて、もらってください」?「じゅんけつをささげる」?ぐわーーーーっきもっ!ゆっくりきもっ!なに抜かしてやがるってカンジ!!こいつらマジで虐殺してえ!なんつー醜悪な汚饅頭共だ!!こいつら自分たちのこと「色々あったけどお互いの愛情(笑)はぐくんだ末に結ばれたとてもハーレクイン(失笑)な二匹」なんてナルシスティックに思ってたりしてねえだろうな。ケッ!
でも話しはとても面白かったです。あなたキモいゆっくりの性描写とても上手だわ。
-- 2011-01-17 01:00:34
- ゆっくりのキモさを濃密に描くことで良い味がでてる。
元野良まりさとれいむの性の描写が妙にリアル生々しくて、さらにはふぁーすとちゅっちゅのあじだのれいむじゅんけつもらってくださいだのと言ってるのが主にきもかった。
読むのも書くのも不愉快になるような描写だが、ここをきもいくらいリアルに描かなければ、まりさの絶望も描き切れなかっただろう。秀逸。 -- 2011-01-17 00:06:20
- すごくよかった
ただどんな話でも「ふぁーすとちゅっちゅ」の文字を見るだけでイラッと来る
俺の持病だけが邪魔だった -- 2010-11-22 17:49:37
- 中々凄いな…
だかしかし、善良な奴はゆっくりできるって点ではゆっくりできたよ。
監禁まりさは不幸だなー
せめて他の飼い主の所に行けてれば、と思えなくもなかったが… -- 2010-11-11 20:01:26
- これは猫の場合だが、新しく迎える場合は露骨なくらいに古株の方を優遇しないといけない。新顔の子が可哀相かもしれないが、やっとかないと全然打ち解けないし古株が家出したり飼い主嫌いになったり、このまりさみたいに新顔いじめたりして古株も新顔ももっと可哀相なことになるからだ。
ゆっくりにもある程度同じことが言えそうだな。そういう意味ではこのお兄さんは馬鹿飼い主と言われても仕方ないが、まりさの再教育は成功の見込み無いだろ…ゆっくりのメンタリティから言って。飼い主のせいであれ、ゲスになってしまったことには違いないのだから。 -- 2010-09-08 17:34:57
- ただの誤解(エサをとられたとかおもちゃを隠されたとか単純なの)とかならともかく
思い込み生物ゆっくりの嫉妬を消せるとは思えないんだが
俺等と同じ人間の嫉妬を消すのすら難しいぞ、むしろ気づいてやるのが難しい
今回のお兄さんだって元野良が怪我しまくってカメラしかけて始めてわかったしな
つまり金まりさの嫉妬はもう取り返しのつかないとこまで育ってるんだよ
>>まりさをもっとゲス化するか、それが駄目なら救いが欲しかった
宙ぶらりんだからこそこの話がインパクトあるんじゃね?
この愛でお兄さんが虐待しだしたり、ここまで家中で伸ばしたのに金まりさが捨てられて場面が外に行くのも不自然だし
頭の良い金バッチなのに「ゆ!わかったよ!また仲良くするね」っていきなり単純化するのも変だし
まあたぶんこの頭が良い(人に近い)って部分があるからこそ悲劇になったし読んでてきついんだろうけどな
まあ俺も見ててつらかったけど「元野良は嫌いだけどお兄さんやれいむには良い顔したい」
って言う良い人が嫉妬にかられて地位なくすって言う話をゆっくりでやる始めての試みだし面白かったよ -- 2010-09-06 15:07:20
- まりさをもっとゲス化するか、それが駄目なら救いが欲しかった。
どうも罰>>罪の印象があってゆっくりできない。
不幸なNTRとして読むなら非常に面白いが、制裁の元に起きた出来事だからな。 -- 2010-09-05 23:22:04
最終更新:2010年02月13日 17:36